○● 読書感想記 ●○ 2006年 【8】 ※ 表紙画像のリンク先は【bk1】です ※
懐かしくなんかない。爽やかでもない。 若さとは、かくも冷徹に痛ましい。 ただ美しく清々しい青春など、どこにもありはしない──。
ですって。 これはグサッとくるね、ハートに。 生ぬるい感情を一刀両断にされる気分。 この作品、センセの中で何か思うことがあって、読み手に伝えるよりも形に残すことを優先して描かれたものなんじゃないかって気が。 なのに読み手の存在を無視できない中途半端なエンターテインメント性が、どこかで邪魔になっている、持て余しているようなカンジを受けます。 実験作……とは違うのでしょうけれど、そろそろ米澤センセはジャンルにこだわらずに描かれて良いのではないかと思っています。 もう、「青春ミステリの旗手」なんて売り文句、不要じゃないかなー。 大学生が集まって、焼いたベーコン食べる話が読みたいデス(笑)。
君は我々の世界に関わりすぎた。 ──上等だ。
直接につながりないとしても、予告編としてはインパクト絶大だわ〜(≧▽≦)。 なんちうか、鉄平の不敵に強がる様が目に浮かんできます。 もち、服装はボロボロなんですけどね!(笑) 「当日は一緒に回ろうね!」の台詞から、次は文化祭とか……? で、「フェスティバル上等。」とかー。 楽しみ〜♪
帰ってきた日常は、相変わらず、退屈で、下らなくて、ともすれば逃げ出したくなるような、そんな世界だけれど、それでも生きていこうと思えるのは、やはり彰がいるからだった。彰だけじゃない。父が居て、球がいて、魁がいて、他にもたくさんの愛するべき人がいて、だから、辛い事があっても、生きていこうと思える。 (中略) 全く、世界は生き苦しくて仕方ない。 けれど生きる意味は、その世界にしか転がってはいない。この矛盾。
……あー、もうっ! ドロップアウトした人たちの物語として、この結びって! 完璧すぎて、むしろハズカシイくらい!(≧▽≦) しかし、その恥ずかしさこそ、王道の証だと! やってくれたと、拍手を! どのような作品になるのかわかりませんが、森橋センセの次回作を楽しみに待ちたいと思います。
『ストロベリーナイト』 誉田哲也 著 被害者は弱さを内包しているけれど、弱い人が全て被害者になるかといえば、けしてそうではなくー。 さらにいえば強弱と善悪は、全く関係ないことも示していたり。 誉田センセの作品からは、そんな雰囲気を受けます。 むしろ強さを持ったときに、二通りの生き方があると示している……ような? 被害者が駒のように扱われる反面、強さをつかんだ者たち同士の戦いが大きな部分を担っていないかなぁ……と。 ……キャラ物では無いんですよねぇ。 たとえば主人公・玲子の「強烈な個性」という設定は、冒頭で早々と消費されてしまうワケで。 むしろ設定に加味するのでなく、状況に置いて進行させていったほうが良かったのではないかなぁ……。 最初のインパクトで関心を呼ぶ必要性はわからないでもないですけれどー。 奇抜な設定と、その後の展開のあいだに、さして関係性が見いだせない……っていうのも、まぁ誉田センセらしいといえば、そうかも(^_^;)。 玲子さんの捜査手法、それほどカンに頼ったものとも思えなかったのですけれど、この感覚って、ちょっとフィクションに染まりすぎてる? 実際はもっともっと窮屈で制限のある捜査現場なのかなー。 そんな捜査状況、中盤以降の展開がかなりザッピングしてて目が回る〜。 リアリティを追求した弊害で、読み手を置いてけぼりなカンジ。 なんか、こう、キャラクターを消費することで捜査進展を図っているというか。 これが「警察小説」と称される所以なのかな? 題材は同じでも、推理小説とはあきらかに異なる印象を受けます。 犯人の情報をミスリードして、クライマックスで印象を強める手法は、これまた誉田センセらしいなぁ……と。 あと、身体をこれでもかと陰湿に傷つけていく描写とかー。 イタイイタイ……(TДT)。 総じてみれば、きわめて誉田センセらしい作品でありましたとさー(^_^;)。 玲子さんの回想の中での裁判シーンには涙がー。 覚悟があったから死んでも当たり前だなんて、それはその人を貶める発言。 そんな理屈がまかり通るようなことは、絶対にあってはならないと思います。 結果としての死は受け入れないといけないけれど、その覚悟までもただの事実の一つに扱うのは間違っちょる! 本編に深い関わりがあるわけではありませんでしたけれど、このシーンは印象的でした。