○● 読書感想記 ●○ 2007年 【8】 ※ 書影画像のリンク先は【bk1】です ※
「食べられるところまで食べればいいよ。残りは俺が食べてやるから」
このお話の視点である辻村くんの台詞なのですがー。 我田引水かもですけれど、先述の倖せを願う連鎖のように、誰かが誰かを支えてあげられるようにこの世界は成っているのではないかと信じることができるのですよ。 この言葉から。 そんな気持ちになっちゃって、この台詞見たときには嬉しくて嬉しくて〜(T▽T)。 辻村くん、いいやつ! 最近はオトナな作品が目立ってきていた橋本センセですけれども(活躍の場を考えれば仕方のないことかもですが)、今作のようにもう少し目線を下げた世界の描き方もいいな〜……とあらためて。 やぱし好きですわ〜(^-^)。
「この先、おまえがどこに向かうつもりか知らないけど――下手したら、俺が敵に回るぞ。それもわかってるな?」 「う……ん。なるべくそんな羽目になりたくないけどね」 アリアはほろ苦い笑いを浮かべた。ライルも同じように苦笑する。 「ああ、まったくだ。けど――万が一、敵に回ったときは」 ライルがまっすぐにアリアをみつめた。暗闇の中で、闇よりなお深い瞳に吸い込まれそうになる。 「手加減はしねえぞ。いいな」 「うん。望むところだよ」 アリアもライルをまっすぐに見つめ返した。 「ライルこそ、巻き込まれないよう気をつけてね。光焔は――強いよ」
んきゃーっ! 強くなったなぁ、アリアは!! もう誰かの影に隠れているばかりの小さなオンナノコではないのですねぇ……。 戸惑い、悩みはするけれど、より良い方向へ進むことを自らの意志で選んでいるっちうか。 誰かに導かれることなく。 そんな彼女だから、もし一緒になる誰かがいるとしたら、自分を守ってくれるだけの人でも、自分が守るだけの人でも、そのどちらでもなくて、守り守られ対等な立場でいたいのかなー……なんて。 そして聖獣を従えている自分にそんな人が現れるとしたら、それはもう運命でしか巡り会えないと考えているようなフシも感じたりして。 この直前の会話で「悲しいけれど、縁がなかったってことだね」という決断も受け止める覚悟を見せていましたし。 あー、もうっ、この子ったら!(T▽T) えーっと、現状では自分が自分が状態に陥ってしまっているディクスは大きく後退してしまっているのは事実ですしー(実際、今巻では登場すらしていませんし)。 もし……万が一にでもライルの身になにかあった場合、彼の後ろにつけているのは、やぱしシェナンなのかなー。 キャラ紹介のアイコンも大きいですし(そこかい!)。 んでも王子様としての世間知らずは遅々とはしていますが改善方向にありますし、なによりアリアに恋心を抱いていると自覚できたことは高ポイントでしょう! がんばれ王子様!(≧▽≦) ……いや、でも、やっぱりライルと結ばれて欲しいなぁ。 ライルはシェリカ王女との関係がポイントになったり?(苦笑) エラン村を発ったクルサード一行の様子にもラストで触れましたし、物語はまだまだ多方面で動きを見せますねぇ。 本宮センセによると折り返し地点かつ起承転結の「転」あたりだそうですし、これからの展開が楽しみになってまいりました! どれだけ深刻な展開になろうとも、アリアがポジティブシンキンに転化しましたから、これからは読み手のわたしも耐えられそうです!(><)b にしても、カバー折り返しのところのセンセの自己紹介は、相変わらずハイセンスだわ……。 どうしてこの人はオタ心をくすぐるのか……(笑)。 アニメネタで「CLANNAD」→「グレンラガン」のコンボは強烈すぎデスヨ(^-^:)。
「あなたの想い人にはなってあげられないけど、悲しいならそばにいさせて。ジルは、王都じゃ数少ないあたしの大事な友達なんだから」
