11月5日ショスタコーヴィチ:オラトリオ「森の歌」
指揮:井上道義、ピアノ:アリス=紗良・オット、テノール:志田雄啓、バス:安藤常光
管弦楽:オ−ケストラ・アンサンブル金沢、大阪センチュリー交響楽団
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 以前、オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるショスタコーヴィチ:オラトリオ「森の歌」公演があった筈で あり、家には楽譜がある。しかし、石川県立音楽堂で聞くのは今回が初めてだと思う。しかも、今年はショ スタコーヴィチ生誕100年であると共に、3/4拍子と4/4拍子が交互に出てきたり、終曲では3/4、4/4、7/4拍子が入り混じるという変則的リズムの難曲をいかに演奏するか興味がある。 金沢駅東口の変貌をシニカルに検証する意味もあってコンサートに出掛けた。

 金沢駅は金沢フォーラスの開店で西口駐車場は満車状態。駐車場に辿り着くのにかなりの時間が掛かった。なんとか駐車して金沢フォーラスに立ち寄ったところ、人人人 で、びっくり。金沢がしっとりした情調を失いつつあるなと悲観しながら、石川県立音楽堂に急いだ。

 1曲目はショスタコーヴィチの「祝典序曲」。パイプオルガン前に並んだ 金管が壮大なファンファーレを奏でる。先ずは出だし好調。2曲目はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。ソリストはアリス・サラ(=紗良)・オットさん。なんと18歳の ソリストが名曲を堂々と演奏。第1楽章ではオ−ケストラ・アンサンブル金沢と大阪センチュリー交響楽団がJointして大規模になっていたため、ピアノが聞こえない箇所もあったが、 第2楽章のクラリネット(だと思う)とのデュオは素晴らしく、その後の夢見心地も綺麗。なお弦楽セクションは、コンサート・マスターのヤングさんの統率力の所為であろうが、 Jointしているとは思えぬ綺麗さであった。アンコール曲はリスト編曲のラ・カンパネッラ。リストは超絶技巧練習曲を作曲したように、この曲も難しい曲である。しかし、 アリス・サラ・オットさんがなんの苦も無く演奏するのにはびっくり。将来どこまで伸びるのか末恐ろしい十八歳であった。

 休憩を挟んでショスタコーヴィチの「森の歌」が始まる。第1曲はバスのソロがあるが、ロシアのバスは少々の楽譜無視もかまわず、音吐朗々と聞かせるのだが、本日のバス安藤常光さん は、バリトンのような感じであり、少々おとなしかった。しかし、合唱団は素晴らしく、パイプオルガン横の金管部門も迫力ある演奏で盛り上がる。第4曲「ピオネールは木を植える」 では児童コーラスが天使の歌声を披露し、これも綺麗。第7曲の「賛歌」は7/4拍子の難曲だが、マエストロ井上道義は3拍子と4拍子を組み合わせて明快に指揮し、難曲をクリアー。さすが、 プロだと実感した次第。第7曲のバスとテノールのデュオも無難。フィナーレも圧倒的で、感動の演奏であった。

 アンコールはバッハのG線上のアリア。マエストロ岩城宏之が生きていれば、「森の歌」を指揮した筈。G線上のアリアを聞きながら岩城さんを偲び、目頭が熱くなった。なお、大阪 センチュリー交響楽団は大阪のオーケストラ3団体が統合しなければ財政的に厳しいという話を聞いている。もし緊急事態のときは金沢へ来てもらい、金沢交響楽団設立に協力して欲 しいものである。その時は、石川県と金沢市の支援が必要なことは論を待たない。


Last updated on Nov. 05, 2006.
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