○● 読書感想記 ●○ 2005年 【8】 ※ 表紙画像のリンク先は【bk1】です ※
主人公を映すカメラの中には、映っていないだけで、ちゃんとその世界の住民が存在しています。 (中略) この本の物語世界には、そういったカメラが映さなかったいくつもの「でたまか」が存在しているのです。【あとがきより】
そういうお話こそ、外伝で書くべきなんじゃないかなぁ……とか思ったり。 別段、主人公の周囲だけを書け!とか、もっと展開を早くしろ!とか、そんなことを述べるつもりは無いデス。 クライマックス直前……よりは、もう少し前で、ワンクッション置いて整理するのは正道でもあると思いますし。 ただ、鷹見センセが仰っているような意図で主人公たちへ関わってこない事象を文章にするのは、なにか違うような気がするのです。 まぁ、ケルプとかワタルに関わってきますので、全般無関係ってワケでもないんですしー。 それに表舞台に上らない気楽さ?からか、飄然とした雰囲気さえこれまで感じてしまっていたマイドも、ここでようやくポキリと折れたと申しましょうか。 挫折を味わってこそ、オトコノコは強くなるもんですもんねー。 それも大切なオンナノコのためとあらば!(笑) 前巻ではチャマーが折れてしまったところが描かれ、マイドの無敵ぶりと比されてしまった感があって、ちょっとチャマーには不憫だなとも思ったものですけれど。 ま、これで同じ高さに立ちましたよねー。 マイドも、チャマーも、ケルプも、これで最終決戦に臨むための舞台が整ったカンジ。 そういう舞台を用意できた意味でも、この巻の存在意義があったのではないかと。 籠城、もしくは包囲戦からの脱出・救出劇は、「人類戦記録」の当初から繰り返されたシチュエーションでしたけれど、今回のウェストウィックUの戦いは、これまでになく苛烈な状況でしたね……。 ワルガキくん。最初っから死亡フラグ立ててるんだもんなぁ……。 このあたりが、マイドやケルプと違う、主役級キャラではない扱いなのかな……。 もしそうなったら批判は免れないでしょうけれど、万に一つの「偶然」を装ってでいいですから、生きていてほしいです。 そんな批判などモノともせずに、サプライズができるセンセだと思いますしー。 (それに、WEB上での希望が強まれば、それを叶えるところがあるようなセンセだとも思ってます……ってのは、ちとイヤミデスカ?)
国とは国民のことです。あなた方の国アウトニアは、その国土を失い、流浪の民と化しても、国債の償還を続けました。それが国債を買ってくれた人に対する約束だからです。 そして、あなた方アウトニアの王子チャマー様は、ローデスの星の指導者とその孤児たちを守ると約束し、そしてアウトニア軍の方々は、その命をかけて、孤児たちを守り通し、約束を果たしました……。 アウトニアは、約束を果たす。 これが、担保ですよ。これが担保でなくて何が担保ですか? 本当の信用とはそういうものです、数字に表せるものではありません。
長い長い物語が、実を結ぶ姿を思います。 はじまりは、たぶん、マイドがしたメイへの約束。 それがこの物語を生んだのではないでしょうか。 文章術のつたなさや、世俗に通ずる悪ふざけ。 「アウトニア王国」の物語や、作家・鷹見一幸という人の姿勢などは、必ずしも賞賛に値するものばかりだとは言えないと思います。 非難される点も分かりますし、過度の弁護もわたしはしません。 未熟な物語ですし、未熟な作家ではないかと。 それでも、この作品で描かれたコトの中には、わたしたちが大切にしていかなければならないコトが幾つも散りばめられているように思います。 作品を批判すること、批評することはできます。 でも、読み手に求められるのは、そうしたひとつひとつの「大切なコト」を読み取って、それが何故わたしたちに大切なのかを理解し、そして伝えていくことなのではないでしょうか。 古事記も日本書紀も、はじまりはきっと、つたないお話だったと思います。 それが幾人もの詠み人をたどっていく中で、昇華され、洗練され、この国のアイデンティティを伝える「物語」になっていったのではないでしょうか。 さすがに記紀と比べるのは大仰かもしれませんけれど、この作品には伝えていくべき事柄があるのだと、わたしは思うのです。 だから──この物語が、どう決着するのか、楽しみにしています。 ……んでも、わたしの中での鷹見一幸センセの評って、「物語を終わらせられない人」ってモノなので、楽しみではあるんですけれど、心配でもあるんですよねー。 どうも物語の帰着するところが、わたしの好みとはズレているというか……。 き……杞憂であって!(><)
わたしたち、つきあうことになりました。だから、世界に報告してください。飛行機雲で、空に二人の名前を書いてください。風に消えないよう、大きくたのみます。
嬉しさの中に、ほんのり切なさの香りも漂います。 青春小説として、良作ですわ〜。
やがてリヴァがカマールに着いた。市民はまちがいなく彼に注目したことだろう。それは彼が七フィートの長身だったせいばかりではない。ベルダランとのあいだに立つものは人だろうがなんだろうがかまわず突破するほどのいきおいで歩いたからだ。
