○● 読書感想記 ●○
2009年 【2】

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20
 
『黄金旋律』 村山早紀 著

 不治の怪我を負った少年が、未来の医療に希望を託してコールドスリープに入り、次に目覚めたときは数百年の時間が経っていたという。
 荒廃した地にひとりぼっちの少年が、仲間を求め、この時代で生きていく意味を探すファンタジー。


 読み始めはですね、人の顔色をうかがいながら生きつつ、しかし弱い者には優越感を抱いている少年、臨のことが好きになれなくて流し読み感覚だったのですが。
 しかし彼の立場や傷ついた心などがわかってくるにつれて、少しずつ感情移入できたのですよ。
 彼が表すような八方美人的な態度はわたしもおぼえがありますし、もっと自分を見て欲しいと願う気持ちだって誰にもあるものだと。
 それを中学生の彼はトラブルを起こさないように感情を抑制して生きてきているのですから、褒めることではないにしても同情できてしまうっちう……。
 子どもらしい優しさであると。


 そんな彼が不慮の事故で冷凍睡眠を受けることになって、そして目覚めると数百年後だった……という場面転換の押し切り方がスゴイ。
 カバー折り返しで冷凍睡眠のことは書かれていたので既知だったのですけれど、ここまで来るのにもう半分くらいのページを使ってしまっているのですよ!?
 どういうページ配分なのかと(笑)。

 んでも目覚めてからの臨は、それまでの臨と違ってさらに立派だったと思います。
 むしろ、ひとりになってしまったという状況が彼をそこまで引き上げたカンジ。
 彼はやぱし「出来る子」なんです。
 でもって、傷ついても立ち上がる少年を応援しないはずがないですわ!

 流されるままに生きて、将来の夢すら誰かに求められていたことを勘違いしていただけの過去の自分。
 いまは誰に言われるまでもなく、自分で生き方を見つけなければいけなくなって。
 現状にパニックを起こさず、きちんと理解できるあたりが臨のすごさだなー。
 少年らしからぬ……って評されるかもだけれど、彼の少年らしさはもうすでに十分傷ついて、その判断を下すころには「成長」していたってことなんだと思うのです。



 そんな臨が目覚めた病院で、彼のことを待ち続けた看護師ロボットのひまわりさん。
 もー、彼女ってば、ヒロイン過ぎてこまります。
 看護師ロボットってだけでアレなのに、さらに「ドジッ子」「お姉さん」って属性がつくんですよ!
 なにそれ!!?
 トリプルリーチ!!!(笑)
 まさかこれほど強力なキャラクターが登場するとは思いませんでしたよ……。
 これだからファンタジーはあなどれない……。

 臨とひまわり、そしてもう1体、子守りロボットのテディ。
 荒廃した大地の上で交わされる3人の温かいやりとりが胸に迫るのですよー。
 どんなことがあっても、どういう状況であっても、優しさは絆を生むのですよ。
 だから、あのラストの奇跡につながるのだと。

 痛ましい出来事が繰り返されて、世界は死んでしまったかもしれないけれど。
 でも臨は生きているし、生き続けなければいけない。
 旅立つ少年がいて、見送る人がいて、待っている人がいる。
 世界は死んでいても、終わってはいないということ。
 ここからまた世界は始まるのだなぁ……と感じられるステキなラストでした。



 ここで綺麗に結ばれている……ともとれるのですが、どうなんでしょう?
 世界を巡ってきた臨が、再びひまわりとテディに会うシーン、見たいです。
 次巻、刊行されてくれるといいなぁ……と思ったら、秋頃刊行予定とか。
 これは楽しみに待つしか!!!
 

19
 
『聖剣の刀鍛冶5』 三浦勇雄 著

 独立交易都市へ戻ってきたセシリーとルークが、自分たちに課せられた使命を知って新しい覚悟にめざめるお話。
 大きな流れにのみ込まれる前の静けさっちうか。
 そこへ至る前に、ひとつ、態勢を整えておこうってカンジ?
 それだけに盛り上がり方も微妙のような……。

 面白くなくはなかったですし、ようやくキャンベル家に求められる役割という秘密も明らかにされましたし、物語として大切なお話であったことはわかっているのですけれどもー。
 だからといって、説明されて、ハイそうですか……って流れは優等生過ぎると思ってしまうのですよー。

 これから臨む過酷な場に向けて準備をするに、安全な場所で落ち着いて、そのことだけに目的を絞って語り紡ぐというのも、まぁ、ひとつの……っちうか十分に真っ当な手段ではあると思うのですがー。
 そのあまりに構えすぎた周到さが気になるのかもです。


 セシリーとルークの関係についても「聖剣」の件に付随してしまうものでしたしー。
 ふたりの関係についてはもう前巻でひとつの位置に収まっていると思うのです。
 今巻はそれを補強したもの……なのかもしれませんけれど、やはりメインは「聖剣の鞘」についてだと思いますし。
 それは今巻ではふたりの距離も間柄にも変化が無かったことが証明するのではないかと。

「え、嘘……今さら……あり得ない……」

 リサに言われるまでもなく、ふたりはもうそういう関係であったワケで。
 はい、今さら今さら(笑)。



 その点ではアリアとユーインの関係のほうが興味深かったです。
 こちらの関係はちゃんと?変化しているので。

 でもなー……。
 ユーインはただ魔剣を憎むことをやめただけで、アリア個人のことをどうこう思っているワケではないところがなー。
 ……素直に応援できないかなー。
 あの最後の台詞は、ちょっと、なぁ……。

 ちうかこの作品の男子って、壊滅的にデリカシーに欠ける男子ばかりですよね!
 は? 団長や市長?
 あの人たちは“男子”じゃないですもん!(><)



 仮初めの安定が解かれて、誰が敵か誰が味方か陣営が固まったところで、次巻からいよいよ動き出しますでしょうか。
 安全なところでただ言葉を交わしているだけなのは三浦センセの作品らしくないと思ってしまったのです(笑)。
 行動で想いを示してこそ!……と考えてしまうのは、センセに対して固定観念持ちすぎでしょうか。
 


18
 
『退出ゲーム』 初野晴 著

 台詞回しや小道具レベルでのセンスが古いと思う!
 そのせいでところどころ現実感に欠いている部分を感じるのですけれど、キャラクターの相関関係や性格設定などは面白いと思います。

 中学ではスポーツに熱中していたのに高校に入って吹奏楽でフルートを始めた主人公の千夏ちゃんとか、中世的でモテそうな容姿なのに同性の教師に憧れているハルタとか。
 で、千夏ちゃんの片思いの相手もその教師なので、認めたくないけれど三角関係であると言えるあたりなど〜。

 このふたりが「助手と探偵」役となって事件を解決していく様は、割れ鍋に綴じ蓋のようで似合っているのですよねー。
 んがしかし、恋ではライバルなふたり。
 どちらの抜け駆けも許さない緊張感があって、単に依存している関係ではないトコロが良いです。


 持ち込まれる事件にも「部員の少ない吹奏楽部へ部員を増やす」ということに関係していて、見事事件解決を果たした次の章ではひとり部員が増えているという展開も興味深いです。
 やぱし、こう、仲間が増えていくストーリーは盛り上がるもので!

