○● 読書感想記 ●○
2007年 【5】

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(ラノベ指数 18/53)
20
 
『ヘブンリー 君に恋してる』 野梨原花南 著

 義に厚くてアクティブなオンナノコ主人公って好きー。
 少しくらい世間の道理に無知であるようなところもカワイイです。
 靴箱の中に手紙が入っていたら、それはもしかして恋文かも……なんてセオリーも通じなくて!
 それをポストと間違えたのかもと思いやって投函してあげる優しさも素晴らしい!(笑)


 そんな主人公の造型と、彼女に恋心を持つオトコノコの悶々とした様は面白かったのですけれど、そうしたキャラクター性が物語には活かされていないような?
 今回起こった事件に対して、主要キャラクターが成したことが少ないというか。
 事件の解決法は興味深いですし、また野梨原センセらしい手法だなぁ……とは思ったのですけれどもー。

 次は主要キャラが当事者であるような事件でのお話をお願いしたいトコロです。
 いや、ま、学園のみんなでなにかを成す……っていうお祭り感覚は悪くないんですけれどねー(^_^;)。
 

(ラノベ指数 27/53)
19
 
『戦闘城塞マスラヲ vol.2神々の分水嶺』 林トモアキ 著

 いいかげん林センセはミズノから感謝状を受けても良いんじゃないかって。
 ああ、でも、「得物」として用いるのはイメージ悪くしているかもですから、逆に訴えられないだけでもマシですか(笑)。

 そんなふうに前作とのつながりを強くカンジさせられた今巻。
 わたしは「また逢えた!」って懐かしさと嬉しさでいっぱいだったのですけれど、冷静に見返すと、ちょーっと引っ張りすぎな感もあってにんともかんとも。
 メインキャラにあの人もこの人もーってカンジで出し過ぎっちうか揃えすぎ。
 『マスラオ』の代表キャラの存在感が消されてしまっているような……。
 まぁ、今巻はヒデオとウィル子がいれば十分だったのかなー、とも思いますが。


 ハッタリで生き抜くヒデオは健在で。
 そんなふうに自信持って動けるなら、元の世界でもヒキコモリから脱出できたんじゃないかなぁ……とか思ったりして(^_^;)。
 失うモノがなくなったから強くなれたのかもしれませんけれどー。

 そうしたハッタリに惑わされる周囲の人たちの様が面白くって。
 人は自分が見たいと思ったモノしか見えない……って言いますけれど、であれば「強さ」ってなんだろうなーと考えてしまいます。
 ハッタリであっても相手が「強い」と思ってくれさえすれば、そこに「強さ」は生まれているワケですし。

 ああ、そういう意味からすると、今回ヒデオが得物を持ったのはちょっと残念かも。
 その得物がチェーンソーというのは笑いどころでしたけれど、でもやぱしヒデオは口八丁手八丁で戦っていってほしいなって。


 そんなヒデオは聖魔グランプリで見られるので、次巻を楽しみにしてますよ!
 ハッタリも、貫き通せば強さになる。
 「最強のヒキコモリ」をヒデオは見せてくれます!
 

(ラノベ指数 19/53)
18
 
『SHI-NO -シノ-呪いは五つの穴にある』 上月雨音 著

 こーゆータイプの推理ミステリって好きー。
 現場に赴くことなく、提示された情報だけで犯行や動機を推理していくタイプ。
 実際に犯人と対峙するワケじゃないから血なまぐささが緩和されているからかもですけれど。
 知的ゲームっぽいところとかもね。
 それは愛しいキャラたちが危機に陥らない安心感ゆえなのかもですけれど。


 にしても志乃ちゃん。
 かなり感情がわかりやすくなった感が。
 いろいろあった第一部を思えばそれもまた当然かも?
 「僕」の決意もまた相応にわかりやすくなっているので、それはふたりの関係が深まったっちうか近くなったってことなのかもー。


 次回から第二部ってことらしいですし、ふたりの仲がどう変化するのか楽しみです。


 ところで。
「あの……支倉さんが可愛らしいのは分かりますし全く同意見ですけれど、もう少しわたしも構ってください」
 なんて言う真白ちゃんは、二股上等なエロゲのようだと思ってしまいました。
 いや、だって、ほら……ねぇ?(苦笑)
 


(ラノベ指数 18/53)
17
 
『リヴァースキス』 佐野しなの 著

 あはは、やっべー!
 幽霊に身体を奪われたことで、追い出された主人公は美少女になってしまった──というお話なのですけれど。
 美少女云々の展開は、いちおうはどちらの層にも受け入れられるように配慮した結果だと思ったりして。
 本質はコメディ系のBLかなぁ……と。
 見てくれじゃなくて、魂が?

