○● 読書感想記 ●○
2007年 【4】

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(ラノベ指数 11/51)
20
 
『遥かに仰ぎ、麗しの』 PULLTOP 原作/岡田留奈 著

 初めに手にしたとき終盤辺りをめくって見て、どのヒロインルートなのかを確かめた邪道読み手はわたしです(笑)。
 ……すみすみかぁ……(ため息)。
 いや、でも改めて考えてみたら、栖香がイチバン適していたのかなぁとも思うのですよ。
 ノベライズするにあたっては。

 邑那さんとかみやびーとかは設定的に大きすぎるような気がしますし、かといってみさきちとか殿子とかは「はるかに」を代表しているかといわれると微妙な気がしますし……。
 分校系と本校系という二大潮流があって、そのなかで作品としての代表をそれぞれ選ぶとしたら栖香とみやびであろうことは理解が得られるところだと思うのです。
 で、さらに最終判定として、栖香とみやび、どちらがノベライズに適しているのかと総合的に判断すれば──やっぱり栖香だったかなぁ、と。
 良いお話と、ノベライズに適した展開を見せているのかというのは、また別の視点の問題ということでー。

 やぱしですね、終盤、司の実行動が問題解決にさして意味を成していないことが好きくないのですよ。
 「彼女を連れ去るために、僕はやって来たのです」って、それだけで解決してしまってはエンターテイメントの物語としては足りなさすぎだろうと思うのです。
 もちろん、その決意に至ることは大切ですけれど、それは必要条件であって、それだけで物語展開上の必要十分条件を満たしているとは言えない……というお話。
 そう決意した上で、障害を乗り越え、願いを成就させる。
 その過程にカタルシスがあると思うのですよー。


 んでも、だからといってこのノベライズが失敗しているかといえば、決してそんなことはなく。
 ゲーム本編では過度に挿入されていた感のある栖香とのHシーンが大幅に削除されたことによって、物語が非常に引き締まっているように思えます。
 栖香の心情面がより強調された形になっているっちうか。
 物語の軸を明らかにしている点では、ゲーム本編よりこちらのノベライズのほうが勝っているように思います。

 いや、本編をプレイ当時は分校系シナリオにかなり批判的でしたけれど、こうして「Hゲーム」であるという枷を取り払えば、栖香シナリオも悪くないなぁ……と思った次第です。
 余計な解釈を加味するでなし、かといって「原作本編を知っている『ファン』を相手にすることで、描写を端折っても構わないだろう」的な手抜きをしているわけでもなし……。
 ノベライズというだけで仕事をせずに、物語を構築するという作業を丁寧にした「真っ当なノベライズ」だと思いました。


 次は番外編と銘打って本校系キャラも大活躍する短編集ということなので、こちらも楽しみにしています。
 メインヒロインのほかに、やぱし鏡花は鉄板……なのかなぁ。
 リーダさんもありそうですしー。
 大銀杏は分校系だから無理っぽいですか(^_^;)。
 とまれ、楽しみにしていますですよー!
 

(ラノベ指数 23/51)
19
 
『樹海人魚』 中村九郎 著

 文章の配列をいじってこない、「優しいほうの中村センセ」でした(^_^;)。
 系としては『黒白キューピッド』より『ロクメンダイス』のほう。
 そのせいかわかりやすくはあった……んですけれども、そこは中村センセの作品。
 言い回しとか、やぱし独創的すぎます!(><)


 中村センセの作品って、あらためて舞台劇のようだと感じたり。
 情景を表す言葉がとても説明的──読者の側を向いているように思うので。
 なんちうか会話をしている場面でも、キャラ同士が向き合っているのではなくて「観客」である「読者」に語りかけているような。

 そうしていちいち説明してはくれる優しさはあるのですけれどー。
 んでも、物語を動かすための要素が多すぎなカンジ。
 キャラもガジェットも、もっと絞ったほうが良い……っちうか、絞って下さい(T▽T)。
 「存在そのものを消去してしまう」とか「死ぬことを繰り返す」とか、悲劇的要素を積み上げての作風は嫌いじゃないのですけれど、語りが多すぎるという印象は否めないかなーと。


 ああ、うん。
 悲劇……ね。
 中村センセの作品って、やぱしそういう辛さや痛さを内包してます。
 でも、ラストはそうした苦さを感じさせただけで終わるわけではなくて。
 苦しくても、辛くても、痛くても。
 一筋の光を落として、幕を下ろす。
 そこが中村センセがラノベ作家たる所以なのかと思うのですよー。
 エンターテイメントを忘れていないってトコロ、が。


 ところで
 「しゃっちょこばる」って日常的に何度も繰り返して用いる類の言葉ではないと思うのですけれどー。
 それが2ページ分の行数を経ずして繰り返されるというのは、いかがなものかと感じてしまったり。
 同じ言葉をつい繰り返してしまうというのは、このあたりの文章を同時刻にダァーッと一度に書き上げたことによるものではないかと推測。
 まぁ、それは仕事のやりかたでしょうから良いのですけれど、編集さんは気にならなかったのかなぁ……。
 こういう語句の使い方について。
 この辺りは中村センセの個性というより編集の怠慢ではないかと思うのですが。

 ともあれ、こうして作品を読んでみると、わりと自由に描かれているのかな〜という印象を受けたり。
 今後、このレーベルでどんどんと刊行されていかれるようであれば……追ってしまうんでしょうねぇ(^_^;)。
 


(ラノベ指数 6/51)
18
 
『ムーンライト・ラブコール』 梶尾真治 著

 8編が収められた短編集なんですけれどもー。
 その小編のどれもが、ラストの1ページ、ないしは最後の数行で見事に物語を収束させているという。
 ラストの切れ味の鋭さこそが短編の妙味とばかりに。
 短編は短編で、長編とは異なる物語の描き方が必要なのだと心底思わされます。
 いろいろと理屈をこねたり計算したように感情を持っていくのではなくて、もう、まさに一瞬でハートをつかむワザが必要ってカンジ。
 言葉ひとつで!


