○● 読書感想記 ●○
2008年 【2】

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(ラノベ指数 11/72)
20
 
『PARTER9』 柏枝真郷 著

 ドロシーとオーガストの仲は一件落着……なのかな?
 このふたりの問題って、結局オーガストの物わかりの良さっちうか理性?知性?だったような気がするー。
 落着したのだって、風邪で熱に浮かされていたドロシーの衝動的な行動が理由だったと思える次第。
 いえ、まぁ、ここに至るまでにドロシーは悩み悩み抜いていたワケで、その答えがタイミングとして発現してしまっただけなのかもですけれどー。
 ……本当に風邪だったのかな?
 もしかして知恵熱かも?(^_^;)


 次が最終巻らしいですけれども、こうなるともうひとつのカップル、セシルとフェイの仲が気になりますなー。
 単純に最良なのはセシルがフェイにむかって「愛してる」って言えるようになることだと思うのですけれど、そこに素直にたどり着くとは思えないあたりが難しいトコロ。
 むしろ心配なのは、そんなセシルのためを思ってフェイのほうから身を引く決断をしてしまわないか。
 彼女の本質って、けっしてどこまでも「待つ女」ではないと思うのですよー。
 ここぞというときには踏み出す勇気を持っているっちうか。

 風邪を引いた彼女のために手料理をふるまうセシル。
 で、そんな彼の姿を見て倖せを感じて涙するフェイ。
 いいんだけどなー、いい雰囲気、いい世界を作っているんだけどなー、このふたり。
 でもでも、まだ危うさを保っている関係、距離感、なんですよねー。

 ドロシーとオーガストの件をセシルが起因となって解決したということは、「男女のあいだに友情は成立する」という結論に持って行こうとしているのではないかと思うのですよ、柏枝センセは。
 だとすればフェイとの仲は異なる結論を導き出すのではないかと考えるのですけれどもー。

 うー……。
 気になる気になる〜っ!(><)
 

(ラノベ指数 23/72)
19
 
『そらいろな』 一色銀河 著

 ひじを壊した中学ナンバーワン左腕が、野球への想いを諦めきれずに破滅覚悟で完全燃焼する覚悟を決めるまでのお話。

 えー、あー……うーん?
 「野球を題材にしたラノベ」という特異性はあっても、「野球ドラマ」としてはステロかなぁ……と思った次第。
 「ひじを壊した」と言っても腕は振れるので投げられるワケで(振れると投げられるは違うというツッコミはひとまずさておいて)。
 そこに「次に壊したら取り返しの付かないことになる」という前置き付きで投球数が制限されているところにガジェットとしての妙が配されている……のかもですけれど、その制限は意味薄いような。
 30球だろうと50球だろうと。

 「投げられる」×「投げられない」の相克では「投げられる」に向いていて、「取り返しの付かないこと」に対して葛藤が配されたとしてもそこで恐れて動かないようであるのであれば最初から野球ドラマとして成り立たないと思うのです。
 つまりは物語として「失うことのないドラマ」ではないかなー、と。
 そうあるべきように初めから筋道立てられている……っちうか。


 一色センセが野球好きなのはわかるのですけれど、ドラマを野球に関連することだけで成立させようとしたことが物語の幅を狭めてしまっているように思ったりして。


 悪いお話ではなかったのですけれど、物語の振幅を弱く感じてしまったかなーと。
 


(ラノベ指数 10/72)
18
 
『レインツリーの国』 有川浩 著

 『図書館戦争』からのスピンアウトといったらこちらのほうが先なのでは?とか思ったりして。
 有川センセの『図書館』シリーズの登場キャラ、小牧教官が年下の気になる異性、毬江ちゃんへオススメした本……というあちらでの位置づけの本。
 毬江ちゃんにオーバーラップさせる目的であるからして、当然こちらの本でのヒロイン ひとみさんも聴覚障害者(中途失聴者)であります。
 そんな彼女が偶然の出会いから始まる恋に戸惑いながらも強く受け止めていくお話。


 スピンアウトという作品の出自を除けば、これまた真っ直ぐな恋愛話かなーと。
 ひとみさんの設定が設定だけに、ふたり直に言葉を交わして情を重ねるというわけにはいかず、そのやりとりは主にメールの文章を介するワケですけれど。
 このメールで気持ちを伝え合うっていう仕掛けが現代の恋愛書簡よろしくテンポ良く思わせるのですよねー。
 そこにあるのはふたりだけの世界といいますかー。

 全体の文章量はさほど多くは無いなかで、この仕掛けこそが物語を成立させるのに必要な情報を効率よく選別させているのではないかなーと。
 

 世間の悪意あるものは自信のなさそうな者を見抜いて寄ってくるのだ。

 中途失聴者であるひとみさんが自信を持てずにいたのはもちろん想像できますけれど、そんな彼女に限らず自信の無さっていうのは多くの人にあてはまることであって。
 自分なんて……と。
 でも自分が自信を持てないからといって、そんな自分でも信じてくれる人の「自信」を勝手に挫くことはどれだけ失礼なのかをおぼえるべきだよなーと思ったりして。
 むしろ自分ひとりでは自信を持てないからこそ、ほかの誰かが認めてくれることが必要なのだと。
 それは甘えではなくて弱さであって、弱いからこそ人は支え合うのでしょ?ってことでー。

 弱い人間がふたりになっても、世間の悪意の前にはまだまだ弱いままなのかもしれないけれど、だからといって支え合うことを後悔するようなことはしたくないなと思うのですよ。
 傷ついて傷ついて、それでも結局は負けてしまうのかもしれないけれど。
 それでも、一緒に生きていく、一緒に生きたいと願った気持ちまでを否定してはいけないと。


 短いながらも想いが詰まっていた一冊でした。



 ――でもさー。
 いろいろ言い訳してましたけれど、この本を毬江ちゃんに贈ったってことは、気持ち、もろバレじゃないの小牧教官!(笑)
 毬江ちゃんを相手にしておいて作中のふたりに自分たちを重ねてはいないなんて言い訳、通用するものか!
 ちうか、この内容からすると、むしろ婉曲な告白ですよ。
 直接的な言葉は言わずにすませて、相手には気付いてもらうっちう手法。
 小牧教官らしいっちゃあらしいのですけれど、ズルイなぁ(^-^;)。
 