 いちばん好きなのは、まだ部員ではないですけれど来年入学する後藤朱里ちゃんです!
 余命幾ばくもない無い祖父と喧嘩をするやんちゃさが!(笑)
 彼女が入部してくる来年以降のお話も見てみたいと思わせるほどに魅力的でした。


 そんな次第でジャンル「青春ミステリ」のうち“青春”の部分はひどく納得で○です。
 んでも残る“ミステリ”のほうは……。
 決して悪いものではないと思うのですよ。
 しかしそのどれもが「著者だけが知り得る知識によって事態打開される」タイプのミステリであったので十分な満足感を得られなかったのですよー!(><)

 超がつくほど特別な知識ではないのですけれど、やはりそれは日常の一歩先にある専門性をもった知識なのです。
 その知識に価値を見出したひらめきと、それをアイディアにして物語を作り上げる労力を否定するものではありません。
 んでも、最後に探偵役が「実はこういう知識がある」と披露するだけで解決するのは読み手に優しくないと思います。

 ……違うか。
 その知識が無ければ解けないような謎は、ミステリであっても推理ミステリでは無いのだと思うのです。



 表題作の「退出ゲーム」は叙述にもトリックを含ませてあったので読み応えを感じましたが、しかし全体のあり方は以上のようなものだったので「ミステリが明らかにされたときの爽快感」が十分では無いように思いました。
 「退出ゲーム」は推理作家協会賞の短編部門で候補作になったそうですが、では他の作品もそれに準じる出来であったのか、わたしは頷けません。


 キャラクターの造形や立ち回り、そして掛け合いなどは興味深かったので、今作がライトノベルの範疇で上梓されていればなぁ……と思わずにいられません。
 余計なお世話でしょうけれど……。

 他作では「ファンタジーとミステリを融合した独特の世界観」を表現されているそうなので、そちらへも手を出してみようかな〜。
 

17
 
『書店員の恋』 梅田みか 著

 世の中の女性の「理想の恋」を描いているのよ?……というような自負が感じられて居心地の悪さを。
 えー、なにこれー。

 仕事はそこそこ順調で、責任も増えたけれどやりがいもできて。
 だけど現在進行中の彼とは停滞気味……というか、フリーターであるいまの彼とは現状を見る目が異なってきてしまってすれ違い気味。
 そこへ現れた「白馬の王子さま」に求愛されて、わたし、どうすればいいの?

 みたいなー、みたいなー♥
 ……って、おおいっ!!!!(`Д´)


 基本ラインは「お金が唯一の決定的要素ではなくて、やっぱり添い遂げるなら愛だよね、愛!」ってことらしいです。
 それはわたしも同意できるのですがー。
 特にお金の有意性を認めつつも、それが「唯一」ではないと宣言しているところ。
 でもさー、それで言ったら「愛」も「唯一」では無いんだと思うんです。

 Aという人の「愛」が、Bという人の「愛」に勝っているなんて、どうして言えるのでしょうか?
 作中ではもちろんAという人を主人公の書店員は選ぶワケですけれど、どうして彼を選んだのかわからなくて……。
 いや、本当にわからないのは「Bを否定したこと」ですか。
 強く間違いを質したワケではないのですが、今作ではBを選ばなかったのは彼の気持ちを否定したも同義だと思うのです。


 選択をした……という行為に対しては立派だと思います。
 現代文芸的にこのままぬるま湯の状態で結ぶことも常態だと思うので。
 でもなぁ……。
 その選択に対して、彼女はどれだけの情報を集めて葛藤したのかが伝わってこなかったのです。
 彼女を愛していると表明したふたりのあいだで情報量に差がありすぎと感じるのです。
 だから結局、彼女は情報量の多いほうを選んだのではないかと(不確定要素を嫌った)。
 この傾向は作中で描かれていた同僚の結婚に際しても同様のことが言えると思います。

 結局ですね、恋愛に適度な障害があると燃え上がるけれど、最後に決め手になるのは身近な倖せに気付くことなんですよー……ってことなんでしょうか?



 ちうかさ。
 「きみがしたいように」とか「きみのすきにしていいんだ」なんて彼女を許して彼女の思うままの判断に自分のことも委ねているようなオトコばっかで気持ち悪いのかも。
 王子さますぎる!(><)



 あるいは、もしかしたら。
 書店員なんて地味な仕事をしている女性だって、こんなステキなLOVEができるんですよ。
 がんばれオンナノコ!
 ……ってだけの話なのかもしれませんが。
 


16
 
『告白』 湊かなえ 著

 うわぁ……。
 迫るような筆致って、この作品みたいなことを言うのかも……。
 改行が少なくて可読性が良いとは言い難いので、読み始めは内容を追うことに戸惑いをおぼえたのですがー。
 しかし読み進めていって、なーにか不思議な気がするなー……と覚えたら、そこからはもう一気に世界に引きずり込まれてしまったという。
 もう、秘密や謎、そして事実の提示のタイミングやらその分量やらが絶妙としか!


 愛娘を殺されたとする女性教師の「告白」から始まる物語。
 短編連作でそれぞれの章での語り手は異なって、また事件としても個々に独立はしているのですが、しかしその動機となる部分、始まりの部分では先んじた事件を引きずっているワケで。

 犯罪であろうとなんであろうと、人が起こす行為には必ず発端となるモノがあるという次第。
 その巡り巡る様を描くことに、ホント、湊センセは長けている……っちうか、主題にしているような。


 変化とは必ずしも良いことを示すわけでなく、壊れていくこともまた変化なのだと。
 そしていちど壊れた歯車は、次の行為に対してもまた誤ったシグナルを発信し続けていく負の連鎖。
 物語は最後にその連鎖がもとの、本当に最初の場所へ還っていくのですけれど、現実のことを考えるとそれで終わりではないですしねぇ……。
 コミュニケーションの側面を悲劇の部分からアプローチしているわ、ホント。


 辛辣で、悲しみに満ちた世界。
 誰かが少しでも優しさを見せていたら変わった結末になったかもしれないのに。
 でも、もしそれが本当に必要なことであるなら、世界は優しさの犠牲の上に成り立っているわけで。
 馬鹿な強者が賢い弱者を食い物にしていく世界。
 そんな世界が本当に正しいと言えるのか、湊センセの作品からは考えます。


 わたしの結論からすると、優しさとか正しさとかは世界の成り立ちには関係無いってことだと。
 もちろん、それこそが悲劇の根幹にあるとは思うのですが。



 湊センセの作品は2作読んでみてそのスゴサも感じました。
 次は連作短編のような形式ではない長編を読んでみたい気がします。
 構造に依らないでも惹き付ける力量があると思うのです。
 


15
 
『アスラクライン 世界崩壊カウントダウン』 三雲岳斗 著

 うーわーっ! うわーっ!
 この情け容赦ない選択の突きつけかたは、まさに三雲センセらしいわ!
 でもって初めからの布陣は、まさにこのためにあったのかと納得せざるを得ない計画性!
 だ、だめだ……こみ上げてくる興奮が抑えられない……!

