○● 読書感想記 ●○
2009年 【1】

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20
『傍聞き』 長岡弘樹 著

 派手さは無いのですけれど、読み終えたあとでジワリくるものが。

 読み始めはジャンルが分からなかったのですよねー。
 そもそも以前、新聞の書評欄で見かけてタイトルをメモっていただけなので、内容とかさっぱりおぼえていない状態だったもので。
 で、読み終えたところでわかったのは、今作って推理ミステリだったのですね。

 推理ミステリっていったら殺人が起こった強盗があったり、なにか大きな事件があってその真相を探るというものがひとつのパターンだと思うのです。
 んでも今作はそうした大きな事件という派手さがなく、かといって日常ミステリまで偏りがあるのでもなく。
 不可解な出来事という意味での事件は確かに進行していっているのですけれども、それが解決されるべきものなのかまでは不明で。
 ただ読んでいく中で「何故なんだろう?」という意識だけが浮かんでくるという。


 推理ミステリに必要なことって、事件という大きな枠組みではなくて、些細なことであっても出来事を意識させることにあるのかなー、と。
 舞台仕掛けの大仰さではなく、小さくても読み手の関心を集めるような違和感……みたいな?


 もちろん今作は表題作を含めての中編が4編という作品規模も、そうした「大仰な事件」を扱えなかった理由になりましょうけれど。
 んでも、このくらいの規模の作品のほうが、最後で全てが明らかにされたときの爽快感、切れ味は鋭いような気がします。
 小さくてもカミソリは良く切れる、みたいなー。

 収録されていたどの作品も、その切れ味が良かったのですよー。
 しかも「なるほど!」と頷けただけでなく、どうしてそのような不可解な出来事が起こったのかという背景が明らかにされたことで、そこに小さな感動があるのですよねー。
 どの出来事も、人のちいさな優しさから生まれていたものなので。
 これは素晴らしい!

 大きなカタルシスはありませんけれど、読み終えての満足感はなかなかのものでした。
 

19
『パララバ -Parallel lovers-』 静月遠火 著

 携帯電話だけがふたりを結んでくれる、たがいの平行世界で起こった殺人事件の真相を探る物語。

 ……って、ガジェット、古くない?
 「携帯電話」とか「平行世界」とか。
 2009年のいま、この作品を読むためのフックがわたしには見あたらないっちうか……。

 今作って青春恋愛モノでも学園モノでもなくて、単純に推理ミステリだと思うのですよ。
 そこにライトノベルらしい既存のガジェットを当てはめただけで。
 ゆえに「新しい才能に出会った」感動みたいなものを感じられなかったかなー。
 才能って言い方が大げさすぎるなら、もっとフランクに静月センセならではの物事の見方、考え方、センスって言ってもいいかも。


 もし今作が「平行世界」なんてファンタジーに逃げ込まずに、地球上の離れた場所に位置したふたりだけれども、そこは「全く同じ眺望に作られた街」である……といったアホみたいだけど真面目でスケールの大きい仕掛けを用意していたら、それこそ新本格の域に昇華できたのではないかと思うのです。
 難しいことだとはわかっていますけれどー。

 で、そうした仕掛けに新機軸を持ち込んでいないせいで、推理ミステリとしても青春恋愛モノとしても新鮮な印象を残さないのですよねぇ……。
 平行世界がどこまでも平行世界なら、そこにカタルシスは無いと思うー。


 出会うことは不可能ではない。ただ想像を絶するほどの覚悟が必要なだけ。
 その覚悟に、わたしは感動を覚えるのです。


 ラストシーン。
 青春の思い出を一ページ抱けたことを倖せと思うのか、過ぎ去ってしまった時間を諦めることにしたと思うのか。
 最後の最後、平行世界としてあり続けることを示唆しているのだとしても、それは倖せではないような……。
 ただいたずらに期待を引き延ばしただけっちうか。

 今作は奇跡を描いた物語だけれど、悲劇でもなければ切なさを抱くようなことも無かったです。



 イラストの越島はぐセンセも第15回電撃イラスト大賞で銀賞受賞、今作がデビュー作となるそうですが。
 淡くて柔らかいカンジの絵柄は好印象かも。
 主流のアニメ絵路線よりは現実寄りで、受け入れやすさはあるかなー。
 そう言う意味で越島センセなりの個性を見られる……と思っていたのですけれど、なんか、こう、誰かの印象を抱くなぁ……と。
 ひとしきり考えたところで、放電映像センセの印象を抱くのかなぁ、という結論に。
 はてさて……?
 

18
『TOKYO BLACKOUT』 福田和代 著

 東京に殺された。
 大切な人を亡くしたことの理由を大都市の混沌に求め、復讐にはしる物語。
 そこに生きとし生けるもの者を混乱におとし、残されたたったひとつの願いをかなえようとする、奪い返そうとする。
 そして願いは叶えられ、犯人はかりそめの勝利者となるお話。


 東京の生命線はきわめて脆弱なものであり、都市機能を人為的に、それもわずかな人数でも麻痺させることはできるという。
 もちろんイザというときのバックアップは幾重にも張り巡らされているのだけれど、その上をいく犯人。
 んー……どうなのかなー、このあたり。
 東京に構造的な欠陥があるのはわかるのですけれど、犯人に追求の手をスルリとかわされていく関係者の様に、なんというか滑稽さをおぼえてしまったり……。
 酷い言い方をしてしまうと、都市の生命線を握っている関係者ってそこまで「無能」なの?と疑問視してしまうわ。

 このあたりは、まあ、物語的要請なのかもしれないとは思いますけれど、それにしたって後手後手に回る関係者は報われないなぁ……。
 事件解決にしたって関係者が攻勢に転じたから好転したわけではなく、ひとつには解決に至る道筋が「偶然」関係者に転がり込んできたからですし、さらには結局のところ犯人の「野望」を最後まで止めることができなかったからですし。
 ゴールしたあとの犯人に追いついただけ……という。


 犯人の前に無力であったというシニカルさは好きですけれど、そこへ至るまでの過程に高揚感はなかったかなー。
 むしろ「東京大停電」という危機から派生した個々の事件におのおのが窮していただけという印象が。
 それも事件の中身はわりと淡々としているというか……。


 もちろん、そうして派生した事件には物語解決(事件解決ではなく!)の関連性で結ばれていたといった仕掛けは好感できましたけれど、それはむしろダイナミズムより矮小性を感じてしまったり。
 東京という大都市が未曾有の危機に陥った状況だというのに、「1冊」という本の中で描かれる小事件が繋がるだけで全体像が見えるというところに違和感をおぼえたのですよー。
 その関連づけ方に作者の意図を感じてしまう……っちうか。



 唯一、職業人として犯人に負けなかったのは片山看護師だけだったような。
 どんな危機にあっても乗り越えてやるという意志を強く持ち、通常の手法では袋小路に陥るところを「非常識」「非日常」の機転で立ち向かっていくのがプロフェッショナルでしょう?

