翌朝
 

何時ものように

マイクロトフは 私の部屋へとやってくる
 

「おはよう、カミュー。」
 

何時もと 変わらぬ挨拶

何時もと変わらぬ・・
 

澄んだ藍色の瞳
 

ずきり・・ と

 胸を刺す 痛み
 

それに 気が付かない振りをして
私も 何時もの笑顔を返す
 

そして
 

一晩中 握り締めていた銀色の鍵を
そっと 彼の前に差し出す
 

「ここにあったのか!」
 

言いつつ 嬉しそうに鍵を受け取る様を
複雑な思いで見つめながら

心にやましいことのある私には
何も言うことができない
 

そのまま・・

彼が鍵をポケットに収めてしまえば

それで 終わり・・
 

・・の はずだった
 

「・・なぁ、カミュー・・・」
 

突然の呼びかけ

常ならぬ声色
 

躊躇いがちの 彼の様子に
一瞬 心臓が止まる
 

まさか・・ 昨夜 の・・・?
 

しかし

そんな不安は 続けられた言葉によって
彼方まで吹き飛んでしまう
 

「この鍵、お前が持っていてくれないか。」
 

何・・だって・・・?
 

それは喜ぶべきことなのに
怯えた心は なかなか正確に働かない
 

「実は・・鍵をなくしたのは初めてではないのだ。」
 

何故・・私に・・・
 

罪の意識が その言葉を
素直に理解させようとしない
 

「合鍵を、いつも執務机の引き出しに入れていたのだが
昨日無用心だと言われて、な・・」
 

彼は ぽつりぽつりと
言い難そうに 照れくさそうに話す
 

「カミューが持っていてくれると安心なのだが・・」
 

期待と不安の入り混じった視線を向けて・・

咄嗟に応えることもできず
ただ 呆然と見つめている私に

再び 問うてくる
 

駄目だろうか?
 

ああ・・

そんな瞳を向けられて
否と言えるはずがないだろう
 

それでなくとも

本当は手放したくなかった鍵・・
 

何度 このまま返さずにおこうと
考えたか知れない
 

葛藤のままに 夜が明けて
やはり 潔く返そうと思った矢先に・・
 

再び手の中に戻ってきた

 銀色の鍵
 

本当に・・ 良いのかい?
 

私は・・
 

しかし その先を告白する勇気はなかった
 

鍵を受け取った途端
屈託のない笑顔を見せるマイクロトフ
 

澄んだ藍色の瞳に宿るのは
 

信頼と愛情の光
 

私は 許されたのだろうか・・?
 


 

試練は これから始まるのだ
 

お前の想いに応えるために
 

お前を

愛するために・・
 

未だ 不安定な心を隠しながら
私は微笑む

精一杯の優しさを込めて
 

顔を赤く染め
慌てて視線を逸らしてしまう恋人は

だから 私の本当の姿を知らない
 

でも・・ 今は それで良いのだ
 

何時の日か・・

きっと 心から微笑みかけるから
 

どうか その日まで・・
 

マイクロトフ
 

澄んだ藍色の瞳を

私に向けていてくれないか
 

全てを浄化する 清らかな・・
 

その輝きこそが 心に巣食う
欲望という名の浅ましい獣を封じ込めておける
 

唯一の鍵なのだから・・
 
 


 

鍵を かけよう
 

心の・・ 奥深く・・・
 

日々 勢いを増し
荒れ狂う 浅ましき獣を

もう 私ひとりの力では抑え切れない

だから・・
 

鍵を かけよう
 

お前がくれた

淡く輝く 銀色の鍵
 

それは 信頼と愛情の証

温かくて 優しい・・
 

その鍵で
心の奥底に しっかりと錠をかけて

二度と 醜い欲望が溢れ出さないように・・
 

そして お前に贈ろう

愛の言葉を
 

何度も 想いを込めて・・
 

やがて 浅ましい獣が死に絶え
優しい愛情だけが残る

その日まで・・
 
 

マイクロトフ

愛しているよ
 
 

END




(ぐりん様コメント)
結局、問題の鍵はカミュー様の手に収まったようです。(笑)偶然にもマイクの部屋の鍵を手に入れたら・・
絶対!夜中に忍んでいく・・と思うのは私だけでしょうか??そして、赤面するほど夢見がち?なカミュー様。
どうも、マイクのことを過剰に神聖化してしまうところがあるようで・・いざとなると手も足も出ないようです。
この辺りが、二人の仲がなかなか進展しない原因のひとつであるような。決して、マイクの鈍さ?ばかりではなく・・。


えへへへへへへ〜(不気味)
ありがとうございます〜。
キリ番のお願い聞いてはテーマ『夜這い』
でございました…。
これものすごい会社修羅場の時に頂いたもんで
夜中に仕事忘れて鼻血吹いてました。
地獄に天使!ありがとです。んでアップ遅れて申し訳ないです〜。

ちなみに期間限定チャットではじめてお会いした夜に
ぶちかましたとんでもないリクエストだったと記憶しています。
えーだってその時の話の成り行きがさ〜(責任転嫁)
こうひくことは思いも寄らないのに進むこともできないような
カミュー様がおいしすぎます。そしてマイクロトフがかわいーのだ。
ものすごい追加リクまで聞いて下さったぐりん様…(ハート)

本当にありがとうございましたーーー\(≧▽≦)/

(2002.4.28 ほむら)