 “一巡目”の世界で楽しげな日常を見せたのは、やがて訪れる滅びへの感傷を倍加させるためだろうなぁ……と。
 まったくもって嫌らしい演出。
 読み手のわたしの目は“二巡目”の世界の住人である智春と同期していますから、“一巡目”のことはやはり別世界の話なのですよね。
 でも、だからといって滅んで当然とまではもちろん思わないワケで。
 むしろその犠牲の上になりたつ救いという重さがより一層……。

 “一巡目”の世界の人たちも、なにも座して待っていたわけではないですけれど、律都さんが多元世界の中で見たように、この世界では救いはなかったのですよね。
 きっと、なにをしても。
 ダルアの独善的行為は枠にとらわれた限界によるものかもですけれど、はたしてそれは彼女個人の資質だったのか。
 そういう枠にとらわれた住人ばかりであったから世界は滅んでいくのではないでしょうか。
 彼女のしたことや考えを認めるつもりはもちろん無いです。
 でも、彼女は彼女なりに運命を変えようとしたということだけはわかってあげてもいいのではないかと思うのです。


 で。
 律都さんが見た唯一の可能性である智春たち“二巡目”の世界の住人だって簡単にそれを成せるわけではないことが示されているワケで。
 大切な人を犠牲にはらい、それでも成さねばならないことがあるから前へ進む。
 でなければ戦場へ送り出してくれた人の期待も希望も、そして犠牲になった人の想いすら無駄にしてしまうから。

『もう我慢しなくていい。操緒が許すよ……』

 これを言われたときの智春の絶望は計り知れないわ……。
 ここまで来る中で、途中、無駄にも思える展開があったようにも思うのですけれど、たぶんどれひとつ必要でなかったことは無いのでは?
 智春にはここへ辿り着くことが必要であったし、ここへ至るまで全ての経験をする必要があった。
 そして彼をこの舞台へ立たせたかった人たちにも、やはりこれだけの時間がかかったのだと思うのです。
 だから、無駄とか不必要とか、そんなことはなく、こうなることは必然だったのだと。

 それを仕掛ける三雲センセには脱帽するしか無いのですけれど、けれど――!
 どうしたらいいのかなぁ、このやるせなさは……。

 あとはもう、再び智春の目を借りて、この世界が救われることを読み手として待つしかないです。
 「僕のかのじょ」と言ったからには、マジで責任とってもらうしかないわ!
 いろいろと!(TДT)



 日常観念を超えたところからやってくるラスボスの存在は、まさに三雲ワールド全開なカンジ。
 急転直下でクライマックスに向かう展開は、ホント見事だわ。
 ブラヴォー!

 しかし、あとがきに「ちんまりとした学園内のお話に無事戻れるかどうか」とかあるのですけれど、それって……できますか?(苦笑)
 ここまで盛り上げといてそれは無理のような……(^_^;)。
 でも、そういう世界を、もう一度見たい!とも思うのは、やはりあの決意と覚悟を見せられてしまったからでしょうか。
 


14
 
『ピクテ・シェンカの不思議な森 魔法指輪と失くした思い出』 足塚鰯 著

 ラーシェンのおせっかいでムイが子供時代へ身体も心も戻ってしまって大変なことになるお話。
 ルズとリアーニのお父さんが実はあれで、あぁ……とか納得してしまったのですけれども!
 うーん……。
 ムイに向けられるふたりの感情が、善意とか正しさとかそういう良きモノから導かれているのではないと知ってしまって悲しい気持ちが。
 実はそういう正体なんですよー……と、これまで何度も言われ続けてきたにもかかわらず、わたしは、ふたりがそういう制約からはムイに対しては逃れているのではないかと思ってしまっていたのですよね。
 勝手に期待して、勝手にがっかりしただけなのですけれども……。
 そうかぁ……。

 つまり、種族的特徴からふたりが逃れられていないというのであれば、ふたりはムイの絶対的な味方ではないということが示されてしまったワケで。
 ある種の欲望の前には手のひらを返して主人との契約を裏切ることもできるのかー、と。
 絆、というものは、実は無かったのですね。
 ルズもリアーニも、そういう星のもとに生まれてきたからムイをかまっているだけで。


 なんか、もう、ふたりがあっさり姦計を諾としたところが許せなくてですねぇ……。


 しかし「覚悟を決めたぞ」なラーシェンなのですけれど、物語的には先に動き出してしまったほうが負けな気が……。
 いや、でも、その負けフラグが立ったからこそ、わたしはラーシェンを応援するわ!(笑)
 がんばれ、王様!!(≧▽≦)


 足塚センセはムイの相手が誰になるか決めているのでしょうか?
 なんとなくですけれど、現時点では決めていないのではないかという予感が。
 ラーシェンとフィンドルの動くままに任せておいて、あとは人気の度合いを眺めつつ……というような。

 アーレンはなんだか良い雰囲気を作り始めちゃってるトコロがアレですけれども!(笑)
 あれですか、オトコははっきりと強い押しがあって、なおかつ堅実なほうが理想だってことですか!
 そりゃまぁ、いつまでも態度をハッキリさせずにフラフラしているよりマシですけれどー(^_^;)。



 ひと夏の大騒動という物語の幕引きが気持ちよかったです。
 次巻からはまた都へもどって、今度はナナサ国のあれこれと対峙していくのでしょうか?
 落としどころが読めないだけに、楽しみです。
 


13
 
『七つの海を照らす星』 七河迦南 著

 発売当時の書店売りのときはオビがついて「最大の伏線は本を開く読者の目の前に!」ってコピーが入ったのでしょうか?
 種明かしをされたときに眺めてみて、はーなるほどー……とは思ったのですけれど、しかしそれほど大きな伏線というものでもなかったような。
 トリックというかガジェットのひとつではあったけれども、その仕掛けが事件に対して強く機能していたとは思えないので。
 もちろん、いくつかある伏線のひとつ……と考えれば十分に遊び心のある仕掛けだったと思います。


 連作短編という形式なので、それぞれにネタやトリック、ガジェットが仕込まれていた、そのアイディアの数でまずは評価できるかなーと。
 日常ミステリの類なので大きく現実から乖離していてもいけませんし、生活の中に事件とトリックを巧みに埋め込んでいるなーという印象。

 児童養護施設という舞台は悲しいかな一般の人には特別なモノとなってしまいますけれど、しかしそうした特異な場所であることを物語のなかでは巧く活かして進められていました。
 特異な場所ではあるのですけれど、そこでの生活描写は「生きる」という観点からとても生活臭溢れるものであったように思うのです。
 食べて寝て……という過ごし方が生活のみにあらずで、生きるということは日々様々なことを考えて思いながらいるのだなぁ、と。


 それぞれの短編が最後にひとつになって明らかにされる真実の爽快感もお見事。
 その仕無ければ作品の魅力は大きく減じていたと思いますし、そもそも作品の体を成していなかったかも。
 しかしそれだけ重要な仕掛けであるにも関わらず、その存在を終盤まで隠匿し続けたテクニックが絶妙だわ。

 途中、やけにスムーズに進むなぁ……と思わなくもない部分があるにはあったので、読み進めるぶんには「なにか変だな」と意識させもしてくれましたし、最後に明らかにする仕掛けは決してお飾り的な辻褄合わせでは無いと思います。
 個々の短編を著すときにも常に最後へ集約させることを意識されていたと思いますし、不自然さを大きく感じさせることなく進行を采配することは全体への構成力の高さを感じました。



