○● 読書感想記 ●○
2005年 【7】

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20
 
『風の王国 月神の爪』 毛利志生子 著

 翠蘭たちが守勢でいることが、どうにもやきもきするのかなー。
 1巻のころは、もーちっと攻め気でいたように思うのですけれども。
 守りたいモノが増えてしまったから、そういう姿勢も仕方がない……のかな?
 翠蘭とリジムの絆が、それはもう深いものになっていると感じます。
 だから──お互い、弱くなってしまったのかなぁ……と。

 互いのことを強く想うことは分かったのですけれども、また互いの存在が強さに転化するようなトコロが無いのですよね。
 なんちうか、想いに溺れているようなカンジ。

 今回のリジムには驚きましたよ。
 なんですか、あの弱さは。
 強さがインフレしているわけじゃなく、リジムが弱くなったと思う。
 なーんかさー、斬り合いになってからもゴチャゴチャと考えちゃってさー。
 それでもいざとなれば集中できてましたけれど、そうしたスイッチのかかりが遅くなったカンジ。
 腑抜けたか!(笑)

 ところどころに差し挟まれる、ふたりのラブッぷりは良きかな良きかな。
 でも、そのほとんどが寝台での描写ってのは、どうなんでしょ?(苦笑)
 ほかには、朱瓔とサンボータがー。
 互いに寄り添っていてもフツウな雰囲気になってきましたですよ?
 これからがたのしみー。
 ……でも、このシリーズ、とにかく人が死んでいくからなぁ。
 まぁ、朱瓔とかは1巻限りの泡沫キャラではないから大丈夫……だと思いたひ。
 

19
 
『疾走! 千マイル急行 上』 小川一水 著

 上下巻……2巻構成ってことでいいのかな?
 それにしては舞台裏の動きが緩いように思うんですけれど。
 いつもの小川センセらしさが薄くて、冒険譚としての向きが強いというか。

 でもですね──。

「ですが、お任せください!」
 青白い顔に引きつった笑みを浮かべて、フローリーは叫ぶ。
「わたくしたちTMEと、ヘルフォード中佐の『メイドン・カースル』が、きっとご無事に皆さまを──」
 強烈な爆風が寝台車にぶつかった。車体は大きく左に傾いたが、かろうじて転覆せずに持ちこたえ、大音響とともにレールへ車輪を戻した。
「──皆さまをお連れしますっ!」

 小川センセの作品で、プロがその職業意識を気高く掲げたときには、ヒートアップするほかないわけで!
 やるべきことを心得て、どんな危機であろうと務めを果たそうとする様には、早くも感涙モノですよ。

 主人公のテオはプロの意識を教えられてはいるでしょうけれど、それを体現するまでには至ってないってカンジ。
 彼が自分のやるべきことを自覚すれば、この物語も終盤に入るのでしょうね。

 んー……。
 今作でいうとテオだけでなく、彼と友人になる3名にも務めが生じそうですね。
 アルなどはすでに鉄道知識を披露する機会に恵まれていますし、下巻ではアッと驚く策を講じてくれそう。
 ローラインは──テオの成長を加速させるヒロインって役どころ?
 憎からぬオンナノコが信じてくれれば、オトコノコは強くなれるものですしー。
 キッツは過去と向き合うときに必要ですしー。
 というか。
 上巻だけでは「分水嶺戦争」なるものの存在がいかようなモノだったのか、まだまだ霧の向こう……。
 この辺の披露の仕方が、ちと緩く感じるのですよねー。


 これだけ路線図を示しながら、TMEが采陽に釘付けってことはないでしょー。
 下巻では大陸東側を回りながら、総元締めのレーヌスに反攻を!……って展開を読んでみましたが、はたして!?(笑)
 



