『お前が無茶しないようにおまもり…』
そんな風にいわれてこの銀のブレスレットは巻かれたンだっけ?
ぐるぐるに包帯を巻かれた右腕の、その包帯の上に巻かれた銀のブレスレットを見てボルスはため息を一つはいた。
べつにお守りに何かしら期待するわけでも、頼るわけでもなかったが、全く役に立ってていない
ことにパーシヴァルがなんていうかが少しばかり憂鬱だった。
なんにも言わずにため息つかれるのもごめんだったし。
ベッドで説教も今はもっとごめん被りたい。
「関係ないけどな、こんなの」
つけてもつけなくても。 ボルスは言い訳のようにひとりごちる。
『安物だけどな』
そんなふうにも奴は言っていたっけ?
こういうものをボルスは自分で買ったことは一度もないので 相場なんか分からなかったし、そんなことどうでもよかった。
銀の鎖に細い銀のプレート、中央にはめ込まれた小さな深紅の石はいままで見たどんな豪華な飾り物よりも趣味がよくしゃれたものに見えたし、負担にならない程度の細さと軽さが気に入りもした。
「だからつけているだけだしな」
伊達男で通っているパーシヴァルの選んだものだししゃれていないわけはない。
別にパーシヴァルがくれたからとか、お守りだからとかそういうことは全然無いのだ。
包帯を直そうと腕を上げたとたんその銀の鎖が音を立てて床に落ちる。
腕に怪我を負ったときにはじき飛ばされたブレスレットは、回りの敵を叩きのめしたあと
あわてて拾い上げたが、少し踏まれたらしく 少々留め金がおかしくなってしまったらしい。
小さくさりげないものだから、壊れやすくなくしやすい。
ボルスは舌打ちをすると床に落ちたそれを拾い上げる。
利き腕でない左で留め金を止めるのは大変なのだ。
おまけに怪我をした右腕は痛いし…。
ぶつぶつ文句を言いながら、ボルスはパーシヴァルが最初にそこに巻いてくれたように右腕の手首に一生懸命まきつけて、その銀の輝きが失われなかったことにほっと息を吐いた。
〜終
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