 子どもの世界に起こった怪事件を大人の視線で解き明かすことは、ときには厳しくて汚らしい現実を暴くことになるのかもしれません。
 しかしそこに敢えて向き合って、真剣に生きている人たちを妥協することなく描いた七河センセ。
 これからも逃げること無い真摯な作風を続けていってほしいです。
 

12
『少女』 湊かなえ 著

 ふたりの女の子の視点を軸に、過去と現在、気付かないうちに人と人が関わり合っていく「社会」?の恐さを。

 因果応報とか親の因果が子に報いとか、うーん……やぱし因果なのかなー。
 必ずしも自分の身に直接的に返ってくるというワケではなくて、自分の行為が誰かの生き方を変えて、その人が生き方を変えたからまた別の人と出会うことになって……と連鎖していく様がなんとも不思議なカンジ。
 社会ってそんなに狭いものかなー……と思う不思議さの反面、人間の生きるスペースなんてそんなに広くはないのかもね……という納得さが。


 そこで大きな事件があるわけではないのですけれど、いま目の前で進行している行為は「誰が」起点になっているのか考え巡らすことが興味を引くところでしょうか。
 カーテンの向こうにいるひとをシルエットで当ててみるっちうか。


 これだけの人数を有機的につながりを持たせて進められるのは、構成にセンスがあるんでしょうねぇ。
 推理ミステリって、やぱし謎に魅力を持たせられるかが重要なのかなーと。
 どれだけ大がかりで驚愕の事件であっても、そこに謎としての部分に魅力が無ければ物語にはならない……と。

 こういうミステリもあるんだなぁ……と感心させられた作品でした。
 


11
 
『鋼鉄の白兎騎士団[』 舞阪洸 著

 う……。
 めまぐるしく事態が展開していくような疾走感も、全てが明らかにされて事態が収束する瞬間の爽快感も(あまり)感じなかったのですけれど、なんでしょうか、この高揚感は……。

 思うに増えてきたキャラクターたちが多方面で動いていることで、全体として「なにかが起こる」ような期待を抱かせるのではないかとー。
 ザッピングシステムといいますかー。

 もちろん動くキャラクターのことを知らずにこれをやられていても、物語優先として作者の姑息な意図を感じてしまって鼻白むことに終わるのかもしれませんけれど、8巻まで続いているシリーズにおいてはそれも無くて。
 むしろ離れた場所にあっても息のあった行動をしている様を見せられると嬉しくなってしまうわ!(≧▽≦)


 そう思うと今回は白兎の団員のあいだの信頼感や絆のようなものを強調して描いていたような。
 伝令としてセリノスを送る場面でも、アスカに対する新雛小隊の評価にしても、そしていざ動くとなったレフレンシアの心中にしても。

 レフレンシア様が「熱血」なんて設定あったかな〜とも思ったのですけれど、自分のモノが自分の意図しないところで弄ばれたとあっては、なるほど怒り出しそうだなぁ……とは思ったりして(笑)。
 身内と外を明確に別しているというか。
 そのことは今回の作戦での注意事項としても伝えられていましたし。

 作戦において目標を明確にすることはもちろん大切なことですけれど、そのために切り捨てられるモノを明確にしておくことも重要なことだと思うのです。
 成功のためへの覚悟を示すことになりますし。
 それは非情で冷徹なことと受け取られるかもしれませんけれど――実際、レフレンシア様はそう見られますし――、守るべき数少ないことを胸の内にたしかに持っているということは、やはり「熱い」人なのかも、ね。


 今回の作戦は戦術というより戦略で勝利を得るものなのでスッキリとした爽快感が無いのも無理からぬことかも。
 んでも、すぐに効果を表さないだろうことが予感できたので、こちらも読みながらガブリエラの意図を探ることができたので、そういう楽しみは十分に感じられました。
 最初の一手さえ見逃さなければ、戦略的には見通すことができました♪

 ガブリエラの作戦上、「あの場所」で起こることに対しては相手の出方に因る部分が大きかったので、普段のわたしならその都合の良さに眉をひそめるところかもしれないのですがー。
 そこでの状況が十分に成功へ傾く可能性を秘めていたことは、それまでにしっかりと説明されていたので納得納得。
 むしろあの世界に生きる人々の常識を逆手にとった作戦だと思えて、そういうところはガブリエラらしいなぁ……と思えもしました。
 もちろんそうした「非常識」な作戦も、同じように「非常識」な組織である白兎騎士団であるからこそ行えたものでしょうけれど(^_^;)。


 レフレンシア様がウェルネシアを連れて行ったところでは「彼女の特技を利用するんだろうなぁ」……と思いつつも、頭のどこかでは「彼女の胸の大きさを利用するのでは?」とか疑ってました(笑)。
 今巻の表紙、パネェっすよ、ウェルは!!
 デイレィだってそんなに貧乳ってわけでもないのに、並ばれると……なんだか可哀相な子みたいじゃないですか!(失礼な!)

 でも本編ではデイレィの描写がわりと多くて、彼女が好きなわたしとしては満足満足。
 アフレアと生い立ちのことを会話する描写もありましたし、そろそろebのサイトで公開されたものをまとめて短編集ですか〜?(^-^)
 ……いや、でも、そろそろまとめてもらわないと、文庫のみの読者に悪いような気がするのですよーん。


 あ、アスカ姉さんも好きなので、幕間劇での展開は喝采をもって迎えましたよ!
 YEAH!(≧▽≦)


 

「久しぶりに十人全員が揃いましたわね」
 顔を見渡したドゥイエンヌがそう言うと、その言葉をセリノスが引き取った。
「本当だね。勢揃いしたみんなの顔を見ていると、なんだってできそうな気がする」

 まさにセリノスの言うとおり。
 ちうか正確には「なんだってできそう」ではなく「なんだってやりそう」なのかもしれません。
 それだけに読み手のわたしも、次はなにをやらかすのだろう……とドキドキするというか。
 セビリィノの件からしばらくは十人が揃わなくて、そして状況から急かされるようにして動いていたように思います。
 しかしここにきてついに仲間がそろった、いよいよ攻勢に出たのだと。
 さぁ、なにをしてくれるのかな、欠けること無い【元祖】雛小隊は!
 わたしが抱いた高揚感とは、じつはそういうことだったのかもしれません。


 ああ、そうか。
 10人が揃ったことが、わたしは嬉しかったのですね。
 今巻で描かれたいちばんの絆は、やぱしそういうトコロであったのでしょう。
 


10
 
『たたかう! 図書委員』 水月郁見 著

 別名義ですけれど「夏見正隆」名義で刊行された『たたかう! ニュースキャスター』の姉妹版といって良いでしょう。
 水月センセ自身もそう仰っているので。

 んー、でもなぁ……。
 あちらに比べて今作の主人公である戸田夏子嬢の気質が合わないかなぁ。
 世の中を斜めに見すぎているというのももちろんですし、彼女自身に世界をどうしたいのか、あるいはどうあるべきなのかの信念が無いところが。
 そもそも斜に構えて見せているところですら受け売り感があって、彼女の言葉とは思えないという。


 オビのコピーでは「論客女子高生」とあるのですけれど、べつに論破するわけではなく場当たりの感情を押しつけているだけに思うのです。
 正しさとか理屈とか、そういう理性的なものではなくて相手の隙を見つけて壊すだけの舌鋒というかー。