 なんちうか、主人公の善くんは可愛すぎると思うんですが。
 女の子より女の子してるような(笑)。
 女の子の姿にも順応するの早いですしー。
 順応っちうか、違和感を持ち無さ過ぎっていうほうかな?
 で、そんな子が「オレは男だ!」なんて連呼する姿は、間違いなく受けだろうと。

 外見は美少女で魂は男……って、どちらの層にもギリギリかもですけれど、結局はその姿と状況を受け入れて♂×♂で出来上がっちゃいそうになるんですからBLじゃないかなぁ……と思うんですがー。


 そんな善くんが一人相撲しっぱなしの展開はスピーディで勢いありましたし、その間に交わされる会話がまた絶妙なテンポで成されているっちうか。
 台詞だけでポンポンとリズム良く進められる筆致は、まさにライトノベルの王道的なそれかと思ったり。
 うんうん。
 こういう軽さがライトノベルの良いトコロですよね〜。

 もちろん台詞だけといっても状況説明的な台詞ではなく、キャラの性格が表されているような個性的なそれですよ?
 ライトノベルはイラストが重要だということはもちろんですけれど、動きっちうか「命」を感じさせるのは、やぱし台詞っちうか言葉遣いではないかとー。


 ライトノベルは文章のコミック……とは誰が言ったか。
 いや、まさにそのとおり。
 久し振りにライトノベルらしいライトノベルを読んだって気になりました(^-^)。
 

(ラノベ指数 10/52)
16
 
『ガチパン! オレの無謀なハードデイズ』 将吉 著

 なんの奇のてらいも無い青春小説。
 ガジェットでどうこうしようというような浅はかさは無くて、語るに必要なのは己が身体ひとつという。
 うーあー、マジでマジメでまっすぐなー。

 守りたいものがあって、それが暴力で失われそうなとき。
 弱くては守れない。
 そんな真理を嫌と言うほどに突きつけられてきて。
 イヤーボーンであーっ!とか現実には有り得ないのですよね。
 血を吐こうが骨が折れようが、暴力の前には守れないときには守れないもので。
 悲しいかな、それが現実。

 だけれど、そんなツライ現実だけを表しているのかといえば、そうでもないと思うのですよ。
 守りたいモノがあるならば、決して諦めることなく、運を天に任すのでもなく、ただただ強くあれ、強さを目指せと言ってるわけで。

 強いということがどういうことなのかはわかりません。
 ただ、それでも、弱いということがどういうことなのかはわかるような気がします。
 諦め、自分に絶望して、奪われるがままにいることが弱いということなのではないかと。
 もちろん弱さは罪では無いと思います。
 だけれども、少しでも諦めたくなくて、自分に絶望したくなくて、そして守りたいものを奪われたくないのであれば、人は強さを目指すべきなのだと思います。


 構成も物語曲線が派手に動いていて飽きなかったー。
 越えるべき障害が明確で、かつその障害に対して読み手のわたしもハッキリとした敵意を向けられるように設定されているトコロが安心できるっちうか。
 主人公たちとの共感性を得られやすいワケで。
 でもって主人公の動機が最後には巡り巡って因縁として壁になってくるっちう展開の妙も好感。
 設定を物語として活かす術を心得ているっちう。

 筆致も好みでしたし、ほかの既刊作品も読んでみよーっと。
 

(ラノベ指数 20/51)
15
 
『マージナル』 神崎紫電 著

 2007年のいまに上梓される作品で、「インターネットで仲間を集い」「チャットで情報収集して」「携帯メールで連絡を取り合う」……ってどうなのかなー、とか。
 そうした各種ツールは10年前に比べれば身近な存在になっていて生活の中に溶け込んでいる──欠かせないモノにはなったと思うのですけれど、そうした「普通っぽさ」や「当たり前」を表現しているわけでは無い……のですよね?
 これらツールを自在に操っていることを、なにか特別な行為であるかのように描かれていると感じられたのですよー。

 別段、これらツールが生活の一部として描写される分にはなにも意識するトコロはないのですけれど、それが物語の一部と関わり合いを持ってくると時代性を感じられてしまってチープさが漂ってしまうような……。

 十分に成熟した科学は魔法と見分けがつかないかもしれないけれど、インターネットは成熟した科学でも魔法でもなんでもないですよ、ちうことで。


 なんちうか、精一杯に背伸びした感を受けたりして。
 先述のツールの扱いにしてもそうですけれど、加えてコーヒーの味を表現するのに「苦み走った」って……。
 重箱のスミをつついているかもですけれど、コーヒーを苦いって感じるなんてさすが高校生!(主人公)とか思って可愛く思えてしまったり。
 ネクロフィリアとか虐待の過去とか、そんなん関係なく(苦笑)。