おちつけ、三十路の男(笑)。 まー、なんていうんですか? 無神経ぶりとか、思いこみが激しいとか、ほんとガリオンの祖ですよ。 セ・ネドラとのことも思いこみで仕掛けておけば、もっとすんなりと運んだんでは? ……ああ、ネドラの民に電波しかけてもダメですか(^_^;)。 ドリュアドのほうもようやくセ・ネドラにつながってきて──。 ソリアが髪を噛みながら考え込むって、セ・ネドラにもあった癖なんですけれど、彼女から続いているんでしょうか。 ま、でも、名言は、やっぱあれかなー。 チョコレートをもっていくといい。本当だよ。 そういうことは、ガリオンに言ってあげてください(笑)。 ポー・ワキューンでの話とか、ゲランとの生活とか、谷の小屋での一人暮らしとか、そのあたりの話は「女魔術師ポルガラ」で期待していまーす。 ガリオンとかダーニクが、どういう気持ちで聞いているのか気になる〜(笑)。 優勢に見えていた<光の子>側が、<闇の子>側に大きく出し抜かれたのって、ゲランの件が初めてのような。 大きな時代のうねりがキタッてカンジー。 ベルガラスとクトゥーチクが、はたから見ると仲良さそうに見えるのが意外だったというか……。 そしてチャンダー、キタッ! いよいよ現代へつながってきているカンジがしてまいりました。 あー、やっぱり<番人>の家系の人たちの忠誠心には泣けますわ〜(T▽T)。 どうしてこの人たちは、これほど悲壮な覚悟を持てるのかなー。 マロリオン物語も刊行予定に入りましたね。 そのせいか、今作は注釈が多くなっていたような……? 次巻以降も楽しみ〜♪
「これは、愛の事件です。石動君は、煙草の匂いをかぎつけたようですが、僕は、愛の匂いを感じます。愛がある限り、それを解決するのが、僕が天から与えられた役目です」 「愛の匂い、ね」 石動が、くだらない、というように笑い、公佳や教頭先生も、あきれたような顔をした。夏樹はまた、むかつきそうになった。 (圭介は、ほんとうに、愛を感じるんだから!)
飲んでいたコーヒーが気管に入ってむせました。 へ? は? 匂い? 愛の? 観念ではなく実在として「愛」を語る作品ってのも珍しいというか、見たことないデスヨ? すごい……ちからわざ(苦笑)。 でも……。 今作の中では設定の奇抜さで「愛」というものは作品内で存在感を見せることができていますけれども、物語の展開に馴染んでいるとは思えなかったんですよねー。 使われちゃっている感……とでも言いましょうか。 なぜそこに「愛」があるのか、なぜ人は「愛」を求めているのか、「愛する」ということはどういうことなのか。 そういったことへの語りへ同意できるほど説明が足りているようには思えないんですよー。 推理ミステリとしては、早見センセらしく真正面から取り組んでいると思いました。 んでも、ここでもまた「愛」と「推理」が設定としてただ置かれているだけ、互いにうまく混ざっていないように感じてしまったんですよね。 食材が別個に自己主張している料理なカンジ。 ところで。 「N・E・W・S」は富士ミスの新しいコンセプトだそうですが。 読んだことのない珠玉の物語を──って、そりゃそうあってほしいですよね。 んでも、今作、わたしの場合、はやみねかおるセンセの「虹北恭助シリーズ」を思い浮かべてしまったんですよー……。 キャラ造型のあたりが……その……。 ところで2。 あとがきのサイン(?)、2004年6月……って、正しいのデスカ? 作中でマツケンサンバのことに触れていたりするから、1年前ってことはないですよ……ねぇ?(^_^;) あ、時事ネタ、芸能ネタは生モノですから、作中で触れるのは控えたほうがよろしいんじゃないかなーって思います。はい。
やっぱり、わたしは「家族モノ」に弱いなぁ……と思う次第。 鈴蘭のお姉ちゃんパワーや新キャラの睡蓮のネガティブ・シンキンもさることながら、すみれさんのお母さんっぷりが好感でした。 完璧な母親像ではないところが特に。 ダメな母親であることを認めた上で、良き母親を目指しているところが。
「ごめんね。私はもう、そんな過去に縛られるほど弱くないんだ。そうでしょ、お兄ちゃん」
流れの中での台詞なので、それほど目を引く力があるとは思えませんがー。 んでも、こうまでハッキリと過去を克服したと示す台詞を口にした主人公も珍しいような気がします。 これまでの自分とは違うと謳っても、そこから先、どのように動けばよいのか、何故に動くことを求められるのか不明のままでも、とにかく「先へ進むこと(停滞しないこと)」を克服とする描写は、ままあると思います。 今作の鈴蘭は、そういうのとはちと異なっているように思うのです。 とまぁ、久し振りに主人公らしかったですね、鈴蘭(笑)。 自分の立ち位置を認めたあたりで、今作が最終巻でもおかしくないなぁ……と思ってしまったのですが、まだ次巻が予定されているとのことで、良き哉。 キャラの掛け合いとか、林センセの筆致は好きなのでー。 沙穂ちゃん、あれだけの登場なのに挿絵にしてもらえるなんて……。 愛されてるなぁ(^_^)。