(ラノベ指数 21/72)
17
 
『薔薇乙女学院へようこそ! 優雅にして危険な日常』 檜原まり子 著

 齋さまの神秘性が音を立てて崩れていくの巻。
 男性コーチに関心を寄せる紫子に対してヤキモチを抑えられないとか、こんなにも俗っぽい人だったなんて!(笑)

 行動目的がハッキリしていない分、その言動には読み手にとって「謎」めいた部分が描かれるわけですけれどー。
 でも紫子に対してそうした感情的な部分を見せ始めてしまっているものだから、そうして見せる「謎」の部分もまた同程度なのかなーと推測してしまうのですよ。
 個人的な、そうでなくても身内レベルで秘されるべき程度のものなのかなーと。

 まー、もとより子供っぽいところがあった人ですし(そういう点では世間慣れしていなくとも紫子のほうが「大人」のような気が)、いまさら神秘的なイメージを取り繕う必要もないかもですけれど。
 これまで神秘的に見えていた部分って、つまりは自分を取り巻く環境に関心が向かなかっただけだと考えられるので。
 それが紫子という触媒を得て、少しずつ見えている世界が広がっていっているのでしょうしー。
 ……って、齋さまの成長物語なのですか、これっ!?(笑)


 新キャラも登場して学院の中の様子が詳しくなり始めているところでもあるので、もう少し PRIMA ROSA がらみのエピソードが欲しいところ。
 学院における選ばれた立場ならではのお話といいますかー。

 わざわざ外の世界に出かけるたびに銀次が絡んでくる事件が起こるというのは、なんとも世界の狭さを感じてしまったり。
 別段、この時代の帝都の風俗を描きたいようにも思えないので、ならばいっそ、学院の中でのお話に終始してしまっても良いのではないかと思うのデス。
 

(ラノベ指数 24/70)
16
 
『この手の中の儚きもの 幻獣降臨譚短編集』 本宮ことは 著

 センセのサイトに掲載した掌編を主に集めたモノとはいえ、こうまで短いお話ばかりが集められていると目眩にもにた感覚が。
 ちゃかちゃか切り替わりすぎといいますかー。
 それだけに賑やかしさという点では成功しているのかなーとも思います。
 ……いまの本編が本編だけに、ねぇ?(^_^;)


 でもやぱし掌編は掌編というカンジ。
 キャラクターの新しいなにかを表現しているというワケではなく、息抜きというレベルでまとめられているっちうか。
 まぁ、このあたりのウェイトといいますか作品の重み?なんてものは、サイトで公表とするにはほどよいものなのかもですけれど、こうして出版される媒体においては物足りなさを感じてしまう次第。

 そんななかでも「マルチェのささやかな幸福」と表題作「この手の中の儚きもの」をわたしは興味深く思えたのは、やはり本編への関わり方がほかのそれと比べて幾分かは深いと感じたからでしょうか。

 マルチェはねー、厳しい立場にありながらもアリアを応援することに誇りを持っているから、わたし、好きなんですよー(^-^)。
 それもただアリアの立場に憧れているわけではなく、自分も一度は傷ついた上でそれでもアリアを支持することを選んでいるわけですから。
 やっぱりね、自助できる、そして克己するヒロインは素敵だなーと。


 「この手の〜」はアリアの両親の馴れ初めを描いた作品ですけれどもー。
 これはたしかに本編には差し込めないエピソードだったなーと。
 でも差し込めないから不要というワケではなくて、おかげでふたりの絆がわかった気がしますし、そのふたりに愛されているアリアの立場もまた愛おしいものなのだなーと。



 距離の問題もあるとは当然思いますけれど、こういうところでアリアがらみのネタでエピソードを用意されるシェナンは、ライルに比べて優遇されてない?とか思ってしまうのですけれどもー。
 わたし、ライル派なんだけどなー……。

 ちうか、確認したいんですけれど、ライルは「完璧に」アリアにフラレたことになっているんでしょうか?
 あのときの告白。
 あれって、あのときの状況からして断るほかなかっただけで、アリアとライル、ふたりの立場がこれから変わるようなことがあればまたチャンスがおりてくる……って解釈しているんですけれど、わたしは。
 こういう扱いされるってことは、シェナン×アリアなのかなー……。
 

(ラノベ指数 17/70)
15
 
ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスと黄昏に見る夢』 青木祐子 著

 「……ばかです」
 んきゃあああああっっっ!!!
 クリスにそんなことを言わせる、言われるなんて――っ!!!
 いいなぁ、シャーロック〜(≧▽≦)。

 この巻はシャーロックが、現状、立ちはだかる問題をひとつひとつ解決していくお話だったので、嗚呼、がんばっているなーと微笑ましく。
 これまでウジ夫だったことの反対で、えらくアクティブなことに驚いたりして。
 アディル嬢に対しても気圧されているようなところを見せませんでしたし、むしろ知恵を巡らせて自分の立ち位置をハッキリさせているっちう。
 やるなっ、色男!


 ようやくシャーロックが動き出すここまで、クリスは待っていたんですもんねぇ……。
 遠回りしすぎだよ、あんたら……(T▽T)。

 こう、「耐え忍ぶ女の子」像ってコバルトでは珍しい……?
 目の前の問題に対して自発的行動によって解決を図ることの出来ない性格や立場も。
 そういうトコロも今作の特色なのかなー。



 闇のドレスのことはありますけれど、クリスはお母さんと会えたわけですし、物語としてもひとつ区切り付いた感があるんですよねぇ。
 もちろんシャーロックとクリスの仲にしてもこのまま順調に育まれるワケでもないでしょうし、まだまだ先があるのだとはわかってますけれど。
 

(ラノベ指数 19/70)
14
 
『荻浦嬢瑠璃は敗北しない』 元長柾木 著

 世界の有り様を社会科学でも自然科学でもなく、人文科学から解き明かそうとした、解き明かそうとしているのが今作っちうかシリーズちうか元長センセっちうか。
 だからわたしにはカッコよく映るのかも。
 理解はできなくても、理解しようとする方向の先にあるものなので。


 えーっと。
 申し訳ないんですけれども、この中に書かれていることの少なくない部分を、わたしは説明できるようには理解できてないと思うのです。
 稚拙な物言いをすれば、内容よりもキャラ萌えで読んでいたなー、と。