18
 
『電波的な彼女 〜幸福ゲーム〜』 片山憲太郎 著

 これまでの作品では氷山の一角といった扱われ方をしていた悪意の存在が、今作では集団になって、気持ち悪さ倍増デシタ。
 そういう悪意は、決してあり得ないものではないにしても、ここまで酷く描く必要はあるのかなぁ……と否定的になってしまったんですがー。
 でも、読み進めていくうちに、否定的な気持ちは解消されました。
 ディフォルメされた悪意の存在・大きさはとてもとても気持ち悪いものですけれども、この作品には、やはりディフォルメされた善意の象徴が主人公の位置に立っているのです。
 どちらも、「そこまでは……あり得なくない?」と思わされてしまうトコロもあるのですけれど、善意が少しでも悪意に勝るところを示してくれれば、それは良きエンターテインメントを体現しているのではないかと思うのです。

 事件の解決にあたり、主人公は実質的には何も手を下せず、周囲の者が絶対的な力をもって屠るという形式は、一見すると破綻した物語と思ってしまうかもしれません。
 それでもこの作品が成立するのは、主人公とは事件を解決することが使命なのではなく(もちろんそれを兼務することもありましょうが)、物語を締めることにあるからだと思います。
 この作品は「パッとしない男の子が怪事件を解決するお話」ではなく「義侠心溢れた男の子が、女の子を救うお話」なのです。
 事件を解決するのは、その過程における手段であって目的ではないという。

 壮大なガジェットを用意して披露することに主眼をおいた作品が少なくない昨今、忘れることがあってはならない想いを描くこの作品の存在は、とても素晴らしく、そして希有なものなのではないかと思うのです。


 と、硬派?な感想はここまででー。
 オンナノコたちとフラグ立ちまくりのジュウってどうなのよ!(笑)
 あんた、D.C.の朝倉か!
 フツウに考えると、同級生や他校の女子、さらには年下までからも気軽に付き合うことのできる交友関係って、すごくないですか?
 登場人物紹介にある「根っからの一匹狼タイプ」って──ハァン?(摩邪)
 物語の中を見ても、ジュウがひとりで何かしようしているときって、大概ロクなことが無いんですけれど!(苦笑)

 オンナノコたちからの好意に気付かないでいるって状況、これからが楽しみですなぁ(笑)。
 今回は光ちゃんががんばってた!
 雪姫が輝いてた!
 ……紅香さんの登場をお願いします(TДT)。


 悪意の増大は物語設定の広がりを示すものなのかもしれませんけれど、できればジュウの言動はこれまでと同じくシンプルであってほしいなぁ……。
 ジュウが持つ善意って、この世界──作品中のというだけでなく、現実でも大切なことのように思えるので。
 

17
 
『学園はっぴいセブン A福娘たちの放課後』 川崎ヒロユキ 著

 なんか、こー、淡々と進んでいくなぁ……という印象が。
 神視点で「こんなことがありましたー」って描かれるから、ちょっと他人事みたいにとらえちゃうのかな。

 主人公の役どころは菊之介ではなくて亜麻乃ちゃんだとは思うんですけれど、残念なことに彼女には同調できず……。
 もうちょっと考えて行動してくれないかなぁ……と思う次第。
 いろいろな理由があるにしても、周囲のことを見られないっていう言動は好きになれなくてー。
 そういう、主導を担うキャラが好みではないってトコロも、物語に抑揚を見いだせないところなのかも。
 あー、またかー……って思っちゃうんですよねー。

 もちろんキャラの言動だけでなく、この巻の構成も影響しているとは思います。
 小さな事件を幾つも解決していくパターンでは、あまり劇的な仕掛けを施すわけにもいかないでしょうし。
 この構成、コミカライズへの配慮なんでしょうか?
 ……というか、アニメへの?
 1話の脚本の内容って、展開の量からするとこんなトコロだと思いますしー。

 あ、コミック連載してから、COMさんの画力がメキメキ上がったように感じます。
 人物のバランスはもちろん、構図なども考えられているなぁ……と思いました。
 おべんと食べてる黒闇天には驚きましたけれど。
 かわいーけどね!(笑)
 

16
 
『Holy☆Hearts! 想いを伝える、まなざしです。』 神代明 著

 エクスに嫌な死亡フラグがーっ!
 だ、大丈夫なんじゃろか。
 いまのところ神代センセの作品は多くはないので、どういった傾向にあるのか判断するには材料が乏しくて……。
 作風……からは、あまり主要キャラを退場させるようなことはしないんじゃないかあぁ……とか思ってしまいますけれども、いや、しかしねぇ……。

