○● 読書感想記 ●○
2006年 【5】

※ 表紙画像のリンク先は【bk1】です ※

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20
 
『伊佐と雪 〜やさしいよる〜』 友谷蒼 著

 地に足ついてないというか……。
 明確な世界像を描かないまま、ぼんやりと進行させるのがGA文庫流?

 「幽霊に育てられた少年」とか、「雪女の息子」とか、表向き与えられる情報は設定でしかないのでは?
 そうした出自の存在が、どのように生活しているのか──が、世界だと思うのデス。

 物語なら感情移入する、事件なら当事者意識を持つ。
 共感を覚えていく中で、気持ちが昂ぶっていく。
 それがエンターテインメントってものじゃないのかなぁ……。
 この作品が物語にしても事件簿にしても、共感を覚える箇所に乏しいと思うんですけど。


 あー。
 この表紙もかなりクセ者かもですよ。
 少年ふたりにオンナノコひとりが描かれた表紙。
 でもって、オビのコピーの文面は次のようなもの。

修験者を目指す高校生・袴田が転校先で出会ったのは、幽霊に育てられた少年「伊佐」と雪女の息子「雪」だった!?

 ──と書かれていた場合、表紙に描かれている三人に当てはめてこのコピーを読むのではないでしょうか。
 ちうか、わたしはそうじゃないのかと思っていました。
 オンナノコを「袴田」なんて呼び表すことなんて無いですか。そうですか。


 共感をおぼえなかったのは、つまるところ表紙にすら登場しない主人公に魅力を感じなかったところが大きいのでしょうねぇ……。
 



19
 
『ジューンブライド上等。』 三浦勇雄 著

 い……イエース!(≧▽≦)
 鉄平とゆかりのバカップル、ブラヴォー!!
 とりあえず、ふたりの物語としては決着とのことですけど、心沸き立つほどに嬉しさ満点。
 なんでしょうね、この幸福感。

 物理的……ではなく、精神的に最大のピンチだったように思うのです。
 目に見えるだけの障害だったら、それこそ「クリ上」のほうが危機的状況だったようなカンジ。
 ただ、ココロのうちまでは、あのときとは違うから──。
 ゆかりちゃん、がんばった!(T▽T)

 彼女の葛藤は、自分が何者であるかを自覚したから、覚悟したからこその悩みだったワケで。
 そこは、これまでとは全く異なる立ち位置。
 巨大企業の後継者としてではなく、鉄平を好きで、鉄平から愛されているという立場への認識。
 その覚悟を見せたのですから、ゆかりちゃんには鉄平くんと槍ヶ岳さんをビンタする資格があると(笑)。

 一方の鉄平くんのほうは、例によって(笑)今回もとんでもなく巻き込まれ型で渦中の人物となっていくワケですけれどー。
 ホント、彼のことは心配しなかったー。
 いやさ、読み始めた当初はどうなるのかなーと少し思い始めたというか、彼の性格を思い出して心配したことは事実ですけど、そんな不安、すぐに吹き飛んだワケで。
 序盤の流れを見て、ちょっと嬉しくなっちゃいましたよ。
 鉄平くん、すごく強くなってるんだもんなー。
 弱音が顔を覗かせる瞬間があっても、それを自らの力で振り払う力を持ったという。
 たぶん、この強さも、ゆかりちゃんと同じで覚悟を持ったからだと思うんですよね。
 自分が、誰を好きになったのか。
 その人を幸せにするにはどうすればよいのか。
 だったら、悩んでいるヒマなんてないぜ、ボーイ!みたいなー(≧▽≦)。

 そんな次第で鉄平くんとゆかりちゃんの成長ぶりが確かに感じ取れたので、読み進めていく過程では心配も不安もしませんでした。
 信頼感っていうのかなー。
 いまのふたりなら、どんなことがあってもだいじょうぶ!って。
 むしろ窮地に追いつめられていけばいくほど、大逆転をいまかいまかとドキワクしながら待っていたという(^_^)。

 作品のキャラクターにここまで信頼を寄せるなんて、我ながら希有だなぁ……とは思います。


 でもって今回も『上等。』シリーズ名物の激しい肉弾戦は健在(笑)。
 これ! これがいいんですよ!
 鉄平くんは、特別な身体能力もスキルも持っているワケではなくて。
 ガワだけを見れば、読み手のわたしたちと同じ存在なのですよね。
 そんな彼が好きなオンナノコのために危機へと身を投じる様がステキすぎるのですよ〜!

「お、応援を呼べ!」
「なんとかしろ! 相手の武器はたかがバット一本なんだぞ!?」
「早く誰か──」
 黒服のひとりが混乱気味に叫んだ。
「誰かこいつを止めろ!!」

 止められるワケがないです。
 だって、彼我の覚悟が絶対的に違うのですから。

 にしてもバット一本で突貫していくなんて、ほんっっと無茶苦茶でカッコイイ(笑)。


 等身大の存在から、もう一歩踏み込んだところにいる主人公、鉄平くん。
 それが憧れとなって、応援したくなる心境を呼ぶのかなぁ〜。


 文七くんも良かったですね。
 やぱし、彼も侠気ある快男児であると思うのですよ。
 ……だからナンパは失敗するのか?(苦笑)
 曜子ちゃんとは雰囲気良くなっているよーな気がするのですけれど、こちらはまだまだですかねぇ……。


