○● 読書感想記 ●○
2006年 【2】

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20
 
『永遠のフローズンチョコレート』 扇智史 著

 行く先のわからない旅路の途中──。
 そんな感じのお話でした。
 変わらないモノなんてこの世にはひとつとしてないし、いつか訪れる破滅の鐘の音を待ち続けながら生きている。
 閉じた世界の息苦しさではなくて、感じるのは、荒涼とした原野に立ちつくす寂しさ──なの?
 手が触れ合う距離にお互いにいたとしても、そのように見えたとしても、そして触れたとしても、みんな、自分とは遠いところに生きている、みたいな。

「結局さ、起こったことだけが真実だよ。言葉にされたことも、映像にされたことも、感覚にされたことさえ真実じゃないんだろうけれど。いずれにせよ、起こらなかったことは絶対真実じゃないし、現実である意味もないの」

 そうだとすれば、なにを求めて生きるのか。
 そもそも生きていくことに意味なんて──求めてはいけないのか。


 あとがきに拠れば趣味で書いた作品とのことですけれど、だからこそなのでしょうか。
 「求める」という飢餓感、渇望する気持ちが前面に押し出されていたように思います。
 それは必ずしも物語の形式には沿っていないのかもしれませんけれど、強く強くあふれる感情が込められている──そう、感じたのです。
 強い気持ち──善性に因るものではなくても──を感じられる作品だからこそ、わたしは好き。

 ファミ通文庫って、なにげに退廃的というか厭世的というか、終末をのぞき込むような色を持つセンセが少なくないような。
 レーベルから受けるイメージとはズレているので、惜しいなぁ……と思います。


 カバーデザインまで含めて、挿絵を描かれたワダアルコさんが任されているそうなのですが、このカバーイラストは秀逸ですねぇ。
 口絵カラーについては、ラノベのそれとしては情報不足な気もしましたけれど、しかしこれもまた作品の雰囲気良く伝えていると思います。
 本編モノクロ挿絵のほうも氷の透明感のような、不純なものを許さない世界を生み出されているというかー。

 わたし的には本編&挿絵ともに、ストライクでした(インロー気味)。
 でも、これもまた売り上げのほうは……と、心配もするのですよー(^_^;)。
 


19
 
『青葉くんとウチュウ・ジン 2 Xマス・スクランブル』 松野秋鳴 著

 サブタイに見られるように、今作の大きな話題は「青葉くんがいかにして一之瀬嬢をクリスマスデートに誘うか。その顛末」だと思うのですがー。

 事件ひとつひとつにAから始まる符号を付けていって、事件A〜Zが積み重ねられていく構成は見事だと思うのですよ。
 んでも、主題「青葉くんがいかにして〜」に関わってくるのは最後のZひとつだけのように感じてしまったのは、はてさて……?
 その唯一の関わりですら単に巻き込まれただけで、青葉くん当人には重要なモノではなかったという次第……。

 ひとつひとつの事件について、もっと青葉くんが関わってくるようになればなぁ……と思うのですよー。


 その青葉くんも、なぁ……。
 一之瀬嬢から犬探しの件を聞かされていたのに、なーんにも行動に移さないのはどうかしていると思ってしまいましたヨ。
 そこは控え目に言ってもポイント稼ぐチャンスでしょう!
 それなのに相方とコントのネタ合わせって……。
 優先順位がメチャメチャなんじゃないかとー。

 最後の最後の判断だけは間違わなかったのが、まだ救いなのかなぁ……。
 青葉くんの本気具合が見えないので、この恋、ちょっと応援しづらいデス。
 


18
 
『ホワイトデー上等。』 三浦勇雄 著

 見せ方に変化球的なモノを感じてしまったので、前作までのように手放しで賞賛……とは出来なかったというトコロはあります。
 物語構成も今回もまた丁寧適切だったと思うのですけれど、転換点──気持ちの整理と新たな指標の設定とでもいう部分が受動的に見えてしまったことが残念かな〜。
 んでも、描かれたことや、述べられたこと、テーゼなど、全体を包む雰囲気はやっぱり好きだな〜、と(^_^)。


 大人は“好き”という気持ちを冷静に見つめてくることを勧めるのですが。
 実際、鉄平は──
 「走って走って走りまくって、出会ってから──考えよう」
 ──なんて、カケラも冷静ではないんですよね。
 そんな不確かな勢いに任せただけの状態を信じろっていうほうが無茶。

 でも、「考えない」と「考えられない」は別のコト。
 鉄平くん、やればできる子ですから!(笑)
 ちゃーんと、自分とゆかりちゃんの間のこと、そして未来のことを、きっかけがあれば「考える」ようになるわけでー。