 んでも、理解は出来なくても、感じることはできたかなーと。
 そこに書かれた文章の素晴らしさについて。
 かっこよさ、スタイリッシュとか言い換えてもいいですけれど。
 それは説明できるものではなく、なちうか、その存在の前にひれ伏す感覚。
 圧倒的な。


 あとはキャラ造形かなー。
 嬢瑠璃ちゃんの情熱に沿った一本気みたいな心意気、好感です。
 そりゃ彼女にしても人間ですから、暴力の前に折れることもありますけれど、そこから立ち上がり勝利を目指す姿勢が、ね。
 表題の『敗北しない』はそんな彼女の姿を如実に示しているなー、と。
 革命という目的のためには、決して敗北で終わるわけにはいかないのですよね。


 革命への第一歩がようやく記されたところですし、このままシリーズ化していってくれると嬉しいなぁ〜。
 また2年後でも待ってますから!(笑)



 それにしても「これは文芸かギャルゲーか!?」とかいう表のコピー。
 あまりに外しすぎた感があって鼻白んでしまったのですけれど、嗚呼、編集者にも本質的にはわかってもらえてないのかなー……と考えたら、そういうのも元長センセらしいかなぁとも思ってしまったことよ(苦笑)。

 でも、ほんっとこのオビのコピーは情けなくて涙を誘われます。
 「ギャルゲー文芸の本命、ここに登場!」って、お金で雇われたライターが「仕事をしました」感が漂っているんですもん。
 ……ああ、「ギャルゲー」と「文芸」で韻を踏んでいるのですか、もしかして。
 へーほー。
 

(ラノベ指数 16/70)
13
 
『風の王国 嵐の夜(上)』 毛利志生子 著

 はぁぁぁぁ……。
 ホンッとにリジムはもう居ないんですねぇ……。
 わかっていたこととはいえ、この展開はつらいわー(T△T)。

 でもって半身を引き裂かれたも同じの翠蘭に対して、よくもまあロナアルワはやってくれたもんです。
 「弱さ」は罪ではないけれど「甘え」は罪だと思うのですよ。
 自分の都合しか見えてない彼女、好きくないなぁ。
 そういう立場や気性にしてしまったのは時代性とか風土の問題なのかもですけれど、でもねぇ……。

 以前の件で乗り越えたかと思った父上ティサンを、こう、また表舞台へ出すようなきっかけを作ったことに対してなにも思うところが無さげなトコロもイラチ。
 ティサンについてはもう彼の性格ですからああいう態度を取るのも仕方のないことと諦めもつくのですけれどねー。
 もちろん、ムカつきますけれど。
 でも、そうであるからこそ以前のリジムや翠蘭は彼を中央から遠ざけようとしたのですし。
 であるにも関わらず、この娘はなにやっとんじゃ……というカンジ。
 世界が動いているということになんの意識も払っていないことに腹立つのですよ。


 ティサンは吐蕃にせまった有事で汚名返上の機会を得られたみたいですけれど、ロナアルワはなぁ……。
 その不安になる心情が察せられるものだとしても、「ごめんなさい」程度で許されるものではないと思うのですよ(`Д´)。
 でもなぁ……。
 それでも翠蘭は許してしまいそうな気がするのがにんともかんとも。


 リジムのことが史実に逆らわなかったことと納得する代わりに、翠蘭についても史実通りであるなら、たぶんこの先はだいじょうぶと思えるのですけれど。
 んでも、辿り着けるはずだった「ひとつの倖せのカタチ」が壊れたことは事実なのですしー。
 ……やぱし、それだけは、本当に残念です。
 

(ラノベ指数 12/70)
12
 
『乱暴と待機』 本谷有希子 著

 復讐をすると言い続けて女を自分のそばに引き留めている男と、復讐なんて口実だとわかりつつもその言葉に甘えて男のそばにいる女。
 奇妙な依存関係にあるふたりのお話。


 裏表紙にある「お兄ちゃんはわたしに指一本触れません。」の文言だけで読むことを決めました(笑)。
 あ、あと鶴巻和哉さんが描かれた表紙に惹かれて。
 ……結局は表紙買いかしら?(^_^;)

 んでもその「お兄ちゃん」という関係も実は作り騙った関係なんですよねー。
 「お兄ちゃんとわたし」という芝居がかった関係に酔っているっちうか。
 予想していた展開とは異なっていましたけれど、そうしたいびつなふたりの関係にはあらためて面白く感じたー。
 男と女の関係になってしまうと壊れてしまう不安から、「お兄ちゃんとわたし」という安全?な関係で踏みとどまっている危うさが。


 たぶん、ふたりだけが了解している、そーゆープレイなんですよね。
 きっと。
 だものだから、そういうふたりに関心を持ったがゆえに巻き込まれてしまった番上くんとあずさちゃんにはご愁傷様としか。
 でも、その結果、雨降って地固まるということになったのですから、ふたりに関わったことは触媒として良かったのかも?
 ……番上くんにとっては良かったのかどうかは微妙ですけれど、ね(苦笑)。

 

「なんであんたもあいつもそんな嘘くさいわけ?」
「嘘くさい?」
「休みの日にドストエフスキー読んでるとか、そういうのがもう嘘くさいじゃん。あんたの眼鏡にスェット二つ結びも一緒だろ」
「えへへ」
「言おうとしないと出て来ないね、えへへなんて笑い声は!」

 ところどころの会話で示されるように、やっぱり「作ってる」んですよね、このキャラを。
 ふたりがふたりの関係を維持するために。
 あるいは、過去の間違いを繰り返さないために。


 そんな努力がやっぱり一度は壊れてしまうのですけれど、それでもラスト、またふたりの関係が始まることはなにかループしたような感覚になったり。
 でもそれは元鞘というわけではなくて、新しい関係……それも、以前の「作られた」関係ではなく、もっと真実に近い関係になったんだろうなぁ……と。

 良かったね……と言うにはツライですけれども、ふたりが良ければそれでいいやという気になりましたとさー。
 



(ラノベ指数 25/70)
11
 
『鋼鉄の白兎騎士団Y』 舞阪洸 著

 お兎さまの乱で一時的に去った団員たちを戻すためには庇護者であるベティス公国の目を逸らす必要がある……ということが、前回からわずか半年で入団試験を行うことになった理由というわけで。
 このあたり、物語としての理由と作品としての理由がうまくかみ合ってるな〜という印象が。
 雛小隊……いや、もう遊撃小隊ですか(笑)。
 小隊の面々についてのエピソードは一段落しましたし(もちろんデイレィみたいに出自が明らかにされてない人もいますけど)、ここらでカンフル剤の意味で新キャラ登場というのも悪くないですものねー。