 あと、やっぱり槍ヶ岳さんにシビレルゥ!(≧▽≦)
 人を食ったような性格は最後まで変わらずでしたけれど、彼女のエンタメ論には同意できるというか、拍手を送りたいというか。

「救うといってもピンからキリまであります。誰かの人生観を大きく変えてしまうもの、道に迷って大切な一歩を踏み出せない誰かの背中を押すようなもの、ほんの少しでいい、ちょっとした勇気を与えられるもの──そんなテレビを作っていくことが、私の夢なのです」

 これ……三浦センセの本音かしらん?
 ともあれ、こうして言い切る彼女にも覚悟が見えたワケで。
 やぱし、覚悟がある人は綺麗ですね。
 どんなにみっともなくても、どんなに情けなくても、自ら掲げる覚悟の前には外聞なんてなんの意味も無く。


 あとがきによると、ふたりの恋に区切りがついただけでシリーズは続いていく……かも?とのこと。
 あー、でしたら大目玉さん主役のお話、希望〜♪

 ココロを揺さぶることがエンターテインメントなら、この作品はまさしくそれでした。
 楽しく、ステキな作品をありがとうございました。
 次が「上等。」シリーズなのかそうでないのかわかりませんけど、楽しみに待ってマース。
 


18
 
『お隣の魔法使い 始まりは一つの呪文』 篠崎砂美 著

 季節ごとに章立てしてあるせいか、外国の生活風景をつづったエッセイみたいな感覚を受けたりして。
 「南プロヴァンスの四季」とか、そーゆーの。
 本編も物語というより、個人的な日常の視点で書かれた世間話というかー。
 素朴……?

 もちろん、ただの世間話がGA文庫から刊行されるワケもなく。
 日常に入り込んだ、ちょっとした不思議とつきあっていく様が描かれていく、と。
 ファンタジー……じゃなくて、メルヘン?……とも違うか。
 んー……フェアリーテール、かなぁ。
 尾谷おさむセンセのイラストは、もちろん作品のイメージに合っていたと思うのですけれど、もし仮にコミックとしてのイメージをふくらませるなら、岡野史佳センセ……をお願いしたいような(^_^;)。


 そんな次第なので別段派手な展開を見せるワケでもなく、大きなカタルシスも無かったり、主人公・メアリーが積極的に事件に介入することもなくて極めて受動的にお話は進んでいくのですけどもー。
 ココロ安らぐ、ほのぼのとした雰囲気はキライじゃないです。

 突然、隣の空き地に一軒家が建っていて、そこに住むのはもしかしたらホンモノの魔法使いかもしれなくて──なんて、夢物語、ステキじゃないですか。


 ところでGA文庫って、イラストを描かれているセンセのお名前も表紙に記されるんですね。
 ほかのレーベルでは電撃文庫で稀に見かけるくらい……?
 黒星紅白センセとか西E田センセとか。
 GA文庫のこの仕様は意図的かしらん。
 イラストを描かれるセンセも作品の一部ですよー、みたいな。

 ……もっとも、その結果、「文章担当の〜」なんて言い方で著者のかたを紹介するようなことの無いように願ってますけどー(苦笑)。
 


17
 
『シャーロットはガラスの靴の夢を見るか』 都築由浩 著

 離れ離れになったふたりが、再び出会うまでのお話。
 ハウス名作劇場っぽい……ってことは、古典文学の匂いが?
 『小公女』で、父親を失ったセーラは社交界から去り、下働きとして生きることなるのだけれど、そのあいだもずっと父の共同経営者は彼女のことを探し続ける……ってあたりが近いかなぁ。
 もっと類似関係が見つかる作品があるかもしれませんけど。

 んー……。
 はじまりは小さなすれ違いでも、やがてふたりが歩む道は大きく離れていってしまう。
 だけれども、一緒にいた頃の気持ちをずっと忘れなければ、その道は再び同じところへ交わることになる……ってコトですよね。
 そのすれ違いのもどかしさが、ページをめくり読み進める力になっている気がします。
 「運命に翻弄される」とは表4に書かれているあらすじの中の文言ですけど、ホント、それはカンジさせられました。
 些細なことがふたりのあいだをどんどんと引き離していくんですもんねぇ……。
 引き離されるだけでなく、二度と会えなくなるかもしれない危機も次々に訪れて来るワケで。
 もう少しだけ、そのとき、ふたりに対して幸運が注いでいれば、もっと早く、もっと簡単に幸せになれたかもしれないのに……って思わされたのデス。


 ふたりが遭遇する個々の事例は、どれもあまり深くは掘り下げられずに次の展開へと移っていくような描き方。
 ちょーっと物足りないかなぁって思ったりもするのですけど、これはこれで「翻弄される」カンジが出ているのかな〜とも。
 ひとつの場所に留まり続けない流転の様が、まさに。
 ……昨今のライトノベルの文脈では無いかもしれませんけどー。

 この1冊のなかだけで、5年の歳月が過ぎています。
 先述したように、その過ぎた時間の多くの部分は詳しくは書かれていません。
 だからこそ、書かれていない部分にも心を配り、想像し、共感していく……というのが、この作品の読み方なのかなぁと思ったりします。
 5年分の気持ちを感じなさい!……というコトで。