 収められた8編の中では、「ファース・オブ・フローズン・ピクルス」がラブコメ的で面白かったかなー。
 んでも、ラストの衝撃度からすると「メモリアル・スター」がイチバンだったかも。
 人の欲と、そのために失われる大きなモノ。
 二度と手にすることの出来ない尊いモノがこの世界にはあるということを教えてくれます。
 物事には二面性があって、単純に割り切ってしまうことの愚かさも、ね……。


 うーむ……。
 短編作品を好きになったセンセについては長編も好きになる率が高いわたしなので、これはカジシンの評価も見直さなければいけないかも……。
 

(ラノベ指数 16/51)
17
 
『クインテット!1』 越後屋鉄舟 著

 いかにしてハーレムとなったのか、その経緯を語るのみに終わった今巻。
 次巻の刊行が予定されているからといって、ただただハーレムの形成のみに終始したのはいただけないっちうかー。
 「ストーリーの三分の一しか消化していない」という全体構成とは別に、1冊の物語としての視点を欠いてしまっているような気がします。
 ずいぶんと、余裕なのね、と。


 特殊な状況を表す際に、いろいろと理由を持ち出してきて「あり得ること」と説明されるのですが、その理由付けに対して少々鼻白んでしまったりして。
 なんちうか、こう、そりゃそうなんでしょうけれどもー……と、冷めてしまった次第。

 あとはコミックやアニメのパロディを随所に散りばめられていることや、擬声語を多用するところとか、好きになれない筆致だったかなぁ。
 オタク系なキャラがオタネタを用いるのは個性として理解できても、地の文で扱われるのは納得できないっちうか。


 ハーレム物が合わないのか、筆致が合わないのか。
 どちらにしても、これはちょっと……難しいかなぁ。
 

(ラノベ指数 22/51)
16
 
『十三番目のアリス3』 伏見つかさ 著

 シリーズ三冊目にして短編集って、ちょっと早い気が。
 主役周りの設定とか、サブキャラの活躍描いてリフレッシュとか、短編集の意味や価値は承知しているつもりなんですけれど……ね。
 本編のほうがそれほど奥まった展開まで進んでいないように思えるので、この時期での短編集刊行というのは、かなりの部分をキャラクターの属性に依存した小話になってしまう(しまっている)ような。

 面白ければ、それで良いのか良くないのか。

 注目をまだ集めているウチにチャンスを逃さず……というような、売り手と書き手の利害が一致したタイミングという気がして、ちょっと首を傾げてしまったり。


 えー、あー、でも、ま、どれも好きなお話だったんですけどね!(笑)
 キャラ依存?
 結構じゃないですか。
 それだけ元となるキャラクターの属性がハッキリしているワケですし。

 全四編が収められていて、コメディとシリアスのバランスも2+2ってところ?
 加えてラストの「純情 ボーイミーツガール」は、護られる立場の三月の覚悟表明という意味合いもあって、次巻へとつながる引きとして見事かとー。
 ただ護られるだけという立場にも覚悟がいるんですねぇ……(T▽T)。

 「どきどき温泉パニック!」で三月は自分のことを笑いながら──
 「僕は善人なんかじゃない」
 ──と口にしていたのは、その伏線?
 あまりにナチュラルに展開に組み込まれているせいで、伏線ではなくただのノリなのかとも思ってしまうのですがー(苦笑)。

 とまれ、そういう我を通す人、嫌いじゃないです。
 優先順位が決まっている人のほうが、観念論や一般論を持ち出して正義を語る人より信じられるので。


 それにしても伏見センセは、きっちりカップルを描くことが好きなんだなぁ……と。
 カップルになるまでの過程より、カップルとして成立している上での状況を描くことが。
 こうまで相手が決まっている作品って珍しいような。
 そのバカップルぶり、本編のほうでも楽しみにしています(笑)。
 

(ラノベ指数 20/51)
15
 
『カタリ・カタリ トキオカシ2』 萩原麻里 著

 あ……ありえないーっ!
 これで完結にするなんて、マジ、ありえないーっ!!!(><)
 <時置師>の成立とか基本的情報が明示され、ようやくその背景が見えてきたっていうのに?
 「血族モノ」としても、他の家、他の一族のことがわかりはじめて、物語の知識を得るという意味だけでも面白くなりそう──だと思った矢先に、完結編、と。
 ……そうした知識欲は、巻末のあとがきで設定集のようなものを見せられて一応は享受できたとはいえ、余計に知識欲が煽られたのも事実でー。
 その設定を活かした物語を見たかったんじゃーっ!(TДT)

 誠一と眞名のLOVEっぷりも良いカンジで上昇傾向だったのにーっ! にーっ!
 バカップル進行形のデレも、愛情ゆえのツンも!
 ちうか誠一のマジメ系ストレートな愛情表現は微笑ましいやね。
 そんな嬉しいことを言ってくれるってわかっているなら、そりゃあ眞名ちゃんだって少しくらい拗ねてみたりもするわさわさ(笑)。
 智里と眞依ちゃんの年期いったカポーには無い初々しさが可愛らしいったら!