 うーむ……。
 この展開、ほんとにプロット切らずに作っていらっしゃるのかな??
 あ、全体の流れと、個々の巻でのお話は別ってこと?
 てことは全体像についてよほどしっかりとイメージされているのだなぁ……と感心してしまったりして。


 で、ガブリエラたちの後輩にもなる新人さんたちですけれど、んー……。
 一部のキャラをのぞいて、やはりまだまだ見えてこないってカンジかなぁ。
 んでも、その一部のキャラの個性が眩しいので、これから先が楽しみかも〜。

 とくにガブリエラたちとは因縁浅からぬ関係を持っているアスカがっ!
 や、虎穴に入らずんば虎児を得ずではないですけれど、こういうカタチで外部からの視点が入ってくるとは。
 もう今回は彼女が主人公と言っても過言じゃなかったですね!
 うら若い乙女!(笑)

 ほかにはハイミオが目立っていたくらい?
 シェーナはいろいろとアスカに関わっていたようにも思うのですけれど、ちょっと狂言回しの役っぽかったですしー。
 ……んー、やぱし、まだまだこれからですね。
 新しい一回生の個性が見えてくるのは。


 それにしても、現幹部が推したはずの推薦組が誰ひとりとして残らず、しかも「つまらない」結果しか残さなかったのは意外というか大丈夫なのかと心配に。
 それって幹部の目が曇っていたという証左になっていたりしませんか?
 たとえば元特務分隊隊長のフェーレンなどが推薦したりしていれば、その人って結構面白い人物であったようにも思うのですけれど……。
 幹部の中ではマクトゥシュだけが推薦した旨の記述がありましたけれど、まぁ、彼女と同じ思考をする受験者であったりすると今回のような試験は辛かったかもですね……。
 いや、前回のような試験であろうと、つまりはガブリエラ(みたいな考え方をする人間)が相手だと厳しいのですか(苦笑)。



 いよいよガブリエラ戦役へつながる戦争が始まるそうですけれど、まだまだ二回性の身分である彼女がどうやって団長の地位まで上り詰めていくのかな〜?
 それにはいろいろと手柄を立てていかないといけないワケですし、いくつかの窮地に際してどのような機転を巡らすのか楽しみで楽しみで。
 ことにアスカとペアになったときにどんな考え方をみせてくれるのか!(笑)
 あー。
 新刊を読み終えたばかりだというのに、はやくも次巻が待ち遠しいデス。
 

(ラノベ指数 21/70)
10
 
『ヘブンリー あなたに腹が立つ』 野梨原花南 著

 うええええっ!?
 ここで終わりなんですかーっ!!!?
 うーん……。
 今巻でのまとめかたは、駆け足感をぬぐえないかなー……と思いつつ、野梨原センセってこういう結び方っちうか終盤での筆致ってあるなぁ……とも思ったりして。
 なんちうか、キャラクターのそばから離れて、物語を見つめる第三者な意識が多分に現れているような。
 もう、そこから先は自分の関与するところではない、みたいな。


 ひとりの犠牲の上に世界の安寧が保たれるのであれば、その犠牲は認められるのか。
 もちろん、その犠牲が自分の手が届く範囲でなければという条件付きで。

 そんな社会に対する無責任な生き方を弾劾することって、これもまた野梨原センセの作品ではわりに見られる主張であるかなーとか。
 でもって野梨原センセは、今作ではフォルミカが、そんないびつな世界など滅んでしまえと叫ぶわけで。
 それはわがままかもしれないけれど、鮮烈で苛烈。
 みんなで生きられないなら、みんなで死のうと覚悟を問うているわけで。
 生きるも死ぬのも、みんなで分かち合うことを。
 少なくとも、「n−1」の状態を「みんな」とは呼び表さないことだけは彼女はハッキリしていて、そんな矛盾を誰も指摘しない世界を悔しく思っていて。


 きれい事では世の中は成り立っていないというのはわかります。
 でも、「犠牲の上に成り立つ世界」もきれい事では済まされていないとするならば、「そんな世界は滅べ」と言ってしまうのも決してきれい事だけではないと思うのです。

 こういう根幹に流れる野梨原センセの主張、好きー。


 でも、それだけに今作と「ちょー」シリーズとか他のシリーズで描かれることとの差異化はされていなかったかなぁ……という印象が。
 今作ならではの魅力っていうのでしょうか。
 フォルミカの能動的なところとか、わたしには魅力的でしたけれど、でもそういうオンナノコって野梨原センセの作品では定番ですしー(苦笑)。
 ……それゆえに野梨原センセの作品をわたしは好きでもあるのですけれ、どっ。
 


(ラノベ指数 13/70)
9
『図書館危機』 有川浩 著

 これまで育んできたモノが一気に開花したような感覚。
 これも「転」って言うんでしょうか?

 図書館に出没した痴漢騒動で小牧教官と毬江ちゃんの絆を描いたお話から始まり、昇任試験で堂上班(+柴崎)の人間模様を、そして差別用語問題を扱ったお話で『図書館』シリーズの根幹を見つめ直して、ラストは久しぶりの大規模攻防戦で派手に締めくくるというド派手な一冊。
 もう『図書館』シリーズの魅力満載っちう!

 でもこれってこれまでの2冊での諸々の積み重ねがあってこそ描けた内容であったかと。
 それだけに考えるのは、3作目にしてシリーズの集大成であるとともに、次の最終巻への転機となる巻であるなぁ……ということでした。


 小牧教官と毬江ちゃんの関係が前巻から最大の関心事(笑)になっていたわたしにとって痴漢騒動のお話は引き込まれたわー。
 3巻目で中だるみしそうなところ、一気に持って行かれたっちうか。

 二人の関係って、なかなか進展していかない堂上班長と郁の関係との対比でもありますよね。
 順調に関係を育んでいっている小牧教官と毬江ちゃんに対して、焦れ焦れしながらもある瞬間に二段飛び三段跳びで駆け上がっていく堂上班長と郁(笑)。
 まぁ、どちらもがんばれ!って思いたくなる関係ですけれど。

 ……あー、柴崎と手塚ですかぁ?(^_^;)
 あの二人はなんちうか、えーっと……まだまだですよね?(苦笑)