 加えて言うなら「図書委員」であることに意味はなかったので、タイトルは「女子高生」にすべきだとも思いました。
 学校の中をイメージする「図書委員」なのに、活動の大半は学外ですし。


 斜に構えているのは主人公だけでなく、社会そのものを誇張して描くアクの強さはセンセらしいなーと思います。
 受益者の権利が尊重され、搾取される側の主張は風に飛ばされる理不尽さ。
 そういう社会をシニカルに描いてブラックな笑いを取るのは作風だと思いますけれど、そうした流れの中で読み手の視点となる主人公サイドにはあくまで一般的な感性が求められるのではないかと思うのです。
 主人公までもがそんな社会に染まって皮肉めいた感性の持ち主であっては、ただただ社会が壊れていると言うだけであってどこにも救いが無くなってしまいます。

 センセの既作ではそういう弱者の視点が活かされていたと思うのですけれどー……今作では違う、みたい、で。



 宇宙人ウィノアと組んで戦うことになるまでが今作ではとても時間かかっていますし、本格的なそれは今後……ということなのでしょうか。
 しかし仮に第1巻とするなら展開にまどろっこしい遅さを感じましたし、またウィノアとの絡みに描写不足でもあったように思います。

 なんちうか……いろいろとモヤモヤ感を抱いてしまった作品でした。
 


9
 
『僕の好きな人が、よく眠れますように』 中村航 著

 同僚となった人妻に懸想して、親しい時間を過ごすなかで思いを遂げることができて、その人の倖せを願うお話。

 ……だよなぁ、これ。
 どう綺麗にまとめられても「不倫」であり「浮気」であるわけで。
 うーん……。
 それを是としてしまって良いのかどうか悩みます。


 絶対に浮気も不倫もダメだと考えているワケではないです。
 ある一時期に出会った異性が人生最良のパートナーだと言い切れるとは思えないので、なにか不都合が生じたとき別の相手を見つけることは自然だと思います。
 でも、そこには「健やかなるときも病めるときも」共にすごすための契約があったワケで、その契約さえ解消するなりすればの話で。

 上京してきた人妻さんはそれを曖昧なままに主人公と関係を続け、主人公もそのことを強くは問わないでいる姿勢が問題なのかなーとか。

 この状況、性別が入れ替わっていたらとても気持ちの悪いお話になっているような気がします……。


 んでも、そうした倫理観?を飛び越えてしまうくらいに中村センセが綺麗な筆致でふたりを描いているんですよねぇ……。
 優しい悲劇というか。
 出会ってからしばらくはやはり悪しきことだとして気持ちを断つように動いているのですよね。
 しかし、それで断ち切れるほど弱い気持ちではなかったと示して。
 ここがなぁ……うまいんですよねぇ……(^_^;)。

 ただの不倫であれば非難もされるでしょうけれど、前提として悩んで悩んで、それでも離れられないという気持ちを描いているものだから、読み手のわたしもふたりを罰しきれないっちうかー。
 ふたりはもう罪を背負っていることを自覚しているのですよね。
 で、あるなら、いまさらわたしがどうこう言う部分でもないですし……。


 でもなぁ……。
 郷里でひとり、妻の帰りを待っている旦那様のことを思うと、どうにもやるせない気持ちになるのは仕方がないですか?
 旦那様がどんなお人柄なのかわからないトコロが、こう、もやもやとした気持ちにさせるのかもしれません。
 相手が分からないだけに、一方的に主人公と奥さんを応援できない心境に。

 物語としてそこまで肩入れするものでもないでしょうし、むしろふたりの深い愛を感じることができればそれで良いのだと思うのですけれども、ね。

 正しさと間違いは、シーソーの両端にあるわけじゃない。当たり前のことだけど、正しさを間違いを内包していたり、間違いの前提として正しさがあったりする。

 正しいことにだけ生きる意味があるわけでもなくて、間違ったことは全てが許されないことでもなくて。
 ○か×か判定されることが重要なのではなく、なにかを選び続けていくことが人生なのかなぁ……。
 答えには答えの意味しか無くて、選ぶ行為に価値がある、とか。
 考えちゃうわー(-_-)。
 


8
『逆転ペスカトーレ』 仙川環 著

 経営の危機に陥った下町の洋食店が新たなシェフを迎えたことで巻き起こる騒動。
 そこへチェーン店が近隣へ進出してきていよいよ存亡の危機に。
 内輪でごたごたしている場合でもないと、一致団結してこの危機に立ち向かっていく……という物語?


 主人公兼ヒロインのあきらは派遣社員で働いていたところ契約終了となって無職状態。
 セレクトショップ?のような店を持ちたいという夢を持ってはいるものの、その夢に対して実際的ななにかを動き出しているわけでもなし。
 こういう主人公像はワナビにも通じて苦々しい親しさ(笑)を覚えるのですけれど、しかし彼女は父から受け継いだ料理の才能があってそれをもとに洋食店を盛り上げていくことになるのですよね、結局は。

 なんちうか、人生は秘められた才能を誰かに認められて開花させる場所をもらわなければどうにもならないのですか?……というような寂寥感が。
 努力とかそういうものは全く役に立たないわけではないだろうけれど、それでも才能の前には無力に近いものでしかないのだなぁ……と。


 チェーン店の攻勢に対しても従業員みんなで一致団結して戦ったから勝てたというものでもないですしー。
 相手の内情を探って問題点を暴いたから自滅した……というだけのような。

 作品のタイトルからはペスカトーレのレシピをめぐって試行錯誤するような印象を持ったのですけれど、そのレシピも結局は天から降ってきたようなもので主人公たちはそれを手にするまでになにかを引き替えにしていないわけで。
 それではレシピに到達したとしても感慨はないわー。


 描き方として洋食店サイドの視点だけでなく、もうひとつ、チェーン店にも関わる謎?の部分からの視点もたびたび挟まれてくるのですが、これがまた物語を分断している印象を。
 ふたつの物語?が最後にひとつへ集約されるというような効果を狙ってのことかと思うのですが、物語の裏設定というか展開に対する理由付け以上の意味はなかったように思えたりして。
 「ペスカトーレ」が「逆転」するための言い訳、ちうか……。



 つまるところ、物語のガジェットとして以上の料理への愛を感じない……ということかもしれません。
 もちろんガジェットに対して物語を生み出す以上の愛を注ぐ必要も「常に」は無いことだとは思いますけれど、ね。
 


7
『ボクのメジャースプーン』 辻村深月 著

 罪と罰、そして復讐について考えさせられました。

 「Aという条件をクリアできなければ、Bという結果が起こる」という呪いにも似た強制力を言葉に持った小学生のお話。
 これはたとえば
 「いま行かなければ、一生後悔する」といったもので、後悔をしたくない場合には「行く」という行為を選んでしまうのです。

 この条件付けゲームにはちょっと感嘆してしまいました。
 Aという条件もBという結果も相手の思考を予測して行わなければならないからです。

 作中では動物虐待を行った大学生に対してこの力を行使しようとするのですが、彼に対してどのような強制を課すことが効果的なのかを小学生は悩みます。
 彼がおこなったことで、大切な女の子が心を閉ざしてしまったから。
 彼女が負った心の傷の分だけ、大学生にもペナルティが与えられるべきだと。