 『ほしのこえ』の8年とか、『トップをねらえ』の1万年とか、そういう数字マジックに敏感な人にはわかってもらえる……ような気がします(^_^;)。


 ヒロインであるシャーロットの境遇もかなりハートにぐさりとキましたけれど、それ以上に彼女のことを決して忘れなかった主人公・昂一の強さに感服デスヨ。
 作中では簡潔に時の流れを描いていることが、逆に重さのように感じられて。
 5年間の中には失望するようなこともあったりしたのに諦めず、なおかつただ待ち続けるだけでなく彼女を自ら捜し求めようとする行動力!
 スバラシヒ!(≧▽≦)

 昂一もシャーロットも同じくらいに辛いことに遭っていると思いますけど(シャーロットのほうが多いかも?)、幸せをつかみ取るために努力を惜しまなかったという一点において、昂一こそが主人公なのだと思うのです。
 シャーロットはやぱしほら……救いを求めるヒロインって立場かなー、と。


 まぁ、構成についてはそのように勝手に盛り上がっていたのですがー。
 不満といえば、やぱしタイトルが……。
 ヒロインのシャーロットがアンドロイドだからこのタイトルが採用されたんでしょうけれど、そのイメージってちょっと安くないですかぁ?
 うーん……(^_^;)。


 わたしが知る電撃とかスニーカーで書かれていた頃の都築センセの筆致とは違ってきているようなカンジを受けました。
 んでも、そこに書かれていたことはとても好感。
 次回作、楽しみにしたいです。
 がしかし、あとがきにあった「恵壬那/昂一」って組み合わせって、ちょっと不安がー。
 現状、シャーロットと恵壬那では、シャーロットのほうが大きな存在すぎるというか……。
 要らない子とまでは言いませんが(言いませんよ?)、作中にあった「恋人関係」というのは怪しいものだと思ってます!(笑)
 


16
 
『マロリオン物語5 宿命の子ら』 デイヴィッド・エディングス 著

 あーっ!
 マロリオンの背表紙、リヴァの沿岸なのねー!
 しかもこの5巻では、翼の縞が青の鷹とラヴェンダー色の鷹が!
 わかってらっしゃる!(≧▽≦)

 そんな次第で、長き旅もようやく終わりを迎えます。
 こと、ここに至っては、読み手も戦いの決着については誰しも予測できうることでしょう。
 物語としてあるべきように終わるといった。
 となれば意識は「いかにして決着がつくのか」であったかと。

 コリムでの<光の子>たちの戦いっぷりったら見事でしたわ。
 ガリオン、ザカーズ、ダーニク、トスの四人組の破壊力ったらないね!
 もちろんリセルやシルク、そしてサディたちの戦いも素晴らしいったら。
 うわー。
 ここでの戦いっぷり、こんなにワクワクするものだったとわー。
 わたし内ランキングで、アレンディアの王宮での戦いを印象度で抜いたかも。


 そしてやぱしザカーズ。
 ちうか、シラディス(笑)。
 ペリヴォーでの対ドラゴン戦あたりから活き活きとしちゃってまぁ。
 あのアレンディアなまりがそこまで人の性格をかえるとわ。
 言葉遣いって、やっぱり大事(^_^;)。

 で、ザカーズを心配し始めたシラディスも〜。
 このふたり、見ていて初々しいんですけど、早くもシラディスのほうが手綱をにぎっちゃっているカンジ(笑)。
 ツンデレ、ツンデレなんて流行りだしてしばらくですけれど、「シラディスはツンとしていった。」なんて、そのものを描写されたのはひさぶりに見た〜。
 でもってこのあと、自分の思い通りの状況になると微笑むんですよ!
 見事なツンデレっぷり!
 そんな状況を見て、ヘターがひとこと。

 「ガリオン、やけにこむずかしいことをいうんだな。わたしから見れば、うら若い女性が巧みに男を操っているだけだよ」

 珍しくたくさんしゃべったかと思ったら、ヘターったら!(笑)


 全てが終わって国へと帰る場面。
 ドラクエ4のラストを思い出したんですけど……。
 たくさんの別れの中で印象深かったのは、サディとアダーラ。
 サディってこんなにも大きな存在になっていたんだなぁ……って実感。
 この先、再会することがあっても、同じ道を歩む仲間では無いという現実を、確かに知らしめてくれたからかもしれませんが。

 アダーラは……んー。
 はっきりとお別れを示してくれたから、かな。
 お別れっていうか、旅の終わりをでしょうか。


 この巻とベルガリアード物語1巻を並べて平積みしていた書店がありましてー。
 HACCANセンセが描くガリオンの成長ぶりに驚きましたですよ。
 長い旅を経た、時間の流れがそこにあるわけで。


 そして「生」あふれるラストシーン!
 とても美しく、神々しくある、素晴らしいシーンであったと思います。
 ビバ!

 読み返すたびに新しい魅力をそこに見つける、とてもとても壮麗で愛すべき物語です。
 これからも、何度でもわたしはこの物語と向き合うことでしょう。
 



15
 
『シェオル・レジーナ 百合の玉座』 村田栞 著

 いよいよ物語の核心。
 神による創世の物語を、切ないラブストーリーに仕立て上げたなぁ……と。
 ポイントはやぱしファティマというキャラクターなんですけれど、彼女を中心とした悲恋の数々が、きちんと物語のトリガーになっているところがスゴイ。

 いやしかし、ぶっちゃけてしまうと、前世でも今生でも、ファティマの鈍感さが招いた事件と言えてしまうのですけれども!
 それに巻き込まれたカタチで天界を二分して争った天使たちにはご愁傷様としか(笑)。

 あー、鈍感とも違うのかな?
 今回だって無意識的にかグランディエとのあいだに予防線を張ったわけですし。
 前世のことは一途に愛してしまったが故の過ちであって、今生においてはその反動ってカンジかしらん?


