○● 読書感想記 ●○
2005年 【10】

※ 表紙画像のリンク先は【bk1】です ※

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20
 
声を聞かせて シークレット・ガーデン』 久藤冬貴 著

 推理ミステリをやる気は無い……のかな?
 事件の概要があまりにあまりなパターン化されたものでしたし……。
 ぶっちゃけ、登場人物紹介欄で犯人の目星がついてしまうのはどうかと。
 物語の内容云々以前に、なにかこう「楽しませる」配慮に欠けている気がしないでもないです。昨今少なくないですけれど。

 史香を紹介するなら、巴とか美紀も併せて紹介しておくべきなのではないかなー。
 キャラ相関においての重要度だって小さくはないと思うんですけど。

 ……あー。
 主要キャラに「千香」と「史香」って、似た名前が並ぶのもどうなのかな。
 うーん……。
 配慮……。


 推理やトリックで新鮮味を出さないのなら、せめて作中オリジナルの設定──死んだ人の声を聞くという能力をもっともっと捜査の進展に絡ませるべきなのではないかと。
 事件解決の決め技としては説得力に欠ける能力なんですし。
(自分だけに聞こえる声は証拠として正当性を欠くという意味で)


 もっとも、この作品の本質は推理ミステリではないのですよね?
 少女の孤独に気付いてあげられる人がいる倖せ──みたいな?
 主人公のノエが孤独であるというのは十分わかるものなんですけれど、それは現状における問題で。
 もし彼女の中で新しい考えに至ることができたり、殻を破って外の世界に触れるようなことがあれば、もしかしたら孤独という「認識」も変わっていくのかもね……って。

 栄との出会いはそのきっかけのひとつになり得ますし、巴たちとの付き合いもそうですし、新しい学園生活ってのももちろんそう。
 女の子の成長のプロローグとしてみるなら、アリかなぁ……と。
 

19
 
『桃源の薬』 山本瑤 著

 気持ちよくサッパリとした、初恋成就のお話。
 んー、「初恋」っていうと「2番目以降の恋」があるようなカンジがしますか。
 ならば凛花とインシェンの恋は、「初恋は初恋でも、それが全てな恋」かなー。
 お互いに相手しかいないよーって。

 んで、成就のためには凛花がんばった!
 あの朴念仁?のインシェン相手によく……(T▽T)。
 自ら動き出すことのできる主人公を見るのは、とても楽しいです。
 結果が芳しくなくても、行動それ自体が間違っていたとしても、考え抜いた結果であれば納得できるものなのです。

 なんちうか、終始、凛花のひたむきさが溢れているので、自然と応援したくなるんですよ〜♪
 コバルト文庫には定番のヒロインですけれども、あざといカンジは感じませんでした。
 好きさ、凛花。


 それにしても著者名を間違えてるbk1って……。
 検索できないワケだわ(TДT)。
 

18
 
『伯爵と妖精 取り換えられたプリンセス』 谷瑞恵 著

 おおっ?
 表紙初登場のケルピーがカッチョエエですよ?(^_^;)
 なんというか、悪に染まりきれない「ヤ」の付く職業の御曹司っぽくて。
 一方の伯爵のほうはー、わー……ラスボスそのままのような(苦笑)。

 んーと。
 女性関係にはめっぽう強いと評判の伯爵ですけれど、今回ばかりはアホかと思ってしまいましたよ。
 居て欲しいと思っているオーラみたいなものを察せられず、なにが婚約者かと。
 あーあー。
 リディアのほうは少しずつでも自分の生き方を未来へと見つめることができているっていうのに、伯爵は相変わらず過去に囚われてるんですもんねぇ……。

 アーミンはすごくおいしいポジションになってきていると思います。
 ちうか、Fateのライダーを思い浮かべてしまったのはワタシだけですか!(笑)
 「お前は僕のガヴァネスか?」
 ──って、伯爵、子どもみたいだーっ!(^-^)


 まぁ、でも、全体としては──

 むしろ、リディアがエドガーに呼ばれて、あっさり戻ってきたことにあきれていたのかもしれない。

 ──というニコの様子に要約されてしまうのかも。
 ホント、あっさり風味で。
 図らずも離れ離れになった伯爵とリディアですけれど、次巻ではなにか新しい関係に発展していくのでしょーかっ。
 ……でも、離れてみて(初めて)わかる大切な人、っていう展開に当てはまるのはリディアのほうですよねぇ。
 伯爵のほうは、恋人関係云々以前に、人間関係と人生計画を学び直せってカンジ。
 あー、でもはっきりと意識しはじめたリディアが、ウジウジ後ろ向きな伯爵を教育するってのも楽しいかもー!(^-^)
 


