9月14日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第226回定期公演PH
「椿姫コンサートオペラ」
指揮:大勝秀也、ソプラノ:森麻季、テノール:佐野成宏、バリトン:直野資
合唱:OEK合唱団、大阪音楽大学オペラ研究室、OEKエンジェルコーラス
バレー:横倉明子バレー教室、 構成・演出:わたべさちよ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)2007-2008 シーズンの開幕である。8月には金沢市で和太鼓を叩いて「オペラ祭」というのがあったが、今回はコンサート形式による本物の 「椿姫」。以前、海外の歌劇場金沢公演で「椿姫」を見たことがある。しかし、本公演は二期会合唱団のソリストを含む自前の金沢版 「椿姫」であり、しかも石川県出身直野資さんの「プロヴァンスの海と陸」が聞けるということで石川県立音楽堂に出掛けた。

 コンサートオペラ開演時刻は午後6時半である。6時35分ぎりぎりに席について舞台を見るとオーケストラが舞台後ろに配置され、 コンサート形式だが、舞台手前は簡単な舞台装置を含むオペラ用のスペースとなっている。従って、これはオペラだと感じた次第。座る間もなく ゆっくりしたテンポで第1幕前奏曲が始まった。途中テンポは速くなるが、テンポが速くなると切れ味鋭い演奏。即ち、OEKは出足好調であった。 乾杯の歌の後アルフレードの「幸せなある日、天使のように」をテノールの佐野成宏さんが歌う。佐野成宏さんの歌唱は、ffで突っ張らず、 pに落として歌う技術が巧み。程なくヴィオレッタの「花から花へ」がソプラノの森麻季さんにより歌われた。見事なコロラトゥーラで第1幕終了。 第2幕冒頭はアルフレードの「私の熱い心」。これも、佐野成宏さんの熱唱であった。第2幕第1場の終曲近くには、直野資さんの「プロヴァンス の海と陸」が貫禄十分に歌われ、バリトンの名曲を味到することが出来た。

 休憩を挟んで第2幕第2場では、演出者わたべさちよさんの計らいであろう、OEKエンジェルコーラスが出てきてミュージカル「サウンド・オブ・ミュー ジック」における「ドレミの歌」と「エーデルワイス」を歌った。安部首相の辞任のごとく、多少唐突とも思えたが、後で考えてみると子供たちの合唱も一興。 そんなに違和感も無し。その後、バレーがあり第2場終了。第3幕は23歳にして死ぬヴィオレッタを森麻季さんが熱演して無事終了。大勝秀也マエストロの 指揮によるOEKの演奏も素晴らしく、金沢版「椿姫」が完了した。尚、ヴェルディ「椿姫」の中でオルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」とよく似ているメロデ− が出てくる。オルフは、ヴェルディの後の世代であり、オルフがヴェルディの曲を剽窃したのか、またはオルフが見つけた古書カタログべネディクト派 ボイロン修道院の写本をヴェルディも知っていて、両作曲者が同じ古書から引用したのかは定かではないが、興味深い。

 以上の如く、コンサートオペラ以上のものを堪能することできた。しかし、これだけの演出をするのなら、金沢歌劇座(金沢市観光会館)でオーケストラをピットに入れて伸び伸びと広い舞台でオペラ歌手に演技させた方が良かったと思うが、如何だろう か?コンサートオペラの真意は不明だが、演奏会形式のオペラであれば、それに徹した方が良いと私は思う。尚、森麻季さんにはモーツアルト「魔笛」の夜の 女王は似合わない。しかし、プッチーニ「ラ・ボエーム」のミミは似合いそうである。従って、次回は是非「ラ・ボエーム」を公演して欲しいものである。


Last updated on Sep. 14, 2007.
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