3月22日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第198回定期公演PH
指揮:岩城宏之、チェロ:堤剛、石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 先日、4管編成オーケストラであるロンドン交響楽団を聞いたが、人間欲張り なもので、今度は室内管弦楽団も聞きたくなる。しかも、岩城宏之マエストロが オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を指揮をするのは久しぶりでもあるし、ブラームス交響曲完結編としてロマンティシズム溢れる 第3番を演奏するとのことで、コンサートに出掛けた。

 最初の曲は、岩城宏之マエストロ得意の現代音楽、武満徹「地平線のドーリア」であった。面白い曲で静かに聞きたいのだが、如何せん 聴衆のノイズが邪魔をして余り集中できなかったのは残念。もう一度(生憎このCDは持っていないが)静かに聞きたい感じがした。 2曲目はソリストとして堤さんを迎えたドヴォルザークのチェロ協奏曲であった。この曲をOEKが 演奏するのは初めてと記憶しているが、弦を10-8-6-4(5)-4と大型に構成してあった。すなわち、この曲は大型オーケストラ用なのである。 従って、堤さんがいかに大型オーケストラと演するかと思っていたら、堤さんの陶酔感溢れる熱演に感激。岩城宏之マエストロとは 旧知の仲なのであろう。息もぴったりで、素晴らしい演奏であった

 休憩を挟んでブラームスの交響曲第3番が始まった。第1楽章のイントロでは第1ヴァイオリンの高音が埋没気味で、これを解消しようとして 第1ヴァイオリンがファナティックに演奏した。このため、ロマンティシズムではなく、ヒステリックに聞こえた。この原因は、チェロ協奏曲の弦構成10-8-6-4(5)-4 を8-6-4-4(5)-4に縮小し、しかもロンドン交響楽団の場合と同じ舞台左手にチェロ、即ち第1ヴァイオリンの横にチェロを配置したためである。 この結果、第1ヴァイオリンはファナティックになったと思われる。これは、ロンドン交響楽団のケースと同じで、その後解消される。解消の原因は、 ロンドン交響楽団の場合はピアノが移動したためと思っていたのだが、そうではなくチェロが横にきたため第1ヴァイオリンの音の厚み(第2ヴァイオリンが横にいない) が無くなり、チェロの音が曲想を重くした。これを察知したチェロ奏者が音量を落とし、違和感が解消された。OEKの場合は、チェロが横にきたため第1ヴァイオリン がファナティックになった、これを察したチェロ奏者が音量を小さくして、第1ヴァイオリンも冷静になったと考えられる。すなわち、両演奏会とも 第1ヴァイオリンの横にチェロを配置したことが原因である。この構成がトレンドなのかもしれない。しかし、マエストロは慎重にバランスを考慮して欲しいものだ。 第2楽章以降はロマンティシズム溢れる好演奏だったと思う。

 アンコール曲であるブラームスのワルツという曲は、聞いたことが無かったが、単純な中に洒落っ気溢れるワルツであった。以上のようなコンサートであった訳だが、 この10日間程でブラームス、ドヴォルザーク、マーラー、ショパンを聞いた。地方都市でこのような「文」の贅沢ができるのもOEKおよび石川県立音楽堂設立のお陰である。今後、石川県はドーム球場、もしくは屋根付きサッカー球技場を是非完備し、 「武」の充実にも傾注して欲しい。我々も4月9日における ツエーゲン金沢の最初の試合に是非応援に行こうではないか。


Last updated on Mar. 22, 2006.
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