17
 
『半魔』 黒武洋 著

 超能力バトル?
 ファンタジーというよりSFっぽい印象を受けました。
 んー、筆致とか?
 どちらかというと個人の心情よりも、事実をありのままに表現しよう腐心しているかのような淡々とした描き方から。
 そのせいか、戦闘シーンから派手さが欠けてしまっているようにも思います。

 事件の解決方法はかなり大味で強引なのに、事件そのものが現実世界へ与える影響については神経質なまで気を配っているような印象を受けたりして。
 現代を舞台にしていますけれど、作品とは関係ありませんよーってエクスキューズのために。
 総じて、背景が現代であっても、そこはかとなく現実感に乏しく感じるのです。


 「神」の存在を仕込むあたりも、昨今の作品というよりは昭和のSF感を感じてしまうのですが、如何に。
 いまどき、背後の大物が「神」デスカ……。
 そうなんだ……。
 

16
 
『吉永さん家のガーゴイル』 田口仙年堂 著

 大切な人を想ってのことが、大切な人の枷になる。
 そんなジレンマが『ガーゴイル』の切ないところであって、シリーズの基本構図のひとつなんですよね。
 今作でもその構図が遺憾なく発揮されてー。
 ジーサンの気持ち、わかるぅぅぅ……(TДT)。

 んでも、自分が自分がって気持ちだけだと、ただの独り善がりになっちゃうんだよーって戒めもこめられているワケで。
 今回でいうと、オバーサンの気持ちを忘れてやしませんか?みたに。
 そこで初めて勘違いクンだった自分に気付きもし、より大きな、独り善がりではない愛情を知るわけです。
 ええ話やわ〜。


 一作ごとに世界が広がっていくカンジです。
 世界というのは、もちろん「御色町」のこと。
 吉永さん家から始まったお話も、ずいぶんと大きくなったなぁ……と感慨深いものがあったりします。

 今作では双葉や和己、あえて述べるならばガーゴイルですら物語の中心におらず、狂言回しの役に収まっているわけで。
 それでも──ちうか、もはや? 『ガーゴイル』という物語は一家の枠を越えて「御色町」の物語になっていることを思えば、今作もやはり納得できちゃうものなのです。
 らしい!ってなカンジで。


 あー、四バカが中学生〜高校生くらいになったころのお話、見たいな〜。
 双葉ちゃんはそうでもなくても、オトコノコたちが意識しちゃうんだろうな〜。
 「おまえとはもう一緒に遊べないから」
 ──とか言っちゃってさーっ!
 んで、双葉ブチ切れ〜マジ殴りのコンボ。
 なんの抵抗もせずに殴られちゃうオトコノコたちが理解できずに逃げ出して、んで和己+ガーゴイルに相談ですよ!
 またタイムトラベル?ネタでやってくれないかな〜(^_^;)。
 


15
 
『クリスマス上等。』 三浦勇雄 著

 登場人物少なくて、すっきりしてて良いですね。
 悩める主人公、主人公に動機をもたらす者、道化、倒されるべき敵。
 これで物語が回っているんですもん。
 すごいすごい。

 クライマックスで敵の向かって述べる口上については納得いかないんですけど、まぁ、それもアリかな〜と。
 復讐を是としながら、そこに一定の制限をかけるのは、完全には悪になりきることのできない三浦センセの優しさなのではないかと。
 斜に構えてピカレスク気取りでいられるよりは、優しさを捨てきれない姿勢のほうがマシ。
 そんな優しさがにじんでくる人なんですから、復讐を是とするような口上は述べるべきではないのではないかなぁ……と思ったりして。
 無理してませんか? らしくないですよ、みたいな。

 んでも、そういう無理さ加減を主人公共々に青春だと思いますし、衝動と激情で生きる青臭さは良いなぁと思うのです。
 小さくまとまってないよーって。


 主人公が事件解決をハッキリと目標に据えて行動しているのもわかりやすかったです。
 偶然とか成り行きで解決に至るのではなくて、犠牲も覚悟、自らを賭して行動するというのはとても好感。
 解決への手段も、無茶をしているなぁ〜って気はしますけれども人智を越えているわけではなし、OKカナ。
 道化から渡された道具の力を借りたにせよ、道具の力で解決したワケではないですもんね。


 筆致も好みでしたし、構成も◎。
 次の作品を楽しみにしてまーす。
 

14
 
『かのこん』 西野かつみ 著

 物語としてあるべきことはやっているハズと思うんですけれども、なんだか、こう、盛り上がりに欠けるような……。
 シンデレラ曲線の振幅幅が小さいのかな?