 電力会社など関係各所に精力的に取材されたそうですけれど、その結果に物語へ活かされたことが「関係者の限界点」であったというのであれば、すごくやるせないお話です……。
 その限界を超えてみせることが、創作の魅力のように思うのです。
 


17
『回帰祭』 小林めぐみ 著

 環境の悪化から地球を脱した人類。
 そのうちのひとつの宇宙船がとある惑星へと辿り着いてから300年が経った頃、その惑星では生まれてくる子供の男女比に偏りが生じていた。
 9:1で圧倒的多数で誕生してくる男子は、16才になって女の子に選ばれなかったとき、故郷である地球へ「回帰」する旅へと送り出される。
 そうした惑星の成り立ちに少しだけ疑問を持ったオトコノコが、回帰祭に潜んだ真相へと迫っていく本格SF作品。


 あー、これはSFを読んだって気になりましたわー。
 おなかいっぱい、ごちそうさま!ってカンジ。

 一見して不均衡である事象には、それがそうあるべきである理由が存在する。
 それを法則性で証明してくる表現方法がSFなのだと思うのですよねー。

 「なぜこの星では『9:1』でしか男女が生まれてこないのか」

 それがその星の「常識」だったとしても、その常識があきらかに環境へ負担を強いているのであれば、その常識を疑えってことで。
 環境がその法則を求めているのであれば問題は無い。
 でも、環境が成り立ち往かないことが予測できるのであれば、その法則はどこかいびつなのです。
 それを「常識だから」ということで放置してしまってはいけない……という警句?
 (いや、それは行き過ぎか……な?)


 そんな「世界に隠された法則」を探し求めることや、主人公たちを導く「隠者」、生命の価値、そして未知との遭遇。
 いや、もう、SF要素が幕の内状態(笑)。



 もちろん男女比の不均衡が及ぼすオトコノコとオンナノコのすれ違いの物語の側面もあるのですけれど、これはあくまで「側面」って位置付けしか無いのではないかと。
 ちうか、小林センセに甘いラブロマンスを求めてはいけないと思うー(笑)。
 センセはあくまでSF作家なのだと思うのですよー(^_^;)。


 だいたい、そんな不均衡のもとで育まれた感情がわたしたちのそれと同じであるのかどうか、ちょっと難しいかなぁ……とか思ったりして。
 フェイクだとかまでは言いませんけれど、不健全、ではあるかなー。
 ことに今作のライカとヒマリは、出会いもその生い立ちも簡単ではないところにありましたし。
 言うなれば「吊り橋の恋」に近いような印象が。


 いや、むしろ作品で描かれた状況を考えるに、ライカとヒマリの恋心なんてこの世界では真っ当なほうなのかも……とか思ったりして。
 作中では偏った男女比が原因でかつては抗争が起こったとされてますけれど(おそらくは女子の奪い合いや、女子に対する性搾取)、制度化された今ではそれら犯罪は水面下に潜ってしまったのではないかなーとか。
 穏やかに、そして痛くない「犯罪」に変貌して。

 もちろんそうした犯罪へ走らないような「統制された、あるいは不抜けた市民」の姿が描かれていますけれど、それこそ嘘くさくて……。
 ちょっと恐い考えに……。

 そういうダークっぷりを想像出来る設定もまた、わたしが思うところのSFかなー(苦笑)。
 


16
 
『ブルースカイ・シンドローム2 今も空は眩しく輝いて』 一の倉裕一 著

 前作でロンにフラレたリアンを登場させた第一章。
 続刊のイントロとしては新鮮味に薄くて、今回は短編集というカタチなのかな〜……と思ってしまったのですけれども。
 いやいやいや、とんでもねぇっす!

 たしかに全7章のうち5章までは個々に独立した話とも見て取れますけれど、続く第6章では各章で提示されたいくつかの事象が集められていって真相に迫るという展開。
 そのダイナミズムには興奮しましたよ!

 伏線の張り方にもいろいろあると思うのですけれど、こう、直列的に「この先に待っている」カタチで張られたものより、いくつかの話を並列的に展開させてひとつに集約させる手法のほうが伏線としての意味合いは重くなってくるのではないかなーと。
 もちろん、常にそれを行うべきとも思いませんけれど。
 並列的に描いた場合1冊の「作品」としては厚みが及ばなくなるのではないかとわたしは思うので。

 でも、それを「やる!」と仕掛けたからには集束地点で全てが結実するように画策し、そのエネルギーでもって物語の「厚み」と天秤にかけるしかないと思うのです。
 で、今作はそれをやり遂げたと、わたしは思います。



 本編の感想としては、ロンは遺伝子レベルでシレンに調教されているんだなぁ……とか思ったりして(笑)。
 ロンってば、シレンの本気の願い事に対して無条件で従うしかないようにカラダができちゃっているんですもん!
 この人、シレン無しでは生きていけないんじゃないかって心配だわ……。

 でも反対にシレンのほうはそうでもないような雰囲気があって、ちょっと幻滅。
 ロンは先述したように「シレンありき」の人生を送っているのに、シレンはロン無しでも生きていけるみたいじゃないですか。
 ロンと人生レベルで離ればなれになることを選択肢のひとつとして数えてみたところがロンに対して犯罪レベルなのではないかなーとか思うのですよ。
 日頃、ロンには貞節貞淑を求めるのに、翻ってみたとき自分はどうなのですかと。
 なんか、ちょっと……ズルイ。


 このふたりの鍵は、シレンのほうにあると思うのですよね。
 ロンはシレンと一心同体にすでにあるのに、シレンのほうは距離をカンジさせるのです。
 それは限りなくゼロ、あるいは「ゼロ」と言ってしまってもいいかもしれないのですけれど、しかし「ゼロ」という距離なんですよ。
 全てが同一ではない。
 そこがなぁ……んー……もどかしいのかなぁ。

 ふたりが違う別個の人間であることは間違いないので、きっと、多分、シレンのようなとらえ方が普通でしょうし正しいのでしょう。
 んでも、究極的にはロンのような脊髄反射で「しか」考えられないような関係になっていて欲しいと思う次第。
 絶対無敵の信頼関係とでも言いましょうか……。

 夫婦だ夫婦だって言っているんですから、もっとふたりでお互いのことをどれだけ気にしているか話し合えばいいんですよ。
 物理的な距離がふたりを離ればなれにしていますけれど、テクノロジーがそれを解消してくれているというのに、その好機をまったく活かしてないんですよね。
 まったく、奥手すぎるわ、ふたりとも!(≧△≦)


 まぁ、そんなイライラさ加減も、この作品の魅力ですかー?
 夫婦という契約が成された上での、友達以上恋人未満な関係。
 それは安全を確保した上での火遊びのようで。
 危なっかしいったら仕方ないですよ。
 その結果、傷ついたり傷つけたりしながら、前に歩いていくんだろうなぁ……。



 良いことも悪いこともあって、今回はプラマイゼロなお話。
 でも、ふたりがふたりでいられるなら、それは初めからプラスだったのですから、それもまた悪くない結果なのかなぁ……と。
 ロンは言います。
 「なにもかも望んだって叶わない」
 だからこそ、人生は面白いのでしょう。
 


15
 
『とある飛空士の恋歌』 犬村小六 著

 だ、だまされた……ちうか、間違えてたわー。
 今回は1冊完結ではないんですね……。
 革命にともなう王政廃止、不自由の無い生活から転げ落ちた王子さまのことをやけに詳細に描写していたので、おっかしいな〜……とは思っていたのですが。
 片側しか描かないでは「恋歌」になりませんものねぇ……。
 だもので読み終えた直後は「あれれ〜???」と疑問符が並んでしまいましたよ(T▽T)。