 あー、もうっ、それなのにそれなのにっ!


 この作品、昨今珍しく主人公が「なにも冒さない」で終わってしまうのですよね。
 最後には無力感が漂うっちうか。
 その辺りがライトノベルの商業戦略とは相容れなかったりするのかなぁ……とも思ったりして。
 主人公が、何かをして、YEAH!ってのほうが感情移入しやすくて売れ筋な気がしますし。

 でもねぇ……。
 そうした無常観、無力感の中からも、その向こうを感じたり考えたりすることはあると思いますし、物語にはそれができると思うのデスヨ、わたしは。
 へぁ〜……。


 ここでの完結について、強いて良かった点を挙げるなら、終わり方に未練がなかった……ということでしょうか。
 もう潔く全てを明らかにして諦めた感が……。
 「この巻が売れれば続きが……云々」との女々しい文言も無かったですし。
 作品を終える形として、意外と納得されているのかなという印象が。

 読み手としては残念ですけれど、萩原センセはこういうお話を描けると知ることができたことを良しとして。
 次回作、期待しています!


 にしても『蛇々哩姫』も『ましろき花の散る朝に』も打ち切りな終わり方っぽいですし、萩原センセを追いかけるのは大変そうだー(^_^;)。
 

(ラノベ指数 21/51)
14
 
『マイフェアSISTER 姫君、拳を握りすぎです。』 竹岡葉月 著

 なんだかとても読みづらかったんですけれど……。
 そもそも「異世界」という概念からして引っかかってしまったもので(^_^;)。
 これ、別に異世界でなくてもルリタニア・テーマで現代物にしても問題無かったのではないかなー?


 神視点を利用してカットインされる、主人公サイドとは異なる場所の描写も唐突感が。
 時系列に照らすと正しいのでしょうけれど、物語の展開においては何の前触れもなく挿入されているような。
 前後のつながりが希薄に思えるのですよー。


 この1冊で考えるなら、主人公・師走は、己が犯した罪への贖罪を果たしたとは言い難いような気が。
 彼が赦されるに値する行いを為したとは──未だ思えないのデスヨ。
 それは未来(続刊)で語られるものなのかもしれませんけれど、だからこそ今は彼を認める気にはなれませんでした。


 「SISTER」モノだといっても、師走の相手がヒロインのアネモネ一択しかないのならキャラモノとしては間違っているのではないかと思ってしまったり。
 設定「SISTER」と、属性「SISTER」は違うでしょ……ってことで。
 


(ラノベ指数 19/51)
13
 
『扉の外U』 土橋真二郎 著

 うは〜、やってくれるぅ。
 前回が「人間が生み出した社会体制」へのアイロニーだとしたら、今回は「人が作り出した神話」に対するメタファーかしらん。
 人が人であり続ける限り、争いは消えないし、救いを求め続け、その結果を直接には恥ずかしくて残せないから物語の形式を模して後世へ伝えようとする悪あがき。

 「天使」である典子がさらなる高みへと昇ったのに対して、「女神」である愛美が地上に残ったのは、とても示唆的だと思うのですよ。
 現実論からすれば、「天に昇ることが出来た」典子こそが「女神」であるべきなのに、生徒たちは自らのそばに居る存在に対して「神」の姿を見て。

 かりに「神」が実在するとして、しかし自分たちに益をもたらさない存在を敬うことなどできるはずもなく。
 自分たちのそばにいて、自分たちを見てくれて、そして自分たちのことを考えてくれる存在こそが「神」であると。
 「神」を作るのは、それにすがろうとする人間の心である、と。


 典子の存在は、先史時代に人間へ知恵を授けたとトンデモ科学で言われる天上人みたいなものなのかなーと。
 地上に降りて時代を超越した技術を人へ与えながら、ある時期を境に姿を消してしまったとされる彼ら。
 人間へ火を授けたプロメテウスとか。
 (プロメテウスが磔にされたのは、なんとなく今回の典子を彷彿させます)


 苦難にあって、人は救いを求め。
 その願いはあらゆるトコロを、あらゆる人を変遷していき、そしてひとつの存在へ集約され、近代社会が成立していく──。
 それは神代の時代の終焉。
 憎しみや恨み、争いと対立を生みながらも、ひとりでは生きていけない弱い人間たち。
 そんな人間を、土橋センセは鋭く見つめてきてるなぁ……。

 高校生男子って、もっと貪欲でエロエロだと思うんですけれど、それを描かないのは、この作品に求められていることが現実性ではなく主題にあるからだと思ったり。
 娯楽小説というより、寓話の類のほうが近かったり?

 前作と同じような形式を見せながら、そこで描かれるモノは異なった主題を含めてきていると感じるのですよー。
 むしろ、同じ形式を採っているからこそ、主題の違いが浮き彫りになるような。
 ゲームのシステムを構築されるのは大変かと思いますけれど、次はどんな「人間の姿」を描いてくれるの楽しみに。


 ああ、でもしかし。
 やぱし典子と愛美の対比は、典子ファンとしてはつらいなぁ……。
 彼女を支えてあげられる人が現れると良いのですけれど、同年代では無理かもなぁ……とか思ったりして。
 ちうか、愛美ちゃんは恐いです(>△<)。
 あんなキラキラした人、信じられない!……っていうのは、わたしがヨゴレきっているからなんでしょうか、ねぇ(苦笑)。
 マキマキは言うに及ばずですが。


 これで「扉の外」を知る生徒が複数存在することになりましたし、内と外の対比とか、さらなる高みでの出来事とか、気になるトコロがたくさんあります。
 しかし次こそは、次こそはっ、典子ちゃんに光を!(T△T)
 