 そんな次第で入りの部分ではちょっと引いてしまいましたけれど、その後の終盤までの流れはかなり綺麗にまとまっているように感じて、さすがガガガ文庫!と思わせるにたるものでした。
 設定の奇抜さは他のレーベルに後れを取っていても、構成の手堅さは比肩しうるモノかと。


 んーと、普通にはオンナノコを愛せないと思っていた異常性癖のオトコノコが、一途で純情なオンナノコと出会って普通の愛情を取り戻すお話。
 自己変革と癒しの物語。
 今作を好きというにはてらいがありますけれど、次作を楽しみにできる作家さまでした。
 

(ラノベ指数 11/51
14
 
『パイレーティカ 女海賊アートの冒険<上巻>』 タニス・リー 著

 えー。
 思っていた初期状態と違う入り口で、なんだかとてもションボリ。
 「海賊の娘」とオビで謳っているのに、実際は「『海賊の娘』だと思いこんだオンナノコが本当に『海賊』になる話」なんですもん。
 思いこみの激しいオンナノコが空想を現実にしてしまう……っちう。

 御大のことですし、もしかしたら本当に「海賊の娘」だなんてことが下巻で明らかにされるのかもしれませんけれど、ともあれ上巻ではそんなカンジで。

 まぁ、生い立ちや血筋に関係なく、夢を叶えるのは自分自身の行動でしかない……というメッセージ性を考えれば、これはこれで物語のスジは通っているとは思うのですけれどもー。
 でも期待していた展開とは違ったという印象はぬぐえませんか。

 海賊モノっていったら、血沸き肉躍る戦いとかあるものでは……?
 なんだか、こう、ピンチらしいピンチが無くて全体が間延びしているようにも思えたりして。
 この辺りも下巻になると違うのかしらー。
 

(ラノベ指数 15/51)
13
 
『約束 〜遠い空から降る星〜』 白川恵 著

 破滅へ向かう異世界へ救世主として召喚されたオンナノコが、目的地までの道程で自らの素養を皆に認めさせ、目覚めた力で世界を救うお話。
 いや、そういう言い方をすると綺麗にまとまっているような気がしてしまうのですけれど──そうじゃないでしょ!って言いたくて言いたくて。

 召喚されたオンナノコには従者?として見目麗しい男性が三人仕えるのですけれど、この誰ともLOVEな雰囲気に発展しないってどういうこと?
 世界を救う冒険譚としては間違ってないとしても、それだけでっ、それだけでいいのかと!
 少なくともホワイトハートというレーベルの方向性(読者が何を期待して購読するのかという点)を考えれば、やぱし「愛が世界を救う」みたいなお話にしないと消化不良を起こすのでは?
 っちうか、わたしは起こした!(><)


 部外者が突然現れて世界を救う有資格者だなんて言われても納得できない人が多数いるのは当然で。
 それを臨機応変に現場主義で対応しながら事件を解決していき、結果を残して周囲の人間に納得させていく……という展開はまったくもって正しいですし共感もおぼえます。
 でもね、でもね──っ!!!

 おまけに恋愛にならないだけでなく、本来なら恋愛対象候補たるべき従者のうちのひとりには、実は主人公が恋愛対象にならないだけの理由が存在していたっていうのは、もう、どうしようかと。
 そこでもまた「物語の作りとしては結構なことなのかもしれないけれど、どうしてもレーベルの方向性とミスマッチを起こしている」設定だと思わずにはいられなくて!
 ちょ、それはありえないデショー……とかまで脱力してしまったわ。


 手堅くまとめられた救世のお話なのですけれど、奥歯に物が挟まったような何とも言い難い居心地の悪さを覚えてしまいましたことよ(^_^;)。
 

(ラノベ指数 16/51)
12
 
『黄金の剣は夢を見る』 西谷史 著

 すっきりまとまている学園伝奇モノ?かなー。
 それも現実依り路線の。
 古来より伝わる謎を追うことで自分の出自があきらかになることとか、その謎を追う過程で恋愛の要素が絡んでくることとか、ミックス具合というか要素の配分が絶妙なカンジ。
 逆に各要素の配分がまとまりすぎているために、どの要素についても飛び抜けている個性を出せていないようにも思えてしまうのですがー。
 このあたりは痛し痒し……かもです(^_^;)。


