7月2日バロック音楽の愉しみZ
指揮:延原武春
ヴァイオリン:西澤和江、ソプラノ: 長澤幸乃、アルト:安藤明根
テノール:与儀巧、バリトン:安藤常光
合唱指揮:表まり子、合唱:金沢バロック合唱団
石川県立音楽堂邦楽ホール

酢谷琢磨

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 バロックの愉しみは第7回になるそうである。今回は、バッハのカンタータ第147番(心と声と行いと生きることは)をオーケストラ演奏のみではなく、ソロ、合唱を含めた全曲を演奏するらしいので、 石川県立音楽堂に出掛けた。

 1曲目はヘンデルの組曲「水上の音楽」である。第1組曲第1曲序曲は、イントロのラルゴで少々違和感。これは以前からオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)にあった演奏会当日のリハーサル不足症候群が復活し、お粗末。しかし、 3-3-2-1-1構成の弦楽5部はアレグロで持ち直し、以後徐々に調子を出してきた。以後、第4曲迄ホルンが無難にこなし、良好。第6曲のエアを聞きたかったが、第10曲アンダンテに飛んでしまった。これは、時間の所為と思われ、仕方が無い。第3組曲は省略され、第2組曲の第1曲アレグロは トランペットが華やかさを演出し、第2曲アラ・ホーンパイプも立派に仕上がった。第2組曲は本来、メヌエット、ラントマンと続き、ブーレで曲を終わるのだが、延原武春マエストロは短いブーレ、ラントマンと演奏し、終曲にメヌエットを持ってきた。これも趣向である。

 2曲目は、ソリストに金沢ゆかりの西澤和江さんを迎えた、バッハのヴァイオリン協奏曲第2番である。第1楽章Allegroは、西澤和江さんのヴァイオリンがオーケストラに埋没し、もう少し自己主張してもと感じられる演奏であった。第2楽章Adagioでは西澤和江さんが上手さの片鱗を見せたが、 僅かな瞬間であった。短い第3楽章Allegro assaiは、快適な演奏が披露され、ドイツ人バッハによるバロック時代のイタリア生まれである協奏曲を堪能できた。

 休憩を挟んで、愈々バッハのカンタータ第147番である。僅か10名程度の合唱団が登場したが、この前のバターヴィア・マドリガル・シンガーズを思い出し、日本でもこの程度でコラールを歌える時代になったのかと思いきや、第1部第1曲合唱はバスが弱い。低音が弱いので厚みに欠ける演奏となってしまった。 この原因は、合唱指揮表まり子さんが男声合唱部門の指導を遠慮した為であろう。今後は、きつく指導して欲しいものだ。第2曲からソリストが登場したが、平均的に満足。第2曲レチタティーヴォはオーボエ・ソロが素敵。第4曲レチタティーヴォは第1ヴァイオリン、チェロとチェンバロの伴奏が綺麗。 第6曲コラールは部分的にバスがよく聞こえ、荘厳に聞こえた箇所もあったが、全体的には薄味。第2部に移り、第7曲テノールのアリアではチェロ、コントラバスとチェンバロの伴奏がユニーク。第9曲では、トランペットが中々良い。しかし、最後には息切れしてしまった。終曲コラールはオーボエのソロ が雰囲気たっぷりで、感動。ただし、オーボエも最後にはスタミナ切れ。ご苦労様でした。

 アンコール曲1曲目はモーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス。2曲目はバッハのG線上のアリアであった。G線上のアリアは故岩城宏之マエストロの指揮でよく聞いたが、今回の演奏はそれに比べると平凡。故岩城宏之マエストロの偉大さを確認した瞬間であった。兎に角、コンサートは終了した。 感想としては、詳細は分からないが、当日のリハーサル不足さえなければと思われる箇所が多々あった。このようなことの無きようOEK音楽監督井上道義マエストロには断固たる改革を望みたい。


Last updated on Jul. 02, 2007.
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