(ラノベ指数 14/51)
12
 
『バニラ A sweet partner』 アサウラ 著

 ハートにズキュンときたわ!(><)

 ただ虐げられ、搾取されるだけの弱い存在。
 現実としてそうした状況は起こりうるだろうけれど、それを「弱い」からといってただ受け止めろ、甘んじろなんてことは誰にも言われる筋合いのことではなく。
 「弱い」ことと「戦わない」ことは、まったく違っているハズ。
 そうした「弱い」存在の戦い方を、「間違っている」「他に選択はなかったのか」なんて口にして窘めるのは、自分が「弱さ」に溺れてしまっていることによるものではないかと。
 そんな「戦い方」があるなら自分も戦わなければいけないはずで、しかしそれを行わないとなれば自分の「弱さ」を認めることになってしまうワケで。

 おためごかしは聞き飽きたのです。
 救いにならない「正義」なんて、虐げられる「弱さ」の前では何の意味も無くて。
 「強い」から戦うんじゃないんです。
 「弱い」から戦うんです!


 物語が進むにしたがって、どこにも逃れられないだろう閉塞感が募ってきて。
 見ないようにしても見えてしまう、そんな終わりに向かいながらも、だけれど彼女たちは「今」を精一杯生きているワケで。
 それはほんの数時間の輝きなのかもしれないけれど、その瞬きのような時間、なによりも濃密な生の証が明らかにされて。


 フィルム・ノワール調の物語は、娯楽性を追求するような現在のライトノベルのシーンには不似合いなのかもですけれど、それでも読まれるべき作品には間違いなく。
 並みの作品であれば、目の前の障害の排除、それを乗り越える様を描くところで決着すると思うのですよ。
 だもので中盤に至るまでに当面の問題が無くなってしまうような展開に、読み進めていて不安をおぼえたのですけれど。
 いま思えば、そこでもう逃れられないくらいに惹き付けられていたんですねぇ……。
 この先、ふたりはどうなってしまうのか?ということに。

 この作品が並みではないところは、本質が、問題を越えることにあるのではなく、生き続けること/生きていくこと……にあるところなのですよね。
 それを証明するために中盤以降があった、と。
 そして、ふたりは、生きた──ふたりだから、生きた。
 生きる意味、証を、あのふたりは間違いなく示してくれました(T▽T)。


 そうした物語の軸となる部分以外、見た目、ガワの部分もかなり好みだったり。
 ガンアクション物として躍動感あふれた描きかたでありましたし、クライムノベルとして心理面をとても精緻に描かれているようなトコロが。
 オンナノコとハンドガンって組み合わせ、ファッションとして好きー。


 ……他のレーベルではきっと上梓されなかったであろう内容ですのでスーパーダッシュ文庫で出されたことにはさして不満は無いのですけれどー。
 新書、あるいはハードカバーで上梓されていれば、もしかしたらもっともっと注目されたかもー……と思えてしまうところが残念でしょうか。

 ああ、でも、この物語には、この表紙が無ければ魅力半減だわ。

 幸せを感じれば、誰もが世界を征服できるものなのかもしれない。

 そうだわ、そうね、そうだよ(T▽T)。
 物語を見事にビジュアル化した素晴らしい表紙イラストですわ……。
 加えてオビのコピーも良いなぁ。
 「神様、どうか、ふたりを逃がして──」
 フォントとか配置とか、もう絶妙だわ。
 素敵。


 ココロに残る作品、ありがとうございました。
 次回作も楽しみにしています。
 


(ラノベ指数 16/51)
11
 
『BITTER×SWEET BLOOD』 周防ツカサ 著

 物語の本質には深く関わらない立場ゆえに仕方がないとはいえ、表紙を飾ることの出来なかったヒロイン玲子ちゃんに乾杯(T▽T)。
 狂言回しにしても視点が頻繁に変わっていたりするので、あまり存在感が大きいとも言えませんでしたしねぇ……。
 そうでなくても個性的な魅力を発揮しているオンナノコが周りに多いというのに!
 サウラ、TUEEEEEE!!!(笑)

 そんな次第でヒロイン・玲子ちゃんの魅力はビミョーなところかもしれませんけれど(ヒドイッ)、吸血鬼モノとしては雰囲気をしっかりと出していたのかなーと。
 退廃的で、生きることに飽いているようで、だけど希望を見つけ出すような愚かさを好んでいる……みたいなー。


 学園青春モノとしても好感。
 オンナノコ3人、オトコノコ3人って組み合わせ。
 ただの数合わせだとしてもその全員を印象づけるほどに描くことは簡単ではないと思いますし、実際、彼らの友達付き合いとしての交流の描写、とても丁寧に描かれていると思うんですよねー。
 物語としても「ああ、ここからなにか始まるのね。若いっていいね! 甘酸っぱいね!」とカンジさせるに十分な描写でしたし。

 でも香澄ちゃんが同性からモテるのは「意外と」ではないと思ったり(苦笑)。


 ラスト、余韻を残す結び方が好感でした。
 その事実を描くことから逃げるのではなく、かといってハッキリとした答えを一方的に見せつけるのでもなく。
 ただ、そこにあるのは──あったのは、希望なのかなー。
 読み終えたわたしにも「そうであってほしい」という希望が。
 答えが描かれていなければ、それを願うことは許されますもん。


 Chiyokoセンセのイラストは久し振りに拝見するのですけれど、ハルって……その……目つきの悪いマイドに見えてしまったり(^_^;)。
 んでも淡い色彩とか、細かなところまで丁寧に描かれる仕事ぶりとか、ゴシック・ホラー作品には適任だと思いました。
 さすがっ!


