2月9日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第216回定期公演PH
リーダー:マイケル・ダウス
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のニューイヤー・コンサートのリーダーであったマイケル・ダウスが2月の定期公演を振る。しかも、 ピアソラのブエノスアイレスの四季とヴィヴァルディの四季と併せて八季を演奏するという。バンドネオンが入るのかどうか心配しながら 石川県立音楽堂に向かった。

 コンサート前半は弦楽のみのピアソラ。「天使への序章」、おなじみの「リベルタンゴ」。ここまではバンドネオンをマイケル・ダウス・リーダーのヴァイオリンで代用。次いで、カンタさんのチェロのソロが バンドネオンを代用する「二調のミロンガ」。Milongaとはスペイン語で踊りとその歌曲の意。再びマイケル・ダウス・リーダーのヴァイオリンで「オブリビオン」、Oblivionは英語で忘却の意。前半最後は「現実との3分間」 が演奏された。「現実との3分間」は重量級のタンゴであり、肺腑に染みる演奏であった。OEKはジャズっぽい曲を得意とするが、前半のピアソラもタンゴ・オーケストラを凌ぐ出来栄えであった。

 休憩を挟んでヴィヴァルディの四季(Vi)とピアソラのヴエノスアイレスの四季(Pi)が始まる。私は勿論、ヴィヴァルディの四季を終えてから、ピアソラだと思っていた。ところが、交互演奏で、Vi春、Pi夏、Vi夏、Pi秋、 Vi秋、Pi冬、Vi冬、Pi春という組み合わせである。その理由は、Pi夏、即ちデシャトニコフ編曲の「ヴエノスアイレスの夏」にはヴィヴァルディの春の一節が挿入されている。従って、この順序は指定されていたのであろう。 Vi夏の後、Pi秋「ヴエノスアイレスの秋」が演奏されたが、これが絶品。ピアソラ五重奏団以上のタンゴが出来上がった。ところが、その後のVi秋では、マイケル・ダウス・リーダーのヴァイオリンに微妙な音の狂いが 生じる。これは、次の曲のPi冬前にマイケル・ダウス・リーダーはヴァイオリンを調弦し、解消されたが、全員の調弦を忘れてしまった。従って、Pi冬ではヴァイオリン奏者にも音色の狂いが発生してしまった。結論から言うと、 出色の「ヴエノスアイレスの秋」の後全員で調弦をすれば良かったのである。その後、Vi冬、即ちヴィヴァルディの冬第2楽章Largoはマイケル・ダウス・リーダーのヴァイオリンソロが綺麗。最後のPi春のフィナーレでは、チェンバロ がVi春の導入部を静かに演奏し、曲を閉じるという趣向に富んだデシャトニコフの編曲であった。尚、ピアソラにはいろいろな音が挿入されている。例えば「ヴエノスアイレスの夏」にはムチの音が入るが、これをコントラバス の今野さんがコントラバスの胴を弓で叩いて出していた。即ち、OEKの奮戦ぶりが目立った演奏会であった。

 アンコール曲はペレチスの「すべて歴史のごとし」という聞きなれない曲。静かな綺麗な曲で締め括った。今回のプログラムではピアソラを取り上げた訳だが、これはマンネリを打破するためにも面白い企画であった。 今後も斬新なプログラムを期待する。


Last updated on Feb. 07, 2007.
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