 主人公には転入生ってポジションが必要なのはわかったのですけれど、家族周りの設定は必要だったのかな……。
 説明がほとんどされていないこともあって、生い立ちに関わる小話とか不要に思えてしまったり。
 それなのにオビのコピーでは──
 「おじいさん、都会の学校ってすごいです。」
 ──なんて、アットホームを意識させるようなことを言ってるんですもん。
 家族的な絆がなにか物語の核になっているのかなーって、期待してしまいましたことよ。


 主人公の素直さはとても好感です。
 んでも、こういう性格のオトコノコには、強引にリードできるお姉さんタイプのヒロイン像が似合っているような気がします。
 物語で必要とされているかどうかは別にして(笑)。
 ちずると耕太では、耕太のほうが精神年齢が高いように見えるんですよねー。

 民俗学的見地をあっさり無視して、ただただ妖怪バトルで押し進めていく筆致は潔いと思います。
 んでも、もちっとキャラの心情や、乗り越えるべき壁を明確にするなどしてくれたらなぁ……と思うのです。


 余談ですが、今回の第一回MF新人賞作品に対するオビのコピーはいまひとつのような気がします。
 この作品のように内容に相応しいとは思えないモノとか、抽象的でなにを述べているのかわからないモノとか……。
 ちょっとこの状況はセンセがたに可哀想な気がするのですよー。
 

13
 
『隣のドッペルさん 〜瞳の中の妖精〜』 砂浦俊一 著

 千早ちゃんが当事者として前面に出てきているのが良いカンジ。
 スーパーパワーで事件を解決する、道具のひとつ、といった扱いではなく、愛美と共に悩める相棒のポジションになっているのが良いのですよ〜。
 それを顕現しているのが人物紹介のページだと思います。
 グッジョブですよ!(≧▽≦)

 愛美も前回の事件を体験したことを糧にしているところが好感です。
 成長しているように感じられたので。

 千早が出世?したあおりを受けてしまったのがカレシの優ですよねぇ。
 どれだけやっても蚊帳の外なんだもん(笑)。
 今回は野辺山くんのほうが、狂言回しとしてですけれど、役立ってましたし(^_^;)。

 ……あー、野辺山くん、いいキャラじゃないかって思っちゃいました。
 欠点を欠点として描かれるキャラって、そうそう見当たらないような。
 悪癖ではなく、行動欠陥。

 ところで野辺山くんと千早ちゃんは、急接近する予感?
 意外とお似合いな気がします。
 野辺山くんの、周囲に流されずに自分を確立しているところとか、見かけによらず行動派なところとか。
 彼なら千早ちゃんの特異なトコも受け容れてくれるような。
 ……その接近ぶりが死亡フラグではないことを願います(苦笑)。


 終盤の展開は、前回とは別の意味で不満です。
 敵方の新キャラを顔見せ程度に出すのは、引きとしてはちょっと納得いかないんですよー。
 アニメなどの映像で見る分には気にならないんですけれど、ノベルスでやられるとなぁ……ってカンジなのです。
 


12
 
『ブルースカイ』 桜庭一樹 著

 桜庭センセの活動において、2005年が転換点であろうことは確かなことだと思います。
 んで、その転換期に上梓された作品群のなかで、ひとつを挙げろと言われれば、わたしはこの作品を選ぶかなぁ。

 これまでの桜庭センセの作品には、わずかひとつの主張を貫き通すために、そのほかの部分では大きく譲歩していた部分があったような気がするのです。
 たとえば「わたしは牛肉を使いたい。それも生後二ヶ月の子牛を。それを和風に仕上げろというのなら、わたしはそれを厭わない」──みたいな。
 なにに対して譲歩していたのかは推測するほかありませんが。
 出版や流通に対してだったり、あるいは世情に対してだったり。