 歌に隠されて伝えられてきた秘密、それを示す地理的な証拠などなど、ミステリとしてのガジェットは練り込まれているなーと。
 問題(出題・謎)の構造が、きちんと理系的に提示されるワケで。
 理系的っていうかパズル的ってカンジかもですがー。
 んでも、そういう証明の仕方は好きー。
 ゲーム感覚にも似て、完全に明らかにされたときの「解いた!」って気持ちにさせてくれるあたりが。

 あー、でもその謎と証明が数百年にもわたって解かれなかったという事実には首を傾げてしまうっちうか。
 ありていにいえば、一介の高校生が着眼すること程度なら、これまで誰かが思い付いていても不思議ではないと思ったり。
 謎が謎のまま数百年ものあいだ伝えられた理由があれば素直に受け入れられたかもですねぇ……(苦笑)。

 その理由が血筋や家柄にあったのではないかとの推測も立つのですが、それだと興醒めなのでー。
 ……ん、違うか。
 血筋や家柄だとすると、その家の人が謎を解き明かさなかった・後世に伝えなかった理由が別に必要となってくるワケで。
 んー……。
 やぱし、このあたりの説明が欲しかった、と(^_^;)。


 LOVE要素としては、まぁ、わかるわかるー……と。
 相手のオトコノコのこと、あまり好きになれなかったものでー(苦笑)。
 んでも、その彼を何故か意識してしまうっていう感覚には納得できたので、彼女の恋は応援できなくても彼女自身は応援できる、みたいなー。

 ラストの迎え方もわりと好み。
 素直に恋が成就するのではなく、少しだけ切ないっちうか。
 その切なさが彼女を成長させたんだなーって感じられて、ん、これは良い青春LOVE!って(笑)。


 いや、でも、ま、しかし。
 メインキャラ格のオンナノコが主人公を含めてふたりいるのですけれどー。
 ふたりとも、恋をしてからの言動が飛びすぎているような。
 恋をするとオンナノコは変わるモノで、そして恋は友情に優先するってことなんでしょか(^_^;)。
 そうかもしれんですがー。

 それでも、相手を偽りたくないという気持ちとか、身を案じる気持ちとか、そういう基本的なトコロでは変化していない様を見せられると、ふたりの友情って良いな〜と思うのデスヨ。
 うん。
 読後感の良いお話でした。
 

(ラノベ指数 7/51)
11
 
『十月は二人三脚の消去法推理』 霧舎巧 著

 棚彦くんと琴葉ちゃんの仲はなかなか進展しないですねぇ……。
 事件捜査ばかりに重きが置かれてしまっているせいでもありますがー(いや、それは推理ミステリとしては正しい)。
 どうも琴葉ちゃん、「事件捜査をすれば棚彦と仲良くなれる」と思っているようなフシを感じるのですよー。
 目的と手段を混同してしまっているような(苦笑)。

 例の「伝説」に至れば幸せが待っているかのような錯覚、してませんか?
 そうじゃないでしょ!という気持ちで、モヤッとモヤッと(^_^;)。


 消去法推理というものについてはちと理解できていないわたしですけれど、読中での犯人予想は、ま、アタリってカンジで。
 結局のトコロ「誰が事件によって得をするか」に集約されるのかなーとか。
 その手法で読み進めていたら的中したので。
 うん、ポアロは偉大だわ(笑)。


 にしても脇野先生や冬美先輩の言動にはイラチするっちうか。
 常識人のつもりでいるエゴイスティックっていうのはタチ悪い……と。
 んでも、そういう異常性格(とまではいかないかもですが)の設定って、事件を誘発・誘導するために置かれたように思えるわけで、その辺りは物語としての作為を感じてしまうのですよねぇ……。
 ふたりの言動に気持ち悪さをおぼえつつも、どこか冷めて眺めているっていう。

 そういう人物配置も推理ミステリならでは──って気もしてます。


 ところで。
 今巻の表紙、なんだか彩度が低い&解像度が合ってないような気がするのですが、どんなものでしょ?
 そして描かれた構図はあまり本編とは関係ないっていうかー。
 本音を言えば、表紙に描かれたような展開を期待しちゃっていたんですよーんよーん(TДT)。
 次っ、次こそは!!
 