 でも、その犯人たる大学生は今風のシニカルなネットユーザーらしく他者への関心が薄く、自らが犯した行為に対してもなにが悪いことなのか理解できていません。
 社会正義や倫理観といったものが通用しない相手にとって、動物虐待という犯罪を犯したことを後悔させるにはどうすれば良いのか。
 小学生の彼は真剣に悩むのです。


 小学生の視線を通して、復讐ということについて考えさせられます。
 刑法は犯罪者を罰しますけれど、それは加害者の側に立ったものであって、少しも被害者の気持ちを加味していないのですよね。
 動物虐待をしても、器物損壊。
 小さなウサギたちを可愛がっていた少女にとって、ウサギはモノではないのに。

 では、ウサギを殺した罪で加害者も死刑になればいいのかといえば、それは重すぎると小学生の彼は悩みます。
 ウサギの命と人間の命のあいだには明確に線引きがされているのですけれど、だからといってウサギの命を軽んじて良いわけではありません。
 両者のあいだにどれほどの違いがあるのかを量的に示すことはとても難しいことです。
 さらには加害者は自分のこと以外に関心をもっていないのです。
 周囲がどう変化しようとも、自分さえ無事であるならば問題ないのです。
 死刑を下せばもちろん彼は悔いるでしょうけれど、それは重すぎる刑として初めから除外されています。
 どうすれば彼は自分の行為を悔いるでしょうか。


 その行為を罪だと「いまさら」認識させる必要は無いのです。
 彼は彼の理由でそれを罪だとは考えないのでしょうから。
 しかし失われた命、閉ざされた心に対しての代償を支払うべきなのです。
 罪であろうとなかろうと、それを彼が奪ったことは確かなのですから、対価を支払うべきなのです。


 物語の最後に、小学生は見事本懐を遂げます。
 その答えが正しいのかどうかはわかりませんが、加害者はそれなりの対価を支払ったのではないかと思います。
 それをさせた小学生の彼も、読んでいたわたしも、気持ちよくすっきりとしたわけではありませんが、ひとつの答えに達したのだという感慨はありました。
 それは復讐の達成感ではありません。
 答えを見つけた達成感です。



 これは、復讐の物語です。
 そして社会が、法が、いかにいびつで不完全であるかを教えてくれます。
 復讐は、あらたな復讐の連鎖として繋がっていくモノなのかもしれないけれど、そんな不完全な社会で生きているわたしたちにとって、復讐することもそれをしないことも悲しい現実であることを受け入れるしかありません。
 わたしは、連鎖を生み出さない、連鎖を断ち切ることのできるほど強い人間ではないのです。


 それでも――。
 

「あなたのための非力なナイトは、一生懸命でしたよ。必死にあなたを守ろうとしていた。自分を傷つけ、ぼろぼろになりながら、それでもあなたのことだけを考えていた。そこで出した答えは決して正しいものではありませんでしたが、僕は彼のことが好きです。――自慢に思っていいですよ。あなたには、とても素晴らしい友達がいます」

 罪と罰、復讐、ルール、モラル……etc。
 いろいろと考えることはありましたけれど、行動原理は少しも揺らいでいません。
 オトコノコが、囚われのオンナノコを救う物語です。

 難しくてうまく伝えられていないと思います。
 でも、わたしはこの作品が好きです。
 


6
 
『波打ち際の蛍』 島本理生 著

 うーあー……。
 でたよ、でたよ、進行形で作品が終わっているという……。

 前の彼のDVで負った心の傷のために対人恐怖症になってしまった主人公。
 カウセリングへ通うなかで異性と出会い、交際を申し込まれるのだけれど、相手のことが信じられなくて彼が望む答えを返してあげられないことに苦しんで。
 でも彼はそんな彼女の気持ちを理解してあげて、そばに居続けることを約束する。
 そんな彼の優しさが痛いような、嬉しいような……。


 ……って、うぉーい!
 そこで終わり? 終わりなのっ!?
 「無理をしなくていいんだよ。あなたはあなたのペースで生きていって」というような肯定を示していると思うのですけれどー。

 どうもこの手の作品と出会うと、著者に問題に対しての答えが見いだせていないのではないかとカンジてしまうー。
 ただ、こう、スキャンダラスな題材だから筆をとっただけで、かといって本当にその状況にある人への助けになろうとは思っていないのではないか……というような疑問を。


 実際にこの問題と直面している人はどうすれば良いのか。
 この本で得られることは、いまの状況から連れ出してくれる人を待つしかないということのような。
 それでいて、その人がアナタに対して優しく接してくれることは絶対なのだと。


 うーん……。
 時間が解決することはもちろんあると思いますし、実際にはそうした事例のほうが少なくないのかもしれませんけれど。
 物語がフィクションであるなら、現実では救えないようなことを描いてみたらどうなのかなー……と。
 


5
 
『秋期限定栗きんとん事件 下』 米澤穂信 著

 もはや犯人が誰であるかなどということは物語において瑣末なことになっているところがすごい……。
 むしろ本来は味方であるハズの小佐内さんのホワイダニットな推理小説になっている倒錯状態(!?)が面白いわー(笑)。
 ある意味、フーダニットからホワイダニットへ変化していく推理小説の歴史において、自陣営?である側の人物の行動理由を探るというさらに一歩進んだ革新的作品なのかも!?……なんちて。


 で、そんな小佐内さん。
 さすがと言うべきかやっぱりと言うべきか、人を操るその手腕に衰え無し……というところでしょうか。
 結局、登場人物のほとんど(すべて?)が彼女の影響を受けて動いているんですもん。
 その気になれば高校のひとつくらい掌握できるんじゃないかしら、この女傑(笑)。


 対する小鳩くんは今回も名推理を披露してくれますが(本人としては遺憾かもしれませんけれどー)、その推理にも一分の隙があるところがまたなんというか。
 その甘さ?が中学時代に彼の鼻っ柱を折ってくれたのでしょうけれど。

 推理の全体像から細部まで把握しているにもかかわらず、しかし解決に関係ない部分のひとつやふたつが謎のまま。
 それを小鳩くんは「自分のミス」とか言って曖昧に済ませてしまうんですよねー。
 その甘さから小佐内さんには一枚上を行かれているのではないかって気が。


 しかし小佐内さんが「恐い」だとすると、小鳩くんは「酷い」かもですなー。
 フリをするなら徹底的に!
 相手に一分の隙も見せてはいけないのに、その努力を怠るんですもん。
 相手が仲丸さんでなければ、一方的にオトコの株を下げていたところですよ。
 とりあえず今回の裁定はドローってトコロでしょうか。

 小佐内さんと瓜野くんは、最終ラウンドまでもつれこんだところで見事KO勝ちというカンジ。
 もちろん小佐内さんが!
 しかもその最終ラウンドまでもつれ込んだのだって、小佐内さんが手を抜いてくれたから……というかワザとそこまで接戦にしたワケですし。

「この子、他愛ないなって」

 ヒロインの台詞じゃないーっ!(><)



 ところで。
 今作を読み終えてから『春期限定』と『夏期限定』を読み直したのですけれども。
 堂島健吾くんと瓜野くんの違いがまさに描かれていたので驚きですよ。
 健吾くんは小鳩くんが堂々として推理を披露しても、その裏付けを取る手間を惜しまなかったのですよね(『春季限定』の最後の事件で)。
 これでは「迂闊」と言われてしまっても仕方がないです。
 すぐそこに学ぶべき師匠がいるのに、彼はそれに気づきもしなかったのですから。

