○● 読書感想記 ●○ 2007年 【4】 ※ 表紙画像のリンク先は【bk1】です ※
幸せを感じれば、誰もが世界を征服できるものなのかもしれない。
そうだわ、そうね、そうだよ(T▽T)。 物語を見事にビジュアル化した素晴らしい表紙イラストですわ……。 加えてオビのコピーも良いなぁ。 「神様、どうか、ふたりを逃がして──」 フォントとか配置とか、もう絶妙だわ。 素敵。 ココロに残る作品、ありがとうございました。 次回作も楽しみにしています。
『サクラサク上等。』 三浦勇雄 著 ブ……ブラヴォー!!!! 引き絞られた弦を解き放たれた感覚! 高揚感と解放感。 溜まりに溜まったフラストレーションが見事に昇華されました! もう、どこまでもどこまでも、前に突き進む鉄平たちが愛おしくって!
難しく考える必要はない。 ゆかりたちの記憶を取り戻すこと。内界人たちの陰謀を打ち潰すこと。 それらを成すために今すべきことは、たったひとつだ。 ニヒッと口元を歪め、宣言する。 「要するに」 鉄平は五寸釘に人差し指を突きつけた。 「────とにかくお前らをぶん殴ればいい、ってこった」
もちろん暴力は唾棄すべき行為。 でも、道を開くために握る拳なら、そのことで誰かが傷つくことを覚悟しているなら、そしてそれでも掴みたい未来があるなら、それはもう、他人がとやかくいうことではなくて。 その結果起きること、全てを背負うと決めているんですもん。 そしてシンプル・イズ・ベスト。 鉄平はそうしてこれまでも乗り越えてきたのですから! そんな鉄平は、誰にも、止めるコトなんて、できはしないのでデス! 嗚呼……。 こうしてキャラクターへ寄せる信頼感の、なんと心地よいことか。 これこそがシリーズ物の醍醐味っちう。 この感覚に対しての盛り上げ方、ページの構成も見事ですよね〜。 行数をきちんとカウントして、ページをめくったところの最初に目に飛び込んでくる数行にズビシッと決め台詞を置いてくるという。 めくったその手でKOですよ(笑)。 あ、構成といえば第2話の「エンカウンター上等!」での露草の挿絵も見事〜。 これまで用いた挿絵をレイヤー構造化して用いることで、外へ外へとメタ視するような表現……っていうのかな? 始まりは鉄平とゆかりの修羅場だけであった場面が、その光景を同時に目撃した幾人もの人たちの気持ちが重なり合っていくような感覚がー。
好きなら、無条件で信じればよかった。 でもいくら後悔してもあのときには戻れない。古都ゆかりは五十嵐鉄平を徹底的に傷つけた。その過去は拭えない。なかったことになんか──してはいけない。
ゆかりも、鉄平も、ほかのみんなも、傷つこうが悲しもうが、それでも前へと進む気概を示してくれるとことに激しく好感を抱くのデスヨ。 やってしまったこと、起こってしまったことに囚われないで、その先、自分たちの理想を目指すという。 諦めるなんて行為、この作品で見たこと無い! 深く落ち込んで、どれだけ傷つこうとも、そこから絶対に這い上がってきてる。 その過程が真に迫っていると思うのです。 だから、わたしは感動したのだと。 「ごめんなさい」なんて言葉は、自分を慰めるだけの意味しか無くて。 そんな自己満足にひたるより、「ただ、愛する」そして「頑張って」と見つめていく。 その行為こそが貴いのだと。 罪は許されるモノではなく背負うモノ。 そしてそれを認めたうえで、初めて愛することができるのだと。 最高のエンターテイメントを作る。 それは槍ヶ岳の目標でしたけれど、きっと三浦センセの希望でもあったハズ。 だとしたら、わたしは答えられます。 この作品は、最高のエンターテイメントであった──と。 この作品があるから、こんな希望に満ちた物語があるから、わたしは前を向いて歩いていけます。 どんなに辛いことがあっても、きっとわたしは口にできます。 「──上等だ」 って。 たくさんのアリガトウを鉄平やゆかりちゃんたちみんなへ。 そしてもちろん、三浦センセへ。 おつかれさまでした! 次回作、期待してます!!