 そんな次第で今回の感想としては「まだまだだな〜」というトコロ。
 互いの身分と立場を知らずに出会ったオトコノコとオンナノコが居て。
 それぞれに好ましい印象を抱いたというのに、ふたりの先にある未来は優しいものではない運命を背負っているという。
 「ロミオ&ジュリエット」と単純に言えるのかもしれませんけれど、オトコノコのカルエルのほうの負の感情が出会いより先に描かれている点で、オマージュ元よりその影が色濃いような気がします。
 またオンナノコのクレアにしても決して幸せな日々を送っていたわけではないので、彼女もまた暗いところからの立ち位置で始まっているワケで。

 ……うあぁ。
 これだけ距離が離れていると、ふたりの幸せな未来が思い描けないわー(T▽T)。
 でも「ロミオ&ジュリエット」なら、それでも、悲恋でも結ばれるのかなー。
 だとするとカルエルの義妹のアリエルがふたりのあいだに割り込む余地は無いのかなー。
 ふっ……応援しがいのあるオンナノコだじぇ(笑)。


 ……あ、え? ちょっと待って。
 これが「ロミオ&ジュリエット」だとしてカルエルがロミオだとすると、アリエルってマキューシオじゃないですよね??
 え? え? えええっ?!?



 本編の内容自体には若干肩透かしをくらった気がするのですけれど、それでも物語の今後を期待させるには十分でした。
 そんななかで今作の素晴らしいところを挙げるとすれば、口絵カラーと冒頭。
 空を往く浮遊島「イスラ」を雄大に描きながら、そこに重ねられるコピーが――

旅立ちなんかじゃない、
これはきれいに飾り立てられた
追放劇だ。

 ――ですよ!?
 この絵と一文が持つ衝撃たるやハンパねぇっすよ!!!(><)
 なんかもう、これだけでハートをわしづかみにされましたよ。

 わかりやすいキャラクター絵で賑やかにして、まずはキャッチーに読者を取り込んでしまえ!……というような昨今の(というかライトノベルというジャンルの)風潮とは全く違うデザインでとても好感です。


 で、その口絵を過ぎてようやく本編冒頭なのですけれど、ここまたスゴイ。
 くそったれの旅へ出よう。
 ――から始まる一節。
 これがひどくひどく胸を打つのですよー(TДT)。

 ぶっちゃけ、本編は描写過多でまわりくどい部分がなきにしもあらずに思います。
 んでも、この一節はストレートで、これだけで作品の価値が高まった、物語がひきしまっているような気がします。
 こんなパンキッシュな一文、ひさしく見たことないわ!
 素敵すぎます!(><)



 まだまだ物語の入り口でしかない今作。
 それでも潜在する魅力をそこかしこに感じられる作品でもありました。
 次巻、ちょー期待です!
 


14
 
『葉桜が来た夏3 白夜のオーバード』 夏海公司 著

 ああっ、今回もまた煮え切らない距離感……と思っていたら、クライマックスで学のほうだけ覚悟完了ですか?
 んだけど、「そのとき」が来るまで葉桜と共に居続けると決めさせたのなら、ほらー、ちょっともう少しふたりの仲を近づけるイベントをー、もっと……ねぇ?(^_^;)

 かりそめの共存体制に対して反旗を翻す集団の存在もチラ見させてきましたし、この世界の有り様、そして学と葉桜の仲についてはこれから……ってトコロでしょうか。

 ……最悪、ここで書き逃げもできる終わり方なんで不安なんですけれども!(><)
 電撃の「選考委員奨励賞」作品は立場微妙ですしねぇ……。


 押しつけられた間柄である<共棲>ですけれど、その結果ふたりは出会って、仲良くなって、家族になれたというのに、だからこそふたりは別れなければならない運命を背負っていると。
 うはぁ……辛くなってきましたよ。

 だからってふたりは「出会わなければ良かった」なんてことを言いは絶対にしないでしょうけれど。
 むしろその運命も受け入れた上で互いの人生に関わろうとする姿が目に浮かびます。
 がんばれー、がんばれーっっっ!!!(T▽T)



 復讐心に囚われていた1巻とは違って、2巻以降では学は周囲を見渡せるだけの余裕があって頼もしいです。
 もちろん見渡したからといって全てが万事OKに進むにはまだまだ若輩者なのですけれど、限られた選択肢の中から最良を「選ぼうとする」知恵があるっちうかー。
 無茶はするけど無謀ではない……ってカンジ?
 大切なところでは葉桜を信頼して信用して任せるけれど、それでも彼女が危険にさらされることを極力避けるような。
 そんなオトコノコらしさ、嫌いじゃないです!(笑)
 あからさまに態度では示さないけれど、ちゃーんと大切なことをわかっているっちう。
 いいじゃん。
 男子の鏡じゃね!?(≧▽≦)


 一見すると葉桜のほうが賢くて頼りになるように思える設定ですけれど、それはアポストリとしての部分が人間より優れているだけであって個としての優位差はいまやふたりのあいだで明らかになってしまいましたよね〜。
 今回の事件がトドメってカンジ。
 「しっかりしなければ」という葉桜の責任感は健気だけれど、<共棲>という関係を本当に理解できているなら、葉桜はもっと学を頼ってほしいです。
 いや、がんばるオンナノコは嫌いじゃないけど!(><)


 今回、事件に巻き込まれて腹部刺突の重傷を負わされた同級生がいましたけれど、それでも事件後には学と葉桜のことを許していたことに驚き。
 そ、そんなアッサリと……?
 いやでもしかし、共棲者となる人にはそういった信じられないほどの寛容さが必要なのかなー……とか思ったりして。
 異星人相手には「価値観が違う」どころの問題じゃなくなりますもんね、付き合い方が。
 物語的要請が強い部分ではあるような気もしますが、これはこれでOKかなぁ……。
 とりあえず次巻ではポニテの委員長の再登場を!(笑)
 ちうか、キャラクター消費率が高くてサブキャラが増えていかないのですよね、このシリーズ……。
 学と葉桜に焦点を当てるのも悪くないですけれど、少しずつ周囲の世界を固めていってほしいなぁ……と。



 それにしても森井しづきセンセの絵はいいですねぇ。
 カラー口絵の学と葉桜がとてもイイッ!
 ちょっとアンニュイっぽくて理知的なんですけれど、しかし少年らしい生意気さをカンジさせる学。
 コンサバっぽい服装で「わたし大人ですから!」と自己主張しつつもそのせいで逆に子供っぽさが見えてしまう葉桜。
 絵柄どうこうではなく雰囲気や空気を生み出せる絵師だと思うのです。

 発展途上のオトコノコとオンナノコである学と葉桜の物語を森井センセのような人が絵を添えてくれる倖せに感謝を!
 次作も楽しみにしてますので……お願いしますよ、アスキー・メディアワークス様!(><)
 


13
 
『魔王さんちの勇者さま』 はむばね 著

 うぁぁぁぁ…………っ!
 なんちうのかなー。
 この「自分が思うほど、世界は自分のことを嫌ってはないよ?」というカンジ。
 だから、もっと自分のことを、生きる世界のことを好きになってみようよ……って言っているかのような。
 はむばねセンセの作品はまだ2作しか読んでいないのですけれど、こうした優しさと悲しさが相半ばして存在する雰囲気は、ホント好きだわ〜。