 あと、見たいモノしか見ない、という瓜野くんの姿勢は

「『当然ナントカだ』と言うとき、それは大抵当然ではない」

 と主張したあと同じクチですぐさま――

「誰の台詞だよそれ、ありきたりで通俗的な、つまらない警句だね」

 と言ってのける小鳩くんには影すらも追いついていないなーという印象(笑)。
 聡明さも狡猾さも人の動かし方も猜疑心も、足りていないという証明が。
 それでいて行動力だけあるのですから、興味のあることだけ騒ぎ立てるという、まさに<小市民>……ということなのかなぁ。


 今作のラストで小鳩くんは、埋もれている「ように見える」人の中にも才能ある人が居ることを知りましたけれども。
 シリーズの終わりには、やぱし、<小市民>に生きることと<小市民>になることが別だと知ることになるのかなー。



 ところで、これも読み返していて気付いたんですけれど。
 小鳩くんってば、高校の一年生から三年生まで、その夏を彼女持ちで過ごしたことになるんですよね!
 なんてリア充!!(≧△≦)
 もう、<小市民>とか言えるレベルじゃない気が……。
 



4
 
『ひかりの剣』 海堂尊 著

 なになになに?
 もしかして「ジャンル:剣道」な小説にハズレはないの?……と思ってしまうわ。
 最近読んだそれらのなかにはホント、ハズレ無しですもん。
 ちうわけで、今作もアタリ!なのでした。


 『ジェネラル・ルージュの凱旋』では救急センター長として辣腕を振るっていた速水の学生時代のお話。
 それも医学に没頭していたのではなく、学生剣道に熱中していたというのですから。
 あの速水が!ですよ?(笑)
 意外と言えば意外でもありましたけれど、責任感に厚いところとか、それでその責任に押しつぶされそうになるところとか、のちの速水へと通じていくモノはありましたね。


 もちろん剣道ばかりではなく高階や渡海とはじめとする先達の教えを受けていくなかで、医学に対するスタンスも形成されていったんだなぁ……と感じられたりして。
 医療のジャンルではまったくないのですけれど、きちんとその後のお話に繋がっているという。


 ああ、それと今作では速水のほかにもうひとりの視点を立ててダブル主人公としているのですけれど、そのもう一方の主人公が『ジーン・ワルツ』に登場した清川吾郎なんですよね!
 てことはのちに曾根崎理恵さんと、ごにょごにょ……なわけで!

 うーん……。
 清川は意外とモテるタイプなんでしょうか?
 でも当人がそれを気付かないで居るから、チャンスを棒に振っているタイプなのかもしれません。
 今作でも女子剣道部の責任者である塚本さんとか、剣の才能に惚れ込んだ朝比奈さんとか、清川のことを気にしていたんじゃないかなーって思うんですけれど。
 でも清川は「面倒な剣道部を率いることになった」戦友としか塚本を見ていなかったようですし、朝比奈に対しては同門の兄弟弟子という親しさでしかなかったように見えて……。
 あのふたり、同じ剣の道を往く友人への信頼以上の気持ちがあったと思うー。



 そんなふたりの視点を交錯して描いているうえに、さらには今作中で2年の月日を描いているところがスゴイ!
 そこまで複雑にしているのに内容から急いだ雰囲気がまったく感じられなかったのデスヨ。
 速水と清川が互いをライバルと認め、それぞれの剣道部を率いて戦った1年。
 そこから教訓として得た自分に足りないモノを補うべく切磋琢磨し、再び互いの前に立ちはだかった2年目。
 クライマックスでの興奮は、再び相見舞えるというカタチでこそのモノだな〜と。
 1度きりの勝負で終わらせないというのは、なかなか物語で描けるものではないですよ。
 それも間延びした感も、冗長である感も無いような筆致で!というのは、やはり海堂センセのセンスなのかなー。
 もちろん、ご自身も学生剣道をやられていたということもあるでしょうけれど(^_^;)。


 1年目の勝負はなるべくしてなったなー、というカンジがあって予想もできましたけれど、2年目はどう決着するのかまったく読めませんでした。
 速水と清川、どちらが勝っても納得できる展開だったので。
 それだけふたりの努力と成長がすさまじかった〜。

 あ、でも速水が壁を越えるために行ったことを読んで『六三四の剣』を思い出したわたしは古い人間(笑)。
 ……火の位である上段を構えるのは速水も六三四も同じか。
 やぱし剣道少年にとっては少なからず影響があるのでしょうか(^_^;)。



 一連のシリーズとしてはもちろん、競い合うライバルを描いた青春剣道小説としても面白い作品でした。
 


3
 
『アクセル・ワールド1 黒雪姫の帰還』 川原礫 著

 こ、これは……今年デビューする幾人ものライトノベル作家の方々には非常に厳しい年になってしまったなぁ、という絶対的な印象を抱かせるほどの完成度。
 卑屈にならざるを得ない少年が、その卑屈さ故に少女を傷つけてしまうのだけれど、しかしその過ちに気付いて少女を守りぬくことを誓うお話。
 まっさっに! ビルドゥングス・ロマンのはじまりを予感させる今作です。


 主人公のハルユキを陰性の気質の持ち主にしたことで、スタートの位置が低くなっているのですよね。
 なので「這い上がる物語」としては、もう舞台が整っている、と。
 しかしそこでいつまでもウジウジしていると物語のテンポも悪くなりますし、読み手の興味も薄れていってしまいますし、それどころか動かない状況に嫌悪すら覚えるかもしれません。
 んでも今作では「社会における下層民」ということを必要条件だけ提示したあとは、誰もがうらやむヒロイン≪黒雪姫≫との出会い、興奮をかき立てる仮想世界≪加速世界≫との接触、さらに意味もわからぬままに始まる初陣……と、めまぐるしく状況が変化していくのですよね〜。
 この仕掛けの速さがとても好感!

 ≪加速世界≫という魅力的な設定を擁しても、それに筆致が追いついていかないような速度では困ります、が。
 んでも今作では設定をなぞるような勢いが筆致から感じられるのです。

 またオンラインゲームを舞台として用意した作品はこれまでもありましたけれど、オンととオフの相関性を活かした作品って少ないのではないかなーと。
 あるいはどちらかが従属するような関係だけであったような。
 アバターとリアルの差を物語の中に仕掛けたのは珍しいように思います。



 ハルユキという少年の成長譚としても見応えが。
 先述のようにハルユキの立場は社会の低いところにあったわけですけれど、ヒロインに見出されるというきっかけが彼を高みへと引き上げていくのです。
 きっかけがあるのは当然です。
 そこから物語が始まるのですから。
 でも、そのきっかけが偶然であったか否かで、物語への心象は変わってくるのではないかなーと。
 そのきっかけは、ハルユキが、社会に抑圧されながら鬱積していく想いをただぶちまけていたモノでしかないです。
 んでも、それはハルユキが行動していたから示すことが出来たわけで。
 ただただ不満と不平を自身のウチに溜め込んでいただけでは、≪黒雪姫≫の目に付くこともなく、彼女との邂逅も無かった。