 シオン、今回終盤で思い切った行動しちゃいました。
 読み手のひとりとしては、ちょっと展開が急すぎるかな〜ともカンジたのですけれど、シオン当人にとっては覚悟を要する事態が今回は連続してましたし、当然の帰結なのかもー。
 愛の告白、よくやった!(≧▽≦)
 俗に言うところの「世界を敵に回しても〜」を、ホントにやるとはネッ!(笑)
 世界どころか、こっちは神様を敵に回しても……ですけど。

 まぁしかし、「あなたを守ってみせる」っていう覚悟については、ちょいと不安が。
 そういう言い方が効果的な人もいるでしょうけれど、ファティマは困難を見据えることを覚悟した直後だけにタイミング悪いというか……。
 前世の彼女であれば、そういう愛し方もアリだったのではないかと思うのですけどねー。
 今生のファティマについての理解度は、まだグランディエのほうがリードしているような気がしないでもないです。

 ……それでも彼女にはシオンと一緒になって幸せを見つけて欲しいと思うのさー!
 次が最終巻だなんて信じらんない!(><)
 逆転! シオンの逆転劇をーっ!(笑)


 それにしても、山羊頭さんのカッコよさはどゆこと?
 助演男優賞モノの活躍っぷり。
 あー、最終巻では彼にも見せ場をお願いします〜。
 

14
 
『ぼくのご主人様!? 2』 鷹野祐希 著

 ……あー、あー、あーっ!
 前作の主人公は入れ替わった吉朗と吉香で、今回の主人公は千尋と千広なのね。
 三人称視点とはいえ前作は吉朗主体で描かれていただけに、今作を読み始めたとき「あれ? こういうお話だったっけ……?」と激しく戸惑いが。
 だからと言うわけではないですけれど、冒頭、作品概略というかこれまでのあらすじみたいなモノが欲しかったところ。
 それとキャラ紹介。
 とくに「前回は吉香でしたけれど、今回は千広のお話ですよ〜」みたいな前説が欲しかった……。

 15ページ目に前作の概略っぽいことが記されているのですけれど、これって佐倉真琴を中心に語られているものなので、今作の千尋の視点でも、前作の吉香の視点でもないんですよね。
 事件概要だけを示していて、作品の概要にはなっていないという。

 シリーズ2作目、ことに中心人物を前作から変更しているというのに、この冒頭の唐突な始まり方は、ちょっと不親切に思えたりして。

 でも本編の構成については、前作で「吉香の中に入れ替わった吉朗」に偏った描き方を不満に思っていたところ、今作では「千尋」と「千広」を公平に扱っている辺りが良かったかな〜と。
 入れ替わりなんだから、双方の感情が大切だなと思う次第。


 「和算」というガジェットが用いられているワケですけど、ちょっとそちらに引っ張られてしまっているような。
 前作のあとがきで「千尋がどうして入れ替わったのか」を書きたいようなことを仰ってましたから、このコト自体は十分に想定されていたモノなのでしょうけれど。
 しかし、それでも……というか、だからこそというか、センセの思いが強いだけに、浮いているような馴染んでいないという印象が。
 物語が主でトリックが従ではなく、トリックを成立させるための物語であったかのような……。


 入れ替わりラブコメディ……とのことですけれど、千尋からはそれを感じられなかったかなぁ。
 とりあえず千広の側には倒錯した愛の形が見えましたけど(いや、それも決して間違いではないのですけどー)。
 しかしながら千尋にしても千広にしても、行動のキーとなるものは「和算」というモノに対しての知的好奇心であったような。
 推理ミステリとしては正しくても、ラブコメディというにはちょっと……。
 ざんねーん……と思いつつも、馨先輩の気持ちだけで良かった良かったと感じられたのデシタ。


 とりあえず、あれです。
 次があるとしたら、秀麿おじいさんには物語から退場してもらいましょう。
 無邪気な愚者がいちばんタチ悪い。
 ……でもまた物語の発端になるんでしょうねぇ(苦笑)。
 

13
 
『春夏冬喫茶館にようこそ』 前田栄 著

 神仙を身の内に潜ませた少年が、妖怪の御曹子とともに悪さをする他の妖怪たちを成敗するお話……?
 霧の中に迷い込んで、偶然見つけた喫茶館で休ませてもらおうと思ったところから物語は始まるわけですがー。
 初期情報が少ないので、置かれた状況をいまひとつ理解できなかったりして。
 キャラモノではないんだろうな〜ってコトだけはわかりましたけど。

 なんというか、不思議なお話ですねぇ。
 宮沢賢治とか柳田国男とか、そういう方向のフォークロアに近しいものを感じるんですけど。


 三編のお話が収められていて、どのお話もお茶のシーンから始まるんですよね〜。
 これが豪勢で美味しそうなワケで。
 妖怪との対決という物語の軸の部分よりも力の入った描写だなぁと。
 タイトルに偽り無しな配分というか(笑)。


 ラスト、物語の方向転換を示唆するような結び方には驚いたー。
 なにがどう解決したのかはわかりませんでしたけれど、今回の三編のような雰囲気と展開とは異なる方向へ進めるって意図は感じられ……。

 なんだか最後まで狐につままれたようなカンジでした。
 

12
 
『宇宙海兵隊ギガース 4』 今野敏 著

 前作から3年も経っているんですって。
 打ち切られたのか、それとも今野センセが書く気無くなったのかと思ってましたヨ。
 「最終話に向けて盛り上げていきます」って仰ってますし、今度はそれほど待たずに次巻が刊行されるのでしょうか?