 そんな中で、当作では初めて徹頭徹尾、主張したい、描きたい、そうセンセが思って書かれているのではないかと感じたり。
 だからこそ既作にはあった、読み手を意識した優しさが筆致に見当たらなくても当然なのかなぁ……と。

 桜庭センセの代表作はと問われれば、「GOSICK」のシリーズが挙げられると思います。
 んでも、わたしがその意見に賛同しかねるのはこれまでに記してきた通りです。
 それは「代表作」という言葉の定義による相違だとも思うのですが。
 いちばんの売り上げを誇って、いちばん多くの人に読まれた作品……というならば、そうなのだと思います。
 「GOSICK」を桜庭センセと結びつける人が多いなら、それは代表という言葉に相応しいものでしょうから。
 しかしながら桜庭センセらしさが現れている作品という意味なら──わたしはこの意味で用いるのですが──それで正しいのか疑問なのです。


 ある限られた時間の中でしか生きられない少女たち。
 儚い少女性を問うことが、桜庭センセの真骨頂なのではないかとわたしは思うのです。
 そして、この業界へのセンセの出自──デビュー作『AD2015隔離都市』を思い浮かべるに、今作はまさに桜庭センセに原点とも言うべきルーツを持っているのではないかと。

 数々の作品を描き続けて、桜庭センセは世界をひと巡りされて、またもとの位置へと回帰することができたのではないかと思うのです。
 たどってきた作品で培われたモノは確実に今作へ生きていると思います。
 他の諸先生方に比べると幾分遠回りされてこられたような気もしますけれど、そうしたことは決して無駄にはなっていないなぁ……と。
 原点への回帰。そして成長の証し。
 より高次の活動へ向けての始動。
 もとの位置には違いないけれど、そこはひとつ上の階層。
 だからこそ、新しいステップを刻んだ転換期の作品なのではないかと。


 ふと感じたのですけれども──。
 社会からはじかれる存在。
 隠匿される聖と性。
 搾取され、抑圧される弱きモノ。
 個の発露による新たな視野覚醒。
 分割される世界。彼方と此方。
 ──とかって、大江健三郎センセに通じているモノがあるような気がするのですが如何に。
 ちょっと、うがちすぎデスカ?(苦笑)
 


11
 
『玉響荘のユーウツ』 福田栄一 著

 あはは。事件が転がる転がる♪
 玉響荘の住人たちが抱える事情の数々が、やがてひとつにまとまっていく様は爽快ですー。
 ブラボー!
 ひとつの事件がまた別の事件に関わってくるものだから、ひとつ動き出すと、もうドミノ倒し的に回り出すんですよねー。
 読む手が止まらんですよ!

 メッセージ性とか皆無でも、用意された仕掛けの相関や、舞台の展開力が素晴らしいかと。
 すっごい計算されて作られてるなー。
 すっばらしいエンターテインメント!

 四日間という時間制限も良かったですね。
 カウントダウンは緊迫感を生むのに必須ですよ。

 クセありすぎだと思えたキャラクターたちも、事情が明らかになっていくにつれて、少しずつ個性として輝きだしてくるんですよねー。
 最後にはむしろ、この際だった個性をもった面々だからこそ、この流れが生まれたんだ〜って納得納得。
 外見とか性格とか、箇条書きで表せるだけの設定ではないってカンジ。
 活きた設定って行動に出てくるものなんだなぁ……。
 

10
 
『ROOM NO.1301 #6 お姉さまはストイック!』

 ブラヴォー!
 やっぱりホタル、スキスキスキーッ!(≧▽≦)
 「ROOM」の登場人物で好きなキャラは、ホタルと刻也くんです!
 そんな意味でも、今作は良かった〜♪

 ホタルの現在の様子がわかって、ひと安心。
 健一とのことは良き思い出になっているみたいで。
 んーと、思い出っていうほどホタルのなかで過ぎたこととして扱われているワケじゃなくて、現在でも世界にたったひとり大切な人ってポジションなのかなーって。
 健一との恋は成就しなかったけれど、恋した自分を悔いてないって気がしたんですよー。
 そんなホタルの強さが好き。
 んで、健一との恋を手放すような弱さも好き。

 このシリーズ、「喪失した愛と恋を探す物語」ということですけれども。
 探求の果てに見つけられたモノは、失ったモノとは異なるのかもしれないけれど、それはそれで倖せに通じているのかなぁ〜……ってカンジがしてきました。


