○● 読書感想記 ●○ 2006年 【1】 ※ 表紙画像のリンク先は【bk1】です ※
誰かの手を借りて楽な場所に逃げ込むつもりはない。僕の居場所は僕が作る。 そう何もかも思い通りになってたまるか。 そんな訳で僕は走り続けている。ゴールは果てしなく遠いけれど。
逃げることを潔しとしない心根の持ち主だから、冷静でいようとするフリがまた哀しいっていうか辛いっていうか(T▽T)。 レース周りも流れるような勢いがあって良かった〜。 手に汗握るっちうか! あまり馴染みがない競技でしたけれど、ことさら専門的な面へ踏み込んでないのも読みやすくって好感。 競技を学ばせるには足りなくても、物語を理解させるには足る語彙の使い方。 展開にも栄光と挫折、そして復活が織り込まれていて、きちんと計算されてるなって。 ファイナルレースの展開は、ちとバタバタ感があったようにも思いましたけれど、完全燃焼したーってカンジはしたので〜。 段落?が異様に細かく区切られていたのは……んー、どうなんでしょ。 読みやすさ/理解しやすさの一助にはなっているのですけれど、ひとつの作品としては、ちょーっと美しくないかなぁって思います。 ひとつひとつのシーンをもっと長めに描かれたとき、どう印象が変わるのか見たい気がします。 「委員長」といい部活の後輩といい、なんだかんだでモテモテなのも、彼ならわからないでもないかな〜。 ご都合主義と言われればそれまでですけれど、影を負ったオトコノコには目がいくものなのですよ(苦笑)。 ……んでも後輩ちゃんは、最初の登場時にはオトコノコかと勘違い。 だもので、お弁当持ってきたときには焦りました(笑)。 筆致は好きですし、展開に寄せられる要素もわたし好み。 次の作品が楽しみです。
最前線に劣らぬ働きをしていながら、国防の中における位置づけではいまひとつ最前線だと思われていない人々。
能力がありながら公正に評価されていない人たちを描くことに長けてますよねー。 虐げられている……ってほど過激な感情ではないかもしれませんけれど、そこに反骨精神とプロとしての自尊心を見出すワケで。 後ろ向きでも現状維持でもなく、常に前を見据えて行動する人たちの姿が気持ち良いんですよー! もちろん世間的に評価を受けている存在との衝突や、プロ意識から来る挫折など、前途を見失いかけることもあるのですけれど……。 前向きな心があるからこそ、幾多のトラブルも乗り越えていくワケで! あーっ、もうっ!(≧▽≦) 政治に振り回されても、行き着く結論は、やぱし自分たちの仕事への誇り。 遭難者を助けるという、唯一にして無二の目的。 やぱしプロの仕事というのはカッコイイのです。 (逆に言えばカッコイイと思えない仕事ぶりは、その人がプロフェッショナルではないことを示す──ような) 入りのプロローグから物語の展開、結びまで、よく練られた作品だなーと思いました。 いやはや、小川センセも、まさしくプロフェッショナルです。
ニュース系のマスコミが注目するのは、救助された遭難者とその数だ。自衛隊は救助システムとしか見なされない。システムだから壊れていれば咎められ、正常に作動すれば忘れられる。
──あらためて指摘されたこの事実は、ちょっと痛かったデス。 自分に火の粉が降りかからなければ無関心でいられるのは、なにもマスメディアに限ったことではないですよね。 軍拡とか軍縮とか、そこまでグローバルなお話でなくても、同じ日本人が命を掛ける職場にいるんです。 もっと注目して、自らの目で判断していかないとなぁ……と思うのです。 余談。 オビのコピーに「星雲賞受賞作家」とありますけど、MF文庫では初仕事なんですよねぇ……。 なんだか美味しいトコ取りしているみたいで、モヤモヤした気持ちが(^_^;)。
「ヘリの真上だったからここに来たの。生きてたのね! わかる? あたしの声が聞こえる?」 「……わかる」 眠気を上回る疑問に突き動かされて、水無川は尋ねた。そして、その答えを聞いたとき、なぜか深く納得してしまったのだ。 「あなたは……誰だ?」 「郵政事業庁特配課九班、班長の桜田美鳥と副班長八橋鳳一です! 水無川長官、お手紙です!」
無茶してるな〜って感じるんです。 んでも、その無茶がすごくステキなんですよね。 長官に手紙を渡したシーン、思わず嬉しくて笑っちゃいました。 経費を無制限に扱えたり、素人が体力のみで日本アルプス登攀しちゃったり、そーゆー展開は若いよなぁ……って思ってしまうわけです。 穂高岳って、沖田君の命を奪った峰じゃなかったでしたっけ?(生徒諸君) のちの『第六大陸』などでは費用面での制約なども盛り込んで、より劇的にされていることを考えると、やはり古い作品だなぁって。 可能不可能に対する説明の多少とか、展開への条件付けの甘さとか、現在の作品に比べると豪快すぎる気がします。 んでも、好きさ!(≧▽≦) 小川センセの作品にしては、恋愛色が表に出ているな〜って思うのですけれど。 熱血漢だけれども自制する判断力を備えている年上の男性と、嫌なモノは嫌だと言ってしまう素直さゆえに世界の複雑さに悩んでしまう年下の女性って組み合わせ。 センセの作品では定番な気がー(笑)。 ラストシーン、すっごくステキ。 知床の風景が目に浮かぶわ。 古さはもちろん感じますけれど、時間の流れに負けていない、小川センセらしい良さがあります。 わたしがいまステキだと感じている小川センセにつながっているものが、この作品には確かにありました。 あーっ、もう。今年も小川センセの作品が楽しみだな〜っと!(≧▽≦)