 ところで──。
 『時の魔法と烏羽玉の夜』でもそうだったのですけれど、主人公が物語の軸となる理由が「特別な血」だからっちうのは、電撃編集部のマーケティングかしらん。
 家柄とか出自に理由を求めると、個人の共感を得られないから……とか。
 どんなに普通の家に生まれていても、もしかしたら見る人から見れば自分には「特別な血」が流れているんだから──って。

 なんちうか、主人公が主人公たるべき理由としては、そういうのってちょっと易しすぎないかなーと思ったりするのですよー(^_^;)。
 

(ラノベ指数 15/51)
10
 
『時の魔法と烏羽玉の夜』 在原竹広 著

 すごい既視感に襲われてしまったり。
 あとがきで在原センセ、「ベストセラーの研究」をされたようなことを書かれてましたけれど、それが洒落になっていないような……。

 で、そうした研究の成果?で、物語の外殻はわりと整っているように思えたのですけれど、動き始めた物語にそのガワが合っていないっちうか。
 ガワを優先させてしまっているような印象を受けたのですよ。
 見た目を優先させるために、キャラの心情や取り巻く環境などを甘く甘く都合良くしていませんか……と。


 配置された伏線と、その回収の仕方にはさすが!と思わされましたけれど、それもかなり大味な気がしましたし……。
 んでも、ただの悲劇で投げっぱなしにするのではなく、優しいエンターテイメントとして結んだトコロは好感でした。


 在原センセは「設定の強い主人公が世界を救う話」よりも「一般市民の代表のような主人公が身近なトラブルを脱する話」のほうが似合っている……と思ってしまうのはわたしのエゴでしょうか。
 ああ、それだといろとと大人の事情が許さないから研究したんですね。
 とほー(TДT)。
 

(ラノベ指数 31/50)
9
 
『アスラクライン7 凍えて眠れ』 三雲岳斗 著

 そんなぁぁぁぁ……(TДT)。
 主人公・智春に対しての啓示という意味があるのはわかりますけれど、でも、そんなのって悲しすぎるという心境に。
 表紙が……切ないデス。

 序盤から中盤は佐伯玲子ちゃんのツンデレぶりに、そして中盤以降は瞬間的に発揮される冬琉会長のおんにゃのこらしさにニヤニヤしながら楽しんで読んでいたのですけれども……。
 その頃の自分が情けない! まったくもって!
 これはもう、三雲センセのストーリーテリングに乗せられてしまったワケで。
 この「楽」から「哀」への転落ぶりは、もう見事としか。
 感情の高低差、揺さぶり。
 それは物語にとって大切なトコロ……なのです、がっ!

 ああ、「哀」ね、「哀」……かぁ、もう(TДT)。


 やぱし佐伯会長は自身が背負うている存在と責任をハッキリと自覚されていたのだなぁ……と。
 その背中、例えようもなく大きく思えたデスヨ。
 智春が目標とするにはちと違うかもですが、彼の、あの姿は、「可能性としての智春」であるわけで。

 彼のほかにも、今巻では三つの生徒会の会長たちそれぞれが、その役職に伴う重責を当然のように果たそうとする姿に心打たれてしまったり。
 当たり前のことを当たり前に。
 そういうシンプルさが、今の時代に足りないモノなのかなぁ……とか。


 急展開のアオリに偽り無く、物語に道が作られたカンジ。
 ことに智春にとっては魔神相克者へと転ずる理由が示された、と。
 操緒を救うためには魔神相克者になるしかない?状況ですけど、それを操緒が望むかと言えば問題ですし、操緒という女の子を救うためであっても、もしかしたら奏ちゃんは智春と結ばれることを望むかもしれないし。
 ……はぁ〜。
 現状、どの道を進んでもツライだけなんですけれど(TДT)。


 ああっ、もう!
 玲子ちゃんの素直になれない可愛らしさについて語りたかったわ!
 でも、あんなラストを見せられたら、そんな甘い考え、吹き飛んだ!(><)
 ホンッッット、三雲センセの「シリーズを通しての構成力&企画力」には脱帽するッ!
 完ッ璧、尾を引いてます、今回……(TДT)。

 表紙だけではなく、中表紙にもダメージ負いますね……。
 はやく次の巻を読みたいDEATH。
 

(ラノベ指数 11/50)
8
 
『風の王国 波斯の姫君』 毛利志生子・増田メグミ 著

 これまた短編集だったり。
 雑誌で定期的に連載をされているせいか、短編集も出しやすいのでしょうね。
 んでも今回の主人公は、尉遅慧にガルにジスン……って、なんかビミョーなキャラを(^_^;)。
 そういったサブキャラにもきちんと物語があるのだと示せる毛利センセの力量を疑うことは無いですけれど、この方がたはどの層へ向けてのサービスなのかと(苦笑)。
 それともわたしが関心無いだけで、世間的にはリジムより人気だったりするのでしょうか?
 ……ガルならありそう(笑)。

 そんな次第で苦言を言いつつも、本編のほうは興味深かったです。
 特にガルが奥さんに良いように操られているお話が。
 ……あれ、操られてますよね?
 っちうか、奥様のエフランさん、無意識に操縦していると思うのですが。
 計算ずくで生きているように見えるガルも、しかし手綱を握っているのは奥さんでした──というお話(笑)。
 いろいろと重い部分もあったお話ですけれど、結局のトコロ、ふたりのラブラブっぷりを見せつけられただけのような。