 にしても、それだけ前巻発売と間が空いてしまったのなら、ストーリー概略とかキャラ紹介とか欲しかったデス。
 思い返すのに、ちと苦労を。
 今巻の冒頭の流れには、これまでのながれをおさらいするような感があって、わたしみたいに忘れてしまった人へ確認を求めているのかな〜ってカンジではあるのですけれど、それでも、ね(^_^;)。

 キャラクター把握に関しては物語の概略ほどは必要ないかもしれませんけれど。
 この物語、個人で重要なのはギガースのドライバーであるリーナ少尉くらいで、ほかの人たちは海軍か空軍かで区別すれば大意は追えますしね〜(笑)。


 で、読み進めていくうちに思い出していったワケなんですけれどー。
 やぱし、この作品で披露されている宇宙戦闘への見解というか設定は個性的で好きですわ〜。
 まだ大気のある場所、高々度での翼を用いた滑空の概念とかー。
 天体の引力を考慮した軌道計算とかー。
 宇宙空間での戦闘は大気圏内のドッグファイトや艦隊戦とは全く違うというというところを見せてくれるんですよね〜。

 出撃要請がかかったとしてもすぐに出撃できるわけでなく、船外活動をする宇宙服の内圧に身体を慣らすために減圧をするとか、そこが地球上でないということを表すために、様々な作業を行わせているという。


 リアリティって現実そのものに近づけることを言うのではないのだと感じます。
 それが現実だと惹起させるためのパワーを与えることを指すのではないかと。
 光線が飛び交ったり、複雑なマヌーバを見せるなど、けっして派手な戦いではないのです。
 ですけれども「宇宙の戦争は戦いと戦いのあいだが長い」と表した中で、敵と邂逅する一瞬に持ちうる全ての能力を発揮させようとする戦い方は、否が応でも緊迫感が高まっていくと思うのデスヨ〜!

 裏をかかれた敵艦隊に追いつくために「軌道屋」と呼ばれる科学士官たちが複雑な計算をしていく様には、いやもう、ドキドキですよ!(≧▽≦)
 ……べつに新キャラの女性士官だったからじゃないデスヨ?(苦笑)


 オビにあったような「スペース・ロボット・オペラの決定版!」というには激しくシブイ展開。
 んでも、その戦い方には一見の価値アリかと!
 

11
 
『シェオル・レジーナ 魔女の刻印』 村田栞 著

 ちょ、グランディエ〜??
 一晩でダブルヘッダーたぁ、ずいぶんとおさかんじゃありませんこと?(笑)
 まぁでも、シオンのほうまでカウントされると気の毒かもしれませんけれど。

 直接的な描写が無くてもグランディエとエンデュミオンの関係って肉体関係アリなんでしょうけれど、あんまり気にならないかなぁ。
 ふたりが天使だから性別を超えちゃっている認識のせいかもしれませんけど。
 グランディエ×シオンにしても、シオンの愛らしさが前面にきているのでわたしの美意識的にもセーフというか。
 カワイイは正義!(笑)

 それ以上にシオンが完璧にノーマルでヘテロであって、ファティマへの愛情を正直に打ち出しているから、グランディエとの関係も一線を越えはしないんだろうなぁ……という安心感があったりして。
 自分専用の抱き枕なんて評しているあたり、可愛すぎ!(^_^;)
 村田センセもシオンの感触を、それはそれは気持ちよさそうに描写しているんだもんなぁ。
 グランディエ、羨まし〜っ!(≧▽≦)

 シオンを抱き枕にしたのはファティマもでしたか。
 あれは……シオンには可哀想でした(^_^;)。
 よく耐えたってカンジ!
 そんなファティマの無防備さに振り回されている姿もカワイイときたもんです。
 大変な人をお師匠様にしちゃったなぁ(笑)。


 山羊頭さんの素顔にも、格好良くて驚いたさ〜。
 どちらかというとグランディエより好みだわ。
 彼とグランディエの正体を含め、ファティマの出自に関わってくることが表明されて、物語が動き始めた感が。
 まだ二巻目ですけど、このテンポとスケールの広がり方は好みです。
 次巻も早く読もーっと。
 

10
 
『つばさ』 麻生俊平 著

 集団の活動に意味があるとき、そこに属する個人の描写ってどうしても少なくなってしまうなぁ……と。
 群像劇であるならば個々人それぞれに異なる方向性を見いだせるのだとしても、たとえば「戦隊モノ」のような形では、戦隊という集団の方向性に大義が置かれてしまうので……。
 どれだけ個人が華やかであっても、集団の大義の中に埋没してしまうような。

 もちろん、長期的な展望に基づくものであれば、やがては個人の描きようもあるのでしょうけれど、そういう計画性は、ことライトノベル、あるいは文芸というジャンルでは難しいような。
 そこまで長きにわたって読み手はついていかないというか、もっと瞬発性に富む分かりやすい受け容れやすい快楽が初めにありきでないと……。

 裏の見方をすれば、麻生センセには長期的展望にたった上での執筆をMF文庫側が許しているってことなのかもしれませんけれど。
 ──どうなのかなぁ。


 「つばさ」と呼ぶ扶助集団の存在・躍が大きすぎて、個人の感情が置いてけぼりな気がします。
 ことにヒロインの檜垣翠子ちゃんの気持ちの揺れ方など、ちょっと唐突感が……。
 主人公の能力を受け容れることに対しても、もう少し拒否反応があっても良かったように思います(受け容れやすい素地があるのだとしたら、そのことについての説明が足りていなかったような)。