 昇任試験は意外な展開を持ってきたなーと。
 検閲闘争だけでなく、どちらかといえば日常的なシーンを描くという点で。
 もちろんこういう意外性といいますか、必ずあるはずの生活を描くことで物語に真実味が増すとも説得力が上がるとも思いますけれど。
 郁が図書隊員になってくれて良かった〜と思えた展開でした。
 読書が「象牙の塔」で満足することなく、次の時代を生きる子供たちへ行為として伝わっていくこと。
 それを教えてくれる人って大切だなぁ……と思うのですよ。
 それも強制ではなく、自発的な関心を植え付ける手法で。


 差別用語の件についてのお話は物語のベースにある仕掛け以外には、柴崎×手塚の関係を深めるといったエピソードでしかなかったように思うので、あまり……。
 その意味するところがシリーズとして重要な部分を担っているとはわかっているつもりなのですけれど、もー。

 むしろ重要という意味では次の茨城県展警備のほうが?
 もともと原則派と行政派の内部対立という面は描かれてきていましたけれど、それにしたって関東図書隊あるいは各図書隊の中で済んでいた対立構造であったわけで、この県展警備のお話はもっと大きく、組織として全国が一枚岩ではないことを明らかにしたわけで。
 さらにはこれまでその存在で図書隊を支えてきた稲嶺司令が勇退することで、いよいよ隊員各自に「図書隊員」としての意味を考えさせ抱かせるっちうかー。
 あー、これは『図書館「危機」』でありますなぁ……と、タイトルに納得がいった展開でした。

 にしても茨城図書隊の業務部と防衛部の対立は陰惨だなぁ……。
 いや、対立じゃないか。
 防衛部のほうが一方的に虐げられているだけですし。
 有川センセのうまいと思えるトコロは、もちろん目に見える動的な部分を描かれることにセンスを感じる(端的にアクションを明示できる)だけでなく、こういう精神レベルでの闘争?を描けるところにあるのではないかなーと思うのです。
 それって、つまり、葛藤ってことだと思いますし。

 ことにセンセが女性だから……というのはうがちすぎかもですけれど、女性の精神面での駆け引きが、なぁ(苦笑)。
 悪意を目に見えるかたちで表現してくるっちうか。
 だけれどもそうして目に見せておきながら、同じ女性であることに郁が引け目を感じているところに――

「お前はそのときのお前と同じ思いを他人にさせるようなことは思いつけないよ。お前はそういう人間だ。そういうことは思いつける人間と思いつけない人間がいるんだ。お前はそもそも思いつけない奴だ」
「あ……あたしだって、本気で傷つける気になったら、」
「お前はな、喧嘩になるタイプだよ。本気で喧嘩になって本気で傷つけるんだろうよ、相手を。それで自分も本気で傷つくんだろうよ。でもこんな悪意は思いつけない」

 ――と、同じではないことを認めてくる堂上がッ、がッ!(≧▽≦)
 ひゃー、じわじわ接近してきたわー(笑)。

 でもって、そんなドロドロとしたゆがんだ構造も防衛戦が明けたときには問題解決に向かっていたのですけれどもー。
 立場が悪くなった業務部が曖昧な謝罪をしようとしたところへ郁の怒りがドンッと落ちたわけで。
 うんうん。
 郁のこういうハッキリとした意志表現って、ほんと好感。
 先述の堂上が評するところの「喧嘩になるタイプ」って、こーゆーところも含んでのことなのではないかと思うー。
 手塚のお兄さんも言ってましたけれど、直感的といいますか感覚派といいますか(笑)。



 いやいや、ホンッと面白かったわー。
 これだけのことを描いてしまっては、締めとなる次巻が楽しみでもあり不安でもあり……。
 早く読もっと!
 


(ラノベ指数 9/70)
8
 
『やっぱりおおきくなりません』 白倉由美 著

 いまにも壊れそうな脆さと危うさの中でかろうじて姿を保っている世界。
 そこで奇跡のようなバランスでもって居場所を見つけている人たち。
 あー。
 わたしが感じる白倉センセらしい作品でしたわー。

 にしても前巻以上に自叙伝のおもむきが強いなぁ……。
 そうした自らの内面に踏み込む描き方すら、実のところ白倉センセらしいと思えてしまうのですけれどー。
 んでも、センセの場合、なんちうかその書き方は自傷にも近い雰囲気を受けるのですよね……。
 世界の有り様と重ねて、不安になってしまうっちうか……。


 それでも今作はセンセご自身が仰るように「初めてのハッピーエンド」でもあることから、そうした視線の向け方はなにかの扉を開けたのではないかなー……と思ったりして安堵するのですけれども。
 うん。
 これはたしかにセンセの作品にはいままでなかった読後感でした。



 ちうかさ。
 白倉センセの作品は「通過儀礼に挑む少年少女」を描いていると思うのですけれど、しかし「通過儀礼を果たした、その後」については描かれないといいますか通過儀礼を越えても倖せであるとは限らないというような暗喩で示されるといいますかー。
 世界はどこまでも少年少女には厳しいものだと表していたように思うのです。

 それが今作では少女が大人になる、まさに通過儀礼をくぐった果てに倖せを見つけるという展開であったわけで。
 むしろ倖せを掴むために通過儀礼を為さねばならないと、既作とは逆の視点で描かれた作品だったような。

 今作が自叙伝的位置づけであるように思えるところも含めて、少し違うステージへと移られたのではないかなーと思ったりして。
 

(ラノベ指数 24/70)
7
 
『メグとセロンT 三三〇五年の夏休み<上>』 時雨沢恵一 著

 楽しみに満ちた日常の裏側で、ほぼ同時に進行しはじめる暗躍。
 動いているキャラクターは変わっても『アリソン』の頃からと構成は変わっていないなー。
 落ち着く反面、それで良いのかなぁ……とか不安にも。
 定番といえば言えますけれど、それってマンネリと紙一重かなーと思えますし。

 んでも『リリアとトレイズ』と異なる心境でいられるのは、やぱし、旧作のキャラクターが出張っていないことでしょうか。
 唯一既知であるメグミカにしても、どういう行動規範で動くのかわかってませんし。
 新鮮な楽しみ?みたいなー。


