My Pussy

「あれ……? みんな、何やってるんだ?」
 ウルト村に顔を出したアヴィンが見たのは、長老の家の前で忙しそうに荷物を運ぶ村の人たちだった。それぞれが大きな荷物を抱えている。
 首を傾げながらも近づいていくと、籠を抱えたマイルが気づいて声をかけてきた。
「おはよう、アヴィン。もう足は大丈夫?」
「ああ。もうほとんど痛みはないよ。あと一息で完治ってとこかな」
 軽く足をたたいてみせるアヴィンに、よかった、とマイルは安堵したような笑みを向けた。
 

 一週間前、アヴィンは足に大怪我を負ってしまった。一緒にいたマイルを、突然の魔獣の攻撃からかばってのことだったが、受けた傷は予想外に深かった。一人で歩くこともままならず、可哀想なくらい青ざめてしまったマイルに肩を借りて、なんとか村まで帰ってきたのだが……・
 ユズ姉によれば、その時のアヴィンは死人同然だったらしい。事実、村についてから数日間のことはアヴィン自身ほとんど思い出せないし、唯一覚えているのは、泣きそうな顔で自分の手を握るマイルの顔と、その手の温もりだけだった。
 

「本当に、マイルには心配かけちゃったな。悪かった」
 その時のことを思い出して、ぺこりと頭を下げたアヴィンに、マイルはそんなことないよ、と手を振った。
「怪我はもうすぐ治るんだろう? それに……本当は僕が謝らなくちゃいけないんだよ。僕がもっと気をつけてれば、こんなことにはならなかったんだから」
 結局はお互い様なんだな、とアヴィンは苦笑し、マイルが抱えている籠をのぞき込んだ。
「ところで、これは一体何だ?」
「これ? 長老の知り合いが持ってきてくれたんだよ。この間、野菜をわけてあげたお礼だって。かなり量があるから、みんなで運んでるんだよ」
 そう言って、マイルは持っていた籠の中身を見せた。中には、たくさんの果物が詰め込まれている。
「ふうん。重そうだな、手伝おうか?」
 アヴィンが荷物に手を伸ばすと、マイルはあわてて首を振った。
「ダメだよ! せっかく怪我が治りかけてるのに、悪化したらどうするのさ」
 それだけで悪化するわけないだろう、とアヴィンは反論したかったが、マイルの瞳は真剣だった。その瞳の強さに、アヴィンは渋々頷いてしまう。
「……わかったよ。その仕事が終わるまで、おとなしく待たせてもらうよ」
 どうせすぐ終わるだろうし、と考えて、近くの樹の下に座り込んだアヴィンだったが、その予想に反して、なかなか作業は終わらなかった。マイルはみんなと楽しそうに話しながら荷物を運んでいる。一人ぽつんと樹の下で待っていたアヴィンは、なんだか除け者にされたような気がしてきた。
 ……それは単に、マイルが笑顔を向ける相手が自分じゃないことが悔しかっただけかもしれないけれど。
 アヴィンはそんな気持ちを振り切るように勢いよく立ち上がると、荷物を運んでいるマイルのそばへ近づいた。
「アヴィン? どうしたの?」
 首を傾げるマイルの手からアヴィンは強引に荷物を取り上げ、無言で地面に下ろす。そして突然のことに呆然とするマイルの腕をつかみ、すたすたと歩き出した。
「ちょっと、アヴィン!」
 いきなり引っ張られてマイルは転びそうになってしまったが、それでも、アヴィンの腕を引く力は変わらない。何とか歩調を合わせながら、マイルは必死にその後をついていった。
 ようやくアヴィンの足が止まったのは、見晴らし小屋までたどり着いてからだった。
「一体どうしたんだい?」
 手を離したアヴィンに、マイルは弾む息を整えながら訊ねた。が、アヴィンはそれには答えずに、マイルの額に自分の額を押しあてた。
「少しだけ……いいか?」
 何を、と聞き返す間もなく、アヴィンはマイルの身体に腕を回した。
「ア……アヴィン?」
「黙って抱きしめればいいんだよ。……俺が甘えたいって言ってるんだから」
 口調はぞんざいなものだったが、抱きついてくる腕の力は強い。言われるままにその身体を抱きしめたマイルは、しばらくして、くすりと笑った。
「何だよ?」
「ううん。いつもこんなに素直だったらいいんだけどな、と思っただけさ」
「悪かったな。どうせ俺は素直じゃないよ」
 ふてくされたようなアヴィンの台詞にくすくす笑いながら、マイルはアヴィンの耳元で囁く。
「そんな風に拗ねる君も可愛いんだけどね」
「お前……!」
 真っ赤になってにらみつけてくるアヴィンの顔をのぞき込み、マイルはいたずらっぽく微笑んだ。
「可愛いって言葉が嫌なら、綺麗、とでもしておこうか?」
「……もう、どっちだっていいよ」
 呆れたようにため息をついたアヴィンは、赤くなった顔のまま、マイルの首に腕を回した。
「そのかわり……」
「ん?」
 穏やかに聞き返すマイルの瞳を、アヴィンは真っ直ぐに見つめた。
「今夜は……ずっと俺のそばにいるって約束してくれよ」
 
 


来夏様から頂きました。
甘えんぼでとっても猫なアヴィンSSです。
(思わず壁紙も猫さがしてきてしまった(笑))
独占欲がめっさかわいーですね。

今夜はって君が倒れている間
きっとずっとマイルは君についていたんだよぉ
よく憶えていなくて残念ね(笑)。
でも、マイルにおいしいからいいか…(爆笑)
拗ね方もストレートなのがらしくていいです〜。
 

来夏様めっさかわいいSSありがとうございましたー\(≧▽≦)/

(2001.8.24 ほむら)