5月22日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第222回定期公演PH
指揮:デイヴィッド・スターン、ヴァイオリン:庄司紗矢香
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 普通メンデルスゾーンの交響曲をメーンプログラムに選ぶときは、1曲目には「フィンガルの洞窟」というのが日本における通り相場。ところが今回のデイヴィッド・スターン・マエストロはコダーイの「ガランタ舞曲」を持ってきた。 両者の共通点はプログラムに響氏が書いている通り「ヨーロッパ」以外には無い。すなわち、面白い組み合わせであり、全く新鮮。しかも、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタで有名な庄司紗矢香さんが来演するとのこと。 出来ればチャイコフスキーよりはプロコフィエフ、又はショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲を聞きたいと思いつつ、石川県立音楽堂に出掛けた。

 会場到着が遅くなって、プレコンサートがあったのか定かではない。着席間も無く、1曲目コダーイの「ガランタ舞曲」が始まった。レントのイントロはチェロで、これはさすが綺麗。その後ホルンのソロがあるのだが、少々違和感。それ以外は問題なし。 デイヴィッド・スターン・マエストロは全身を使い、分かり易い指揮で好感。オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の弦楽5部は8-6-4-4-2で、対象配置であった。 これでも大きな音が出ていたのには感心。尚、演奏中弦が切れたような音がした。しかし、舞台上は平然としていて、何の変化も無い。客席のノイズだったのかもしれない。これも不明。

 2曲目は、ソリストに庄司紗矢香さんを迎えたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲である。第1楽章Allegro moderatoは庄司紗矢香さんの独壇場、テンポの速い曲を得意としているのかと思いきや、叙情豊かな曲も貫禄の演奏であった。特に、 第1楽章終了前のカデンツァは圧巻。やはり、プロコフィエフはもっと凄いのだろうと思わせる演奏であった。チャイコフスキーのピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲における第1楽章終了時の拍手は、金沢では恒例で、今回も拍手が来た。演奏者への邪魔と思う。 しかし、今回のこの拍手は、特に庄司紗矢香さんのカデンツァへの拍手と解釈しよう。第2楽章から切れ目無く続く第3楽章Finale(Allegro vivacissimo)はテンポも速く、迫真の演奏であり、チャイコフスキーを堪能できた。アンコール曲は、バッハの無伴奏 ヴァイオリンのためのパルティータ第1番。多分第1楽章Allemandaだったのだと思う。庄司紗矢香さんの新境地を今回併せて聴くことが出来、ブラーバであった。

 休憩を挟んで3曲目はメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。哀愁を帯びたイ短調の名曲である。第1楽章Andante con motoは好調。切れ目無く続く第2楽章Vivace non troppoも分かり易い旋律であり、しかも第1楽章の最初の動機で楽章を終了する。 少しインターバルを取って短い第3楽章Adagio。これは絶品。第4楽章Allegro vivacissimoは、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第3楽章と同じテンポ。これも中々の出来栄えであったが、フィナーレ近くで違和感ある箇所が発生。一瞬音が止まったように聞 こえた。楽譜を見ていないのでミスだったのか不明だが、兎に角違和感。フィナーレのコラール風コーダは立派であり、少々の疑問を吹き飛ばすかのごとく無事終了した。

 アンコールはメンデルスゾーンの劇音楽「真夏の夜の夢」第1曲:スケルツォ。この曲は「舌先さけたまだら蛇」、「結婚行進曲」等を含む曲なので、抜粋でも良いからコンサートで取り上げて欲しい曲である。従って、スケルツォだけでは不満足ではあるが、 アンコール曲だけに仕方が無い。次回には是非実現させて欲しい。さて、本日のコンサートを聴いてOEKも良くここまで来たのだが、まだ不安感を抱かせる箇所が存在する。ツエーゲン金沢の試合でもミスをすると敵に押し込まれ、 得点を許してしまう。今回の違和感はミスなのかどうか定かではない。しかし、ミスと思われる箇所を極力少なくすることが肝要である。OEKの更なる研鑽に期待したい。


Last updated on May 22, 2007.
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