(ラノベ指数 20/51)
10
 
『待ってて、藤森くん!2』 壱乗寺かるた 著

 主人公・藤森里見の優先順位って、わりとコロッコロッと入れ替わっているような気がして応援しづらいっちうか……。
 その場その場で優先順位を再計算しすぎ……ってことなのかもしれませんが。
 正直ではあっても、雰囲気に流されやすいっていうか。

 誰にも良い顔をしたいっていうのは、つまりは自分が傷つきたくないってことと同義かなぁ。
 それは「隠された優先順位ナンバーワン」が「自分」だってことで。
 自分がイチバン大切っていうのは別にそれはそれで構わないと思うのですけれど、それを隠している(意識していない)っていうのは罪だと思うのですよー。

 だもので、そんな里見に尽くす犬塚吉野ちゃんが哀れっぽく見えてきてしまったり……。
 彼女の思いこみも大概なモノかと思いますけれど、それでもきちんと意識して行っているあたり好感デスヨ。
 しっかりと優先順位が定まっているワケで。
 その順位の中では、恥をかくとかそういう対外的なことは問題ではなく。
 自分が、どうしたいのか──が問題なだけで。
 そういう潔さ、カッコイイです(^-^)。


 あー、で、あれですか。
 里見を巡っての恋愛バトルかと思いきや、ヒロインたちに意外な過去がーっ!
 そうか、そうきましたか!ってカンジ。
 ただのラブコメでは終わりませんかっ!
 賑やかすにしても主人公ときちんと設定を絡めてくるところを好感です。
 飛び道具じゃないっちうか。

 でもこれでヒロインみんなが幸せになれるかもしれない……って期待は出てきました。
 恋の成就だけが幸せじゃないよね、ってことで(^_^)。


 しかし今巻はあれでしたかねぇ……。
 藤森くんを巡ってのお話より、「榊」と「梅園」が会談しているシーンにゾクゾクしてしまったわたしは病気なんでしょうか(苦笑)。
 ですけど、よりにもよって「あの」両家の子女がですよ?
 名にし負う名家と、武闘派でならした家柄の。
 ヤバイです。
 黒い空気が漂ってきます!(笑)

 どこかの世界ともつながっているとかつながっていないとか。
 そんな次第で次巻も楽しみにしています。
 

(ラノベ指数 13/51)
9
 
『吸血の季節』 砂浦俊一 著

 綺麗にまとまっている中で、気になる点がひとつ。
 人智を越えた暴力に抗う手段、その存在理由が「くぐった死線が、殴られ屋を次の領域へと押し上げた」というのは、いささか説得力に欠けるような。
 消極的なイヤーボーンに思えて、ちょいと姑息的かなーと。
 そこは単純明快な破壊的暴力に対して、知恵と勇気を巡らせて立ち向かって勝利するってモノではないですかいのぉ?
 「くぐった死線」が「知恵と勇気」を授けていたというのであれば、その説明に十分なモノをわたしは感じなかったワケで。

 ……いや、ま、重箱つついてしまえば、動体視力の良さだけで殴られ屋を続けられているというあたりにも少なくない甘さを感じてしまうのですけれども。

 彼が強いということを示して欲しいわけではなく、負けなかった理由を、もすこし明確にしてほしかったなー……と思う次第。


 そんなヒーロー性に疑問を持った以外は、見事にピースをあてはめることに成功しているなぁ……と思います。
 吸血症の主人公のオンナノコと、その症状に端を発しているかと思われる過去の事件が、現在起こっている事件に対してどう関わってくるのか関わってこないのか。
 その活かし方、関連の付け方などは、推理ミステリの部類に近いかも。
 それだけ精緻に因果関係を構築しているという印象。

 つまり、暴力の象徴としてあのようなギミックを弄した点のみ浮いているってことなのかなー。
 もっとも、それが無いなら無いで、あまりライトノベルとは言えなくなってしまう印象なのですが。

 ……うーん。
 砂浦センセって、作家としての方向性を定める時期に来ているんじゃないかなぁ。
 このままライトノベル作家として進んでいくのか、それとも現代文芸の方向へ舵を切るのか。
 わたしとしては文芸作家へ転身されても良いのではないかなぁ……と思うのですけれどー。
 

(ラノベ指数 12/51)
8
 
『ガーディアン・プリンセス』 花衣沙久羅 著

 え……エロ小説ぅぅぅぅっ!!!
 いや、ある種の制限枠を越えてしまっているエロ小説と比べるなら、その制限枠のなかで目一杯のところを表現しようとしている今作のようなレベルのほうが、そのギリギリ感は強いのかも。
 やってることはキスだけなんですけどね。
 そのひとつひとつが濃厚っちうかー(≧△≦)。

 偶然であった怪盗にキスをされ、その感覚が忘れられなくなってしまう侯爵令嬢と、身分を隠して怪盗として活動している青年実業家のすれ違いラブストーリー……ってトコロかしらん。
 侯爵令嬢は怪盗のことを好きなんですけれど、その正体である実業家のほうは大嫌いと。
 そんなオフセットが楽しいったら!(≧▽≦)


