○● 読書感想記 ●○ 2007年 【5】 ※ 表紙画像のリンク先は【bk1】です ※
妖刀の呪いを股間に宿したために、神社に監禁されてしまう鉄之助。男子禁制の環境で、巫女やサムライ少女から恋と修行に引っぱりだことなる煩悩青年だが、果たして彼は股間の呪いを解くことができるのか!?
いや、もう、とにかく冒頭の一文が、ものごっつツボに入ってしまいました(笑)。 字面の脈絡の無さといいますかー。 「〜のために、〜される」という因果関係を説明する文章なのに、その理由を等号で結びつけるには高度な想像力を必要とされるっちうか。 物語の内容について正確を期すより、こうしたあらすじなどの場面で必要とされるのは、まさにインパクトなんだなぁ……と。 理路整然と書かれるより、乱れた文章であっても関心を引ければ勝ちってカンジ。 えーと、で、内容については、ま、上記なカンジで(笑)。 口八丁手八丁で状況を切り抜ける、その場の勢いでどうにかしてしまうタイプの主人公なので、そのあたりは好き嫌い分かれるトコかも。 こうした主人公についての描写って、同種の販売路線であるエロゲと比べ圧倒的に全体のテキスト量が少ないために、どうしても強引さが認められてしまうのかも。 主人公の心情についてまで構っていられないっちう。 この手の作品に必要なのは深い洞察や精緻な構成力ではなくて、とにかくHシーンですもんねぇ。 それでも今作はいちおう「呪いを解く」という物語のベースがあるので、それを追っていく構成にはなっていますか。 もちろんその大半は、各ヒロインたちとのHシーンを済ませた終盤の怒濤の展開で解決されてしまうのですけれど(笑)。
『学園カゲキ!』 山川進 著 新人らしからぬ文章の丁寧さは感じられたのですけれど、終始、既視感があってにんともかんとも。 ガガガ文庫の選評とか方針とかを見ると、際だつ個性より完成された構成力を求められているように思えて、そういう点ではなるほど賞に選ばれるのも納得というカンジ。 言うなれば、この手堅さがガガガ文庫らしいってことで。 知らぬ間に自分を主人公としたドラマが展開されていて、その虚構の世界に気付いて外の世界へ踏み出すお話。 ……うん。 物語構造はしっかりとしているとわかるんですよ。 んでも、その正しさも「既視感」を抱いてしまって見てしまうと、正しくて当然だと思えてしまうっちうかー。 学園内で演劇やドラマが多数制作中であるという設定から、多くのキャラクターが賑やかしで必要なのはわかるのですけれど、それでも使い捨てのキャラが多くないかなぁ……。 展開に合わせて用意された感があって、ちょっと好きくないです。 そんなことをしなくても、主役周りのキャラが十分に手堅い作りになっているっちうのに。 あとクライマックスの盛り上げ方も、葛藤はあってもトレードオフをしていないところに不満を覚える次第。 彼女を追いかけるために空港へ駆けつけるのは良いとしても、そこまでは先生の車で乗り付けるって……ちょっと楽してやしませんか、と。 主人公が成した万策が尽きかけたところでこそ仲間の存在が貴重になるのであって、決心した直後に「車が用意してある」ってのは甘やかしすぎでしょー。 自らの過ちに気付くまでの葛藤は当然として、その気持ちを成就させるまでの過程を描かない作品って最近少なくないなぁ……と思う次第。 わたしは、気付いただけでも決心しただけでも駄目だと思う。 気付いて、決心して、そこからなにを成すのかが重要なのではないかなー。 「ぼくはここにいてもいいんだ」→「おめでとう」……じゃなくて!(><) とりあえず、次……かなぁ。 もう同じネタは使えないですし。 となればこの学園の設定を活かした新展開を期待してます。