 ラリーとニックのテンポ良い会話とか、時雨沢センセらしい楽しさにあふれているなーと感じるのですよー。
 生きている会話というのとも違くて、むしろ生き生きとしている文章とでも言いましょうか。
 これぞライトノベル!という気もするのですけれど、地の文を多くする最近の傾向からすると、少し時代が古いラノベの様式なのかもですが(^_^;)。


 まぁ、でも、しかし。
 物語としての構成にはうなずけても、この上下巻という販売体制はどうなのかなー……とか思ったりして。
 たとえばキャラクターの個性をひとつでもハッキリさせた上で区切っているワケでもなく、ただただ事件へのイントロまでへの時間を動かしただけの内容っていうのはなぁ……。
 次巻への引きという点からすれば、ここでひとつ分けるというポイントであるには違いないのでしょうけれど。

 ……でも、「このあとどうなるの!? もうwktkが止まらない!」ってトコロで引いているわけでも無いような。
 まだまだ安全地帯にキャラクターはいるわけで。
 うーん、うーん……。
 このあたりがギリギリのラインなのかなぁ。
 上下巻にするため、であるならば。
 

(ラノベ指数 10/70)
6
 
『図書館内乱』 有川浩 著

 脇が固まってきて俄然面白くなってまいりました!
 といっても鮮やかになってきたのは女性陣のほうばかりで。
 柴崎しかり、初登場の毬江ちゃんしかり。

 男性陣のほうはさー、真面目でバカでラブリーな方向に行っちゃって。
 あの小牧教官ですら、その行動理念の軸が見えてくれば堂上教官と同レベルかそれ以上のシンプルなお馬鹿さんですよ?

 毬江の意志を無視して、毬江の感性を否定する論法には、誰が決して膝を屈するものか。
 あの子が自由に本を楽しむために。そのために、毬江に対してだけ正義の味方でいられたら、
 それ以外のことはどうだっていいのだ――

 飄然とした中に、どんだけパッション詰め込んでいたんですか、この人は!
 世界を見る基準が「毬江ちゃんとそれ以外」なんて!(≧▽≦)
 そんな愛すべきお馬鹿さんに3回も失恋して4回目の恋を成就させようとしている毬江ちゃんはスゴイ。
 恋するオンナノコは、ほんっとパワーがあるわー。

 有川センセの筆致がまだ、そんな毬江ちゃんの心情と、彼女を応援する郁と柴崎の憤りを見事に書ききってるんですよねぇ。
 このあたりが今巻から面白くなってきたトコロかも。


 柴崎にもいろいろありましたけれど、まあ、美人の恋愛は難しいってことでー。
 んでも今回は恋心に惑う様より、郁をはじめとした仲間を陥れられたことに対して見せた怒りが鮮烈すぎて。

「残念ながら、あんたたちあたしの逆鱗に触れたのよ」

 こ……こわー(TДT)。
 郁のように感情を表に出さない分、その下に流れる強い怒りが……。
 自分のせいで仲間が傷つけられたというのに、このときの柴崎には表だって仲間を助ける行動を起こすには制約があったのですよね。
 そのやるせなさがまた怒りを倍増させているっちう……。
 そうした「義」を持つところを見せられたら、彼女への評価も変わりますって!
 イイ女!(≧△≦)



 物語としては敵がハッキリしてきたカンジ?
 誰ひとり固有名が出てこない良化委員会なんてヤラレキャラもいいとこでしたし。
 倒すべき、乗り越えるべき相手というのは、いつの世も身内から輩出されるんですねぇ……。
 手塚兄の言うことはもしかしたら一理あるのかもしれないけれど、どんな理屈にだって一理くらいあるわさ。
 でもやっぱり気に入らないのは、自分は傷つかないところでのうのうとしているところなんですよねぇ。

「お膳立てされた舞台で戦えるのはお話の中の正義の味方だけよ。現実じゃ誰も露払いなんかしてくれないんだから。泥被る覚悟がないんなら正義の味方なんか辞めちゃえば?」

 という柴崎の言葉。
 言ってみれば手塚兄はこの「お話の中の正義の味方」なのかなーと。
 綺麗な戦いを成し得たい。
 そしてもちろん綺麗なことをすれば綺麗な勝利が待っていると信じて疑っていない。
 その純真さが気持ち悪い。
 夢を見る歳でも無いでしょうに。
 ……あ、違う。
 夢はいつまでも見続けていい。
 でも大人になるってことは現実も見ることであるから。
 毬江ちゃんですらツライ現実と向き合って、夢をかなえるために大人になろうとしているのに。

「汚名を着てまで守りたいものがあるから、図書隊員は隊と一緒に泥を被るんだと思う」

 そんな柴崎の言葉に対して、郁の答え。
 きれい事では済まされない道を歩むのはとてもツライこと。
 でも、一緒に歩んでくれる仲間がいるなら、そのつらさも支え合って歩んでいける。
 手塚兄の言動からは、そんな仲間を思いやる姿が見えてこないワケで。
 だからどんなにきらびやかな文言であっても、どうにも軽く、安く、聞こえてくるのかも。


 やっぱりね、理屈の正しさなんかより、そこに自分以外の誰かの倖せを願う気持ちがあるかどうかが大切なのだと思うのよーん。
 


(ラノベ指数 21/68)
5
『渡れ、月照らす砂の海 幻獣降臨譚』 本宮ことは 著

 表紙で弓引いているオンナノコ、誰だっけ……?と思い出せなくて焦ったりしたのですけれども、今巻での新キャラだったのですね。
 あまりにも堂々としているものですから、てっきりレギュラーキャラかと(^_^;)。

 そんな彼女、キーラもまた幻獣の巫女姫で。
 彼女との出会いがアリアを成長させたと思うのですよー。
 決して優しい導き方ではなかったかもしれないですけれど、巫女姫とは、幻獣を使役できるということはどういうことなのか、そのケースとして。

 思えばアリアは「巫女姫」の生き様?についてはかなり勉強を積んできているのだと。
 アランダム騎士団や聖女の館でのことや、もちろんシエネスティータ様と出会いなど。
 そしてまたここで一族を率いるという重荷を背負ったキーラとの出会いが、またひとつ幻獣との関わりを考えさせてくれたわけで。
 ちょっと考えてもここまでたくさんの巫女姫と出会ったオンナノコって、この世界では稀少なのではないかしらん。

 数々の出会いがアリアを成長させて、そして強くしていっているなぁ……と感じられるのデスヨ。
 やぱし経験が人をはぐくむということなのでしょうか。

 その反例がサフィアとディクスかなぁ。
 もう、どちらも手に負えないくらいに視野狭窄状態っちうか。
 とくにディクスの脱落っぷりがスゴイ。
 ラスボスな勢いで暗黒面に引きずり込まれてますよ?