 19世紀の英国が舞台と言うことで、まだまだ男尊女卑な風潮が幅をきかせている時代にあって、主人公の侯爵令嬢はそんな考え方とは一線を画して自立した女性を目指しているところが好感。
 自立した──といっても男性を忌避するのではなく、自分には自分の考えがあるということをハッキリとさせている点が。
 やぱしアクティブかつポジティブなオンナノコ主人公を見るのは気持ちが良いです。


 行方不明になっている侯爵の生死とか、怪盗の目的とか、いろいろとわからないトコロは多々あるのですけれど、展開のさせ方は完全に怪盗と令嬢の恋物語を中心に据えているのですよねー。
 物語としては浅いのかもですが、そのシンプルさ、好きですわー。
 次巻でもキスでメロメロにしてやっちゃってください!(≧▽≦)
 

(ラノベ指数 11/51)

 
『いもうと・サマーデイズ』 山本沙姫 著

 父親の突然の再婚によって4人もの妹ができちゃて、その妹たちとアレコレしてしまう関係になってしまうお兄ちゃんのお話。


 エロ小説ってふた通りあるように思うのですよ。
 なにか目標なり目的なりを達するような物語としての体裁を最低限残しているタイプと、目的も目標もなくてただただ女の子とまぐわうことを最後まで続けるタイプと。
 今作は後者、と。
 義妹たちはみーんな新しくできたお兄ちゃんのことを好き好きでしかたがなくて、お兄ちゃんとHするために積極的であり続けるわけで。

 300ページ足らずのテキスト量の中で「エロ小説」というジャンルの主旨を全うするなら、それで良いのではないかなーとわたしは思うのデスヨ。
 一般的な物語の体裁をつけるというのは、なんだか、こう、Hなことをするのに理由を付けているみたいで、このジャンルに対して素直になっていない印象を受けるのでー。
 どっちつかずちうか。

 エロ小説に物語性は必要無い!って言っているのではなくて、エロ小説はエロ小説の本分を全うしようよ!ということで。
 そういう意味で、今作は最後まで徹底してエロ小説でありましたとさー(笑)。


 アクアリウムのお店の息子って主人公の設定、かなりの変化球っちうか。
 そしてそんなマイナーさ加減も、エロ小説の雰囲気をかなり発しているように思うのですが、如何に(^_^;)。

 ……ああ、そっか。
 本文の展開はエロ重視で変化や差別化をさせにくいだけに、その分は設定で補う──っていうのがエロ小説の在り方なのかも。
 

(ラノベ指数 17/51)

 
『サムライいにしえーしょん』 さかき傘 著

 表4に書かれたあらすじに惹かれて──。

 妖刀の呪いを股間に宿したために、神社に監禁されてしまう鉄之助。男子禁制の環境で、巫女やサムライ少女から恋と修行に引っぱりだことなる煩悩青年だが、果たして彼は股間の呪いを解くことができるのか!?

 いや、もう、とにかく冒頭の一文が、ものごっつツボに入ってしまいました(笑)。
 字面の脈絡の無さといいますかー。
 「〜のために、〜される」という因果関係を説明する文章なのに、その理由を等号で結びつけるには高度な想像力を必要とされるっちうか。

 物語の内容について正確を期すより、こうしたあらすじなどの場面で必要とされるのは、まさにインパクトなんだなぁ……と。
 理路整然と書かれるより、乱れた文章であっても関心を引ければ勝ちってカンジ。


 えーと、で、内容については、ま、上記なカンジで(笑)。
 口八丁手八丁で状況を切り抜ける、その場の勢いでどうにかしてしまうタイプの主人公なので、そのあたりは好き嫌い分かれるトコかも。
 こうした主人公についての描写って、同種の販売路線であるエロゲと比べ圧倒的に全体のテキスト量が少ないために、どうしても強引さが認められてしまうのかも。
 主人公の心情についてまで構っていられないっちう。
 この手の作品に必要なのは深い洞察や精緻な構成力ではなくて、とにかくHシーンですもんねぇ。

 それでも今作はいちおう「呪いを解く」という物語のベースがあるので、それを追っていく構成にはなっていますか。
 もちろんその大半は、各ヒロインたちとのHシーンを済ませた終盤の怒濤の展開で解決されてしまうのですけれど(笑)。
 