 ちうか、自分が特別な存在になりたいという変身願望?は、ちょっと気恥ずかしかったりして。
 そう思えるのって、若さの特権だわ(苦笑)。


 将来的に期待できる要素は十二分にあるのですけれども、この巻だけで判断してしまうとどうしても厳しい見方をせざるを得ないかなぁ……。
 


9
 
『SHI-NO -シノ-アリスの子守唄』 上月雨音 著

 いくつかの情報の集積の仕方に唐突感を覚えてしまうのですけれども、現実論をかざすよりも推理ミステリだと思いこめばそれもまた良し……なのかな?
 作中でも語られるように、推理ミステリのジャンルというものは犯人が極めて限られた集団の中に存在しているのですし。
 「六十億から十名にまで容疑者が絞り込まれました」は至言だと思うー。

 そして唐突感というのは見方を変えれば疾走感にも通じるのかもしれなくて。
 あとがきで上月センセも述べられているところの、今回はミステリ分が多めになっているという方向性はつとに感じられました。
 唐突感はあっても過ぎた無茶をしていワケでもなく、推理をさせる手順については極めて慎重に披露されているっているのではないかな〜と。
 書き手の優しさを感じられるミステリは好きさ!(≧▽≦)


 まぁ、でも、しかしです。
 この作品の魅力って推理ミステリとしての正当性ではなく(もちろんそこも魅力のひとつなのですけれども!)、ヒロイン・志乃ちゃんなのでしょうねぇ。
 志乃ちゃん自身がまとうミステリアスな雰囲気に加えて、彼女を中心とした周囲の人々の距離感が、作品に絶妙な緊張感を生んでいるというか。
 リアリズムとは違った意味から、作品に取り込まれます。

 キャラクターの際だつ魅力と、推理披露の正当性。
 共に成り立たせてこそ、ライトノベル・ミステリだなぁ……と。
 どちらかが優れているより、両者のバランス型こそ、このジャンルでは認められていくのかなー。
 本格推理でキャラ描写極少、個性派キャラでトンデモ推理……などよりは。


 上月センセが述べられた裏テーマ「罪とは自覚するもの」という点は、今回強く感じられました。
 ハウ・ダニットで悩ませることより、 無自覚の犯罪こそ恐ろしいモノだとメッセージを込められたことこそ、今作の魅力なのでないかなぁ。
 ちうか、前作も含めて考えるに、上月センセの魅力のような気もしますけど。
 そんな次第で、次回作も楽しみッス!


 ちなみに──。
 わたしはなるべく推理しながら読み進めていく派〜。
 でもあくまで「なるべく」なので、悩んだりしたら先へと読み進めていく派〜(笑)。
 

8
 
『狂い咲く薔薇を君に 牧場智久の雑役』 竹本健治 著

 探偵居るところに怪事件在り。
 そんな古典的な推理モノの雰囲気が。
 ひとつの学校の中で1年も経ずに殺人事件が3件も起こるなんて、学校教育の崩壊どころじゃないニュースのような……(苦笑)。

 んー……。
 本格ミステリに異を唱えるワケではないですけれど、そもそも学園ミステリって、連続して事件が起こるといういびつさを備えているなぁ……と感じずにはいられなかったりして。
 もちろん日常の中に物語のソースとなる事件はあまた潜んでいるのでしょうから、それが「殺人」というひとつに落ち着くのではなくて、もっと多様性を見せてくれれば不都合無いのでしょうけれど。
 ──「殺人」が非常に強い物語性を内包することも、十分に考慮されるべき点だとは思いますけども。


 推理ミステリとしては本格よりで、とても優しく丁寧に描かれているとカンジました。
 んでも、学園モノとしてとらえ、キャラクター性を楽しみにしていた方向では、ちょっとガッカリかも。
 主と従、どちらが……と言われればもちろん推理ミステリ作品だから仕方がないとはいえ、キャラクター同士のつながりが希薄なカンジ。
 「先輩と後輩」みたいな設定上の文言だけで、内面を描くような物語への落とし方が物足りないー。

 容姿などについても、これはもうかなりの部分を山本ヤマトせんせのイラストに助けられているな〜というカンジ。
 そういいったところも、昨今のラノベ風潮に乗っかっているなぁ……と。
 もっとも、そんなこと言っているわたしも、山本センセのイラストがなければ、「学園ミステリ」というアオリがあっても手にしていないと思うので、企画方針に見事にヤラレているな〜と思いますけど!(笑)

 山本ヤマトせんせのイラストは、売れる要素のひとつだと思う!(まとめの感想がこれか……)
 
5/16現在、bk1に書影無し。
7
 
『リリアとトレイズW イクストーヴァの一番長い日<下>』 時雨沢恵一 著

 どんな理由があるにしても、この巻を上下巻に分けたことには賛同できかねるかなぁ……。
 読み始めるとすぐにクライマックスがあるのって、どうにも気持ち悪い……。
 無理矢理テンションを引き上げられるカンジで。


 リリアって、えーっと、その……要らない子になっていたりしませんか?
 幸運に支えられているとはいえ、存在が微妙なカンジ。
 トレイズは相応にがんばっていると思うのですけれど、彼の努力のすぐ上を軽く越えていってしまうリリアの結果が納得いかない……。
 結果論が彼女の存在を価値あるモノと証明しているのですけれど、それだけではわたしは頷けないという。