 ……ディクスの発明品がもとで誰か命を落とすんじゃないかと心配。
 でも彼は「殺すつもりはなかった。そんなところにいたあいつが悪い」とか言い出しそうで。
 アリアはそんな強大なチカラを行使する術を学ぼうとしているのに!(><)


 我欲に取り憑かれたディクスと違って、恋心を自覚したシェナンは頼もしく見えたわー。
 初めて見えた生きる目標が、自分のためではなく大切なオンナノコのためだなんんて、あんた偉いよ!
 でもってライルを明確にライバルと目した辺り、見る目あるなぁ……と。
 いま一歩以上にリードをしているのはライルですもんねぇ。

 ……とはいえ前巻の様子を思い出しながらこの先の展開を想像すると、シェナンがライルを追い抜くというパターンが王道?
 うーん……。
 わたしはライルが好きなので、それは、ちょっと、なぁ……(^_^;)。



 お話は佳境に入ってきているそうですけれど、まだまだ見えてない部分が多すぎでしょ!とか言いたく。
 王家がらみでライルのこととか、そもそもシェナンの出自が表舞台で活かされるハズでしょうし、サフィアが騎士団を使って争乱を起こすのは確実だし、そんなところで今回はミルヒランド公国までも絡んできちゃいましたし、すぐそばには不穏な帝国の影があって、そして姿の見えない幻獣ケルベロスを中心とした動きとか……と盛りだくさんすぎ!
 すごく楽しみ!(≧▽≦)
 

(ラノベ指数 17/69)
4
 
『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』 萬屋直人 著

 少年と少女の終わらない旅。
 どにたどり着くのかという結果ではなく、どうして一緒にいるのかその気持ちを探るあたりに力点があるので、一見したところにあるロードムービー的な解釈では間違いなのかなーとか。
 旅をして得られる「何か」に希望を見いださせるのではなくて、広い世界のなかですぐそばにいる大切な人の気持ちに気づけるのかどうかを問うっちうか。

 答えが明らかにされない分カタルシスには欠けるのかもしれないけれど、ふたりの気持ちがゆっくりと醸成されていっている様が感じられて好感。


 人が存在自体を徐々に失っていく「喪失症」に冒された世界。
 名前も過去も、およそ物語にあって当然のもろもろの記号が無いということもあって、自然、物語の流れは感情の部分に依っていく次第。
 派手で複雑な設定を披露していくことで物語ることの少なくないラノベの昨今、この割り切り方は好きー。
 主人公の過去が生い立ちがどうあれ、いまここにいることに対しての物語を見せてくれているわけで。


 まぁ、目立った記号が無いことで電撃大賞という「商品を選び出すコンテスト」のなかでは、抜きん出る決め手に欠けていたのだろうなぁ……ということも想像に難くないのですけれども。
 イラストを用いたビジュアル展開も必須となるライトノベル業界において、さしてイラストの必要性を感じさせないのもアタマ痛いところかもー。
 そういう点では、ライトノベルより一般文芸な雰囲気を持っているのかもですが。

 ……主人公の決意だけを残して、旅という行為には終わりを見せないあたりも一般文芸寄りかな(わたし基準)。
 んでも、嫌いじゃない。
 むしろ好き。

 普段ならそういう投げっぱなしな結び方に眉をひそめるわたくしですけれども。
 ふたりが導き出した決意が「一緒にいたい」というものであるならば、それはもう応援するしかないでしょう!みたいな!(≧▽≦)
 少年が少女のために全てを賭けるのは当たり前ですし、少女が少年を自分のそばに誘うのも当たり前です。
 そういう当たり前のことを、ほかのゴテゴテとした修飾的設定で隠さずに、まっすぐ描いてくれたことをわたしは嬉しく思うのです。
 VIVA!(≧▽≦)
 

(ラノベ指数 26/68)
3
 
『ピクテ・シェンカの不思議な森 はじまりは黒馬車に乗って』 足塚鰯 著

 亡くなった祖父から“禁断の森”の領主の座を受け継いだオンナノコのムイ。
 しかしその土地は悪魔や獣人が住まうおとぎばなしのような土地だったのです。
 16の身空で領主のなるというだけでも大変なのに、森の住人がそれでは落ち着くヒマもないというモノ。
 はたしてムイは立派な領主となって森を守ることができるのでしょうか――。


 なんといってもムイの真面目さが素敵!
 面倒くさがりであることを自覚して問題を避けようとはするにしても、人として間違ったことをしてはいけないといった物の道理をわきまえているっちう。
 冒頭の祖父のお葬式にしてもそう。
 面倒くさがりであっても仲の良かった祖父の葬式までを蔑ろにすることは無いとことかー。
 きちんと自分がそれをすべきかどうかをわかっているのですよねー。

 あとこのシーンでは形式張った式よりも、式が終わったあと、祖父の友人たちが故人を懐かしみながら語り合っている方が葬送の儀式として相応しいのではないかと感想をもらしたところも良かった〜。
 カタチに惑わされることなく、コトの本質をとらえる目……とでも言いましょうか。

 こういった利発さに加えて、約束は守るところとか、他人を思いやることができるところとか、んもー、良い子過ぎっ!
 子供好きの悪魔じゃなくてもさらっていきたくなるわ!(≧▽≦)


 ムイが幼かった頃に会ったことのあるラーシェンとフィンドル。
 ふたりのうちではムイに向ける感情がハッキリしているのはフィンドルのほう?
 いろいろとしがらみを抱えてしまっているフィンドルですけれど、彼はムイをムイとして見ているっちうかー。
 ラーシェンのほうはまだ「礼を返す相手」として見ているわけでー。

 ……ああ、でもこういう「世間知らず」な王子様のほうが将来的には相手になってくるのかなぁ。
 いまはまだそのバカ王子(ちうか、すでに彼は王ですが)ぶりが鼻につくことこの上ないので問題外ですけれどもー(笑)。

 ムイの呟きに、フィンドルは大人達を怒鳴りつけたくなった。
 おそらく大人達はムイに母親を思い出させて悲しい思いをさせたくないのだろう。だが今までずっとそばにいた母親を急に忘れるはずがない。
 まだこんなに幼いのだ。思い出して泣いたっていいではないか。