 人の世界に害なすとされる魔族だけれど、魔族には魔族の生活があって。
 願うのはつつましやかな生活だけなのだけれど、ただ存在するだけでも人の世界に影を落とす彼らの存在は人間にとってまごうことなき「悪」。
 だから、人は魔族を滅せなければならない――自分たちのために。

 いわゆる「勇者による魔王討伐」のお話を、魔王サイドにウェイトを置いて一般的なそれから逆転した物語……というのはわりと聞く着眼点なので目新しさは無いですけれど。
 そこではやはり人と魔族の関わりや対立項をきちんと描いた上で、明確な落としどころを提示しないと物語として成り立たないと思うのです。
 そういう点で今作はひとつの物語の答えとしての「手段」をきちんと用意していたなー……という印象が。

 全ての物語に今回の答えが当てはまるとは、もちろんわたしも思わないです。
 でも、今回、物語の果てに導かれた答えは、澄人という先入観に囚われない自由な精神の持ち主の勇者と、自らを戒め、律し、善悪を判断できるサフラという魔王の娘であったからこそ手にできた答えだと思うのです。
 それはもう、彼らであったからこその物語であり、また、物語が彼らを必要としていたということなのではないかと。
 主人公が、ヒロインが、助演がモブが、別にほかの誰でも良かったような物語ではなく。
 物語と登場人物、それぞれが不可分の存在であったように思うのです。
 そうした関係を構築したはむばねセンセのセンスには惚れますわね〜。


 もっとも、それだけ物語と登場人物が深く結ばれていると思われる作品なので、わりと特異な物語でもあるとは思うのです。
 んでも、そうした「アクの強さ」も作品の、そしてはむばねセンセの魅力なのではないかな〜……と、わたしは好意的に思います。
 少なくとも、せんせの作品からはイヤらしい悪意は感じませんし。


 とにかくセカンド・ターニングポイントとクライマックス、そしてエンディングまでの流れがスゴイ!
 驚きを引きずりつつ迎えたクライマックスで、さらにその上を行かれてしまったわ!
 勇者は、やはり勇者でした……。
 たったひとつの命で世界が救われるなら、大切な人が救われるなら、それを引き替えにできるのが勇者。
 その覚悟を決め、全ての責任を負う存在こそが勇者なのだなぁ……と。
 そんな勇者だからこそ、全てを「預けてしまった」わたしたちは、自分自身を許せなく、やるせなく思ってしまうのですよね……。

 むしろ作品の中で描かれている「人間」の姿は、辛い運命を受け入れる強さを持っている魔族と比して、同じ辛い運命だとしてもそれを誰かに転嫁せざるを得ない弱さを持って描かれていることで、そうしたやるせなさが強く伝わってくるのですよね。
 そうした弱さは、はたして人間であるわたしたちの誰もが持っているものなので……。
 彼らを非難することは簡単だけれど、そのときは自分のことも見つめ直さないとね……。



 がしかし、そこまで引き絞られたクライマックスだからこそ、迎えるエンディングが眩しいものになったのだと思うのですよ。
 お見事!
 とても素敵な物語でした。
 

12
 
『ロウきゅーぶ!』 蒼山サグ 著

 んー……。
 これも、アレかなぁ。
 主人公の気持ちが切り替わることが目的になっている物語。
 それは手段のひとつであって目的にするには弱いような気がするんですよねぇ……。

 「練習場所を奪われそうになっている女子小学生バスケットチームを、主人公がコーチとなって勝利へ導く」
 ――というのが今作では目的という位置にあるのでしょうか。
 でもそれは小学生側の目的であって、主人公の目的ではないような。

 「どうしても彼女たちを勝たせてあげたい」という気持ちはそれに値するのかもしれませんけれど、でもそれは事情によってバスケットボールと関わることを忌避していた主人公の弱い心に起因するもので。
 その弱さを乗り越える物語と女の子たちの物語が、わたしにはいまひとつ合致してこなかったかなぁ……。

 つまりは、主人公が「どうしてもバスケットボールから離れたくない!」という切実な想いがわからなかった……ということなのかもしれません。
 目標としていた先輩が去り、高校生活を賭けて打ち込もうとしていた部活が休部になってしまって腐る気持ちはわからないでもないですけれど、であるならその目的というかモチベーションは部活に対して向けられることがストレートだと。
 小学生の急造チームを勝たせてあげようとするのは本来の目的からはズレているような気がしてならないのですよー。


 また、そうまでして勝たせてあげたい女子小学生チームのほうの「押し」もはたして正統であるのかどうか疑問が。
 同学校の男子チームが彼女たちの練習場所を奪おうとすることから物語が始まっているワケですけれど、実のところ男子チームの考え方も分からないではないのですよね。
 先の大会で好成績を収めたことでヤル気が上がってさらに練習量を増やそうとしているところ、「楽しいバスケットボール」をしていた女子チームには退場を願ったというものですよね。
 ようは結果と過程のどちらに意義を見出していたのかの違いで。

 そんな男の子たちの意志を女子チームの「押し」として配することで仮想悪のようなポジションにされてしまったことが可哀想……。
 あげく「自分だって小学生のころは週三の練習だったからちょうど良い」なんて主人公に言わせて行為を正当化されるのは、ちょっと納得いかないっちうか。
 結局、自分基準か……みたいな。


 もちろん好成績を収めた男子チームを学園宣伝のために利用とする学園経営者側の思惑は物語的「悪」として存在するのは認めるところなのですけれど、だからこそそれは「戦う相手が違う」だろう、と。


 女子小学生が居場所を作るために必死になっている姿はいじましいですし、また練習を通じて年上の高校生男子へ抱くほのかな恋心も微笑ましいですし、でもってその気持ちを分かってあげられない主人公の鈍感さにヤキモキするのは面白かったですけれどー。
 でもその面白さって作品の外の面白さのような。
 読み手の側へ向けてのアピールでしかない……と言っては言い過ぎかなぁ。
 「萌え」という商品、と言い換えられるかもですが。



 バスケットボールの戦略・戦術については面白かったです。
 とんでもスポーツに陥るのではなく、きちんと理詰めで行われているっちうか。
 理詰めで行われつつも、今作ならではのエッセンスを加えて勝ちに行っているところは十分に物語として機能しているなー、と。
 でも、そんなバスケシーンが挿絵として1シーンもなかったことに対し、やはり「萌え」を消費するために生み出されてしまったのかぁ……と少しやるせない気持ちに。


 いろいろと素直には受け取ることが難しい作品でした。
 

11
 
『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』 荻原規子 著

 えーっと、なんですか。
 家庭の事情で人より少しだけ隔世な生活を送っていた女の子が、それは自分の「出自」にまつわる理由であったと知って。
 でもってそんな彼女はある筋の存在からは貴重な人材であるためにいろいろと狙われるので、これまた「彼女を護る」ことを運命付けられた男の子がいて。

 お互い「こんな生き方イヤだ!」と反発することに気持ちが通じ合うのだけれど個人の意志は運命の前に小さなモノでしかなくて、結局はその運命を正面から見据えて受け入れるしかないと気付くお話?

 その運命を受け入れるまでがイライライライラしたわー。
 女の子は逃げてるだけだし、男の子は自意識過剰だし。
 まぁ、中学生の男の子女の子としては、それでも平均的なレベルなのかなー。
 そうした自我に囚われていることは無駄である……と最後には悟る(悟らされる)ワケですし、世界のステップをひとつのぼったワケですよね?

