○● 読書感想記 ●○ 2006年 【2】 ※ 表紙画像のリンク先は【bk1】です ※
「結局さ、起こったことだけが真実だよ。言葉にされたことも、映像にされたことも、感覚にされたことさえ真実じゃないんだろうけれど。いずれにせよ、起こらなかったことは絶対真実じゃないし、現実である意味もないの」
そうだとすれば、なにを求めて生きるのか。 そもそも生きていくことに意味なんて──求めてはいけないのか。 あとがきに拠れば趣味で書いた作品とのことですけれど、だからこそなのでしょうか。 「求める」という飢餓感、渇望する気持ちが前面に押し出されていたように思います。 それは必ずしも物語の形式には沿っていないのかもしれませんけれど、強く強くあふれる感情が込められている──そう、感じたのです。 強い気持ち──善性に因るものではなくても──を感じられる作品だからこそ、わたしは好き。 ファミ通文庫って、なにげに退廃的というか厭世的というか、終末をのぞき込むような色を持つセンセが少なくないような。 レーベルから受けるイメージとはズレているので、惜しいなぁ……と思います。 カバーデザインまで含めて、挿絵を描かれたワダアルコさんが任されているそうなのですが、このカバーイラストは秀逸ですねぇ。 口絵カラーについては、ラノベのそれとしては情報不足な気もしましたけれど、しかしこれもまた作品の雰囲気良く伝えていると思います。 本編モノクロ挿絵のほうも氷の透明感のような、不純なものを許さない世界を生み出されているというかー。 わたし的には本編&挿絵ともに、ストライクでした(インロー気味)。 でも、これもまた売り上げのほうは……と、心配もするのですよー(^_^;)。
「あいつらは圧倒的に正しい」
──なんて。 アナタ、どうしちゃったんですかーってカンジなくらいにカッコイイ(笑)。 設定による外見で割を食っちゃってますけれど、文七くんを好きになる子が現れるとするならば、やぱし内面を見る子なんでしょうねぇ。 括センセ、いいんじゃないですか?(笑) ゆかりちゃんは、今回ちとネガティブな域へと入ってしまっていましたけれどー。 んでも前作での成長が彼女にとっては少しばかり背伸びしすぎだったのかなぁ……って思うと、これもまたアリなのかなと。 そんなねぇ……。 なんでもかんでも「よい子」にいきなり成長するっていうのも変なお話ですし。 トライアンドエラーですよね、なにごとも(^_^;)。 2ヶ月連続刊行という点を活かして、前作と今作とを併せて、ゆかりちゃんの浮き沈み?を意図的に表現してみた……ってことはありますでしょうか? 『バレ上。』と『ホワ上。』、単体で評価するのは乱暴だと思う〜。 気になったのですけれど、三浦センセは、『英雄』に対して含むところがおありなのでしょうか? 鉄平くんと文七くんについては先述のとおり「役割を分割した」とわたしは見ているので、本来ならば同一の存在であるのではないかと。 それがもちろん『英雄』である次第なわけですけれど、その描き方について、少なからず痛ましさを感じるのです。 平時には邪魔者、窮地にあってこそ望まれる存在、自分ではない誰かをまつりあげることによって犠牲になってもらう指向──。 鉄平くんと文七くんを見る他の生徒たちの想いを、ひどく気持ち悪く感じてしまったのでした。 英雄だから可能なことであって、自分に出来なくても仕方がない──。 決して自分たちのコミュニティには深入りさせない、異分子として鉄平たちを見ているような気がしたのです。 小春の存在が無ければ今作で決着でも悪くない気がするのですけれどー。 こういう伏線?を出すからには、シリーズ続行でしょうか。 うん、楽しみ〜。
「君たちも社会に出れば世の中、そう正しいようにはいかないことがわかってくる。それが成長というものだ」 「経験に基づく大人の忠告ってわけだ」 真吾が口を挟んだ。頷く大佐から視線をアルに向ける。 「自分が若い頃、世間の荒波に挫折するのは勝手だけどさ、それを自慢げに他人に吹聴するってのは、ちょっと感覚を疑うよな」 「全くだ」
あはは。少年たちってば〜(^-^)。 成長は妥協の産物ではないって、ね。 あー。 今作では真吾と友人たちの会話も絶妙でした。 軽妙な中にも、本音を入り混ぜてズバズバと遠慮無く切り込んでくるっていうか。 そうしたやりとりがたのしー♪ 宇宙が舞台のいわゆるSFなんですけれど、わたしにとってはそれほど難解には感じなかったかなー。 目新しさを感じさせる設定でゴチャゴチャしていなかったトコロも好感です。 技術や考証が優先されるのではなく、少年少女たちのココロと行動が大切なのですから〜。 むむむ……。 いよいよ次回作が楽しみになってきてしまいましたヨ。 お願いします〜♪
「一応確認しておくけど、その前衛には私も入っているんでしょうね」 「あー、真希」 祐司の時とはうって変わって、駿兵は何とか彼女を説得しようと言葉を探す。 するといきなり真希は駿兵の胸ぐらを掴み、目を丸くしている彼の顔を冷静な美貌に引き寄せた。 「あなたが私に告白した時、私、言ったわね。私を背中に庇うのは許さないって」