 シーナや千夜子、ツバメの話のほうが今回は重要なのかもしれないけれど、まぁ、その……。
 ホタルの存在感の前には負けているような気がします。
 ちうか。
 健一と寝てないオンナの話なんて、正直、興味は……(^_^;)。
 


9
 
『インサイド・ワールド』 周防ツカサ 著

 入りの部分で用いられる設定が苦手。
 「ロケット」とか「地球滅亡」とか、必要だったのかな……。
 力のある言葉を出すことで、なにかを越えようとしていただけ……ってカンジがするのですけれど。

 んでも物語のなかで、動いている部分が好き。
 キャラクターの心情とか。
 季節が秋〜冬だからってのもあるのでしょうけれど、澄んだ空気から受ける冷涼さみたいなものを感じます。
 淡々……というのとはちと違って、清廉っていうのでしょうか。
 とてもキレイなもの。

 わたしとしてはけれん味な設定は必要でなく、人物同士の交流、主たる人物の心情の表現などのあたりだけで勝負してほしいなーと思ったりするのですが。
 そういう部分で勝負させてもらうために、けれん味のある設定が必要だとするのかなぁ……。

 普通の少年少女の恋愛を描くには、電撃文庫……というか、ライトノベルに分けられるレーベルは不利なのだとは思いますけれど。
 とまれ筆致はもちろん好きなので、次回作を楽しみにしています。


 本編内容とは関係ありませんけれどもー。
 折り返しのところの絵師さんを紹介する文──
 「編集者より三顧の礼にて依頼を受けたらしい」
 ──は、売り出し文句としてはどうなのよと。
 

8
 
『彼女は帰星子女』 上野遊 著

 じんわり良い話でした。
 自由意志を尊重する優しさと、他人任せの無関心は別物なんですよね。
 帰属意識に戸惑うオンナノコに対して、集団としてではなく個を重視すべきと気付くオトコノコ。
 定番のネタでしたけれど、そのあたりの相関はしっかり作られていたかな〜。

 逆に「地球人と宇宙人のハーフ」なんていうSFまわりの設定が活かされていない点が気になってしまったりして……。
 中間のイベントではどうでもいいですけれど、行方不明となったオンナノコを探すというクライマックスのシチュエーションでは、どこかにそれを活かすべきだったのではないかなぁ……とか思ったり。
 んで、そこでも活かさない設定だとするならば、当初から不要なモノだったのではないかと。

 それでもオトコノコとオンナノコのお話としては満足。
 いや、だって、あれですし……。
 気丈なオンナノコと鈍感なオトコノコの組み合わせが、ですね!(笑)
 鈍感……ちうか、天然デスカ? 決めの台詞とかを考えますと。
 その言葉が持つ裏の意味など考えたりせず、破壊力抜群でいちばん効果的な言葉を用いてくるあたり(^_^;)。
 気丈っていうのも、最近っぽく「ツンデレ」って言ったほうがいいのかも(笑)。


 派手さはなかったですけれど、好みの筆致でした。
 SF的な部分は、今後の展開のため、ゆとりを持たせた設定の部分……なのかなー。
 だとすると、ちょっと楽しみです。
 

7
 
『女魔術師ポルガラ1 運命の姉妹』 デイヴィッド&リー・エディングス 著

 <ベルガリアード>をポルおばさんの視点で語ってみよー……というお話。
 んでも、ポルおばさん自身が口にしているように、「父が知らなかったのは、ゲランの教育の基礎になる部分」なワケで、その点では今巻は物足りなかったかなー。
 すでにベルガラスが語ってしまっている部分の補足にあたるような部分が少なくなかったように思えて。
 新しい歴史の一面──みたいなものが、あまりなかった、かと。

 ポレドラとのつながりが、とても強く描かれていたのも、ちょっとげんなり。
 なんだかポルおばさんの神聖な部分が半分くらい消されてしまったような。
 ……んでも、今シリーズの目的って、そういうところにあるのかなー。
 ひとりの人間、女性である、ポルガラという人となりを描くというか。

 さらに言えば長い歴史をたどっていくうえでの必要な流れの部分であるという点もわかりますしー。
 背表紙に薔薇の館が描かれているってことからも、ボー・ワキューンでの生活が明らかにされるだろうなーって。
 そのあたりが楽しみ。
 今回で言えば、カミオン男爵の件とか。
 ダーニクへ至るまでは充足していたとは思えませんけれど、それでも大切な時期にポルおばさんが精神的にひとりではなかったとわかったのは良き哉。