――なんて、いいお友達でいましょうね宣言している場合じゃなくてさあっ!(笑) なんてフラグクラッシャー……。
「おまえら名門とちがってね、ウィスラー家は“義理の姉妹”をこけにはしないんだ。うちには絶対遵守の家訓がある――ひとりやられたら、家族全員やられたと思え!」
ぎゃー! どんな任侠モノ――っ!?(笑) かっこいい……かっこよすぎるよ、エルデスト(´Д`)。 とびかう銃声、とどろく砲声。 血なまぐさい闘争のなかでも、家族の絆はけして壊れることなく。 その絆が奇跡を呼んで、見事、敵に打ち勝つワケで。 人の正しさが素地にある点、ここでも嫌味が無くてー。 社会を斜めに見たようなひねった物語も面白いですけれど、こうした真っ直ぐな気持ちで描かれた物語というのは、なんとも心地よいものです。 読後感がね、さわやかなのですよー。 作中には書かれていませんけれど、もう、見事に「めでたし、めでたし」で結ばれているんですもん! うーむ……。 こう見事な「It is happy, and happy. 」って、初期の頃のハヤカワFTみたいだなぁ……とか思ったりして。 つまりは古典的ってことなのかしらー? でも、そういうクラシカルなところは性倒錯的な部分でアレンジが入れられているために、作品として古臭さを感じさせないのかも? 物語構造はあくまで真っ当に。 その上で現代風の今様なセンスを入れられるか否かが作家性っちうか力量なのかもー……とか思ったりして。 性描写がラノベに比べると生々しいところは欧米の作家センセらしいなーと思ってしまいましたけれど、それ以上に躍動感ある筆致はすごく好み。 うん、満足したー(^-^)。
『魍魎の都 姫様、出番ですよ』 本宮ことは 著 厳密に言えば今作がシリーズ第1巻となっていますがー。 『されど月に手は届かず』と時代/舞台を同じくしているせいか、シリーズ二巻目という印象が。 とはいえ背景や人物設定の予備知識をそちらで得ていたために、内容把握するにも問題なかったカンジ。 本文も最低限の知識を得ているものとして描かれているように思えましたし。 基礎部分の説明を省いているっちうかー。 それが物語の進行に対して描写の余地を与えているとは思うのですけれど、逆に新規読者に対しては優しくない仕様かと……。 いたしかゆし。 シリーズ二巻目!と銘打てば問題無かったかもですけれど、今作をスタートとすると読み手側は混乱するかも……。 そんなカンジで始まった本文は、およそ姫様らしからぬアクティブな活動をみせる諾子が好感で。 女の子でありながら漢文をたしなんだり、夜中に一人で出歩いたり、時代背景に照らすとたしかに異端児ではあるのですけれど、そーゆー自分の気持ちに真っ直ぐなところが、です。 うーむ……。 世界に対してひとり浮かび上がるような個性を配することがキャラクター設定なのだなぁ……と思わされたりして。 自ら事件に首をつっこんでいくのは、まさに主人公向きな性格ですし(笑)。 事件解決にあたっては彼女の機転が活かされるようであればもっと好みだったのですけれど、そこで外部の力を頼りにしてしまったのは残念かもー。 助けてー……って言って助けられるのは、ちとカタルシスが薄いっちうかー。 「救助の声を上げる」ことが主人公の役目ではないと思うのですけれど……。 んでも、ここでスーパーパワーを諾子に発揮されても興ざめですか。 むしろ彼女には解決の手段がないという事実は、普通の人間である読み手と同じ目線で語るためにも必要なことなのかもー(^_^;)。 でもって無事に事件解決でひと安心……と思いきや。 藤原道長から恋文届いちゃったりして、新たな波乱の幕開けかっ! 見事な引きっちうか、なんか、もー(笑)。 鷹男からの手紙に新婚初夜を邪魔される瑠璃姫みたい!!(≧△≦) なんだかんだ言いながら、楽しみなシリーズ開幕となりました。