あーもうっ。 どんな風に今の関係を築いていったのか、ふたりの「ボーイミーツガール」を読みたいなぁっ、もうっ!(><) んでも、この物語は祐司と澪の物語。 澪のために勇気を見せるのは祐司でなければならないのです。 将棋の王の駒、チェスのキングなども、ゲームルール上で強いわけではないわけでー。 でも、ゲームでは大切な役目を担っている次第。 そーゆーことかなーって(^_^)。 構成についても、すごく好みー。 大きな仕掛けより、細かな仕掛け、それも伏線の張り方が自然すぎ! 強引なカンジは全く受けなかったですし、いざ実を結ぶ段になったら展開上で小さくない役割を果たす充実っぷり。 なんというか、全体を見通して描かれているなぁ〜ってカンジるのですよー。 「言葉」を非常に意味あるモノとして扱っているガジェットも、わたし好み〜。 名は体を表すってコトを、巧みに活かしてるな〜って。 知識としてだけではなく、これもまた行為を伴うあたり。 この作品の続きを読みたいのですけれど、無理……なんでしょうねぇ。 ただでさえ飛田センセは、年に一冊しか発表されてませんし……。 ともあれ、今年の新作を楽しみにしてまーす。
「ぬしもほんとに可愛い男の子じゃの」 ちょっと呆れたように言うところがまた余計に腹が立った。言った本人であるホロにではなく、そう言わせる隙を作ってしまった自分に対し。 ただ、それでホロの手を振りほどこうと思わない自分が少し情けなくもあったし、ホロが手を離さないことが嬉しくもあった。 それでもロレンスはやっぱり胸中で呟いた。 ずるい、と。 地下道は静かだ。 ホロの忍び笑いが、くつくつと響いていたのだった。
かんっぺき、手のひらの上〜っ!(≧▽≦) 頼りなく見えてもイザというときは行動をためらわず、そして向き合うと決めた相手には誠実であることを努める……。 そんなロレンスの造型も、ひっじょーに好感デス。 シンパシーを感じるのって、設定であるところの記号ではなく、実行動によってだとあらためて思わされたり。 獣の耳と尻尾を持つホロについても、昨今の“萌え”文化に収まるような記号的な存在ではなく、やはり強い想いを秘めた存在だからこそ強烈なキャラクター性を放っているのですよね。 うんうん。ラブやわ! ……ああ、獣耳だから獣臭なのか──って指摘は、星の数ほどされてマスカ? でもでも、今回はヨワヨワになったシーンが幕の向こうで行われたために見せてもらえなかったので、次回はぜひともお願いしたく!(笑) 欲を言えば、クライマックスの解決手段には、もうひとつ展開がほしかったカンジです。 初めからあると知れていたスーパーパワーを用いての危機脱出は、ちと直球すぎかなー、と。 もちろん力の行使には葛藤とカタルシスがあったとわかりますけどー。 ……そこで悩むようになるのが、次巻以降の楽しみでしょうか。 種族の垣根を越えた愛──って、素晴らしい命題だと思いますし。 うん。 北への旅、楽しみにしてまーす。 ところで。 普通の人間では耳があるところ、ホロの場合はどうなっているのでしょうか? 気になって……(苦笑)。 獣耳キャラでこの話題について明確な設定をしていたのって、野梨原センセの『ちょー』シリーズしか覚えがないのですよー。 『あそびにいくヨ!』では、どうなっていましたっけ……?
「俺以外の世界も見せずに独占するなんて、男としては情けないよねぇ、やっぱ」
──っていう言葉は、可愛いなぁ……って思えてしまうのですよ(^_^)。 分が悪くなろうともフェアにいきたいっていう矜恃だけでなく、自分以外の男を知った上でなおかつ自分を選んで欲しいっていう子供っぽさが、ね(笑)。
『コッペとBB団 その2』 田口仙年堂 著 半年ぶりの続刊ということもあってか、序盤での「これまでのあらすじ」っぽい地の文あたりに苦労の影をみたりして……(^_^;)。 んでも、そのおかげでいろいろと思い出すことができました。 ドロドロとしたカタチで前巻から因縁を引きずっていないというあたりも、今作への入りやすさを引き出しているのかなー、なんて。 ……まぁ、中途半端に前作を覚えていたから、キリオの存在に戸惑ったりもしたのですけれど(苦笑)。 人格変換するメガネっ子かぁ……。 いいとこ付いてくるなぁ、田口センセ……。 だがしかしかし! 今回いちばん光っていたのは、幼稚園のセンセじゃないっ!?
「私が見ていたコッペちゃんは、ウソじゃなかったんですね?」 「──ああ」 「それなら、私も迷いませんよ」 窓枠からひょい、と顔を出して先生が笑う。顔に刻まれた小皺は、長年子ども達を教育してきた年輪のようなものだ。初めて見る、自信に満ちた先生の顔に、Q三郎の方が戸惑う。 「ブラック・ブリッツだろうが、人工人間だろうが、あんないい子を放っておけるわけがありません! コッペちゃんはちゃんと教育してみせますから! ブラック・ブリッツなんかに負けませんよ!」
もー、この見栄の切り方、やられたです〜。 今回は(今回も?)正義と悪の境界がボロボロに綻んでいるなかで、先生の主張は輝いてました。 薔薇の騎士は「ブラック・ブリッツで生まれた」という理由でコッペを悪と断じてましたけれど、もちろん、生まれで正義とか悪とかが決まるわけではなく。 あるいは例えば『ヒーロー協定」などに見られる、ある種の考えや意志が正義の本質を語っているわけでもなく。 結局のトコロ、揺らぐことのない信ずるに足る意志をもって行動することが、ひとつの正義を生んでいくんだろうなー……って思います。 両陣営に役者がそろってきて、次の抗争が楽しみになってまいりました。 ……表紙の速水キリオちゃん。 サモナイ2のトリスに見えたですよ(苦笑)。