 んで、ポルおばさんの独白からひとつ。

 この芸術におけるプロに会いたいなら、行動中のポレン王妃を観察に行くといいわ。でも、正真正銘の天才は、センダリアのライラ王妃ね。

 あー。なんとなくわかるー。
 ライラ王妃って天然……ていうか、素でやってるカンジがするー(笑)。
 やぱし長い目で見れば、センダリア人が強い気が……。
 「リヴァの王は農園育ち」ですしー(^_^;)。
 


6
 
『トワイライト3 闇の吸血鬼一族』 ステファニー・メイヤー 著

 いよいよカレン家以外の吸血鬼グループ登場。
 んで、ベラを守るために闘争勃発!
 吸血鬼の種としての行動では、ベラを狙うジェームズのグループのほうが理解できるんですけれど、カレン家の人たちの行動は、そうした吸血鬼としての行動理念から超えたところにあるんですよね。
 個々にベラと関わっていく理由を持っているというあたりで。
 そうした意志を持っている、行動で示しているところが、彼らをただの怪物に貶めていないところなのかなぁ……と。

 まぁ、しっかし気付いたら、なんてラブラブ〜でメロメロ〜になっているんでしょうね!
 気持ちいいくらいに恥ずかしい!(≧▽≦)
 プロムのシーンなんて、ワクワクするね!
 1にラブロマンスがあって、吸血鬼が云々ってのは2の次っぽい扱いだもんなぁ。
 相容れない陣営同士の恋って、基本構図かー。
 設定に振り回されていないっていうのは、わたしにはかなり好感。
 もちろん振り回されない程度に、吸血鬼モノのエッセンスを取り入れているのも大切なんですけれど。
 これで第一期シリーズは完結らしいですけれど、第二期も楽しみ〜。
 

5
 
『トワイライト2 地は哀しみの味』 ステファニー・メイヤー 著

 前巻がなんとも絶妙な位置で締められていたせいか、今巻でのふたりの仲の進展が早い早い(笑)。
 でも、その勢いには不思議と共感できてしまったかも。
 好きかそうでないか、まだ判別尽きかねる状態の時に、周囲から「ねぇ、どっちなの?」などとしつこく二者択一で問いつめられていくと、どんどん気持ちが洗煉されて固まっていくというか。
 「好き? 嫌い?」→「嫌いじゃないけど……」→「好きじゃないの?」→「どちらかって言われれば……好きかな」→「好きなのね!」→「うん」
 みたいな(笑)。
 強引な展開ではありますけれど、その流れも、まぁカワイイと思えてしまうのです。
 興味本位とか吊り橋効果とかあるのかもしれないけれど、とありあえず二人の間には互いを想う強い感情があるってことで。

 ……で、今回もオビのコピーが先走りすぎというか。
 本文の流れ以上に煽りすぎ(笑)。
 

4
 
『トワイライト1 愛した人はヴァンパイア』 ステファニー・メイヤー 著

 ちょっと待てーっ!
 せめて二人の関係について、なにかひとつでもシッカリカッキリさせてから次巻へ続けてーっ!!!
 うわーっ。すっごいモヤモヤする〜〜〜ッッッ!(><)

 憧れとか、恐れとか、そういう名指す感情が示されているわけではなく、もう、それ以前の「意識している」って状態でストップされているんだもんなぁ……。
 もちろん、それが悪い感情では無いような気がするからこそ、余計にモヤモヤするというか、じれったいというか(笑)。
 YOU! つきあっちゃいなよ!

 「愛した人はヴァンパイア」という表題が、じつはイチバン情報を含んでいたりするんですから、どうにもこうにも。
 謎めいた一族に属するエドワードのことを、主人公・イザベラがどう思っているのかなんて本文中では描かれていませんし。
 愛してるなんて、一言も無いよ!
 エドワードのことだって、それらしきことは「情報」として明示されていても、はっきりと能力を行使しているシーンなんて無いし、彼自身がそれを認めた発言もしていませんし、なのにヴァンパイアだなんて……ねぇ?(苦笑)