 うーん……。
 そう考えると、荻原センセの展開術は絶妙だったということ……なのかなぁ。
 ここから始まる大きな物語の序章……と考えれば、十分にその意味意義は果たしていると分かりますし。


 でもなぁ……。
 ここからはじまる物語への高揚感みたいなものは読後になかったかなぁ。
 現状、彼女たちが理不尽な生活を強いられているのは「大人」の理由であって、「子供」の彼女たちはそれを受け入れるしかないというもので。
 それを悟ったのは立派なことだけれど、続く物語というのはその「大人の枠組み」のなかへ挑んでいく……というところで止まっているのですよね。
 挑み、どうするのか。
 その目標が見えてないっちうか。

 んー……。
 それをこの時点で求めるのは飛躍しすぎでしょうか?



 気持ちを切り替えただけで脱せられるような窮地を認めたくないだけかもしれません。
 もっと、こう……。
 派手好きなのかな、自分……。

 まぁ、ふたりの物語はこれからってことですし、続きに期待します。
 理不尽な大人の世界に飛び込んでいって、その枠組みを彼女たちならではの感性でいかにして飛び越えて、壊していってくれるのかを。
 


10
 
『聖剣の刀鍛冶4』 三浦勇雄 著

 「完膚無きまでに敗北を喫するセシリー」 → 「セシリー、弱さを痛感」 → 「あらためて覚悟を決めて立ち上がる」
 ……の流れがパターン化しているような気がして、そこはちょっと不安。
 あまり繰り返されてしまうと、セシリーの成長の跡が見られなく思うので。

 もちろんアリアを相棒としてからの戦い方やその剣技などは巻を追うごとに着実に成長しているとわかるのですけれど、気になるのは考え方のほう。
 「なにかがあってから」自身の弱さにいちいち気付いているようではイカンでしょう……ってことで。


 まぁ、でも、しかし。
 その流れがあってこその「熱さ」であるとは思います。
 自信を打ち砕かれる主人公像というのはままあるパターンですけれど、そこから這い上がるのにプライドを一片たりとも残さず捨てきれる主人公というのは他に見ないような気がします。
 その割り切り方がわたしには「覚悟」に映るのです。
 目的の前には自身のプライドなど優先順位の下位でしかないと判断しているのですから。



 ちょっと今回からセシリーとルークの仲に進展が見られましたけれど、それでもセシリーの相棒といえばアリアでしょう!と言いたく。
 このふたり?の仲にはルークといえども割り込めない気が。

 そうやって皆の顔を窺ってから、セシリーは最後に相棒を振り返った。
 アリアは心得ていたように頷き、そして苦笑した。
「最近わかってきたよ。あたしたちってたぶん、楽には死ねない」
 まったくだ。
「それでも地獄の果てまでついてきてくれるか」
「あたしの答えは死んでも変わらないよ」

 んきゃあああああっっっっ!!!!(≧▽≦)
 このふたりって! このふたりってぇぇぇぇっっ!!!
 どんだけ通じ合ってるんでしょうか、まったく!!


 しかしルークも負けてないですよね〜。
 彼なら「できる」と信じ切って背中を押してくれたセシリーのためにも、いま自分にできる全ての力を注いで、そして彼女に望まれたときには必ずや現れるとか!
 いやいや、それを言うならリサの覚悟も忘れてはならないですね。
 頼りないと判断されて事実を隠されてのけ者にされて。
 それを悔しく思うなら、頼れる存在まで上りつめればいいだけのこと。
 彼女も自身の弱さを自覚して、それを受け入れて成長しているのですよね。

 セシリーとアリア。
 ルークとリサ。
 そしてセシリーとルーク、アリアとリサ。
 この4名が織りなす物語の熱ったら、とんでもないわ!(><)


 今シリーズでは恋心と友情がこうして別個に描かれているために、それが同軸上に置かれていた『上等。』シリーズよりも深い部分まで描けているような気がします。


 安定にあった世界がそれぞれが思い描く明日のために分かれ、そして集い、新しい世界のカタチが見え始めた今作。
 セシリーが、ルークが、アリアが、リサが。
 どんな世界を作ってくれるのか見せてくれるのか楽しみです。
 



9
『伯爵と妖精 すてきな結婚式のための魔法』 谷瑞恵 著

 もーっ!
 めんどくさいオンナだなーっ、リディアは!!!
 ようやく結婚までこぎ着けたというのに、この期に及んでなにをまだフラフラしているのでしょうか!!
 いい加減、逃げるのやめい!(><)


 そーなんですよねー。
 リディアは「逃げ出す」からいろいろと面倒くさいのですよねー。
 同じ面倒くささでも「踏み出せない」ならつかまえようがあって対処もできるのでしょうけれど、逃げ出されるともうね……。

 「踏み出せない」のは勇気がないのであって、その背中を後押ししてあげればいいのですけれど。
 「逃げ出す」のは目を背けてしまっているので、まずはこちらを向いてもらわなければいけないっちう……。

 エドガーが女性と関わりを持つなんてことはこれまでも十分にわかっていたことでしょうし、それが結婚を機にきれいさっぱり絶たれるなんてことも現実的ではないとわかっているハズなのに、どうしてそこで現実以上の潔癖さを求めてしまうかなぁ。
 いや、求めるにしても逃げずに怒ればいいと思うのですよ。
 もう、それだけのことをしても良い間柄なのですし。
 そこで逃げ出したらさぁ……問題はなにも解決しないでしょう?って。


 ……とまぁ、リディアばかりを責めるのは不公平ですか?
 当のエドガーも必要以上に素直じゃないのですから(^_^;)。

「リディアがあんな調子であんたにせまったのに、何もなかったなんて驚きだよ」
「だけど僕としては、ちょっといやがってるくらいのリディアがいいというか」
「ヘンタイかよ」
「いや、リディアが自分から積極的になってくれるのなら大歓迎だよ。やっぱり、まるごとリディアでなきゃいやなんだ」
「案外ロマンチックなんだな」
「ニコ、わかってくれてうれしいよ」
「だったらそう言やいいのに。誰でもいいのかなんて、リディアがそんな女なわけないだろ」

 ニコでなくてもあきれるわ!(笑)

 結局のところ、リディアもエドガーも、心の底から誰かを愛するなんてことが自分の身に起こるハズが無いと信じ切っていたところで出会ってしまったものだから、その未経験ゾーンにお互い戸惑っているだけなんですよねー。
 はいはい、お似合いお似合い(´Д`)。


 中盤で結婚式なんて大イベントを消化してしまってどうするのかと思いましたけれど、事件解決が初めての夫婦の共同作業になりましたよね……ってコトで?
 今回はどちらかといえばエドガーのほうがたくさん立ち回っていた印象が。
 でもって最後のピースを埋めたのがリディア、と。
 身を裂かれるような選択が無くて、万事めでたしと思える事件でした。
 良きかな良きかな。



 ふたりの気持ちがハッキリしたのって『ロンドン橋に星は灯る』あたりじゃなかったでしたっけ?
 シリーズ中盤、もう7冊も前のお話ですよ?
 ほんとにこのふたりはなにやっていたんだか(笑)。
 ともあれ、ようやくふたりは晴れて夫婦になったわけで。
 めでたきかな!