 んー……。
 どうしても親と比較される子世代、詮無きこととは思いますけれど……。
 アリソンからは感じられていた矜恃のようなものを、リリアからは感じられないのですよー。
 リリア自らが言うところの「庶民」ということが、何も知らなくて良い免罪符のように扱われているみたいで。

 アリソンは、出自が特別であっただけに、そんな「庶民」とかいう身分や生まれに逃げはしなかったと思うのですよ。
 自分も、そして他の人を見る目にしても。


 あー、はいはいはい。
 リリアは面白い女の子だとは思いますけれど、トレイズがそこまで執着する理由が見えてこない……ってことなのかもしれません。
 トレイズが可哀想なんですよ!(TДT)

 女王との面会シーン。
 物語の引き延ばしとしか感じられなかったんですけども……。
 んー、まぁでも、ラストでは退路を断たれたカンジもありますし、次巻こそ期待!でしょうかねぇ(三部作構想なんですから当たり前ですが)。
 

6
 
『シェオル・レジーナ 魂の捜索人』 村田栞 著

 ぎゃーっ!
 ファティマ、かっこいーっ!(≧▽≦)
 仕事の徹する凛とした姿勢にはホレるわ〜。
 ことあるごとに強調される、僧衣のスリットからのぞかせる素足の魅力もたまりませんなぁ。
 そういう自分の魅力にまったく気付いてないあたりもステキ。
 彼女のために堕ちた天使、グランディエも苦労しますね(笑)。
 そしてお弟子さんのシオンもがんばれ。

 ……ああ。
 そんなオトコノコたちの気持ちに鈍感なあたりもカッコカワイイのですか。
 やう゛ぁい。
 マジボレか、わたし(笑)。

 ヨーロッパ中世の裏面を描いていても、それほど沈んだ雰囲気がないあたりも好みなのかも。
 完全に忌諱されているわけでなく、許されている──それも必要とされているという存在・位置が物語に安心感を与えているのかな〜。

 ファティマを挟んでのグランディエとシオンたちの関係にもちろん楽しみの中心があるんですけれど、天使論的な概念にも興味があります。
 創作として、どういう説を語られるのか楽しみ〜♪
 

5
 
『不思議使い』 葛西伸哉 著

 う、うーん……。
 一定の考え方を確立しているキャラクターが、未体験事項に遭遇して考え方を改めていく……っていうのは物語として正しいのだと思うのですけれどー。
 んでも結局は、入りの部分に多大な偏見をキャラクター性に組み込んでいるということには違いないワケで、ちょっとそういう偏見めいた思考に戸惑いを……。

 転校を繰り返していった中で身につけた処世術も、理屈ではわかっているつもりでも、この巻から始まる転入では活かされてないようなちぐはぐさも感じたりして。
 そうした懊悩と葛藤は作中でも指摘されていますから、読み手があえて指摘する点ではないのでしょうけれど(そうしたちぐはぐさもキャラクター性というか)。


 作中で指摘されているから許される……という点では、たとえば「幻象」という固有の事柄にたいして「フェノメナ」という外来の当て字をすることへも違和感が。
 科学的論拠に照らし合わせてみて、その上で名付けたという理由が提示されているんですけれど……。

 「言葉」だけを科学的に見ても、システム全体は科学的に見通せていないような、中途半端な飾りめいた意識を感じてしまうのは──うがちすぎですか。


 そうした前提にあたる部分に心情的な反発をおぼえても、クライマックスでは自らアクションを起こす主人公の姿に納得できたりして。
 出席番号のこととか、繰り返し繰り返し登場させて、主人公の心に潜ませていた障壁のように植え付けていたシチュエーションも心憎いところですし。
 心のトゲを受け容れて、越えたところに新しい自分がいるのですよね!
 強敵を打ち破る機転の利かせ方も、先述の偏見を越えたところにあったように思いますしー。
 目の前にそろっている事象があるならば、それを活かすことこそ科学的って。

 別れが約束されている物語ですけれど、その寂しさも乗り越えられるような物語になるといーなー。
 

4
 
『涼宮ハルヒの憤慨』 谷川流 著

 イチバン苦労をしてイチバンの努力を必要とする存在が主人公であれば、この作品においてそれは間違いなくキョンになるかと。
 そして読み手は主人公に対して多大な感情移入をするものだとすれば、キョンが思うこと感じることに対して、読み手も意識していくものかと。
 だからキョンが──「回りくどい自作自演だ」なんて思っちゃったりすると、作品の存在意義がどうのとか証明する前に、読み手にとっても退屈なモノに成り下がってやしまいかと感じてしまうのはー、わたしだけ?