 見せ方が変化球だなって感じたのは、鉄平くんと文七くんの役割の妙。
 鉄平くんが今作ではつとに感情的になって行動しているのに対して、文七くんは冷静に、それこそ理性的に動いているのですよね。
 クライマックスでもその理を説くのは果たして文七くんなわけでー。
 本来ならそれを行うべき、間違った世界を正す役割は主人公たる鉄平くんのモノではなかったかと思うのです。
 しかしながら、ここで文七くんが述べた言葉を「感情」を代表する存在の鉄平が言うことには嫌味に近いものが浮かび上がってくるでしょうし、またせっかくの場面を積極臭くしてしまいかねません。
 こういった点で、「感情」と「理性」の分割が功を奏していると思えた反面、主人公たる義務を預けてしまったことについて納得いかないのかなぁ……と、自分の感想を分析してみたりして(^_^;)。

 もちろん、そうした大きな役割を与えられた文七くんの株が急騰したのは間違いないと思うワケでー。

「あいつらは圧倒的に正しい」

 ──なんて。
 アナタ、どうしちゃったんですかーってカンジなくらいにカッコイイ(笑)。
 設定による外見で割を食っちゃってますけれど、文七くんを好きになる子が現れるとするならば、やぱし内面を見る子なんでしょうねぇ。
 括センセ、いいんじゃないですか?(笑)


 ゆかりちゃんは、今回ちとネガティブな域へと入ってしまっていましたけれどー。
 んでも前作での成長が彼女にとっては少しばかり背伸びしすぎだったのかなぁ……って思うと、これもまたアリなのかなと。
 そんなねぇ……。
 なんでもかんでも「よい子」にいきなり成長するっていうのも変なお話ですし。
 トライアンドエラーですよね、なにごとも(^_^;)。

 2ヶ月連続刊行という点を活かして、前作と今作とを併せて、ゆかりちゃんの浮き沈み?を意図的に表現してみた……ってことはありますでしょうか?
 『バレ上。』と『ホワ上。』、単体で評価するのは乱暴だと思う〜。


 気になったのですけれど、三浦センセは、『英雄』に対して含むところがおありなのでしょうか?
 鉄平くんと文七くんについては先述のとおり「役割を分割した」とわたしは見ているので、本来ならば同一の存在であるのではないかと。
 それがもちろん『英雄』である次第なわけですけれど、その描き方について、少なからず痛ましさを感じるのです。
 平時には邪魔者、窮地にあってこそ望まれる存在、自分ではない誰かをまつりあげることによって犠牲になってもらう指向──。
 鉄平くんと文七くんを見る他の生徒たちの想いを、ひどく気持ち悪く感じてしまったのでした。
 英雄だから可能なことであって、自分に出来なくても仕方がない──。
 決して自分たちのコミュニティには深入りさせない、異分子として鉄平たちを見ているような気がしたのです。


 小春の存在が無ければ今作で決着でも悪くない気がするのですけれどー。
 こういう伏線?を出すからには、シリーズ続行でしょうか。
 うん、楽しみ〜。
 


17
 
『灼眼のシャナXU』 高橋弥七郎 著

 世界の有り様には関心が向かないわたしは、冒頭と末尾を斜め読み〜。
 そんなわたしの今回の注目は、やぱしシャナと吉田さんの関係でしょう!
 ふたり認め合って、新たなステージに立ったってカンジ。
 恋という戦場に立つオンナノコは、許せない敵であると同時に、ときにはなにものにも代え難い無二の友にもなるのですね……って。

 悠二を挟んで向き合う関係ではなく、互いを一個の存在として認めたってトコロが良いですね。
 新しいふたりの関係に介さない悠二ですけれど、えーっと、ほら、オンナノコにはオトコノコにわからない秘密があるってことでー(笑)。


 オガちゃんも含めてオンナノコたちの前向き姿勢は微笑ましいのですけれど、悠二をのぞくオトコノコたちの不甲斐なさってどうにかならんものでしょうか……。
 悠二にしても流されている感は漂っていますし、そもそも佐藤くんたちがうらやむ「能力」を持っているが故のポジションって気がするのですよねー。
 素のオトコノコとしての強さではないような……。

 ここのとこ、どうにもジェンダー間の格差が大きくなってきてませんか?(^_^;)


 あ、今回の注目、もひとつありました。
 ──のいぢパンツ!(≧▽≦)
 


16
 
『スターダスト イレギュラーズ』 飛田甲 著

 ぐはっ、直球〜!(≧▽≦)
 一目惚れって、イチバン単純でイチバン強い行動原理なのかも(笑)。
 ACT.1のタイトルが「ボーイミーツガール」って、ヒネリもてらいも無いあたりもスゴイっていうかー。
 でも、そのタイトルに期待した高揚感を見事に充足させてくれたところが本当にスゴイことなのかも。
 感謝感謝なのですよ〜。

 今作の主人公・真吾も、天賦の才をとりたてて持っているわけでもないところが◎。
 しいて挙げれば、困ったオンナノコを見過ごすことのできない義侠心、でしょうか。
 もちろんそうした行為はのちに「一目惚れ」という感情に集約され解決を見るのですけれど。
 んでも、その気持ちに気付く前に遭遇した困難に対して、迷うことなく一歩を踏み出せるというのは、真吾の深いところにあるココロが貴いモノであるが故なのではないかなーと感じるのです。
 そういう清らかさが、気恥ずかしくもあり、とても眩しいわけでー(^_^;)。