 1巻の内容からすると、ネタバレにもほどがありますよ、この表題!(笑)
 だからせめてそれが意味するところまで物語を進めておいて!……と。

 表題だけでなく、オビのコピーもね、走りすぎ。
 「誓うよ、きみのことは狩らないと……」って、1巻に含まれる台詞じゃ無いでショー!!?
 このコピーと表題と、そして1巻で示された微々たる情報から、今後の展開が見えてきます(笑)。

 ん、まあ、いろいろ言っても、面白かったです。
 「意識している」段階ってのも、なんか、こう、甘酸っぱくてドキドキさ(笑)。
 学校でも有名なカッコイイオトコノコに興味を持たれる転入生のオンナノコ。
 目立つ容姿でないことや、何か取り柄があるわけでもないことがわかっているだけに、どうして自分を彼が意識してくれているのがわからない……って、なんですか、こりゃ。
 少女マンガの鉄板設定ですか?(笑)
 あー、続きが気になるわ〜。
 

3
 
『世界のキズナ1 混沌な世界に浮かぶ月』 有澤透世 著

 締めが爽やかなのは良かったな〜って思うー。
 んでも、事件そのものに対して、首をかしげてしまうというか。
 個人的な欲求(元の世界へ還りたい)から、グローバルな視野(地球を守る)への目標の変遷は、なるほどーって思うんですけれども。

 なんか、こう……助演級のキャラはみんな主人公を盛り立てるために存在しているようで、印象が薄いというか……。
 まぁ、助演ってそういう役回りですし……いいのかな?

 「1」ってタイトルにも付いてますし、これから……なのかなー。
 むー……。
 


2
 
『春は出会いの季節です アルテミス・スコードロン』 扇智史 著

 百合モノ+士官学校モノ……ってあたり?
 設定自体は目新しさは感じない……どころか、ここ1〜2年くらいに刊行された作品をボロボロ思い出してしまうくらいに定番ってカンジ。
 んでも──
「才能ある先達から過剰な期待を寄せられた主人公が、そのプレッシャーに打ち勝ち、少しずつ前へと進んでいく」
 ──って物語は、好き。
 いやさ、このストーリーラインだって、定番中の定番なんですけど!
 でも好きなんだも!
 そして物語さえ丁寧に描かれていれば、設定のオリジナリティなんて、さして気にしないというか意味無いっていうか。
 設定に凝るより、感情こもった物語を描いて欲しいなー……って、今作を読み終えたあとで確信。


 だけど今回の構成は、ちょっと失敗してないかなって思ったりして。
 長い長いこの物語の、最後の時間から描き始めているのですけれどー。
 ここでの台詞を考えると、今作でのクライマックスシーンの緊迫感が欠けてしまうような。
 ……どうせ今回は大過なく終わるんでしょ、みたいな(^_^;)。
 まぁでも、それが事実であっても、「どのように乗り越えるのか」が大切なのだし、今作はそこに重きを置いて描かれていたので、感動が大きく減じられたわけではない……かな?
 うん。

 あと、いきなり登場するモブがいるのはどうかと……。
 今後の展開如何では再登場して活躍する機会もあるのかもしれないけれど、挨拶する程度のモブに名前は要らない気がします。
 事前にどこかで登場していたっけ?……って、わたしは混乱(笑)。


 ひな鳥たちが飛び立つときまで、この物語を見ていきたいです。
 ──そこに悲劇が待っているとしても。
 

『ことりたちのものがたり』  空谷あかり 著

 人に造られ、人に飼われ。歌を歌うことを命じられて生まれてきた、「カナリア」たちの物語。
 そんな世界の短編集なんですけどー。
 ストーリーテラーの役回りでもなんでもいいので、各話で共通する存在があったら良かったかな〜……なんて。
 カナリアっていう設定の共通項はあっても、各話で方向性が異なるってのも良いのか悪いのか。
 それぞれ妙味はあるんですけれど、わたしとしては、なにかひとつ、この世界の方向性みたいなものを明示してあったらな〜って思うのです。
 この際、説教臭くなっちゃってもいいので。

 んでも別の見方をすると、様々な描き方のできるかたなんだなぁ……とも。
 各話の文体を、雰囲気に合わせて変えてきているのは考えられているなぁ。
 「迦 陵頻伽」での平仮名の多用なんて、カナリアの子の雰囲気をよく表していると思いましたもん。

 十の小編のなかで「越天楽」と「ナイチンゲール」が好みでした。
 ……救われなさが、胸に痛いです。
 
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