 もうひとりじゃないリディアとエドガーが、待ち受ける苦難をどう手を取り合って乗り越えていくのか楽しみです(≧▽≦)。
 



8
 
『ナナオ♥チートイツ』 森橋ビンゴ 著

 「薄汚ねぇな、どいつもこいつも……」

 とんでもないわー。
 出てくる人、出てくる人、ロクデナシばっか。
 まともに思えたヒロインの七緒ですら、結局のところ壊れていましたし。
 中也とふたり、結ばれはしてもまっとうな倖せが味気ないときた!
 うわぁぁぁぁ……。

 でも、このふたり。
 そういう関係だからこそ、これからもずっと一緒に居られるような気も。
 お互い常にスリルを求め続けるから、そのドキドキが恋心に……って、常に吊り橋効果状態。
 こういう真っ当でないカップルを書かせたら、森橋センセはホント巧い。
 ちうか、森橋センセが描いた真っ当なカップルというのは見たことありませんがー(笑)。


 世界を覆う閉塞感。
 ただ生きるだけなら死んだも同じ。
 生きていればきっと良いことがある……なんておためごかし、誰も信じてない。
 願うことはたったひとつで、そのひとつすら叶わないのだったら生きている意味なんか無い。
 たくさんの「良いこと」があっても、たったひとつの願いが叶わなければ。

 中也と七緒が置かれた状況は、恐いくらいに現実感が襲ってきます。

 でも、しかし。
 そうした底辺に生きていても、願いを持つことはできるという意味にも取れました。
 叶う叶わないは別としても。


 それにしてもイヤなモノをイヤと言い切り、願いが叶わないとなれば「一緒に死んで」と頼む七緒の鮮烈さったら!
 そしてそれを了解する中也の懐の深さっちうか決断力っちうか覚悟っちうか。
 惚れ惚れするわ、このふたり!(≧▽≦)



 でもって、今作は麻雀を下地にした博徒のお話なワケですけれど、思ったより麻雀麻雀していなかったかなー……という印象が。
 あまりクドクドと打ち方を語らなかったからでしょうか?
 たんに「麻雀の知識がある。経験がある」という程度のわたしには程良かったです。

 七緒は小さく微笑み、
「私は七緒だから。七は切りたくなかった。それだけ」
 と言った。
「そんな理由で――」
 北島の言葉を遮るように、七緒は続けた。
「それに、いづれ一発ツモならタンヤオ七対子でも倍満でしょう?」

 表のドラ2枚を切った上で残りされたツモは1回というトコロでリーチ。
 それを一発で引き当てた上に当然のように裏ドラを乗せてくるという……。
 自分の名前の牌を切りたくないという文学的表現と、見事計算をそろえてくるゲーム性とでもいいましょうか。
 いやはや、立派に麻雀でライトノベルしてますよ!!!(≧▽≦)

 ちなみにこれが伏線だと気付いたときには、うあー!って興奮しましたよ!(笑)


 爽やかで、気持ちの良い作品なんてほかの誰かに書かせておけばいいのです。
 森橋センセにはセンセにしか描けない世界が、絶対に、ある。
 それは苦しくなるほど息がつまって行き場のない世界なのかもしれないけれど、痛いほどに本当の気持ちが描かれているのだと。

 そんな森橋センセが大好きです。
 



7
『ヒトリシズカ』 誉田哲也 著

 『シンメトリー』みたいなオムニバスかと思って読み進めていたら、第2話相当の「蛍蜘蛛」でゾワワワワッと背中が冷たくなりましたヨ。
 具体的に言えばラスト2行。
 そこでそうつなげてくるかー!?ってカンジ!(><)

 もう、そこからは個々の話での事件を追うだけでなく、物語の全体像を追うことに必死になりました。

 それぞれのお話の視点は語り部によって変わってきますし、また語られる年代も異なっているので全体を把握することが難しいったら。
 ……ん?
 難しくは……ないのかも、もしかして。
 どの語り部も「シズカ」という女性を追い求めながら、しかし結局はあとわずかのところで手の先をすり抜けられているという情景なのですし。
 その、つかまえられそうでつかまえられない不確かさが逆に鮮やかなんですよねー。
 さすがです、誉田センセ。


 今作ってこの「シズカ」という女性をそれぞれの視点がつづった年代記なのかも。
 「シズカ」が自身で語るところは少なくても、彼女を追い求めていった――そしてつかまえられなかった――男たちの目がむしろ詳細に語っているワケで。


 ラスト、今度こそ最大最後のチャンスとばかりに追いつめはしたものの、しかしすれすらも逃れていった「シズカ」という女性。
 偉大すぎる逃亡劇でした。

 全てが終わったあとであらためて見る表紙が印象的。
 そっか……そういう意味があったんだなぁ、って。
 各話のタイトルページといい、良いお仕事をされてます、装幀の松昭教さん。
 作品の内容を理解した上でないと作れませんよね、これは。



 誉田センセの作品って警察小説だとかクライム・サスペンスだとかにジャンル分けはされるかと思うのですけれど。
 んでもどの作品でも根底にあるのは「家族愛」なのではないかなーとか思ったりして。
 だからこそそこに描かれる犯罪が、ただ憎しみで染まるのではなく悲しみの色が混ざってきてやるせなくなるのかも……。

 人が、どこかで間違ってしまうから罪を犯すのだと。
 でも、それをさせるのは世界が狂っているからだと。

 正しく生きるということは、どういうことなのか。
 そしてそれは意味あることなのかを考えさせられるのです。
 

6
 
『ピクテ・シェンカの不思議な森 わがまま王子と魔女の誘惑』 足塚鰯 著

 なーんで登場人物紹介の甘ロリ風な服装じゃないんでしょうかねぇ、表紙のムイは。
 もとはカラーみたいですし、もしかして雑誌掲載の絵とか?
 もったいないもったいない(ありがたやありがたや)。

 ところで池上センセは絵の雰囲気、変わりました?
 主線に色付けするようになったっちうか……。
 ちょっと輪郭がぼんやりするようになっていて違和感を覚えたりして。



 で、本編。
 前巻で夏休みに入って「森」へ羽のばしに来たムイのその後から始まる今作。
 かといって素直に休んでいられるのかと言えばそうでもなく、新しい契約書作りのだめに材料集めにカラダを張ってます。
 面倒くさがりだけれど、やるべきことは後回しにしない。
 ムイは相変わらず真っ直ぐな心根の持ち主で、読み手のわたしも素直に応援したくなるわー(^-^)。

 だものだから、以前から暗躍しまくりのティッセとか新キャラクターのグリジスとかが搦め手で物事を成し遂げようとする様にイヤなモノを感じるのですよね。
 こう、もっとストレートに勝負しなさいよ!みたいな(><)。

 でもグリジスに関しては怒りというより哀れみを感じてしまうところがあって、そういうキャラ造形は巧いなーと思ったりして。
 結局、彼は弱さから周囲を動かすことを選ばざるを得ないだけなんですよね。
 自分が手を汚すことを選ばない……とも言えませんけれど、手を汚すだけの行動を取ることが出来ないとも考えられるワケで。

 ティッセも知能派キャラの立場では、ムイのように前へ前へというように行動するワケにもいかないでしょうし。
 両者の立ち位置も仕方のないものなんですね、きっと。
 悪役というより嫌われ者という(^_^;)。