(ラノベ指数 15/51)
5
 
『伯爵と妖精 花嫁修業は薔薇迷宮で』 谷瑞恵 著

 うーあー。
 幸せそうな表紙だなぁ……って思ったのにーっ!
 ……まぁ、本当に幸せだけになってしまったら、それは物語にはなりませんか(苦笑)。
 いや、でもなぁ……。
 リディアの言動を見ていると、結婚はしばし延期したほうが良いんじゃないかって思ったり。
 なんちうか前巻での婚約は勢いで言ってしまったことのように思えるのですよー。
 もちろんエドガーを大切に思う、その気持ちは偽らざるものなのもわかるのですけれど、そのことと結婚という形で結ばれることが、いまだ彼女の中では同じ像を結んでいないってことで。

 これまでの生活において、結婚のみならず恋愛すら縁遠いものとして考えていたリディアだからこそ、エドガーのようにそこまで自分を大切に想ってくれる人が現れること自体、夢物語だと信じられないのも無理は無いっちう。
 軽くパニックなんですよね、きっと(笑)。
 んでも、そんな恐慌状態にあってもエドガーのために花嫁修業を続けようとするあたり、やぱし彼のことを好きでいるんだなぁ……と感じられたりして。
 ……単に負けず嫌いってカンジもしないでもないですけれど(^_^;)。


 変化してきているといえば、リディアのほかにレイヴンもですね〜。
 エドガーとはまた違った意味でリディアのことを大切に思い始めてきているっちうか。
 仕える主人の婚約者だから……ってだけではなさそうなところが良き哉。
 エドガーと、そしてリディアと。
 ふたりの幸せを願っているように思えるのですよー。
 そんなふうにレイヴンを変えていったリディアの気質って、やぱし素敵なのだなぁ……と思えたりして。
 

(ラノベ指数 4/51)
4
 
『ソウルケイジ』 誉田哲也 著

 複数の視点からによる語り。
 そのうちのひとりは仕事に優秀ながらも過去に恐怖を体験している女性で、もうひとりは感情の抑制が達者で不器用なところがある男性。
 いかにもー……な、誉田センセらしいテイストあふれた作品ですわー。
 そういう男女が登場しているからといって、そこにラブがあるはずもないっていうのもまた……(笑)。
 まぁ、誉田センセのジャンルって警察小説ですし、そういう浮かれたところは場違いなので構わないのですけれどねー。
 すでに十分にキャラ立ちしているのですから。


 そうして視点をキャラの間で回しながら事件の真相へと近づいていく構成なのですけれど、こちらはこれまでになくミステリ仕立てだったような。
 被害者と加害者の正体が謎を深めているっちう。
 その加害者にしても自らの悲しみの中で大切な人の幸せを願っての犯行と見せられては、その行為についても一概には責められない気持ちになるというか。
 そのあたりは社会性に由来してしまうものなのかもですが。
 もちろん、殺人は許されないことだとしても。

 ……でも、殺人は社会におけるひとつの事象だから無くならないって説も聞きますし。
 無くならないからこそ、その理由を求め、探る……のかなぁ。


 にしても誉田センセの筆致は、わたしにとっては鋭すぎな気もしてきました。
 ほんの数行でズバッと切られます。
 保険金詐欺師が遺族の女の子にした行為の独白とか、犯人が偽装のために自らに課した苦行とか。
 もぅ、どれもに気持ちがひきずられてしまったことよ。

 とくに犯人のアレは、ホント、気持ち悪くなった……(T△T)。


 作品を重ねるごとに深みを増していく誉田センセの筆致。
 次の作品も楽しみにしています。
 

(ラノベ指数 16/51)
3
 
『秋津島 斎なる神のしもべ』 鷹野祐希 著

 RPGっぽい展開をしてるなー、と。
 ──事件が起こって主人公は生まれ育った土地から追いやられ流浪の旅へ出るってあたりが。
 で、世界背景を語ってくれる賢者に会ったり、追跡者からの襲撃を受けたり、行く先々で1イベントあってー。
 そのイベントを消化すると次の土地へまた流浪していくということが繰り返されてー。

 あー、まー、きわめて押しの強い展開っちうかー。
 ちと読まされている感が強いかも。
 少しずつ情報は開示されはしているのですけれど、主人公の気持ちなんておかまいなしにお話は進んでいるように思えるので、開示されるのはあくまで「情報」であって「物語」が明らかにされていっているようには感じられないのですよー。

