○● 読書感想記 ●○ 2009年 【1】 ※ 書影画像のリンク先は【bk1】です ※
旅立ちなんかじゃない、 これはきれいに飾り立てられた 追放劇だ。
――ですよ!? この絵と一文が持つ衝撃たるやハンパねぇっすよ!!!(><) なんかもう、これだけでハートをわしづかみにされましたよ。 わかりやすいキャラクター絵で賑やかにして、まずはキャッチーに読者を取り込んでしまえ!……というような昨今の(というかライトノベルというジャンルの)風潮とは全く違うデザインでとても好感です。 で、その口絵を過ぎてようやく本編冒頭なのですけれど、ここまたスゴイ。 くそったれの旅へ出よう。 ――から始まる一節。 これがひどくひどく胸を打つのですよー(TДT)。 ぶっちゃけ、本編は描写過多でまわりくどい部分がなきにしもあらずに思います。 んでも、この一節はストレートで、これだけで作品の価値が高まった、物語がひきしまっているような気がします。 こんなパンキッシュな一文、ひさしく見たことないわ! 素敵すぎます!(><) まだまだ物語の入り口でしかない今作。 それでも潜在する魅力をそこかしこに感じられる作品でもありました。 次巻、ちょー期待です!
そうやって皆の顔を窺ってから、セシリーは最後に相棒を振り返った。 アリアは心得ていたように頷き、そして苦笑した。 「最近わかってきたよ。あたしたちってたぶん、楽には死ねない」 まったくだ。 「それでも地獄の果てまでついてきてくれるか」 「あたしの答えは死んでも変わらないよ」
んきゃあああああっっっっ!!!!(≧▽≦) このふたりって! このふたりってぇぇぇぇっっ!!! どんだけ通じ合ってるんでしょうか、まったく!! しかしルークも負けてないですよね〜。 彼なら「できる」と信じ切って背中を押してくれたセシリーのためにも、いま自分にできる全ての力を注いで、そして彼女に望まれたときには必ずや現れるとか! いやいや、それを言うならリサの覚悟も忘れてはならないですね。 頼りないと判断されて事実を隠されてのけ者にされて。 それを悔しく思うなら、頼れる存在まで上りつめればいいだけのこと。 彼女も自身の弱さを自覚して、それを受け入れて成長しているのですよね。 セシリーとアリア。 ルークとリサ。 そしてセシリーとルーク、アリアとリサ。 この4名が織りなす物語の熱ったら、とんでもないわ!(><) 今シリーズでは恋心と友情がこうして別個に描かれているために、それが同軸上に置かれていた『上等。』シリーズよりも深い部分まで描けているような気がします。 安定にあった世界がそれぞれが思い描く明日のために分かれ、そして集い、新しい世界のカタチが見え始めた今作。 セシリーが、ルークが、アリアが、リサが。 どんな世界を作ってくれるのか見せてくれるのか楽しみです。
「リディアがあんな調子であんたにせまったのに、何もなかったなんて驚きだよ」 「だけど僕としては、ちょっといやがってるくらいのリディアがいいというか」 「ヘンタイかよ」 「いや、リディアが自分から積極的になってくれるのなら大歓迎だよ。やっぱり、まるごとリディアでなきゃいやなんだ」 「案外ロマンチックなんだな」 「ニコ、わかってくれてうれしいよ」 「だったらそう言やいいのに。誰でもいいのかなんて、リディアがそんな女なわけないだろ」
ニコでなくてもあきれるわ!(笑) 結局のところ、リディアもエドガーも、心の底から誰かを愛するなんてことが自分の身に起こるハズが無いと信じ切っていたところで出会ってしまったものだから、その未経験ゾーンにお互い戸惑っているだけなんですよねー。 はいはい、お似合いお似合い(´Д`)。 中盤で結婚式なんて大イベントを消化してしまってどうするのかと思いましたけれど、事件解決が初めての夫婦の共同作業になりましたよね……ってコトで? 今回はどちらかといえばエドガーのほうがたくさん立ち回っていた印象が。 でもって最後のピースを埋めたのがリディア、と。 身を裂かれるような選択が無くて、万事めでたしと思える事件でした。 良きかな良きかな。 ふたりの気持ちがハッキリしたのって『ロンドン橋に星は灯る』あたりじゃなかったでしたっけ? シリーズ中盤、もう7冊も前のお話ですよ? ほんとにこのふたりはなにやっていたんだか(笑)。 ともあれ、ようやくふたりは晴れて夫婦になったわけで。 めでたきかな! もうひとりじゃないリディアとエドガーが、待ち受ける苦難をどう手を取り合って乗り越えていくのか楽しみです(≧▽≦)。
七緒は小さく微笑み、 「私は七緒だから。七は切りたくなかった。それだけ」 と言った。 「そんな理由で――」 北島の言葉を遮るように、七緒は続けた。 「それに、いづれ一発ツモならタンヤオ七対子でも倍満でしょう?」