 今作では真吾たち一介の学生が軍人というプロを相手に、知恵と機転を巡らせて向こうをいくという展開が痛快でした〜。
 宇宙時代には「ライトスタッフ」が道を切り開くのだなって(ちと違う?)。

「君たちも社会に出れば世の中、そう正しいようにはいかないことがわかってくる。それが成長というものだ」
「経験に基づく大人の忠告ってわけだ」
 真吾が口を挟んだ。頷く大佐から視線をアルに向ける。
「自分が若い頃、世間の荒波に挫折するのは勝手だけどさ、それを自慢げに他人に吹聴するってのは、ちょっと感覚を疑うよな」
「全くだ」

 あはは。少年たちってば〜(^-^)。
 成長は妥協の産物ではないって、ね。

 あー。
 今作では真吾と友人たちの会話も絶妙でした。
 軽妙な中にも、本音を入り混ぜてズバズバと遠慮無く切り込んでくるっていうか。
 そうしたやりとりがたのしー♪


 宇宙が舞台のいわゆるSFなんですけれど、わたしにとってはそれほど難解には感じなかったかなー。
 目新しさを感じさせる設定でゴチャゴチャしていなかったトコロも好感です。
 技術や考証が優先されるのではなく、少年少女たちのココロと行動が大切なのですから〜。


 むむむ……。
 いよいよ次回作が楽しみになってきてしまいましたヨ。
 お願いします〜♪

 



15
 
『ハイブリッド ユニバース』 飛田甲 著

 主人公の条件ってなにも、特別な設定を背負っているという点にあるわけではないと思わされます。
 やぱし主人公を主人公たらしめるのは、自らの力でかなえられる程度を知り、成功のために限界まで歩み寄るという行為こそなのではないかと。
 ボーイミーツガールなら、なおのこと。
 悩みや惑いも、オンナノコのためには消してしまえる決断力。
 自分の全てを投げ出せる勇気。
 そういったものを伴った行為こそが、主人公たらしめるのだと思います。
 特殊な設定なんて、二の次、三の次なのですよー(^-^)。

 この作品の主人公・祐司を見て思ったのは、そういうことでした。
 設定上の強さでは、祐司の先輩である駿兵や真希さんのほうが数段上をいってます。
 荒事に面しても、駿兵たちのほうが華麗に切り抜けてみますし、反対に祐司は彼らに比べるとカッコイイ立ち回りはしてなかったり。
 それでも祐司が主人公なのは、ボーイミーツガール ──ふとしたことで出会ったオンナノコ、澪のために窮地をいとわず飛び出すことにあるのだと。

 設定を考えれば駿兵や真希さんだって、別の物語の主人公になりうるのですよね。
 それだけのモノを背負っているわけで。

「一応確認しておくけど、その前衛には私も入っているんでしょうね」
「あー、真希」
 祐司の時とはうって変わって、駿兵は何とか彼女を説得しようと言葉を探す。
 するといきなり真希は駿兵の胸ぐらを掴み、目を丸くしている彼の顔を冷静な美貌に引き寄せた。
「あなたが私に告白した時、私、言ったわね。私を背中に庇うのは許さないって」
 

 あーもうっ。
 どんな風に今の関係を築いていったのか、ふたりの「ボーイミーツガール」を読みたいなぁっ、もうっ!(><)
 んでも、この物語は祐司と澪の物語。
 澪のために勇気を見せるのは祐司でなければならないのです。

 将棋の王の駒、チェスのキングなども、ゲームルール上で強いわけではないわけでー。
 でも、ゲームでは大切な役目を担っている次第。
 そーゆーことかなーって(^_^)。


 構成についても、すごく好みー。
 大きな仕掛けより、細かな仕掛け、それも伏線の張り方が自然すぎ!
 強引なカンジは全く受けなかったですし、いざ実を結ぶ段になったら展開上で小さくない役割を果たす充実っぷり。
 なんというか、全体を見通して描かれているなぁ〜ってカンジるのですよー。

 「言葉」を非常に意味あるモノとして扱っているガジェットも、わたし好み〜。
 名は体を表すってコトを、巧みに活かしてるな〜って。
 知識としてだけではなく、これもまた行為を伴うあたり。


 この作品の続きを読みたいのですけれど、無理……なんでしょうねぇ。
 ただでさえ飛田センセは、年に一冊しか発表されてませんし……。
 ともあれ、今年の新作を楽しみにしてまーす。
 


14
 
『神種』 渡辺仙州 著

 著者と読み手って、ある意味からすると、恋人だったり夫婦だったりの関係に似ていると思ったりするのですよ。
 そうした視点において、この著者さまとの関係は些細なことを気してピリピリしてしまいそうです。
 下着や色柄モノをより分けて洗濯しないとか、納豆を食べたお茶碗を水洗いしないでシンクに放置するとか、そーゆーことにいちいちイライラしそう……。

 つまりは言い回しに引っかかるモノをおぼえるためで、例えば主人公のスタート位置での立場──
「政府や警察が裁ききれない、もしくは裁かない悪を裁く。それが自称『日本最高峰』のハッカー集団、超法規的治安維持組織『シナプス』だ」
 ──って、要約すると、リアルすっごい自治厨?とか思ってしまったりー。
 超法規的……非合法ってことデスカ?