 ああ、単なる当て馬でしかないバレンはもうどうしようも無いですけれどー。
 ティッセやグリジスのように搦め手でくることすらせず、ただ自分の出自を誇るのみで接してくるからタチ悪い。
 それでいて自分のしていることは純然たる好意であるから、それを受け入れない相手がおかしいという理屈なんですから……。
 ムイが身分ある立場でなかったら、階級をかさにきて強引に許嫁とかにしてそうで恐いです。


 ティッセにしろグリジスにしろこういう人たちって明確に敗北を悟らせることが難しいと思うので、今後どうやって物語を展開させていくのか楽しみです。
 バレンは言うに及ばずですがー(苦笑)。


 今回はどちらかといえばラーシェン大活躍なお話でしたし、次はフィンドルにいい目をお願いします、足塚センセ(笑)。
 ちうか、このふたりって「もっと自分に優しくしてもいいんだぞ?」なんて待ちの姿勢だからダメなんですよね。
 それでは鈍感なムイには通じまいて!(≧▽≦)

 鈍感……っちうか、いま目の前で起こっていることに一生懸命ってほうかな〜?
 ホントに愛らしい主人公です、ムイは♪
 

5
 
『静野さんとこの蒼緋』 水鏡希人 著

 うへー、キツイー!(><)
 主人公の味方がひとりも居ない状況にストレス溜まったー。
 たしかに彼の言動は幼いものかもしれませんけれど、それをするに足る状況ができあがってしまっていると思うのです。
 んでも、そうした状況を考慮せずに周囲の人間はただただ正論を貫いて追いつめていくのですから堪りません。

 で、さらにはその正論を主人公が受け入れちゃうトコロがまたなんちうか……。
 あまりに弱腰……というよりは、この主人公の扱い、ただの狂言回しにすぎないのではないかと思ったりして。
 主人公なのに!(><)


 本来、中立の立場であるはずの筆者までもが神視点を持ち出して「実は裏ではこんなことがあるんですよー」と暗躍するものですから、蔑ろにされる立場の主人公には涙しますよ、ええ(T▽T)。
 これだけ酷い扱いを受けてる主人公も、そう見ないわ……。



 加えて展開もどうも馴染めなかったかなぁ……。
 ライトノベルは「なんでもあり」なジャンルかもしれませんけれど、それを広げるにはある程度の約束事が存在するのでは?
 現代物の傷害事件捜索かと思ったら、中盤以降でいきなり「魔法」の存在が飛び出してきて、それで万事証明されていく流れには納得しづらいモノが……。

 「魔法」が存在するのはかまわないのです。
 ライトノベルなのですし(電撃文庫はその呼称を用いてませんが、ここはご容赦をば)。
 でもさー、そういう流れに持ち込むなら、その存在を中盤までに十分に匂わすべきではないのかなー。


 でもってその「魔法」についても、「何が出来て何が出来ないのか」ルールが無いために「演出に便利な道具」にしかなってないような。
 都合良く「出来る」ことがあって、都合良く「出来ない」ことがあって。



 わたしには色々なところでキビシイ作品でした。
 


4
『不全世界の創造手』 小川一水 著

 現場一筋の職人さんが大活躍するという、小川センセのテイスト溢れる作品でしたなぁ。
 それも「効率化を目指す生産性」と「人が人であることを証明する創造性」の対決だというのですからたまりませんです。

 効率も大切なことであるに違いないのです。
 んでも、それは手段のハズで、達成されるべき目標ではないハズ。
 目標は、想いを形にする創造性に由来しているハズなのです。


 そんなガジェットもさることながら、お話の展開もまさに小川節炸裂!……というカンジ。
 誰もが無理だと判断しても自分だけは信じていることがあって、口で言うばかりでなく実際に形にして小さな実績を積み上げていって人々を理解させていくのだけれど、そのエポックメイキング的な手法に対して立ちはだかる旧体制――。
 いかな隆盛してきたとはいえ(旧)世界の前には小さな存在でしかない主人公たちは、一度はその壁に押しつぶされ挫折するのですけれど、それは自分たちが築いてきたモノを再確認させてくれるきっかけとなって、より強さを増して彼らは立ち上がる……という次第。

 そのなかで主人公とヒロインの恋愛感情も沸き起こっているのですけれど、それはサラッと流されてしまって詳細については触れない……というあたりも小川センセらしいわぁ(笑)。


 惜しむらくは主人公の少年が世界に対して偏見を持っている(ように感じる)ところでしょうか。
 主人公は創造性を突き詰めたいと願っているのですけれど、その原動力、根幹の部分に世界に対する憎しみのようなものがあるのではないかと……。
 もちろんそれは彼の生い立ちからして仕方のないことであるとわかるのですが。

 もっともそうした気持ちも挫折を知るまで。
 そこからはより大きな意識を抱いて世界に対して挑戦を始めたのだと思いたいです。
 であるならば、あのラストももっと深い意味をもってくると思うのです。
 

3
 
『そして花嫁は恋を知る 白銀の都へ旅立つ姫』 小田菜摘 著

 『黄金の都の癒し姫』の続編かと思って読み始めたら……あれれ? わからない情景が連続して。
 どうしてブラーナ帝国が存亡の危機に陥ってるの??
 え? ええ??

 ――と疑問符だらけになってしまった冒頭。
 なんのことはありません、前作とは異なる時代のお話だったのですね(^_^;)。

 エイレーネやアルファディルのその後とかを見てみたかったのですけれど、それも難しかったでしょうか。
 先の感想で述べたように物語のキモはエイレーネの出自にあって、それが明らかになってしまった以上、同じ舞台では物語が機能しなかったと思いますし。
 仮に物語として立たせるには新しいガジェットが必要となるワケで、そうするのではれば新しい舞台で始めることと大きな違いはありませんしね。

 でもやぱし、わずか2作で繁栄から存亡の危機へと変化させるのは急ではなかったかなぁ……と思わずには(苦笑)。
 その間のお話も見てみたかったという想いが。
 今作中でちょろちょろと触れられている時代の片鱗がまた、そういう想いを強めてくれるんですよね〜。
 500年ですよ!?
 エイレーネとの約束を果たして見事、賢帝となったグラケィアが、どーゆー男の人を夫に迎えたのか気になります(笑)。


 閑話休題、本編のこと。

 異教徒の国から攻撃を受けた帝国にかつての力はなく、北方の新興国へ援軍を求めるために皇女は旅立ち、そこで援軍を差し出す代わりに大公から求婚されたことがきっかけでお家騒動に巻き込まれていくお話。
 また嫁ぎ話か!とか正直思いましたけれどー(笑)。
 んでも、そこに至る過程とか皇女の立ち回りとか当然異なるものなのでOK。

 そして今作でも主人公たる皇女アグライアが前向きで分別ついた性格なので、ひっじょーに好感。
 援軍を求めるという使命を重々承知しているだけでなく、人や物事を見る目にバイアスがかかっていない素直さが、ねーっ!(≧▽≦)
 大公ユーリでなくても、その真っ直ぐさには惚れてしまうわ!

