2月7日フィンランド放送交響楽団
指揮:サカリ・オラモ、チェロ:ミッシャ・マイスキー
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 バーミンガム市交響楽団音楽監督のマエストロ・サカリ・オラモがやって来る。しかも、ミッシャ・マイスキーのチェロも聞けるということで 石川県立音楽堂に出掛けた。

 1曲目はマエストロ・サカリ・オラモ得意のシベリウス:交響詩「タピオラ」であった。この「タピオラ」とは「森の強大な神の住処」という意味とのことで、森の雰囲気が充分感じられる演奏であり、弦楽も綺麗だし、 金管も上手いし、中々のオーケストラだと思わせる1曲目であった。但し、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを対象配置し、 チェロを舞台向かって左手に配置したにも拘わらず、コントラバスを右手に配置したためか低音は余り響かなかった。

   2曲目はミッシャ・マイスキーをソリストに迎えてのドヴォルザーク:チェロ協奏曲である。第1楽章Allegroでは哀愁漂う箇所をビブラートを効かせ、情感豊かに演奏する。以前ヨーヨー・マの明るいチェロを聞いた ことがあるが、ミッシャ・マイスキーのチェロは哀愁が漂い、しかもオーソドックスである。第2楽章Adagio, ma non troppoでは、最後のミッシャ・マイスキーによるカデンツァが圧巻。第3楽章Finale, Allegro moderatoでは マエストロ・サカリ・オラモの指揮が若々しく、きびきびとして気持ちよく、しかもミッシャ・マイスキーのチェロは高音が綺麗だということも分かった。アンコール曲はバッハ:無伴奏チェロ協奏曲第3番Bourreeだったが、 これがまた素敵。歯切れがよく、若い頃録音されたCDのように角ばった所が消え、丸みを帯びたソフトな演奏で、ミッシャ・マイスキーがオールラウンドプレーヤーであることを理解できた

 休憩を挟んで3曲目は、ブラームス:交響曲第2番である。3曲目になると金管に疲労が出てきた。即ち、少々不安定気味になってきた。そこをもってきてマエストロ・サカリ・オラモは若々しく、溌剌とブラームスの 田園交響曲を振ったため、ブラームスの本領であるロマンティシズムがダイナミズムになってしまった。第1楽章Allegro non troppoではダイナミズムが光り、第2楽章Amndante moderatoではシベリウスのフィンランディア に似た箇所があることが分かり、マエストロ・サカリ・オラモがこの曲を選択した理由が理解できた。第3楽章Allegro giocoso - Poco meno prestoは舞曲風で優雅。第4楽章Allegro energico e passionato - Piu allegro では金管がお疲れ。しかし、迫力はenergicoの表題を凌ぐものであった。チャイコフスキーやシベリウスの交響曲ならそれでよかったのだろうが、ブラームスの本領はロマンティシズムなのであるから、energicoも程々が 良かったのではと考えられる。この点については、金沢の聴衆はOEK(オ−ケストラ・アンサンブル金沢)程度の規模で聞いているので大オーケストラ の演奏は大き過ぎるように聞こえるとの意見も出そうだが、私はマエストロ・サカリ・オラモが若いのであるから、 余計控えめ目のロマンティシズムが望ましかったと思うのである。

 アンコール曲はブラームス:ハンガリー舞曲集第5番とシベリウスの悲しきワルツであった。9時を過ぎての演奏であったが、こちらの方は定番だけに絶妙の演奏で締め括った。さて最後に、ブラームスの交響曲第2番を検証してみよう。 プログラムに記載されている日本ツアー最後の演奏会ミューザ川崎シンフォニーホールでのプログラムは、シベリウスの交響曲第2番である。若手のサカリ・オラモマエストロを指揮者に、しかもフィンランド放送交響楽団を招致したのだから、私はシベリウスの交響曲第2番を選択した方が断然良かったと考える。ブラームスの交響曲第2番はサカリ・オラモマエストロがもう少し年を取ってから聞きたい曲である。


Last updated on Feb. 07, 2007.
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