 特異な事件に対してネット上で様々な憶測が飛び交うのは当然としても──
「『新兵器の実験に国民を使った』『政府は宇宙人に人体実験の許可をあたえた』」
 ──という意見が代表例かのように提示されることには、恣意的なものを感じてしまったりー。

 なかでも、いちばん理解できなかったトコロが──
「何の関係もない●が殺された」(ネタバレにつき伏せ字)
 ──って主人公が犯人に対して憤りを感じていた点。
 いやいやいや。●さん、思いっきり計画の関係者だったのでは!?


 こういう類にいちいち引っかかるわたしのほうが狭量なのかなぁ……。

 結局のトコロ、筆致を含めて全体の印象は──。
 先の恋人関係でのたとえにしてみると、友人知人に紹介するとき「いい人だよ」って言いそうな。
 あるいは友人から付き合ってみたら?ってカンジで紹介されたとき「悪い人じゃないんだけど……」ってセリフで言葉を濁しそう。
 ははは……(^_^;)。
 

13
 
『火目の巫女』 杉井光 著

 「化生を殺せればよかった」という目的が、「化生を殺せない」という覚悟へと変化する展開は良いと思うのですがー。
 「殺せない」と気付いてからの主人公が何をなすのか、答えを見つけられませんでした。

 物語の転換点って、設定における隠された真実を披露することではなくて、明らかになったそれを前にして主人公の世界を見る視点が変化することなのではないかと思うのですよ。
 でもって、変化した視点から自らの新しい指針を見つけて為すことが、クライマックスであり物語なのではないかと……。


 失うモノ、そして得るモノ。
 功罪の両面から双方を見たとき、わたしにはバランスを欠いているように感じるのです。
 

12
 
『SHI-NO -シノ-黒き魂の少女』 上月雨音 著

 ミステリっていうより、サスペンス?
 条件が明らかにされていかないので、推理するには難いかなぁ……と思うので。
 犯人の心理──動機を解き明かすだけでは、推理ミステリとは呼びたくない……というのが本音デス。
 その動機に関しても、著者固有の思考に拠るところが少なくないと感じていてー。
 ということは、わたしと著者とのあいだに理解するための共感性は見いだせなかったのですし、もしそのように感じた人が多い状況が認められたならば、この作品「わかる人だけ、わかってください」っていうレベルのミステリになって……。


 キャラクターに関しても尖っている面ばかりが見えすぎて、位置づけ、意味合いが定まっていないように感じました。
 役割がすでに存在しているからそのキャラクターがあるのであって、目的や自我をもって役割を成しているようには思えないんですよー。
 とはいっても、その尖った部分──インパクトやパワー、そして組み合わせの妙などで、ひとつの作品を上梓するだけの域に達しているのはスゴイな、と。

 そんな風に、一次的・表層的な部分に唸ってしまった、好感をもった、興味を覚えただけに、全体の構成に賛同できなかったのは惜しいな〜って思うのですよ。
 もっとも、推理ミステリにはトリックのためだけにキャラを存在させるようなところもなきにしもあらずだと感じているので、その点から見ると当作品もミステリの雰囲気を伝えてきているのかな〜……って思います。


 ともあれ、あとがきで上月センセ自らが仰っている「永遠の生」についてのテーマ性は感じ取れたのでした(あとがきで「作品のテーマ」などに触れるセンスの可否は別の問題として)。
 作中で語られる「何故そこまでして生き続けているのか」という命題に対して、きちんと──
 「だけど意思だけは残り続ける」という言葉をもって、意思を残すことに意味があるという答えを披露している点を評価したいのですよー。

 結局のトコロ、この作品をミステリとして言い切るのはわたしには無理かもなぁ……っていう、このレーベルならではの感想に落ち着いちゃうのかも(笑)。
 うーん……。
 ミステリとか言わなければなぁ……(^_^;)。
 


11
 
『狼と香辛料』 支倉凍砂 著

 ハートわしづかみーっ!(≧▽≦)
 最初の一文で!
 きゅんとキましたね、きゅんと。

 文法的に首をかしげてしまう箇所があったり、けっして読みやすい文を書かれているわけではないと思うんですけれど、それでも、最初の頁から始まっているセンスには、ホント惚れました。
 なんていうか、言葉のつかいかたに優しさをカンジます。
 牧歌的……とは違うんですけど、山野を描いた風景画のような穏やかな雰囲気があるのですよー。

