9月18日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第207回定期公演PH
指揮:井上道義、ピアノ:菊池洋子、ヴァイオリン:バイバ・スクリッド
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

English
スマホ版へ

 オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の2006-07シーズンが始まった。今回はフィル ハーモニー・シリーズの初回、しかもモーツァルト・イヤー第7弾オール・モーツァルト4曲である。曲数が多いと思いながら、石川県立音楽堂に出掛けた。

 15時から始まったコンサート1曲目は、疾風怒濤で有名なモーツァルトの交響曲第25番である。井上道義マエストロの力量が問われる最初の曲であったが、第1楽章はマエストロ 岩城と違ってテンポが速い。これが、マエストロ井上のモーツァルトなのだ。少々早過ぎると思ったが、疾風怒濤には相応しいのかとも思えてくる。第2楽章になると 様子が変わった。舞台右手に6人並んだ第2ヴァイオリン(私は最初ヴィオラだと思ったのだが、休憩時友人が指摘したように、どうも第2ヴァイオリンらしい) がfで演奏すると、第1ヴァイオリンの音が聞こえず、違和感あり。これは、第1ヴァイオリンの音量が弱かったのか、第2ヴァイオリンを舞台右手に配置した 為か原因は分からなかったが、この疑問は第4曲目で氷解する。第3、第4楽章は問題無く好演。

 2曲目は、ソリストに菊池洋子さんを迎えたモーツァルトによるピアノ協奏曲第20番であった。菊池さんは今日は緊張 していたのか、第1楽章は固く始まった。その所為か、第2楽章Romanceの夢見心地はさらりと終わった。よくねちっこい演奏もあるのだが、菊池洋子さんは爽やかであった。 しかし、私はもう少しねちっこい演奏も部分的には必要であったのではと思えてならない。菊池洋子さんには、ねちっこさを身に付けるためクリストフ・エッシェンバッハ 指揮のオーケストラと共演してみてはと思った次第。カデンツァは多分ベートヴェンのものを演奏したのだと思うが、これは 好演。アンコールのトルコ行進曲は熱演であった。

 休憩を挟んで3曲目は、ソリストにバイバ・スクリッドさんを迎えてのモーツァルトによるヴァイオリン協奏曲第3番である。バイバ・スクリッドさんはラトヴィアの リガ生まれとのこと。リガといえばミッシャ・マイスキー、ギドン・クレーメルを輩出している地である。彼女は如何にと思ったら、やはりうまい。第1楽章が始まっても、安心感溢れる演奏で 聴衆も納得。第2楽章のAdagioはとても綺麗。綺麗だけかと思うと第3楽章でテクニックを披露するなど、すごいヴァイオリン協奏曲に仕上がった。尚、この曲が終わったの は17時前であり、曲が多過ぎたことは現実的になってきた。電車時間の為か、17時で退席する聴衆もいたが、仕方が無いのだろう。

 4曲目のモーツァルト交響曲第40番が始まったのは17時を回っていた。マエストロ井上は時間超過にも拘わらず、丁寧に指揮を開始した。第1楽章Molto allegroは、OEKの安定感溢れる演奏 であった。しかし、第2楽章で音のバランスが狂った。これは第1ヴァイオリンが音量を上げたことによりすぐ解消した。即ち、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン を舞台左手と右手に分けたためバランスが崩れたのであり、やはり分けずに舞台左手に並べて配置すればお互いの音量を敏感に察知でき、問題無かったのではと思う次第であった。尚、第3楽章Menuetto, Allegretto のなかのホルンのデュオで少々違和感があった。モーツァルトにはホルン協奏曲は沢山ある。コンサートの演目に加えてもらい、腕を磨いて欲しいものだ。第4楽章Molto allegroは好演であった。 ただし、演奏終了時刻は17時25分であり、やはりアンコール曲の演奏はできなかった。

 全4曲を聴き終えて、誰が次期音楽監督になるのか分からないが、兎に角マエストロ岩城時代の終焉を実感した。 南無阿弥陀仏。


Last updated on Sep. 18, 2006.
2006年コンサート・レビューへ