 序盤に起こった恋人が殺害された件。
 社会的にもっと重大事件として認識されたりしないのかなーとか。
 主人公にしても恋人が殺されたわりには落ち着いているように見えたり。
 なんちうか、大きく取り乱したりしないですぐに復讐の手段を考えるっていうのは、もう彼女の中ではその殺人事件は過去のものとして明確に認識されてしまっているんだなぁ……と。
 受け止めてしまっているっちうか。
 わたしの感覚では、もっとこう、その事実を受け入れるまでには時間がかかるものではないかなぁと思うのですよー。

 この辺りの事実に対して、主人公の受け入れやすい姿勢にも「押しが強い」と感じてしまうのですよねー。
 いちいちイベントひとつで留まらず、物語を先へ先へと展開させようという意識っちうかー。

 物語を構成するのはイベントの連続性であって、キャラクターの心情はその下に置かれて、あくまでイベントに付随するものでしかないっちうか。
 ……感情が置いてけぼりにされてしまうのかなぁ。
 

(ラノベ指数 17/51)
2
 
『されど月に手は届かず 魍魎の都』 本宮ことは 著

 幻獣降臨譚の本宮センセの新シリーズ。
 平安+陰陽師……ってことで、不安だったのですよー。
 そこは幾人もの先達がおられるジャンルじゃないですか。
 中には討ち死にされてしまった先達も少なくないっちう難しいジャンルなだけに。
 そんな不安を抱えて読み進めていたのですけれど、あらやだ、かなり好みですわ。
 単純+素直な気質のオトコノコが「誰かを護るための強さ」を願いながら成長していくっちうのは、見ていて微笑ましワケで(^-^)。

 自分に出来ないことがあると知っていて、至らないこともわかっていて。
 だからといって手を伸ばせば救えるモノを見過ごすことなんて出来なくて。
 そんな優しさが愛おしい次第。
 ガンバレ!って応援したくなるんですよー。


 鬼退治のアクションシーンも勢いを感じられる筆致で好感。
 平安モノって説明過多になりがちな印象があったのですけれど、今作からはそういった雰囲気は感じなかったかなー。
 アクションなどを含めて、動的な部分に引き込まれていたのかも。


 で、読み進めていって、あらビックリ。
 今作ってドラマCD用の外伝みたいな位置付けなんですか?
 本編のほうは、今回、端役で登場した女の子が主人公?
 うわっ、それナイス!(笑)
 ズブレットかと思ったらセ・ネドラだった!ってカンジ。
 これは嬉しい誤算〜。
 しかも「彼女がデレになるまでの恋愛話」なんですって!
 たっのしみぃぃぃっっ!!!(≧▽≦)
 
(ラノベ指数 17/51)

『学園カゲキ!』 山川進 著

 新人らしからぬ文章の丁寧さは感じられたのですけれど、終始、既視感があってにんともかんとも。
 ガガガ文庫の選評とか方針とかを見ると、際だつ個性より完成された構成力を求められているように思えて、そういう点ではなるほど賞に選ばれるのも納得というカンジ。
 言うなれば、この手堅さがガガガ文庫らしいってことで。


 知らぬ間に自分を主人公としたドラマが展開されていて、その虚構の世界に気付いて外の世界へ踏み出すお話。
 ……うん。
 物語構造はしっかりとしているとわかるんですよ。
 んでも、その正しさも「既視感」を抱いてしまって見てしまうと、正しくて当然だと思えてしまうっちうかー。


 学園内で演劇やドラマが多数制作中であるという設定から、多くのキャラクターが賑やかしで必要なのはわかるのですけれど、それでも使い捨てのキャラが多くないかなぁ……。
 展開に合わせて用意された感があって、ちょっと好きくないです。
 そんなことをしなくても、主役周りのキャラが十分に手堅い作りになっているっちうのに。


 あとクライマックスの盛り上げ方も、葛藤はあってもトレードオフをしていないところに不満を覚える次第。
 彼女を追いかけるために空港へ駆けつけるのは良いとしても、そこまでは先生の車で乗り付けるって……ちょっと楽してやしませんか、と。
 主人公が成した万策が尽きかけたところでこそ仲間の存在が貴重になるのであって、決心した直後に「車が用意してある」ってのは甘やかしすぎでしょー。

 自らの過ちに気付くまでの葛藤は当然として、その気持ちを成就させるまでの過程を描かない作品って最近少なくないなぁ……と思う次第。
 わたしは、気付いただけでも決心しただけでも駄目だと思う。
 気付いて、決心して、そこからなにを成すのかが重要なのではないかなー。

 「ぼくはここにいてもいいんだ」→「おめでとう」……じゃなくて!(><)


 とりあえず、次……かなぁ。
 もう同じネタは使えないですし。
 となればこの学園の設定を活かした新展開を期待してます。
 

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