 少年の行動が未来への扉を開けた。
 これほど真っ当な物語の始まりは無いと思います。
 それは偶然などではなく、少年が起こした、少女が願った奇跡なのです。


 そして動き出した物語のなかで少年は過ちを犯して少女を傷つけてしまうワケですけれど、そのことを自戒し、省みて、次になにをすればいいのか、なにをしなければいけないのかを彼自身が考えて辿り着くところが素敵なのです。
 傷つけてしまった少女への贖罪だとしても、少年はそこでひとつ大人になったと感じることができるのです。

 しかし少年が成長することを安易に達せられることも今作はしていません。
 願っただけで叶うのでは興醒めです。
 そんなの、物語じゃない!とも言えます。

 願いを叶えるための通過儀礼。
 叫び、駆け、拳を振り上げて邪魔するモノを打ち破る。
 血を流し、その身をどれほど痛めようとも、叶えたい願い――少女のためなら、少年は諦めない。
 いくつもの代償を払うことになっても、少年は少女のために戦うのです。
 それが、願うということだと。



 まだ13〜14歳の中学生だからこそ思える甘酸っぱーなやりとりも面白くて。
 素直でいられる時代は過ぎてしまって、かといって気持ちを伝えるすべをまだ巧くはできないでいるもどかしい世代。
 気付いて欲しいんだけれど、自分から伝えることを恥ずかしく思ってしまうワケで。
 そこにすれ違いが起こって、物語が始まり、動くのですよね〜。
 理性的、理知的にふるまっている≪黒雪姫≫とはいっても、所詮は14歳の女の子なワケで。
 彼女が見せた情緒不安定さは、いわゆる「デレ」とかいうこととは違って年相応の愛らしさだと思うのです。
 で、ハルユキよりも一足飛びに思考が達してしまうのは、オトコノコよりもオンナノコの方が成熟が早い……ということなのでしょうか?
 ≪黒雪姫≫もチユリも(笑)。


 しっかし、表紙&カラー口絵の≪黒雪姫≫は見事ですねぇ……。
 大丈夫?と掲載を不安に思うくらいの扇情さですよ。
 すごく……14歳らしい……ふくらみが……(えー)。


 さて、物語は始まったばかりで、今後の展開に激しく期待せざるを得ません。
 久しぶりに大賞らしい存在感を持った作品でした。
 

2
 
『楽園まで』 張間ミカ 著

 どこにあるか定かではない『楽園』を目指す忌み子たちと、彼らを「悪魔」と呼び追い立てる教会の尖兵である狩人のお話。

 胸に迫るお話でしたなぁ……。
 共同体からはじかれた存在が安住の地を探し求めるロードムービー。
 しかも居場所を探して旅をするだけならまだ救いがあるのに、彼らを共同体から追い出しておきながら利用しようとする輩がいるというトコロがキツイ皮肉で。

 わたしたち人間はさー、自分たちがどこにもいけない閉塞感を、そうした突出した存在を攻撃することで心の平衡を保とうとするのですよね。

 あいつらはわたしたちとは違う。
 違うということはわたしたちを脅かすモノだ。
 だからあいつらはわたしたちと一緒に生きていてはいけない。
 わたしたちがあいつらを罰するのは当然のことなんだ。
 仕方がないことなんだ。


 許されないほどの弱さなんて無いとは思いますけれど、弱さを理由に権利を正当化することは醜いことだと思います。


 そんな弱くて醜い人間たちに追い立てられ「楽園」を探し求める悪魔――人間より特別なことができるだけの存在、のハルカとユキジ。
 世界に何年ものあいだ雪が降り続けるということまでも自分たち悪魔のせいにされ狩り続けられ、それから逃げ続けていく幼いふたりの姿が痛々しくって、もうねもうね……(T△T)。


 作品外から見てみると、これがただの旅であったりしたらそれほど思いこみも無かったのかなー、とか思います。
 この逃亡と願いの旅が、雪に閉ざされた世界で進んでいくということが鮮烈な印象を残しているのではないかと。
 降り続く雪は人々から希望を奪っていき、温かい心を凍てつかせる。
 愚かで醜い人々の心と、残酷なまでの雪の真白さが、強いコントラストを残すのです。



 カバー&本文デザインの百足屋ユウコさんがまたイイ仕事をしてくれているんですよね〜。
 章タイトルのページでの挿絵の見せ方に気付いたときはゾワワッとキましたよ!
 まさにこの作品ならではのデザインです。
 ハルカとユキジの旅を暗示しているデザイン。
 本編をきちんと理解していないと、こうはデザインできないと思いました。
 スゴイ。



 著者の張間センセは今作を執筆されたときは17歳とのことですけれど、次回作が楽しみ&勝負ですね。
 いままで温めていた今作で受賞を果たして、さあ次の引き出しを見せてもらいましょう!という。
 ただ、今作で感じられたセンスはとても惹かれるモノがありましたので、次回作を期待していようかと思います。
 

『秋季限定栗きんとん事件 上』 米澤穂信 著

 くあぁぁぁぁっっっ! モヤモヤする――っ!!!(><)
 小鳩君も小佐内さんも、あるべきところに立っていない気がするー!
 自らの本性を隠して小市民として生きるためにはある程度までは自分を殺さなければいけないとはわかりますけれどっ。
 でも、さぁ……それでいいの?とか思ってしまうわ。

 小鳩君は周囲を傷つけてまで突出することを厭うようになったワケですけれど、その全てを否定してしまうのは間違いなのでは?
 うまく立ち回れることが大人であることにはならないと思うー。

 ちうか、そもそも無理があるっしょ。
 小鳩君、わずか1年とちょっとなのに綻びが見えてます(笑)。

 あれ?
 小佐内さんは復讐を抑えることをやめにしたんでしたっけ?
 それが理由であくまで小市民を目指す小鳩君とは袂を分かった……んだっけかなぁ。
 うへぇ。
 ちょっとウロオボエだわ。


 で、そんなふたりのあいだに割って入った新キャラが。
 ――ウザイ。
 小佐内さんにいいように踊らされているだけなので行動それ自体はどうでもいいんです。
 大局的に見れば彼がなにをしたワケでもないですし。
 言えるのは功名心と好奇心だけで事件を追うのなら、彼は記者ではなく探偵になるべきだと思うわ。

 んでもさー、人を表面に見えている部分だけでしか判断できないその性根については受け入れがたくって……。
 これだけ生理的に嫌いになれるキャラもひさしぶりだわ。

 彼はさ、なにも分からない子供ってワケじゃないのよね。
 わかって、考えて、判断した上であのように振る舞っているワケで。
 それはもう「大人」でしょう?
 未完成なものをあれこれ言うのは公正でないですけれど、完成したものを嫌うのはあるんじゃないかなー、とか。
 たぶん物語的には彼は下巻で墜ちる立ち位置だと思うのですが、その逆境を糧に再起し成長するようには思えないのですよー。


 そんな次第で刮目して次巻を待つ!(><)



 ちうかね。
 小鳩君と小佐内さんは互いを埋め合わせ助けられる存在なのに(互恵関係になれるくらいですし!)、こうして離れていることを痛々しく思うのです。
 このまま離れていくことは簡単だけれど、その道は二度と交差しないよ、きっと。
 わたしは、それはイヤだなぁ……。

 『秒速』のタカキとアカリを思い出しちゃって、もーっ!(T△T)
 

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