 フィンドルはこういうことに怒ってあげられる優しさをもっているのですよねー。
 そこが非常に好感。
 いまのところはふたりの関係はギクシャクしてますけれど、この先、そんな関係が改善していくのであろうと推測すると、思わずニヤけてしまふ〜(≧▽≦)。
 というわけで、わたしはフィンドル応援派です。



 イラストは池上紗京センセなのですけれど、細やかな筆致に磨きがかかっているような……。
 表紙イラストの存在感は圧倒的ですよ?
 かわいーかわいー!
 こういう描き込みするかたはコバルトでは珍しいような気もします。
 コバルトって最近は淡いタッチと柔らかな色彩で描かれるかたが多いように思うので。

 ところで、表紙のムイ。
 よく見ると顔に汗を浮かべていたりしませんか?
 やぱしこの状況に緊張したりしているんでしょうかねぇ(笑)。


 とまれ、先が楽しみなシリーズです。
 


(ラノベ指数 17/68)
2
 
『死神姫の再婚 -薔薇園の時計公爵-』 小野上明夜 著

 アリシアとの結婚は形式的なものだと思っていたのですけれどー。
 ライセンってば、この結婚に……ちうか、アリシアに?結構本気になってきてませんか?
 ほかの誰かがアリシアに触れようとすると不機嫌になったりさー(笑)。
 守り石の贈り物にしたって、なんといいますか、大切にしてるなーって感じられたりして。

 誰に対してもこのような態度をとるとは思えないので、それはやぱしアリシアのココロに惹かれたってことなんでしょーね。
 ある一面では現実的なのに、同じ目で夢のような世界を見つめてる。
 そんな不思議さ、あやうさが魅力といいましょうかー。
 子供っぽいというのは違って、んー……ふところが深い?って言うの?
 包容力がある、かも。
 誰に対しても存在を否定しないんですもん。
 そりゃあライセンでなくても惹かれるわー(笑)。


 あー……。
 結婚を「形式」なものとしてとらえているのは、むしろアリシアのほう?
 自分は買われてきたのだという意識が強いといいますか。
 ココロはきちんとライセンに応えてるのに、アタマがそれを理解できてないっちう。
 ココロを疼かせるそれを「恋」だと、アリシアはいつ気付くのでしょうか?
 ライセンは無理強いせずに待っていてくれるみたいですけれど、早く気付いてくれないとライセンが可哀想(笑)。
 がっついてないのはオトナな態度なんですけれどもねー。



 物語の構成についても前巻同様、序盤で張った伏線でもってクライマックスでは見事に解決(?)を図るという王道展開。
 意外性は無いのかもですけれど、そのぶん安心して読み進められます。
 ちうか、アリシアをしてなにか変なことにはなりそうもないといますかー。
 絶対に!万事丸く収まるような気がしてくる不思議!(笑)
 これ、彼女の人徳かしら?(^_^;)


 人のつながりも賑やかになってきて、この世界がはらんだ問題にも少しずつ関わってきて。
 厳しさと理不尽さを見せるそんな流れの中でもアリシアとライセンの仲が可愛らしくはぐくまれている様が素敵〜。
 ふたりはもっとイチャイチャするといいよ!(≧▽≦)
 

(ラノベ指数 29/68)

『ミスマルカ興国物語T』 林トモアキ 著

 あ、偶然にも感想記2ページ目のトップも林トモアキせんせの作品から始まったり。

 暴力を嫌い、言葉だけで戦うことを望む王子様。
 「暴力ではなにも解決しない」とは言いますけれど、ならば解決するにはどういった手段が策として残されるのか。
 それをこのミスマルカのマヒロ王子は「話し合い」だとのたまう次第。

 きれい事かなー、と笑わばどうぞ。
 でも、絶対に無理でなないかも……と思わされてしまったですよ。
 その可能性、希望に。

 武力は行使さえしなければ取引のカード。
 でも目の前の答えを導き出すためにひとたび暴力に頼ってしまえば、次はさらなる暴力が襲ってきて元の木阿弥。
 暴力に頼る存在は、いつかそれ以上の暴力に襲われて敗北するという。
 簡単なルールなんですけれど、わかってはいても向き合うことが難しいわけで。
 それは「暴力に頼ろうとする『弱さ』」なんでしょうけれど、ねー。
 人間は自分の弱さを認めたがらないってことなんでしょうか……。

 そこへいくとマヒロ王子は「暴力を嫌う」という自らに課したルールを命を賭けてまで守り通そうとする『強さ』がある、と。
 やはり本当の力とは、人の意志、なのかなぁ。
 身一つで刃と向き合う王子の姿勢に、そう思うのですよ。
 

 「舐めるなよ帝国三番姫!!」

 武勇の誉れ高い帝国のルナス姫を前にして一歩も引かずにこの言葉。
 これには熱くなったわー!(≧▽≦)
 よくぞ吠えた!


 もちろん「話し合い」とはバカ正直に全てをさらけ出すということではなくー。
 その手段のなかには相手を騙すことも含まれる次第。
 騙すというのは「自分を信じさせる」と同義だと。
 うはぁ、へりくつ〜(´Д`)。
 んでも、どれだけ屁理屈であろうと、それで誰も傷つかないのであれば、その屁理屈は立派なものだと思います。
 誰かが犠牲にならなけれないけないような金科玉条よりも。



 お馬鹿で軽薄なノリはいつもの林センセらしさを感じますし、うん、これは先が楽しみになってまいりました。
 なにしろ問題解決に「暴力」を許さない設定ですから。
 数々の作品がそれでコトをなしえてきた中で、いったいどのようにしてこの先の窮地を切り抜けていくのか、もー、期待しまくり。
 もし本当に言葉だけで世界を統一できたら、そのときは名作の仲間入りを果たすのではないでしょうか?


 まぁ、とまれ、そんな大層な夢物語を始めてしまうあたり、林センセらしい風呂敷の広げ方だと思いますし、夢を語ってこそライトノベル!てなもんでしょうし。
 いろいろな意味で今作のこれからを楽しみにしています。



 ところで今作の時間軸って、『マスラヲ』の後?
 聖魔杯って、あれのこと、なのかなー……とか思ってしまうワケで。
 そのあたりの関連性にも期待、なのです。

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