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武蔵円明流・宮本武蔵 │ |
「『掛声』武道研究論考」 |
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「『掛声』武道研究論考」 谷口 覓 著
武蔵円明流の掛声は、無声無言です。
兵道鏡円明流や武蔵円明流では、仕合直前の打太刀と仕太刀が剣を構えた自護体のとき、大声を出して敵を威嚇しそのあと打突斬と同時に掛声を口中に発するが、相手に聞こえないように微声掛声している。
掛声を自得するには3つの段階がある。
初心の第1段階では、大きく息を吸いこんで意識して打突と同時に大声をかけますが、長く錬成すれば体力を早く消耗するので、自然に自ずから大声から中声となったり低声としたり調整することを自得するようになります。 第2段階では、意識する掛声でなく、自ずから自然発声となることを自得するようになります。
第3段階では、掛声は口中に含む自然発声が多くなり更に進めば無声無言の境地に近づくことになります。
剣術、居合術はあらゆる状況に対応できる柔軟な心と体を持つことが大切です。常に平常心を維持する、そのために怒声を発する掛声は出しません。又掛声を出さない方が、息を吸わないので、一の太刀、二の太刀、三の太刀に確実に生かされます。
錬成で大切なことは、
息の出し入れ 滑らかなるや
気息充ちたるや
掛声力みすぎあらざるや
理に外れあらざるや
伝統に及び せざるや
「宮本武蔵剣道皆伝書付」 寛永15年(1638年)11月
声をかくるという事
掛声は常にかけてはならない。打合うとき、敵よりも先にかけるとき、打合い同時のとき、打合いたるあとのときなどあるとし、掛声は大声でなく口の中にかけて、人に聞こえないようにかけると説いている。更に夜の戦闘では、掛声をかけないと説いている。
「五輪書」 三つの声という事「火之巻」 正保2年(1645年)
3つの声として述べられている。
1.打突斬の前に出す。構えたときに発する。敵を動かす声。
2.打突斬と同時に出すことはないが、腹の底より口に含んで出す微声である。拍子にのる声はある。
3.打突斬のあとに意識して大きく強く声を発する。勝をしらせるときの声。
宮本武蔵玄信の舟島の決闘時の掛声は、口中から木刀に伝わってその心(シン)に宿っている。
「掛声とは何か」
「剣法略記・幕府講武書」によれば「心に求めずして、時により事の触れて自ずから出る声である」と説いている。即ち自然発声である。自然発声と意識的、意図的な発声を区別している。正確には、構えたときの掛声と打突斬と共に発する掛声の2種がある。日本剣道形では、掛声は「ヤー」「トー」の2種である。
「剣法至極伝・木下寿徳」では「技位の進み調子拍子を学ぶ位置に至れば(中略)、此の位置に至れば自然に黙するに至るなり」としている。
掛声は大声から低声へ更に微声へ更に無声へと進歩し、意識掛声から自然掛声へ更に口中掛声となっていくのが法則である。
●弱者の掛声は高く、そのあとは精気が続かない。
○達人の掛声は、低くそのあとの精気は衰えない。
「流派剣術の『発声』および『掛声』」
(出典:「剣道における『掛声』の史的研究」 榎本 鐘司)
【小野派一刀流】自然発声
【新陰流】自然発声
新陰流の伝書は、技法・心法にわたって詳細に述べている。打突斬の強さは述べていない。
「新陰流兵法心持」…「わが身をすて、一心をたのみにしかくるを、当流にきらふ也」
柳生三厳「月の抄」「唱歌の事」の掛声…「唱歌はいき也。いきあいを心得べし。敵小拍子にして、拍子とられざる時、ヤッと声を掛ける心持にして、いきこむればうきたってかるし、声をかくるによりて拍子あひ乗るもの也」
【新当流】自然発声
【神道流】自然発声
【竹之内判官派】無声無言
【北辰一刀流】無声無言
「北辰一刀流兵法初目録聞書」掛声否定…「間に髪を入れぬ所により計り、勝負する事故、当流には掛声は用いぬ也。掛声すれば心気散乱…」
【鹿島新当流兵法自観照】
1.五種類の発声掛声
[イ]下より上る音、下より登る音にしてイヤという
[ヤ]人に呼びかける音、向ふへ渡る心持
[ハ]おこり(発起)して見て、直ちにハと打も切るもよし
[ト]自ら留る音
[エ]自ら引納る音、エイ(曳)は「打納ル敵も実伏する所の位に用いる掛声なり」
2.掛声は有声、無声、微声
3.掛声は呼吸法により自然発声、意識的発声、意図的発声
4.有声
[イヤ]意図的、意識的
[エイ]意図的、意識的
[ハ]微声、自然発声
[ト]微声、自然発声
5.ハ、トを口に含んでしまうと無声となり、一種の呼吸法となる。
6.打突の前の掛声は、イ、ヤ
7.打突の後の掛声は、エイ(微声)、エ(微声)
8.「示現流声之事」東郷重位
然れば兵法に声をかくる事一儀也。
息を空に皆かへすべからず。
息をつめて半分づつ残して懸かるべし。
是即ちあうんの二字をたもつ身成りが故也
呼気を腹につめて、腹圧を高めるようにして打てば「つよく当たる」ことになる。
(最終更新:070608)
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