 ハルヒを退屈させないための活動って、どうにも閉塞感をおぼえるんですけども。
 学園スラップスティックだっていうなら、ハルヒのために物語を構築しないで、読み手のために作品を生み出すべきなんじゃないかなぁ……。


 そういった次第でハルヒの思惑とは何ら関係ないところでSF話が展開していく「ワンダリング・シャドウ」のほうが好みでした。
 情報という概念について論じられるの、スキー。
 厳密に言えば「編集長★一直線!」が納得できないってことなんですけど。

 でも「ワンダリング・シャドウ」を肯定する場合、この作品のヒロインってどうしても有希ちゃんになりますよねぇ。
 どうしても──っていうか、やっぱりっていうか(苦笑)。
 有希ちゃんが持つ能力よりも、ハルヒの「自らが望む世界を顕在化させる」能力のほうが、「機械仕掛けの神」に相応しいと思う次第。


 ところで、今回の表紙、ちょっと色味が淡泊のような……。
 主線もギザギザ見えちゃって、全体が解像度低い?
 有希ちゃんらしいっちゃあ、らしい処理なのかなぁ……(^_^;)。
 デジタルっていうか。
 


3
 
『ストロベリー・パニック 1』 公野櫻子 著

 筆致とか読み物としての物語性が好きなのではないと。
 学園百合物語としての突き抜け方が好きなんです、たぶん、きっと(笑)。
 おかしいよ、この子たち!(≧▽≦)

 この作品の位置・扱われ方が「ストロベリー・パニック」という企画においてどうなっているのか分かりませんけれど、ノベライズ化の役割のひとつは設定を先鋭化しても構わないけれど余計な解釈を持ち込まないってことなのかなーって思います。
 アニメと比すると、ずいぶんと……本気度が高いような。
 「女の子しか愛せない真性の百合娘」なんて設定、TV放送するには難しいですよねぇ(苦笑)。

 設定だけでなく行動からしてみんなアクティブになっているかと〜。
 TVでは静馬様の行動に振り回されている感のある深雪様が「物の怪すら操れると評判の策謀家でいらっしゃる六条院の姫君」なんて呼ばれる立場にあるとは!
 かなりの腹黒っぽく描かれている様が素敵すぎ!
 陰謀巡らそうとしているところなんて、生き生きとしていらっしゃいますよ?(笑)

 そんな深雪様と対等に渡り合っているル・リムの千華留様も相当に裏表ある性格してますし、「雪の女王」と呼ばれてクールな割には要所でミスを犯すスピカの詩遠様とか、みんなキャラが立ってる〜。

 もちろん渚砂ちゃんを取り合う静馬様と玉青ちゃんも、壮絶度が5割増しってカンジ。
 玉青ちゃんを含めて余計な茶々が入らないようにするために渚砂ちゃんを妹としてペアを組んでエトワール選に出馬するだなんて……。
 気持ちいいくらいの独占欲ですわよ、静馬様!(笑)
 いやはや、出馬を決意したさいの口上は見事デス!

 その場にタイミング良く現れて、パンパンパンと手を打ち鳴らす深雪様の芝居がかった所作にも笑ってしまいましたが。
 みんなスゴイわ(^_^;)。


 ル・リムの扱いが小さいな〜とTV放送を見て感じていたのですけれど、それって企画段階の頃から決まっていたことなのかな〜。
 エトワール選に目立った候補者が居ないってところからして、添え物扱いって気がしてならんデスヨ。
 

2
 
『魔法薬売りのマレア 千日カゲロウ』 ヤマグチノボル 著

 構成の妙だよなぁ……と思う次第。
 派手で毒もある外見に読み手の意識を集中させつつ、その実、裏ではしっかりとした事件性を動かしていく語り口が。
 マジシャンの興業と、エンターテインメントとしては同じことをしているのですよねぇ。
 この構成は鮮やか。


 シニカルな視点はヤマグチせんせらしいかなと。
 世の理の厳しさを強調するのではなくて、得るモノがあれば失うモノもあるといった真理を示すだけというか。
 厳しさや優しさは受け手が思うところであって、物語の中では答えをどちらかに求めていないカンジ。
 答えがそこに示されないだけに評価は難しくなってしまうような気もしますけれど、読み手を甘やかさないというのは相応に「大人な扱い」をしてくれているようにも思えるのデスヨ。


 表紙のタイトルデザイン。
 あんまり良いものではないな〜と思ったりして。
 「千日カゲロウ」という著者名のように感じたのはわたしだけかなぁ……。
 サブタイ扱いにしてはバランスを欠いているように感じましたし、さらにはカラー口絵では同じデザインなのに「千日カゲロウ」の文字だけ枠の外へ配置されているのはなぜに〜?
 サブタイを付ける……という行為そのものに、取って付けた感があるような。
 サブタイ込みの表紙タイトルデザインよりも、カラー口絵で用いられているサブタイを外してしまったもののほうがスッキリとまとまっているカンジ。

 枠でスペースを区切ってデザインするなら、サブタイは要らなかったんじゃないかなぁ……。
 

『レヴァイアサン戦記T』 夏見正隆 著

 社会をディフォルメして描いたときの夏目センセの作品は、ほんっとーに気持ち悪くて……。
 ありえないってくらいに粘着質。
 もっとも、それだけにフィクションとしての体を成しているワケなので、限りなく物語の構成要素となっているのかも。


 めまぐるしく視点が変化していくところは夏見センセらしい作品だなぁ、と。
 ソノラマのメルマガによると大幅加筆されているとのことなんですけれど、このザッピングな構成は変わってないんだろうなぁ。

 個々のキャラ描写にあまり力を入れているようには感じられないので、ちょっと煩雑なカンジもしてしまうのですけれど……。
 言動ではなくて乗機によって変化させているような向きもありますし。

 このあたりのバタバタ感も夏見センセらしいっちゃ、らしいですけどね〜(^_^;)。


 このシリーズの続編が「わたしはファルコン」なんでしたっけ?
 見覚えがあるキャラがちらほらと登場してきているような……。
 あちらのシリーズも復活してほしいなーっと。
 

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