表のドラ2枚を切った上で残りされたツモは1回というトコロでリーチ。 それを一発で引き当てた上に当然のように裏ドラを乗せてくるという……。 自分の名前の牌を切りたくないという文学的表現と、見事計算をそろえてくるゲーム性とでもいいましょうか。 いやはや、立派に麻雀でライトノベルしてますよ!!!(≧▽≦) ちなみにこれが伏線だと気付いたときには、うあー!って興奮しましたよ!(笑) 爽やかで、気持ちの良い作品なんてほかの誰かに書かせておけばいいのです。 森橋センセにはセンセにしか描けない世界が、絶対に、ある。 それは苦しくなるほど息がつまって行き場のない世界なのかもしれないけれど、痛いほどに本当の気持ちが描かれているのだと。 そんな森橋センセが大好きです。
『薄妃の恋』 仁木英之 著 僕僕先生第2弾ってことで、祝シリーズ化!ってところでしょうか。 今作の最後のほうで神界仙界でのゴタゴタのようなものが描かれていましたし、あれって伏線ですよねー。 前作のラストで無事に僕僕先生との再会を果たした王弁ですけれど。 今作ではふたりで世界のあちこちを旅していくなかで夫婦であったり恋人であったりする関係のひとたちのトラブルに巻き込まれて。 で、痴話話の結果は別れたり別れなかったりするわけですけれど、そうした男女の仲について僕僕先生は「縁があれば巡り会う」みたいなことを言うわけで。 そうすると、やぱし自分と王弁には浅からぬ縁があったと認めているのかなーって。 普段、全然王弁に優しくないからこそ、いまこうして彼と旅していることを大切にしているように思えてくるのですよねー。 そこに「縁」があると理解しているのですから。 っていうか、王弁。 僕僕先生にメロメロで、どれだけ先生に軽く扱われてもその言葉に従ってしまう……っちうか、むしろ喜んでいる向きが見られるだけに救いがたいマゾですね。 いや、王弁が鈍感でよかったわ(笑)。 それだけ鈍感さ具合に救いがたいものを持っているのに、ただただ僕僕先生を慕う想いが結果を生んでいく様には反対に救われる思いがします。 疑うことが少なくない現実の世で、ただひとつの信じるモノを持っている人は強いなぁ……と。 がしかし。 王弁がことさら素直というわけではないのですよね。
光州を共に後にしてから既に日数こそ経っているが相変わらずの無防備な隙のなさで、接触はほとんどない。僕僕ときたらいつものように飄々として、王弁に近づいてくる気配もまるでなかった。 ころん、と寝返りを打って少女仙人の顔が王弁の方を向く。起きているときは小生意気に見える整った顔が、眠るとあどけない。 (先生、俺は五年間頑張ってよかった……)
アホでしょ!! ねぇ、王弁ってすくいがたいアホでしょ!!!(笑)
「別にそういうことに興味があることはちっとも構わない。健康な証拠だが、よく考えてもみろ。弟子が昼日中から、目の前で、鼻の下を伸ばしながら人の情交をのぞきに行くのを川向こうから見なければならない師匠の無念を。ボクは情けなくて涙も出ない」 日もすっかり暮れ、夜風が寒いと感じる頃にようやく第狸奴の門を開けた僕僕は、珍しく長めの説教を王弁に垂れた。 腰に手を当てたえらそうな様子ですら、なにか甘美な露がそこからしたたってくるようで、彼はうっとりとなる。 (ああ、なんか可愛いなあ) ぼへーっと師匠のくちびるを眺めていると、ぎゅうぎゅうと両頬を引っ張られる。 「キミは本当に外で寝たいみたいだな」
漏れてる! 考えてることが漏れてるから!!!(笑) しかしこんな「僕僕先生、だーいすき!」な態度が愛らしく頼もしくもあります、王弁。 迷うこと、惑うこともありますけれど、それは僕僕先生が自分のことをどう思っているのかを考えるときだけで。 自分が僕僕先生を好きだと想う気持ちは疑っていないのですよね、王弁は。 僕僕先生もそんな王弁だからこそ、縁を信じているフシもありますし〜。 上記の場面でも「師弟」としての理みたいなことを説いてますけれど、いやしかし、他人の情交をのぞいていた王弁にジェラっているようにも見えるのですけれどー??(≧▽≦) 人間と仙人という立場と生き方の違いのために僕僕先生もこのまま王弁をつなぎとめていて良いのか考えてしまうんですよね。 彼の子を成すことができないということに、彼に対して責任感をおぼえていますし。 立場の違いや男女としての問題。 こーゆーことって人間と仙人にかかわらず、現実にも起こりうるっちうか既に「ある」問題だと思いますしー。 そういう問題に直面しながらも、ただ僕僕先生のことだけを想って生きていく姿に、わたしは頼もしさを感じるのかもしれません。 師匠が嘆くくらいのアホな弟子かもしれませんけれど、生きていくことに対しての強さを彼は持っていると思うのです。 あー、続きが楽しみ〜。