 慧のお話は、相変わらずというカンジが。
 翠蘭にフラレてのキズも少しずつ癒えてきたかなーという。
 でも、傍観者決め込んでいるポーズは、どうにもいただけません。
 クール気取っているっちうか。
 そういう平静さを装っている限り、女の子から気持ちは向けられないんじゃないかなぁ……とか思ったりして。
 ま、サマルカンドまではまだまだ長いですし、これからこれから(^_^)。

 ジスンの過去話は増田センセのコミック。
 人生、いろいろあるなぁ……と考えさせられてしまうわ。
 ガジェットの構成要素、たんなる脇役と思っていた彼(彼女)にだって、今のような覚悟を持つに至るまでは、きっと相応の出来事があったからなワケで。
 それを知らされたからといって、この一連の物語の中でポジションが大きく変わるわけは無いのですけれど、それでもジスンという個人の重みは確実に増したと感じたり。
 キャラの掘り下げって、やぱし短編ならではですねぇ。


 てなカンジでインターミッションは十分に楽しんだので、そろそろ翠蘭とリジムのラブラブ話をお願いします(笑)。
 あ、サンボータと朱瓔でも可。
 キャラ紹介で「婚約してる」の文へと改編されてるのを見ただけで盛り上がってしまいましたことよ!(≧▽≦)
 

(ラノベ指数 17/50)
7
 
『私の愛馬は凶悪です』 新井輝 著

 ああ、そう来たか──って。
 姉妹、弟妹といった微妙な接点しか持ち得なかった各章が、終盤には大きな道でまとまりはじめ。
 世界は一方通行ではなくて、塞翁が馬っちうか流転しているっちうか。
 自分に関係ないことなど、この世には有り得ないのだなぁ……と、しみじみした気持ちになっちゃいましたよ。
 必ずは自分に関わり在るように巡ってくる……って。

 そんな構成だっただけに、中盤まではリビドー趣くままに描かれた作品なのかと、感想も「普通の良作」どまりでした。
 んがしかし、終盤で明らかになる構成の妙で、ドーンと評価がストップ高。
 この手の計算尽くの構成、わたし、好きなんです。
 ガジェットの大きさで派手さを競うのではなく、見た目以上の奥深さを追求しているカンジがして。


 構成に惚れた以外では、やぱしヒロインで主人公の霧理さんが。
 一本気な気質が、ひっじょぉに好感。
 みっともないことは赦せないけれど、自分が誤りを犯したならそれを認める潔さも併せ持っていて。
 そんな彼女の悩みは、世間は見ないフリをしている澱のような部分で。
 でも、彼女はその澱の汚れを見てしまうし、見てしまったからには無視するなんてことはできなくて。
 そういう真っ直ぐさ、大好き!
 うんうん、人間って悩める葦だよね。


 んでも霧理さん以外のキャラは、ちょっと毒あり過ぎな気も……。
 霧理さんの素直さにぶつける役割があるため仕方が無いのですけれど、ね。


 新井センセは、哲学マインドで愛とか恋とか語らせたら当代随一かも。
 入りの部分では肉欲的な獣の匂いを漂わせているのに、その実、身体が触れ合うことなんてただの要素の一つ、それも表層でしかないと告げているような。

 むー……。
 霧理さんがどのように自分の想いと向き合うのか、気になります。
 

(ラノベ指数 22/49)
6
 
『学校の階段5』 櫂末高彰 著

 傷心の妹の敵を討つために乗り込んできたシスコン兄。
 それを「階段レース」で迎え撃ち、どちらの言い分に正当性があるのか決着つける……という展開に、かくたる必然性は感じなかったかなぁ。
 かなりムリクリ感が。

 女神様を崇め奉る有象無象の生徒たちにも、気持ち悪いものを。
 集団のノリで──っていうのはわからないでもないのですけれど、結局のトコロ、自発的には近づくことができないことに対しての代替行動でしかなくて。
 そんな消極性を誰も指摘しないどころか、「見守るだけ」という行為を尊くて崇高なものだと自慢している様には共感できなかったり。
 それは、とても、見苦しい行為ではありませんか、と。

 あの女神様親衛隊みたいな人たちとか、幸宏に嫉妬する生徒たちのなかで、どれだけ「女神様」たちに直接的なアプローチをした人がいるのか考えてしまったりして。
 美冬さんの現状を考えると、アプローチした人が例え居たとしても、その想いが成就してはいないワケで。
 でも、きちんと想いを伝えられたのなら、あんな不毛な、そして醜い行動を続けてはいないのではないかなぁ……と思うのデスヨ。


 「階段レース」そして「女神様」という、この作品のアイデンティティの部分が、エンターテインメント作品としての理念から掛け離れていっているような気がしてなりません。

 美冬さんの幸宏に対する感情とか、三枝さんと見城さんのカポーとか、局所的なところでのシチュエーションは盛り上がるんですけれど、それってシリーズ物だからこそ生まれるもので、言うなれば過去の財産を消費していっているだけのような。

 天ヶ崎家の過去話とか、水戸野さんの目的とか、新要素で話をつなげるのではなくて、現状を構成する要素でひとつまとめてはくれないかなぁ……と思ってみたり。
 

(ラノベ指数 19/49)
5
 
『放課後あやかし姫 ─夢の中でも危機一髪─』 足塚鰯 著

 前巻からの引きから順当に、日名子のお兄様、那一さん登場のまき。
 おおっと、そうきたかい……ってカンジの那一さんのキャラ造型。
 可愛い妹ができたことを喜んでいるでしょうに、どうにも感情表現が乏しいために誤解されるっちう。
 んがしかし、そんな内面は読み手にはバレバレなだけに「自分は嫌われているかも……」なんて誤解するのは、当の日名子だけだと思うー(^_^;)。