 25歳の行商人って主人公も、珍しくて目を引きます。
 中世でこの歳なら、いちおうは独り立ちしたオトナとして扱われますよね。
 んでも、年齢不詳の狼の神様からすれば、25歳なんて子どもなワケでー。
 これは「ハタチを越えたからって、まだまだ子ども」という主張なのか、「みんなが思っているほど、オトナってたいしたことないよ」ってテーゼなのか(笑)。
 どちらにしても、狼の神様であるところのオンナノコに主導権を握られてしまっていることには変わりないのですけれどもーっ!(笑)

「ぬしもほんとに可愛い男の子じゃの」
 ちょっと呆れたように言うところがまた余計に腹が立った。言った本人であるホロにではなく、そう言わせる隙を作ってしまった自分に対し。
 ただ、それでホロの手を振りほどこうと思わない自分が少し情けなくもあったし、ホロが手を離さないことが嬉しくもあった。
 それでもロレンスはやっぱり胸中で呟いた。
 ずるい、と。
 地下道は静かだ。
 ホロの忍び笑いが、くつくつと響いていたのだった。

 かんっぺき、手のひらの上〜っ!(≧▽≦)


 頼りなく見えてもイザというときは行動をためらわず、そして向き合うと決めた相手には誠実であることを努める……。
 そんなロレンスの造型も、ひっじょーに好感デス。
 シンパシーを感じるのって、設定であるところの記号ではなく、実行動によってだとあらためて思わされたり。

 獣の耳と尻尾を持つホロについても、昨今の“萌え”文化に収まるような記号的な存在ではなく、やはり強い想いを秘めた存在だからこそ強烈なキャラクター性を放っているのですよね。
 うんうん。ラブやわ!

 ……ああ、獣耳だから獣臭なのか──って指摘は、星の数ほどされてマスカ?
 でもでも、今回はヨワヨワになったシーンが幕の向こうで行われたために見せてもらえなかったので、次回はぜひともお願いしたく!(笑)


 欲を言えば、クライマックスの解決手段には、もうひとつ展開がほしかったカンジです。
 初めからあると知れていたスーパーパワーを用いての危機脱出は、ちと直球すぎかなー、と。
 もちろん力の行使には葛藤とカタルシスがあったとわかりますけどー。
 ……そこで悩むようになるのが、次巻以降の楽しみでしょうか。
 種族の垣根を越えた愛──って、素晴らしい命題だと思いますし。

 うん。
 北への旅、楽しみにしてまーす。

 ところで。
 普通の人間では耳があるところ、ホロの場合はどうなっているのでしょうか?
 気になって……(苦笑)。
 獣耳キャラでこの話題について明確な設定をしていたのって、野梨原センセの『ちょー』シリーズしか覚えがないのですよー。
 『あそびにいくヨ!』では、どうなっていましたっけ……?
 


10
 
『哀しみキメラ』 来楽零 著

 不幸にして人外の能力を得てしまった少年たちが、迫害を受けぬよう、人間社会との折り合いを見つけるお話。
 ……うん。
 このお話、不幸のお話だと思うのですよ。
 で、不幸というのはドキュメンタリー作品にはなっても、エンターテインメントの物語にはならないような気が。
 負の側面を探って物語たらしめるのは、不幸ではなく悲劇ではないかと。

 この作品にも悲劇になりうる要素はあったと思うのです。
 純と紗也の関係とかですね。
 んでも、そうした悲劇になりうる場面を、わりにあっさりと通過しちゃっていることが、悲劇の方向から逸れてしまっているような……。

 事件発生からの1年という期間にも、悲劇が生まれていたと思うのです。
 そこをスルーされちゃうと、読み手のわたしの関心も飛ばされてしまったようなカンジで……。


 事件を描くことに注視しちゃっているのかな〜ってカンジでした。
 もっとも「不幸な事件」は描ききっているので、嗚呼なるほど金賞受賞作なんだな〜って思いもしたのです(^_^;)。
 


9
 
『マロリオン物語2 砂漠の狂王』 デイヴィッド・エディングス 著

 ちょっとー。
 リセル、贔屓されてなーい?(笑)
 サディが描かれたことには、もっと驚きましたけれど(苦笑)。
 突端に立っている人物はどなたなのでしょうか……?
 今回の存在感からすると……ウルギット?
 シルクとも似て無くもないような……。

 そのウルギットに、ガリオンが戦略をレクチャーしているシーンにびっくり。
 あのガリオンが、戦い方について理論的に教えることができるなんて!
 これはガリオンが王として成長した証とみるべきなのか、ウルギットがよっぽどアレだったのか……(^_^;)。


