9月4日オーケストラ・アンサンブル金沢第186回定期公演PH
指揮:金聖響、ヴァイオリン:川久保賜紀
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭にレジデンス・オーケストラとして出演した凱旋コンサートであるオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)2005-2006年最初の定期公演である。 今回は岩城マエストロが肺腫瘍の手術だそうで、金聖響マエストロが代わりに指揮することになった。従って、岩城マエストロと金聖響マエストロの意図(フィロソフィー)が入り混じったコンサートとなった。 最初に、この前亡くなったOEK指揮者榊原さんを偲んでバッハのアリアが演奏された。これは良く聴く曲ではあるが、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭参加の成果が 十分発揮された好演奏。シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭では透明な音質で賞賛されたとの報告がなされたが、嘘ではなかったようである。 その後、ロッシーニの序曲が二曲演奏されたが、これは岩城マエストロの意図を金聖響マエストロが鵜呑みしたものであり、1曲でよかったのではないか。何故ならば、2曲目のウィリアム・テル序曲は 良かったが、1曲目のブルスキーノ氏序曲は平凡で、省略した方が良かったと思われる。

 次に、ラロのスペイン交響曲では、第4楽章と第5楽章の間を続けて演奏すればよかったのに、金聖響マエストロが少々間をとりすぎた関係か、第5楽章に若干難点があった点を除けば、ヴァイオリン・ ソリスト川久保賜紀さんの演奏は綺麗であった。

 休憩後は岩城マエストロが予定していなかった曲で、金聖響マエストロが急遽プログラムに取り入れたシューマンの交響曲第3番ラインである。この曲はプレトークで池辺晋一郎さんも言っていたように、 溌剌さと哀愁を兼ね備えた曲であり私も期待していたのだが、第1楽章のイントロが少々硬すぎた。この原因はスタッカートにあったのか、楽器自身の問題なのか分からなかったが、気になった。その後は問題なかったが、 第4楽章では折角トロンボーンが3管でもコントラバス奏者が2人のため、低音が聞こえず、厳粛さに欠けるコラール風楽章となってしまった。この原因は、トロンボーンのみ3管編成ではいかに金聖響 マエストロであってもバランスの取れた交響曲を演奏することは不可能。金聖響マエストロには60名規模のオーケストラを伸び伸びと振らせて見たい気がした。

 というコンサートであった訳だが、結論から言うと、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭で賞賛された透明な音質を生かすためには、室内管弦楽団で演奏できる曲を選択すること。 本日のような3管編成の交響曲を演奏するには、トロンボーンだけでなく全体のバランスを考えて60名規模のオーケストラとして演奏して欲しい。即ち、OEKを発展させて60名規模のオーケストラとし、 コンサートでは、メンバーの内40人程度で演奏できる室内管弦楽を必ず含む形式に出来ないものかと痛感する。


Last updated on Sep. 04, 2005.
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