11月11日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第190回定期公演PH
指揮:エルヴェ・ニケ、メゾソプラノ:白井光子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 最初はモーツァルトの交響曲第31番パリであった。早いテンポで小気味いいモーツァルトであり、特に第2楽章のアンダンテは指揮者がフランス出身のニケという こともあって、綺麗で、しかもフランス風モーツァルトを堪能できた。

 2曲目のマーラーの交響曲大地の歌であるが、第1楽章ではオーケストラの音量とテノール クリストフ・プレガルディエンさんの声量がマッチせずどうなることかと思った。しかし、第2楽章、第3楽章あたりから マエストロ・ニケがオーケストラの音量を小さく指揮するようになった。この音量のミスマッチはシェーンベルク、リーン編曲版は第1ヴァイオリン1、第2ヴァイオリン1・・・の 編成であるのを、マエストロ・ニケは第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン4・・・に変更したためであろう。従って、第2楽章から歌手の調子が出てきたのも加わって、 綺麗に聞こえるようになった。圧巻は最終の第6楽章であり、オーボエ、フルート、第1ヴァイオリン、チェロのソロとメゾ・ソプラノ 白井光子さんの歌がマッチし、マーラーの歌曲 らしさが滲み出た、名演奏であった。

 以上のようなコンサートであった訳だが、要望が2つある。1つはプログラムの曲目解説で各楽章のテンポ表示が消えていることである。楽章中にテンポが変わる場合はアンダンテ -ラルゴ等と書けばいいのであって、これが不可ならば最初のテンポのみを是非記載して欲しい。2つ目は、本日のような外国語による歌曲の場合、歌詞の表示がないと何を歌っているのか 分からないことが多い。字幕表示にするか、それが出来ないときはプログラムに必ず歌詞を入れて欲しいものだ。

 最後に、マーラーによる交響曲大地の歌の第6楽章後半部に歌われたドイツ語約の原詩である王維『送別』を、最上:「マーラーの 《大地の歌》─ 唐詩からの変遷 ─(第4〜6楽章)」,香川大学経済論叢,Vol.76-4(2004-3)から引用しよう。

王維『送別』

下馬飲君酒  馬より下りて 君に酒を飲ましむ
問君何所之  君に問ふ 何の之(ゆ)く所ぞ;
君言不得意  君は言ふ 意を得ず
歸臥南山陲  南山の陲(ほとり)に帰臥(きぐわ)せんと
但去莫復問  但だ去れ 復(また)問ふこと莫(なか)らん
白雲無盡時  白雲 尽くる時無し

馬から下りて,君に別れの酒をついであげよう。
そして君にたずねよう,どこへ行くのかと。
君はいう,世にあって志が得られない,
帰って南山のふもとに隠れ棲むのだと。
では行きたまえ,もう何もたずねまい。
山の中には白雲が悠々と流れて,尽きることはないのだから。


Last updated on Nov. 11, 2005.
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