 「ベルガリアード」ではマーゴ人やクトル・マーゴスの印象って、もっぱら悪いものでしたけれど、「マロリオン」ではちと異なる印象を受けますよね〜。
 それは実際に現地へ入り込んで人柄に触れることで見えてくることがあるという意味でもありましょうし。
 レディ・タマジンやプララ嬢などは、かなり好印象ですよ。
 ……もっとも女性陣の好印象・活躍ぶりは、リー・エディングスさんの影響が大きなモノと察せられるので、マーゴ人のそれからは多少は割り引いて見ないといけないのかもしれませんがー(笑)。
 そして宗教に類する概念は、ことさらに問題を難しく見せますし。
 やぱし一方の視点からの印象って、かなり偏るものだなっと。
 マーゴ人がみたアローン人の印象を語っている箇所、笑えました(^-^)。


 マロリオンではバラクたちが同行しないことを残念に思っているわたしですけれど、今回の流れのようなことがあると、それも仕方が無いですよねぇ。
 ヘターがいたらウルギットと同盟結ぶなんて、絶対に無理ですもん。
 でも……。
 やっぱり、ゴランド海沿岸で見せられた幻影での彼らには、ガリオンが感じたようにいまここにいないことを寂しく思うのですよー(TДT)。


 「砂漠の狂王」って良いタイトル〜。
 直訳だった旧版より、断然好きさ!(≧▽≦)
 さーて、次巻ではいよいよザカーズ皇帝閣下の登場ですか?
 シラディスは?
 トスは再びダーニクと釣りをすることができるのかっ!?(苦笑)
 たのしみ〜♪


 余談。
 「ザカーズ」って原著では「Zakath」みたいですから、さいごが濁らないで「ザカース」ではないかと思うんですけど、なにか理由が……?
 知っている人、教えて〜!(><)
 

8
 
『お留守バンシー』 小河正岳 著

 さざ波ほどの振幅の物語を、文庫1冊まで書ききる(広げる)力量に感服デス。
 大騒ぎするなら、書くことはたくさんあると思うのですよ。
 日常を、物語として描くことは、やぱし難しいのではないかなー。

 うん。そう。物語。
 世界を揺るがすような大きな話ではなくても、寄せる感情の幅が穏やかなモノであっても、ちゃーんと物語のカタチを成していることがスゴイ、なと。
 起承転結がしっかりしているので、読後感がスッキリするのですよね。
 この構成力は、なるほど<大賞>受賞するだけのこと、あるわー。

 ただ……。
 筆致や構成面で感服できても、物語のそれ自体を好きになれたかと問われると微妙なカンジが……。
 やぱし、感情が揺さぶられないと、ココロに残るものが見当たらないのデスヨ。
 良いお話でしたね──で、終わってしまうというか。
 コメディとしても、ちょっとお行儀が良すぎるような気がするのです。

 うーん……。
 とりあえず次作に期待!ってことで。


 バンシーの言動。
 なんだかデジャブを……と思っていたら、『俺屍』のイツ花さんでした(笑)。
 

7
 
『遠く6マイルの彼女』 ヤマグチノボル 著

 タイトルがとにかく秀逸だなぁ……と。
 好きな人のことを理解できないもどかしさのような、切ない気持ちが表されているカンジがして。
 彼女とは、彼方の女と書くのです、みたいなー。

 歳の差カップルって主題があったようなのですけれど、そこにあまりウェイトは置かれていなかったように感じます。
 京子さんのほうに「年上ゆえに、素直になれない、可愛くできない悩み」みたいなモノを感じ取れなかったので。
 ふたりの間にある溝は歳の差ではなくて、故人との向き合いかたなんじゃないかなぁ……。
 それはそれで物語として興味深かったのですけれど、期待していた方向とは違っていたのデスヨ(^_^;)。

 時間の流れも、早すぎ……というか、若干希薄なカンジを。
 『書きかけのラブレター』も、しっかりと時間の移ろいかたを書いていたわけではありませんし、これはヤマグチノボルせんせの個性……なのかな?
 はたまた青春小説って、そーゆーもの?
 時間に強さを持たせると、イベント性の強い娯楽作品になってしまうというかー。
(青春の色が強い映画を考えると、たしかにそういうものかもって気がしてきました)


 真面目にホロ苦な良作を読んだ感慨にふけっているところに、あのあとがきは面白すぎました。
 あはは。
 やっぱヤマグチノボルせんせのセンスは好きだわ〜(^-^)。
 日立三部作、楽しみにしています。
 


6
 
『荒野の恋 第二部 bump of love』 桜庭一樹 著

 あーっ! 第一部の「catch the tail」って意味、やっとわかったーっ!(><)
 遅すぎ、自分……。


 なんだかフロントラインにいるような緊迫感というか、ジェンガで積み木を重ねようとしている緊張感というか……。
 前作では「山野内家全体が吊り橋に揺れている」と悠也が表していたようなものが、作品全体に広がったようなカンジ。
 切れ味鋭い刃物に触れるような冷ややかさ。
 ギリギリなところで保っているんですよ。
 平衡を。
 特に、荒野、が。
 その危うい感覚に読み手のわたしも引き込まれました……。

 やぱしオンナノコの機微を描く桜庭センセは激しく好みですわ〜。
 阿木クンに対する江里華の察し方なんて、もうハラハラしましたよー。
 んでも、そこでよく自分を抑えた〜って、江里華をほめてあげたいデス。
 あれで江里華がキレてしまったら、好きな人を困らせてしまうもの……。
 健気すぎるっ(T△T)。


 最終巻で荒野たちは17歳ですかー。
 麻美ちゃんは外部受験で離れちゃうのかな?
 妹ちゃんも3歳で、山野内家もいろいろとあるんでしょうねぇ……。
 とても素直に終わりを迎えるとは想像できないあたりが、桜庭センセらしいっちゃらしいんですけれどもっ!

