『後ろ向きの恋』
 
 
 

「いい加減にしておけよ」 
演習が終わり、相変わらず前を睨み付けるような姿勢を崩さないボルスに 
そういう言葉を放り投げてじぶんはとっとと帰り支度をはじめる。 

「おう」 

口ではちゃんと返事をしても、こういう時のボルスはほとんど右から左なので 
放っておくに限る。 

「冷たいいい方しますね」 

ルイスだろうか? 
自分のボルスに対する態度を評したのは。 

「強く言わないときいてくれませんからね」 

とはサロメ 

「遠慮のない物言いができる関係というのはあこがれますね」 

とはロランだったか? 
それに対する答えは決まっている。 

「どうせ聞こえちゃいないから」 

ボルスがああやって挑むように何かを見ているときは、 
奴はこちらを向くことは決してない。 
ただ心の向く先にむかいひたすらにひたすらに…。 

「何の話だ?」 

やっていることが終わったのか、飽きたのかいつの間にかボルスももどってきて 
話の輪に加わろうとする。 

「俺のお前への口調が冷たいって話」 

投げやりを装って言葉を無造作に放り投げる。 
文句の一つも言えよ、理不尽だと怒ってもいい。 
こんなむなしさと引き替えに出来るなら。 

「冷たいか?いつもそんなもんじゃないか?」 

でも、首を傾げ意外なことを言われたような顔のボルス。 
何一つ気付いちゃいない。 

つめたいのはどっちやら…。 
 

〜終


 

いつもと逆。ほむらの落書きに文足し。感謝。