1月8日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第193回定期公演PH
リーダー:マイケル・ダウス、ソプラノ:メラニー・ホリディ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 年末年始、TVで多くのクラシック番組を見た。ベルリン・ フィルのヨハネ受難曲、ウィーン・フィルのニューイヤー コンサート、イスラエル・フィルのブラームスの交響曲第2番、2005年 ザルツブルグ音楽祭の歌劇「椿姫」等である。 これ等のなかで強烈な印象を受けたのは、少々エロチックではあったがウィーン・フィル演奏、アンナ・ネトレプコ主演 の歌劇「椿姫」であった。本年のザルツブルグ音楽祭には是非とも行きたいと思い、昨年末チケットを申し込んだのだが、 問題はTVに映し出された聴衆が着ているフォーマルウェアである。これを新調しなければならないのかと思うと、 行きたくもあり、二の足を踏みたくもなる光景であった。

 TV観賞も結構であるが、やはりコンサートホールで聞くのには適わない。 モーツァルト・イヤーである本年も良いクラシック・コンサートに恵まれることを祈念し、オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のニューイヤーコンサートに出掛けた。開演前 交流ホールでは横笛の演奏があり、ロビーにおけるプレコンサートでは綺麗な木管五重奏の演奏があり、新春ムードに 溢れていた。

 最初の曲は、事前のプログラムではモーツァルトの歌劇「後宮からの逃走」序曲であったが、当日のプログラムではベートーヴェンの 歌劇「フィデリオ」序曲に変更されていた。「後宮からの逃走」序曲は確かに最後が分かりにくい曲であるが、モーツァルト・イヤーの本年 最初の曲はやはり「後宮からの逃走」で始めて欲しかった。しかも、「フィデリオ」序曲ではホルンのミスがあったため、余計そう思うのである。

 2曲目はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲であった。実は、車で金沢駅西口の駐車場へ向かっているとき偶然NHK-FMで チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を放送していたが、第1楽章の最初の部分は例の悪臭ぷんぷんする演奏であった。 マイケル・ダウスはどう演奏するかに興味があったが、さすが英国紳士だけあって上品に演奏したのには関心。但し、 違和感のある箇所があり、少々心配になったが、第1楽章が終わったときチャイコフスキーのピアノ協奏曲で2回、 ヴァイオリン協奏曲で2回合計4回目の第1楽章終了時の拍手が起こった。聴衆側の不勉強であり、なんとも恥ずかしい限りである。 もっとも、OEKの演奏にも問題がある。第1楽章のフィナーレはffではなく、fで終わって欲しいものである。但し、 これで雰囲気が変わった。皮肉にもその後マイケル・ダウスはかえって調子が出てきた ようで第3楽章などは迫真の演奏であり、第1楽章の後の拍手が良かったのかと思うほどであった。

 休憩を挟んでからはウィンナーワルツとメラニー・ホリディのソプラノ・ソロであった。ウィンナーワルツでは「美しき青きドナウ」 のイントロにおけるホルンソロにミスがあった。金管楽器の出だしがpまたはppのとき、演奏するのは難しいのかもしれない。私は、 ソロの場合は無理にppにせず、ppをpに、pをfに演奏してもいいのではないかと思う。要するに、チャイコフスキー の協奏曲の第1楽章の終わりを除いて、遠慮せず、伸び伸びと演奏すればいいと思う。ソプラノ・ソロでは、 個人的にはレハールの喜歌劇「メリー・ウィドウ」よりの「ヴィリアの歌」が良かった。しかし、例のオッフェンバック の「カンカン」で会場が盛り上がっていた。これも一興である。

 以上のようなコンサートであった訳だが、チャイコフスキーのピアノ協奏曲とヴァイオリン協奏曲の第1楽章終了時の拍手 がまだ続いている。いつまで続くのか心配になってきた。聴衆のレベルアップを切に望みたい。


Last updated on Jan. 08, 2006.
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