「・・カミュー、もう・・止せ。」

「何を・・?」
 

吐息のかかる距離で

知らず知らず 潜められる互いの声
 

「ここは・・戦場だ。」

「だから・・?」
 

見交わす瞳の中に燃えるのは

紛れもない 欲望の炎
 

言葉とは裏腹に じわじわと疼き出す身体
 

血の誘惑
 
 

「・・駄目、だ。」

「何故・・?」
 

絡む吐息も 次第に熱さを増していくようで・・

俺の意志を ぐらぐらと揺らす
 

今 すぐにでも

瞳の前の 不敵な笑みを浮かべる口唇に
 

噛み付いてしまいたい!
 

唾液を啜り 舌を絡ませて・・
 

しかし それを認めるのは
この傲慢な男に屈するようで 我慢がならない
 

「・・もう、陣に戻らねば・・」
 

もっともらしい言い訳を口にして
カミューの胸元に手をつき 押し返そうとするものの

その身体は 微塵も動く気配を見せず
 

言葉は・・ 俺を弄り続ける
 

「本当に・・そう、想っているのか・・?」
 

残酷な口唇は 僅かに開かれたままで
ちらりと覗く舌先が 下唇を舐める

まるで 捕らえた獲物を前に
舌なめずりするような

その仕草
 

「・・っ!」
 

濡れた口唇は艶やかに光り

危うさと淫猥さに満ちて・・
 

「マイクロトフ」
 

呼びかけられ

ごくり・・ と 思わず咽喉が鳴る
 

すうっと細められる 琥珀の瞳

頬を彩る 赤の・・
 
 

・・・・限界・・だ・・!
 
 

「・・・は・・」
 

震える吐息が
とうとう 口をついて漏れた
 

勝利を確信した男は 瞳に赤い炎を宿して

悠然と命じてくる
 
 

・・・言え と
 
 

ああ やはり・・

全てを見透かされている
 

この場所に足を踏み入れたときから
カミューは 気が付いていたのだ

何時にない野生の嗅覚で
俺の中にある欲望を 敏感に嗅ぎ取って・・
 

俺の敗北も

その瞬間 決まっていた
 

逃げ場を失い 全てを悟った俺は
とうとう 男の前に本音を晒す
 
 

欲しい・・・
 
 

たったそれだけの言葉を発するのにも
掠れ 震える声に悔しさを覚えて

胸元を押していた手で
赤の騎士服を掴んで 引き寄せ・・
 

きつく瞳を閉じる
 

口唇にかかる吐息には ふっと笑う気配
 

そして・・
 
 

ようやく手に入れた口付けは
 

甘く・・
 
 
 

血の味がした
 
 
 

END



 
 

夏のチャット企画で私の好きなシチュエーションで絵を描いたら
それにSSをつけて下さるという太っ腹なぐりん様のお言葉に
あまえて…かいてもらっちゃいました\(≧▽≦)/
えび鯛、えび鯨(笑)みてくださいよもーこの雰囲気。
この微妙な力関係が!ちょっと獲物状態なマイクも…おいしすぎます。
血の匂いと人のいないわずかな空間。
そこにある異常性と飢えとこの甘い雰囲気。
鼻血鼻血〜激萌えデス!!
ああ、恐怖の朝チャやってよかったです。
 

ぐりん様!本当にありがとうございました〜\(≧▽≦)/

(2001.11.18 ほむら)