久しぶりにお前より先に目を覚ます…
本当に、こんなことは何年ぶりだろう。
お前の寝顔は夜の明かりの中でなら
当たり前のように見ているけれども、
朝のやわらかな光の中ではずいぶん違って見えるね。
覗き込んで、子供っぽい寝顔に我知らず笑みがこぼれる。
やっぱりおまえは夜に世界を照らす月や星の光や
ランプのような人口の光より朝の白い光の方が似合うね。
似合うと言っても、今はちょっとだけ物足りない。
お前の瞳が見えないからだね。
意志の強いお前がお前であることの証のような瞳こそ
朝の始まりにふさわしいような気がする…
いつも起こされて、朝一番に見るのが
それだからかもしれないけれども…。
でも、その瞳が開くときはこんな二人の時間の終わり。
お前は着替えてこの部屋から大急ぎで出かけてしまうだろう。
もし、起きてもそのままここにいてくれるなら
私はよろこんで起こして上げるのに。
目を覚まして?
こっちを見て。
目を覚まさないで?
そのまま寝ていて欲しい。
必ず訪れる夜明けを待つ贅沢な時間。
だから布団を直してやるついでに
ちょっとだけその腕で影を作る。
夜が明けてしまうのを少しだけ遅らせるように…。
マイクロトフ…おまえの顔に朝日がかからないように…
朝の光に惹かれるように目覚めてしまわないように…
誰の物でもない顔をしてここから出ていってしまわないように…
今少しだけでいい…
お前の夜が明けてその瞳で一番にこっちを見てくれる瞬間。
その瞬間を待つ夜明け前の時間を…
私だけに与えられた時間を…
ほんの少しだけ長く…