 荒野が「女性」として羽化する時期を迎えているような示唆があったことが心配。
 きっとそのことで傷つくことがあるんだろうけれど、そのとき、荒野のそばに、悠也はいてくれるのかな……?
 ひとりで乗り越えられない荒野ではないと思いますけれど、やぱしそばに悠也がいてほしいなー……。

 第三部、楽しみと不安がー。
 

5
 
声を聞かせて 白の迷宮』 久藤冬貴 著

 女装少年ってカテゴリは少年に「完全に近い美」を求めるものだから、そらもう無敵なのですよねぇ〜。
 生半可な「美」では、女性が持つそれに太刀打ちできない──女装する行為が無価値になってしまうので。
 まぁ、どういう方向への「完全さ」かは別の話なのですけれども(笑)。

 そんな女装少年の栄くん。
 今回は懊悩しているカンジがみられて良き哉。
 ノエちゃんの警護というお仕事も、3ヶ月という時間制限があるということについて念を押されただけでなく、その後の仕事もすでに決まっていると示されて焦燥感が見えてきたのも良いですね。
 女装少年ってくくりであっても、中身は恋するオトコノコなんですから!
 だからこそ──

「俺以外の世界も見せずに独占するなんて、男としては情けないよねぇ、やっぱ」

 ──っていう言葉は、可愛いなぁ……って思えてしまうのですよ(^_^)。
 分が悪くなろうともフェアにいきたいっていう矜恃だけでなく、自分以外の男を知った上でなおかつ自分を選んで欲しいっていう子供っぽさが、ね(笑)。
 


4
 
『RE:凪野アオイ 超高速機動粒子炉船 春一番』 原口美奈子 著

 三人称……というか、神視点は感情移入しずらひ……。
 ちうか、入りの部分でワクワクドキドキしなかったのは、にんともかんとも。
 読みやすい文体ではあったのですけれど「うんうん、それで?」ってカンジで、ひと味足りないというか……。

 これは──「主人公サイドに謎があると、謎を開陳するための作者の意図に振り回される」っていう強迫観念がわたしにはあるのかなー。
 すくなくとも、見えてることが全てでない時点で、わたしも距離を置いて見てしまうワケで。

 凪野アオイという異分子を得て、クルーの面々にも意識改革が成される……っていう展開は定番だからこそ盛り上がる──んですけれど。
 ここもちょっと説明で突っ走った感が。
 設定周りを述べるところなど長セリフに入ったり改行が少なくなったりして、読まされている、見せられている感が強まっちゃうのはわたし的に減点。
 ことに長セリフのほうは、いかに読みやすい文体であっても、わたしにはリズムが合いませんでした。
 セリフであっても、話し言葉じゃないよなぁ……って。


 どうして戦場モノを描いたのでしょう?
 なんというか、無理している感があったのですよー……。
 


3
 
『学校の階段』 櫂末高彰 著

 うんうん。
 必要なウソは、ひとつだけなほうがスッキリしていて良いですよね〜。
 階段を駆けることに青春するから「階段部」。
 このウソのセンスだけで、かなり持っていかれちゃったカンジ〜(笑)。

 その設定に必要とされる「駆け抜ける」疾走感を表現するに足る筆致も良かったです。
 このリズムは好みですわ。
 走る速さとか、飛ぶ浮遊感とか、感性に近いところを描くのに長けてたような印象。
 キャラ描写にも同じようなことを感じていて、地の文での詳細な描写などは少なめな傾向にあるように思えたのです。
 むしろ台詞を含めた言動において、キャラクターの雰囲気をつかめるようになっていたところが、ひっじょーに好感。
 技術的に言うところの「キャラが立っている」とは違うのかもしれませんけれど、ひとりひとりの個性を理解して描いてるなーって思うのです。

 そんななかでの、挿絵。
 アップや立ち絵が多かったのは残念に思うのですよ。
 せっかくの題材、筆致は躍動感にあふれているのに、挿絵ではその感性が生かされていないというか……。
 もったいないー。

 あ、んでも絵的にイメージできた箇所のひとつ。
 「黒翼の天使」天ヶ崎センパイが幸宏くんを抜き去ったシーン。
 ……あかりに襲いかかったジェシーを思い浮かべてました。by「大運動会」(笑)。


