11月22日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第211回定期公演PH
指揮:ギュンター・ピヒラー、ピアノ:スタニスラフ・ブーニン
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ショパン・コンクール優勝のブーニンがオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演で共演する。ブーニンがモーツァルト・ イヤー棹尾を飾るピアノ協奏曲第23番をいかに弾くのか興味あると共に、珍しいシューベルトの交響曲第6番も聴きたいということで石川県立音楽堂に出掛けた。

 石川県立音楽堂に着くと2階からプレコンサートのモーツァルトによるトルコ行進曲が聞こえてくる。しかも、どうも木管楽器のみの構成のように聞こえる。2Fへ上がると丁度終わってしまった。 珍しい木管楽器でのトルコ行進曲を最後の部分しか聞けなかったのは残念であった。しかし、部分的ではあったが、ピアノ曲と比較しても遜色が無いように聞こえた。全曲を聴いてみたい曲だ。

   コンサートの1曲目は普通序曲から始まるものだが、マエストロ・ギュンター・ピヒラーは最初の曲をブーニンによるショパンのワルツ第6番「子犬」とワルツ第7番で開始した。この原因は、 事前のプログラムではモーツァルトのピアノ協奏曲第23番とシューベルトの交響曲第6番となっていた。これでは、時間が余ってしまう。そこで、ショパンを持ってきたものと思われる。 ブーニンのショパンは、やはりうまい。短いワルツで、もう少し聞きたいと思ったが、コンサートは次のプログラム:モーツァルトによるピアノ協奏曲第23番へと進行する。

 第1楽章Allegroは順調。ところが、聞いている内にショパンのピアノ協奏曲のように聞こえてきた。これは1曲目にショパンを聞いたので余計そう思ったのかもしれない。 モーツァルト弾きはやや単調にピアノを弾く傾向だが、ショパン弾きはピアノの強弱を強調したり、テンポに緩急をつけて弾く傾向があり、これがショパン風に聞こえる のである。カデンツアは誰の作なのかは分からなかったが、余計ショパン的傾向であった。更に、第2楽章Adagioはショパン的が冴え、モーツァルト以上の素晴らしい曲に仕上がった。 第3楽章Allegro assaiはさすが、モーツァルト的であった。アンコール曲はシューベルトのロザムンデ変奏曲ともいえる4つの即興曲第3番であった。これは変奏の妙味、特に ショパン的変奏曲を味わうことが出来、しかもブーニンの熱演であった。

 休憩を挟んで3曲目は、シューベルトの交響曲第6番。この曲は第1楽章、第2楽章がハイドン的であり、第3楽章Scherzo;Prestoはベートーヴェン的、第4楽章Allrgro moderatoは ロッシーニ風と言われる交響曲である。第1楽章のイントロ部分の金管をスタッカートで短く切ってしまったので違和感があったが、それ以降は順調。オーケストラの音質もチェロが 舞台に向かって右に配置されていたためか、バランスは良かった。第2楽章はマエストロ・ギュンター・ピヒラーもOEKも得意なハイドン的だけに、綺麗。第3楽章のスケルツォは切れ味鋭く、 最後のロッシーニ風も安心して聞けるOEKの熱演であった。

 アンコール曲はシューベルトの「キプロス島の女王ロザムンデ」間奏曲第3番、所謂「ロザムンデ」。ブーニンが弾いたピアノ・ソナタと違う雰囲気で、綺麗にコンサートを締め括った。なお、 今回のコンサートは「何々風」が多く、モーツァルトがMain Dishなのか、ショパンか、はたまたシューベルトなのか良く分からない印象を受けた。「種々」も結構だが、次期音楽監督 にはもう少し焦点を絞ったプログラム作りに心掛けて欲しいものだ。


Last updated on Nov. 22, 2006.
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