親愛なる隣人

「とりあえずこちら…」

といわれて通された部屋は炎の英雄の隣の部屋だった。
そして何故かパーシヴァルと同室だった。
 

「ちょ、ちょっとどうして俺達がこんな大事なところに…」

こう言えたボルスは少し大人になったのかもしれない、とパーシヴァルがこの場にいればほんの少し同僚の成長に心の中で拍手しただろう。
とりあえずダブルベッドに文句はいわなかったし、クリス様の近くがいいとは言わなかったから…。

そのクリス様は船の中で、確かに部屋の質、待遇を考えると部下の立場としては身が縮む思いがする。
ボルスの言い分ももっともで…。

「ああ、クリスさんの推薦なんです」
相手にしたのはヒューゴ。
ちょこっと首を傾げる様子はまだまだ子供の雰囲気を宿す炎の英雄ヒューゴはさらりとボルスの一番大事な主人の名前を口にした。

「クリス様の?」

普通ならここで蛮族があの方の名前を軽々しく口にするなとでもいいそうなボルスだが、とりあえずヒューゴは未だボルスの目には守護対象年齢の枠内にある外見をしているためか、ボルスの態度も大人しい。こうみえて女子供には手を挙げないというか、たぶん女子供は蛮族でも一般市民とほとんど変わらない意識を持っているらしい。彼から突っかかることはなかったし、多少の無礼も気にされないところがある。
ヒューゴはそれを教えられていたので、とりあえず子供のようににっこり笑って話を続けた。

「そう、くりすさん。あそこ、炎の英雄の部屋で奥が城主の部屋でしょう?とりあえずだれか気配に聡くて臨機応変に対応できる強くてそこそこ素早い人を護衛として入ってもらうことになったんだ。ぼくがグラスランド人だからできればクリスさんかゲドさんのところの人ね」

そうして内外に一時的とはいえ結束の…ひいては覚悟を示すことになるのだ。
ボルスは一つ頷く。

「でもね、ゲドさんのいうには傭兵は仕事中はいいがそれ以外はかなり使い物にならないっていうんだ。そうやってバランスを取っているんだって。常にい緊張状態でも当たり前の環境なら騎士の方がいいだろうって。だからクリスさんが、とびきりの剣の腕で行動判断も早く、なにより信用出来る人って二人を推薦してくれたんだよ」

「クリス様が…」

ボルスからすれば感激しきりである。
そんなことを言われた日には、たとえそれが憎い蛮族の長であろうとも体を張って守って見せますな心にもなろうというものだ。
もちろんそれが無くてもこの状況、守ってみせるのは当然のことで、その行動と心に偽りはないが気合いの入りようが違うというものだ。

「なれ合うつもりはないだろうけど、ことが終わるまでよろしく」
ヒューゴの覚悟はすでに英雄としてのそれだからこうやって手を差し出すのには、痛みはあってもためらいはない。
「もちろん!この剣の腕誰かに引けを取るものでは…」
ボルスももちろん覚悟は決めたのだ。

「ヒューゴさん!…それとゼクセン6騎士のボルス殿ですね。お部屋はどうですか?」

今にも宣誓の一つもかましそうな背筋の伸びる雰囲気をおどおどした、それでいてやさしい声が一蹴した。
この雰囲気、この場で、引きながらもきっちり声をかけてくるのはもちろん城主トーマスである。

「うん、石の壁にはまだ慣れないけど、いいところだ」

ヒューゴが、このゼクセンの友人に笑いかける。

「そう、よかった。ボルス殿は?」

「全く問題がありません」

「よかった、ちゃんとしたダブルベッドがあって開いているのはあの部屋だけなんで」

「はい?」

「あの部屋だけなんですよ」

「い…いえそうでなくてダブルベッドが…」

「ええ、クリス様があの二人には必要なものだからって。そうすればちゃんとパーシヴァル殿も部屋に帰ってくるようになるだろうって。気に入らなければ言って下さいね。すぐには無理ですが、次の予算でどうにかして…」

つんつん、一生懸命話すトーマスの肘をヒューゴがつついた。

「あれ」

ヒューゴが指さした先はボルスで…ボルスはすでにトーマスの言葉は耳に入っていなかった。
はじめの方の衝撃の言葉にお坊ちゃんはもろくも灰になっていたのだった…。

「トーマスさん…そのホントのこと言っちゃ駄目だって」

「そうだったんだ〜」

「クリスさんにだめって言われてなかったっけ?」

「そうかもしれない。でもいきなり人数がふえたから…」
 

目の前の少年二人は顔を見合わせると、あくまでのんきに可愛らしく首を傾げてごめんねをした。

 



 
 

檄短い。バカネタ。クリス様何者?
そういえばヒューゴがクリスさんて呼ぶようになるのって
もっと後でしたっけ?いけませんね。
今回のゲームは色々立場が変わるので憶えておかないと…。

(2002.10.23 リオりー)