 展開が素直だった点は、ちょっと評価しずらいかなぁ……。
 見事にまとまっているな〜って高評価している反面、意外性の少なさにつながるところがにんともかんとも。
 伏線などの隠し方?が、これまた素直すぎたってことなんでしょうか。
 あからさま……とは、ちと違うのですけど。

 うーん、うーん……。
 んでも、やぱし、「わかりやすい展開で感情は揺さぶられたし、大団円でオッケー」って感想に落ち着くかな。
 気持ちよい読後感。
 これ重要ですよね!(≧▽≦)


 階段部設立にまつわる諸事情や、従姉妹の気持ちなど、見せて欲しいお話はたくさんあります。
 次作も「階段部」でお願いしたいところです。
 楽しみにしてるッス〜♪


 にしても今回のえんため大賞は、ぷちアウトローな存在を描いた2作品が優秀賞受賞ですか。
 それも奇抜さだけを狙ったのではなく、物語構成に根差した……というか、その設定だからこその物語を展開させていることが好感な2作でした。
 「他の題材でも描けるんじゃないの?」みたいな印象が無くて。
 応募作が良かったのか、はたまた選考の視点が変化したのか……。
 とりあえず、今年のファミ通文庫はちと違う?って印象を受けました。
 

2
 
『桃源の薬 星の杖と暁の花』 山本瑤 著

 冒頭からラブラブっぷりを見せつけてくれますなぁ……と、ニヤニヤしていたのですけれど、そうは問屋が卸さないってねー(笑)。
 でも、インシェンと凛花のふたり。イチャイチャしても一線を越えることができないのは、お互いに恋する覚悟が定まってないからじゃないのかなー。
 読んでいるときは凛花のほうが覚悟足りてないようなカンジを受けていてたのですけれど、んー……。
 インシェンも「凛花と一生添い遂げる気持ち」を伝えてないっていうか、ことあるごとに「これが最後だ」とか「二度と会えなくなる」とか言うわけだし、本気っていうのもその程度なのかって思えてくるんですよね……。
 そりゃイキオイで口にしてしまうような類の言葉かもしれませんけれど、一見すると落ち着いて理性的に語るものだから疑ってしまうというか。

 凛花のほうもそれならそれでってカンジで、目的のためにはインシェンとの関係を想い出にしてしまうことも良し!って行動してるし……。

 ……このふたり、好き合っているんですよね?(苦笑)
 ふたりをつなぐ絆アイテムっぽい位置づけの水玉環も、えらく簡単に盗まれたりして、本当に大切に思っているのか信じがたい雰囲気が……。


 「いつでも本気だ」というのと「愛することに本気になる」って、違うような気がするんですよね……(^_^;)。
 綺羅が加わってきたことで、ふたりの仲にも進展がありますよーに!
 

『コッペとBB団 その2』 田口仙年堂 著

 半年ぶりの続刊ということもあってか、序盤での「これまでのあらすじ」っぽい地の文あたりに苦労の影をみたりして……(^_^;)。
 んでも、そのおかげでいろいろと思い出すことができました。
 ドロドロとしたカタチで前巻から因縁を引きずっていないというあたりも、今作への入りやすさを引き出しているのかなー、なんて。
 ……まぁ、中途半端に前作を覚えていたから、キリオの存在に戸惑ったりもしたのですけれど(苦笑)。

 人格変換するメガネっ子かぁ……。
 いいとこ付いてくるなぁ、田口センセ……。
 だがしかしかし!
 今回いちばん光っていたのは、幼稚園のセンセじゃないっ!?

「私が見ていたコッペちゃんは、ウソじゃなかったんですね?」
「──ああ」
「それなら、私も迷いませんよ」
 窓枠からひょい、と顔を出して先生が笑う。顔に刻まれた小皺は、長年子ども達を教育してきた年輪のようなものだ。初めて見る、自信に満ちた先生の顔に、Q三郎の方が戸惑う。
「ブラック・ブリッツだろうが、人工人間だろうが、あんないい子を放っておけるわけがありません! コッペちゃんはちゃんと教育してみせますから! ブラック・ブリッツなんかに負けませんよ!」

 もー、この見栄の切り方、やられたです〜。
 今回は(今回も?)正義と悪の境界がボロボロに綻んでいるなかで、先生の主張は輝いてました。
 薔薇の騎士は「ブラック・ブリッツで生まれた」という理由でコッペを悪と断じてましたけれど、もちろん、生まれで正義とか悪とかが決まるわけではなく。
 あるいは例えば『ヒーロー協定」などに見られる、ある種の考えや意志が正義の本質を語っているわけでもなく。
 結局のトコロ、揺らぐことのない信ずるに足る意志をもって行動することが、ひとつの正義を生んでいくんだろうなー……って思います。


 両陣営に役者がそろってきて、次の抗争が楽しみになってまいりました。


 ……表紙の速水キリオちゃん。
 サモナイ2のトリスに見えたですよ(苦笑)。
 

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