 「私のことは“兄様”と呼ぶがいい」
 ……って、古風であるところを引いても、変な人だなぁ、那一さん(笑)。
 でも、そういうやり取りって、那一さんがすごく喜んでいるんだなぁ……って伝わってくるデスヨ。
 あからさまにベタベタしてくるよりも。


 部活の先輩たちとの交流とからめて、日名子の進路についての悩みを描かれたのは好感。
 年相応の悩みっちうか、作られた設定ではないリアルさを感じられたので。
 等身大って、こういうことなのかなー。

 んでも、妖を操るすべは前巻よりさらに長けてきているような気が。
 ツムギに対しての操縦術は、男女のそれに近いのですけれど。
 年下なのに姉さん女房……(笑)。
 こりゃ将来は、人間界と妖の国との架け橋のような存在になるのは決定的ってカンジ。
 公務員の人と結婚して、子ども二人で、教育ママになって……という夢は叶いそうもないなぁ(^_^;)。


 ここまでの2巻は既定路線だったでしょうけれど、このあとシリーズが続くかどうかは人気次第ってところでしょうか。
 面白くなってきただけに、どうかひとつ!(><)
 

(ラノベ指数 5/49)
4
 
『月光スイッチ』 橋本紡 著

 雑誌掲載時に読んでいたので、さすがに新鮮さは薄かったのですがー(^_^;)。

 ダメな女の人のお話……って言ってしまうことも出来るのですけれども。
 うん、不倫は好ましい行いとは言えないかも。
 契約によって支えられているわたしたちの社会で、それを破る行為ですもん。
 それは、わかる。
 でも、結婚の契約って、その当事者においてのみ縛られるものであって、そこへ他者を排除する力は無いんじゃないかなー、と。

 具体的に言えば、ダメなのは男であり妻帯者であるセイちゃんのほうで、香織さんのほうはダメというわけでは無いような……。
 好きって気持ちは契約では無いし。
 契約には縛られないし。

 うーん……。
 契約の正常な形での履行を妨げる可能性がある……という程度に消極的なダメさ加減は及んでいるのかもですが。
 でも、正直に生きることが間違いだとされるならば、それは社会のほうが間違っているのではないかなーと。

 うん、やっぱり香織さんは間違ってないデスヨ!


 えーっと、じゃあ今作をまとめると、「ダメな男に振り回される、正直な女の人のお話」……ってことになるのかな? かな?(苦笑)


 マンションのほかの住人や、夜の街で出会った姉弟。
 香織さんの目を通して見る世界は、とても象徴的で。
 世界の縮図のような。
 香織さんの生き方は、そんな世界を旅をしているみたいだなー……と思ったり。

 押し入れという空間に安らぎを求めるのって、体内回帰?
 母胎の象徴? ユング? フロイト?
 よくはわかりませんですけれど、とても暗喩的ななにかを感じたり。
 そういった意味深さを感じさせるあたり、ああ橋本センセらしいなぁ……と感じたのデシタ(^_^)。
 

(ラノベ指数 21/49)
3
 
『流れよ凍りし我が涙 幻獣降臨譚』 本宮ことは 著

 もう、登場したときから胡散臭さ大爆発だったので、キルシュの真意がバレても別に驚くにはあたわず──だったかなー。
 でも、その真意を予想できたからといって、展開もそのようになれば良いと思っていたのかといえば、けっしてそういうことはなく。
 むしろ予想が外れてくれれば良いなぁ……と思いながら読んでいたのです。
 本当に、アリアにとっての王子様であってくれればなぁ……って。

 これでまたアリアは大人へと成長したってことなんでしょうか。
 悲しいなぁ……(TДT)。

 ディクスはディクスでひどいこと考えてるし。
 「自分が取り戻すまで、アリアは堕ちるところまで堕ちればいい」
 ──ってなぁ、もぅ。
 そろそろストーカー的な思考へ入ってきてますよ、ディクス。
 いまやシェナンのほうがサッパリしてますよねー。
 理想を押しつけるところは相変わらずかもですけれど、アリアを大切に思う気持ちについては前向きで健全な気がします。
 怒ったりしても、アリアのことを認めているっちうか。


 衝撃的だったのは騎士団の巫女姫、ふたりの立ち位置逆転!
 愛しいツェルが怪我をしたという事情があるにしても、サフィアの変貌ぶりはマジ恐いです。
 わかる!
 その気持ちは非常にわかるのですけれども……(TДT)。

 一方のマルチェは可愛くなりましたねぇ。
 丸くなったとは違くて、キツイ性格は変わらずですけれど、それでもアリアのことを理解しようとしているっていうか。
 ああ、先述のシェナンみたいなスタンスなのかも。
 もしかして、本当に、初めてアリアが得た「友達」なのかな??
 そんな彼女にも、できれば、最後には幸せな夢を──。


 ようやく王都へと辿り着いたアリアたちですが、さっそくトラブルに巻き込まれて。
 アリアのお母さん、どういう人だったのでしょ?
 ああ、それとお姫様も登場しますよね?
 どういう人なのかなー。
 楽しみです。


 にしても本宮センセ。
 最近の再読が『復活の地』(小川一水)と『ガンパレード・マーチ』(榊涼介)って……(´Д`)。
 このお人のセンス、ホンット、わたし好みだわ(笑)。
 