 ユーリの弟であるロディへの接し方を見るに、単に優しいだけではありませんもんね。
 間違ったことを間違っていると糾弾できる強さも持っている人ですし。
 うん。
 彼女の姿勢には憧れるわ。


 大公家のお家騒動では、今回もまた母子のすれ違いが描かれていたりして。
 うーん……。
 前作と共に「母親が元凶」というのは、小田センセ、なにか個人的に……?
 そんなことをうがってしまいますよ(^_^;)。



 困難にあっても自分に出来ることや自分の役割を見失わず、最良の結果を得るため克己する主人公のオンナノコ。
 そんなオンナノコに惹かれずにはいられなくなるけれど不器用過ぎてうまく気持ちを伝えられない堅物のオトコノコ。
 美味しすぎます小田センセ!(笑)
 これからも期待してま〜す!
 

2
『そして花嫁は恋を知る 黄金の都の癒し姫』 小田菜摘 著

 側室の子として生まれた皇女が異教徒の国へと嫁がされることになった自分の将来を憂いつつ、やがて明らかになった出生の秘密によって両国に緊張がはしるなか婚約者としての自分の立場を自覚して両国のために奔走するお話。

 政略結婚で異教徒へ嫁がされる第二皇女のエイレーネの自己改革というんでしょうか、目の前の状況に対して小さくとも一歩一歩進むさまは好感。
 変に腐ったり絶望したりしないでいるところが。

 もともと誰からも顧みられることの無い立場であって、生きていくことを儚んでしまっても仕方がないとは思うのですけれど、どんなことがあっても自分が生きていくことについては疑っていないところが素敵なのだと思うー。
 「生きていていいの?」とか内向的にならないところがねー。

 むしろそんな立場であっても皇女という身分から粗末には扱われず、ただ無為に過ごしてきた王宮から外の世界に触れて変わっていくさまが微笑ましいカンジ。
 自分の気持ちを正直に表して良いのだと初めて知ったときの喜びとか、そんな感情のおもむくままに大きな声を出したときの心地よさとか、そういう新鮮なことに触れるたびの仕草が愛らしいわー。

 そんな彼女が嫁ぎ先の王様と出会って恋を知っていく流れも柔らかくて優しくて。
 王様とはいっても出自はけっして貴いものではないアルファディルはエイレーネの立場や生い立ちも理解できるものでしたし、政略結婚とはいえ彼と出会えたことはエイレーネにとって幸いでしたなぁ……。
 政略結婚って言葉の響きはよろしくないですけれど、結局は男女の出会いの形のひとつですし、その出会いが良きモノになるのか悪しきモノとなるのかは当人同士の人柄によりますよねー……ってことで。
 政略結婚という「きっかけ」がなかったら、異教徒同士であるふたりは出会うことはなかったワケですし〜。

 ま、何事も前向きにとらえることができるかどうかってことでしょうか。
 ふたりとも地に足つけて未来を見つめることのできる人間だったから良かったのですね。


 とはいえ、お話のキモとしてはエイレーネの出自にあるわけで。
 それを彼女が知るトコロがひとつのポイント。
 そして知った後でどうするからが最大のポイントでしょうか。
 ちょっとエイレーネの行動は意外……っちうか、器の大きさを感じてしまったわ。
 彼女を異国へ嫁がせてしまったことは帝国の損失ではなかったかなぁ(^_^;)。


 前向きな主人公のお話は気持ちがよいものだと、そして恋を知り愛のために動き出すオンナノコは素敵だなと、あらためて思わされました。
 


『薄妃の恋』 仁木英之 著

 僕僕先生第2弾ってことで、祝シリーズ化!ってところでしょうか。
 今作の最後のほうで神界仙界でのゴタゴタのようなものが描かれていましたし、あれって伏線ですよねー。


 前作のラストで無事に僕僕先生との再会を果たした王弁ですけれど。
 今作ではふたりで世界のあちこちを旅していくなかで夫婦であったり恋人であったりする関係のひとたちのトラブルに巻き込まれて。
 で、痴話話の結果は別れたり別れなかったりするわけですけれど、そうした男女の仲について僕僕先生は「縁があれば巡り会う」みたいなことを言うわけで。
 そうすると、やぱし自分と王弁には浅からぬ縁があったと認めているのかなーって。

 普段、全然王弁に優しくないからこそ、いまこうして彼と旅していることを大切にしているように思えてくるのですよねー。
 そこに「縁」があると理解しているのですから。


 っていうか、王弁。
 僕僕先生にメロメロで、どれだけ先生に軽く扱われてもその言葉に従ってしまう……っちうか、むしろ喜んでいる向きが見られるだけに救いがたいマゾですね。
 いや、王弁が鈍感でよかったわ(笑)。
 それだけ鈍感さ具合に救いがたいものを持っているのに、ただただ僕僕先生を慕う想いが結果を生んでいく様には反対に救われる思いがします。
 疑うことが少なくない現実の世で、ただひとつの信じるモノを持っている人は強いなぁ……と。
 がしかし。
 王弁がことさら素直というわけではないのですよね。

 光州を共に後にしてから既に日数こそ経っているが相変わらずの無防備な隙のなさで、接触はほとんどない。僕僕ときたらいつものように飄々として、王弁に近づいてくる気配もまるでなかった。
 ころん、と寝返りを打って少女仙人の顔が王弁の方を向く。起きているときは小生意気に見える整った顔が、眠るとあどけない。
(先生、俺は五年間頑張ってよかった……)

 アホでしょ!!
 ねぇ、王弁ってすくいがたいアホでしょ!!!(笑)

「別にそういうことに興味があることはちっとも構わない。健康な証拠だが、よく考えてもみろ。弟子が昼日中から、目の前で、鼻の下を伸ばしながら人の情交をのぞきに行くのを川向こうから見なければならない師匠の無念を。ボクは情けなくて涙も出ない」
 日もすっかり暮れ、夜風が寒いと感じる頃にようやく第狸奴の門を開けた僕僕は、珍しく長めの説教を王弁に垂れた。
 腰に手を当てたえらそうな様子ですら、なにか甘美な露がそこからしたたってくるようで、彼はうっとりとなる。
(ああ、なんか可愛いなあ)
 ぼへーっと師匠のくちびるを眺めていると、ぎゅうぎゅうと両頬を引っ張られる。
「キミは本当に外で寝たいみたいだな」

 漏れてる!
 考えてることが漏れてるから!!!(笑)

 しかしこんな「僕僕先生、だーいすき!」な態度が愛らしく頼もしくもあります、王弁。
 迷うこと、惑うこともありますけれど、それは僕僕先生が自分のことをどう思っているのかを考えるときだけで。
 自分が僕僕先生を好きだと想う気持ちは疑っていないのですよね、王弁は。

 僕僕先生もそんな王弁だからこそ、縁を信じているフシもありますし〜。
 上記の場面でも「師弟」としての理みたいなことを説いてますけれど、いやしかし、他人の情交をのぞいていた王弁にジェラっているようにも見えるのですけれどー??(≧▽≦)

 人間と仙人という立場と生き方の違いのために僕僕先生もこのまま王弁をつなぎとめていて良いのか考えてしまうんですよね。
 彼の子を成すことができないということに、彼に対して責任感をおぼえていますし。
 立場の違いや男女としての問題。
 こーゆーことって人間と仙人にかかわらず、現実にも起こりうるっちうか既に「ある」問題だと思いますしー。
 そういう問題に直面しながらも、ただ僕僕先生のことだけを想って生きていく姿に、わたしは頼もしさを感じるのかもしれません。
 師匠が嘆くくらいのアホな弟子かもしれませんけれど、生きていくことに対しての強さを彼は持っていると思うのです。


 あー、続きが楽しみ〜。

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