(ラノベ指数 20/49)
2
 
『オオカミさんと“傘”地蔵さんの恋』 沖田雅 著

 シリーズ三冊目にして早くも短編集なんですけれど、もとが御伽話のオマージュであることを考えると時期の早い遅いは関係なくて、こうした短編スタイルのほうがネタの消化具合がよろしいのかも。
 それに加えて設定開陳の機会も合わせてくるとなれば、今後の展開を見据えてのインタールードなのかなーと。
 うん、良き哉。


 で、あれですか。
 沖田センセはホンッとにデブオタを描くのが好きですね!
 4本のなかで「三匹のデブ」の筆致がイチバン活き活きとしてましたよ!(笑)
 正論をかざそうともオタクはオタク、デブはデブで、所詮は社会の日陰者でしかないという血の涙(T▽T)。
 それでも生きていれば、きっと良いこともあるさ……ってお話かしらん(強引なまとめかた)。

 「地蔵さんの秘密」は、やぱし地蔵さんのダメLOVEさ加減が可愛いかった!
 コマ送りでベッドへダイブする地蔵さんを表現されたのはGJ。
 ここでの挿絵のほかにも、今回はうなじセンセのイラストも冴えていたカンジ。
 可愛い可愛い!
 涙を流しながら眠っているオオカミさんとかね! とかね!(≧▽≦)


 ほかの二編は今後の展開への引きなのかなーと。
 フンフン……。
 オオカミさん以下、キャラの掘り下げの時期ですか?
 あとがきでは「4巻で終わらせるつもりで云々」と書かれていましたけれど、それよりはも少し長いシリーズになりそうなカンジ。
 沖田センセが描くオタク像はコミカルで好きなので、これからも楽しみにしてまッス。
 


(ラノベ指数 19/44)

『サクラサク上等。』 三浦勇雄 著

 ブ……ブラヴォー!!!!
 引き絞られた弦を解き放たれた感覚!
 高揚感と解放感。
 溜まりに溜まったフラストレーションが見事に昇華されました!
 もう、どこまでもどこまでも、前に突き進む鉄平たちが愛おしくって!

 難しく考える必要はない。
 ゆかりたちの記憶を取り戻すこと。内界人たちの陰謀を打ち潰すこと。
 それらを成すために今すべきことは、たったひとつだ。
 ニヒッと口元を歪め、宣言する。
「要するに」
 鉄平は五寸釘に人差し指を突きつけた。
「────とにかくお前らをぶん殴ればいい、ってこった」

 もちろん暴力は唾棄すべき行為。
 でも、道を開くために握る拳なら、そのことで誰かが傷つくことを覚悟しているなら、そしてそれでも掴みたい未来があるなら、それはもう、他人がとやかくいうことではなくて。
 その結果起きること、全てを背負うと決めているんですもん。
 そしてシンプル・イズ・ベスト。
 鉄平はそうしてこれまでも乗り越えてきたのですから!
 そんな鉄平は、誰にも、止めるコトなんて、できはしないのでデス!

 嗚呼……。
 こうしてキャラクターへ寄せる信頼感の、なんと心地よいことか。
 これこそがシリーズ物の醍醐味っちう。

 この感覚に対しての盛り上げ方、ページの構成も見事ですよね〜。
 行数をきちんとカウントして、ページをめくったところの最初に目に飛び込んでくる数行にズビシッと決め台詞を置いてくるという。
 めくったその手でKOですよ(笑)。

 あ、構成といえば第2話の「エンカウンター上等!」での露草の挿絵も見事〜。
 これまで用いた挿絵をレイヤー構造化して用いることで、外へ外へとメタ視するような表現……っていうのかな?
 始まりは鉄平とゆかりの修羅場だけであった場面が、その光景を同時に目撃した幾人もの人たちの気持ちが重なり合っていくような感覚がー。

 好きなら、無条件で信じればよかった。
 でもいくら後悔してもあのときには戻れない。古都ゆかりは五十嵐鉄平を徹底的に傷つけた。その過去は拭えない。なかったことになんか──してはいけない。

 ゆかりも、鉄平も、ほかのみんなも、傷つこうが悲しもうが、それでも前へと進む気概を示してくれるとことに激しく好感を抱くのデスヨ。
 やってしまったこと、起こってしまったことに囚われないで、その先、自分たちの理想を目指すという。
 諦めるなんて行為、この作品で見たこと無い!
 深く落ち込んで、どれだけ傷つこうとも、そこから絶対に這い上がってきてる。
 その過程が真に迫っていると思うのです。
 だから、わたしは感動したのだと。

 「ごめんなさい」なんて言葉は、自分を慰めるだけの意味しか無くて。
 そんな自己満足にひたるより、「ただ、愛する」そして「頑張って」と見つめていく。
 その行為こそが貴いのだと。
 罪は許されるモノではなく背負うモノ。
 そしてそれを認めたうえで、初めて愛することができるのだと。


 最高のエンターテイメントを作る。
 それは槍ヶ岳の目標でしたけれど、きっと三浦センセの希望でもあったハズ。
 だとしたら、わたしは答えられます。
 この作品は、最高のエンターテイメントであった──と。

 この作品があるから、こんな希望に満ちた物語があるから、わたしは前を向いて歩いていけます。
 どんなに辛いことがあっても、きっとわたしは口にできます。

 「──上等だ」

 って。
 
 たくさんのアリガトウを鉄平やゆかりちゃんたちみんなへ。
 そしてもちろん、三浦センセへ。
 おつかれさまでした!
 次回作、期待してます!!
 

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