 退場というより、そろそろ当シリーズも一区切りってかたちになるほうが可能性高いかな?
 キュノの親離れと、エクスの子離れをいっぺんに演出して〜。

 エクスの過去話から因縁を引っ張ってきて、次の盛り上がりにかけてきているワケですけれども──んー。なんとなーく、しっくりこないというか、唐突感?みたいなものを感じてます。
 エクスがそこまでこだわる心境が分からないというか。

 フェリカさんが今作では割と表に出てきていましたけれど、影が薄くなったところを補う形で慌てているのかな?って気が。
 そんな尖ったところの性癖ばかりを表に出されたら、単に色物キャラとしての認識になってしまうのですが──それでいいのかな? あれれ?
 エクスとキュノの関係ほどには、フェリカさんとキュノの関係はさして必要性のあるものではないのかなー……というのが最近の印象だったりします。


 そして短編、面白かったデスヨ。
 ジャスパー、いいオトコじゃーん。
 というか、オマケのように付いてくる短編のほうが好きになる率が高いデスネ。
 ……それをいうなら、今回は本編のほうも、なんとなく短編の集まりっぽかったデスカ?
 どーも、章と章とがスムーズに流れていなかった印象を受けたのですけれどもー。
 たしかに一連の事件という形式は成されていましたが。

 あとキュノの幼児化が、進んで……ませんか?
 この症状も銀の弾が原因だったりしたものだとしたら、スゴイんですけど。
 

15
 
『犬はどこだ』 米澤穂信 著

 読者の要求は果てしなく──。
 材料を与えて、さぁ推理してください……ってだけじゃ「フツウ」の推理ミステリだよなぁ……とか言ってしまうものですけれど。
 その推理の先、ひとつヒネリを用意しているところが米澤センセのステキなところですよね〜。

 推理の状況は比較的初期の段階で、それも割と平易なカンジで進められると思います。
 しかしふたつの事件の捜査を同時に進行させて、そのクロスしている状況を面白可笑しく提示しているトコロが、当作品の妙かな、と。
 作中の人物よりも読者のほうが事件全容を見渡せているというか。

 ──んでも、それが罠だったりするのかな?(苦笑)

 ともあれ、米澤センセは推理ミステリが好きなんだなぁ……と思わされる作品でした。
 

「それとは全く逆です。あんなに自制心の強い女性は他に知りません。黙って怒るし、黙って喜ぶタイプです。とっつきにくいところはありますが、そこがなんと言いますか。個性的であろうとしていないのに個性的、と言いますか。……味がある、と言うんでしょうか?」
 

 作中人物がクチにした言葉ですけれども、これってなんとなく米澤センセの作品に登場する主人公(探偵役)の人物の評に近いような気がするんですけれど?
 性別の違いはありますけれどー。


 それと……。
 <GEN>さんの「ちょっと気になるんですが」に反応した人──挙手(笑)。
 


14
 
『GOSICK s −春来る死神−』 桜庭一樹 著

 残念なことに、推理ミステリとしては……読めませんデシタ。
 ミステリとしては充分に成っていると思うんですけれど。

 結末として描かれている状況は「そういう現実がありうる可能性を内包するが、それだけが全ての現実の可能性というわけではない」というものではないかと。
 ただし、探偵が披露し、物語を締められれば、その世界で起こりうる現実の可能性がひとつだけに絞られてしまうわけで。
 状況としてほかにも幾多のことが考えられるハズなのに、それを無視して正答にしている……と感じているのかもしれません。

 推理をさせるのであれば、もっと条件を狭めないとなぁ……ってカンジ。
 探偵が披露して初めて明かされる不可解な点って、その推理の材料を事前に与えておいて欲しいッス(伏線というかー)。


 でもキャラクター勝負!って意味合いでとらえるなら、本編にあたるであろう長編よりも好み。
 ヴィクトリカが出ずっぱりなんですもーん。
 それも、あれだ。
 普段よりも可愛らしさが2割増し(笑)。
 本編では一弥とヴィクトリカって、わりと離れ離れになっているパターンが多いからかなー。
 そうした状況に比べると、今作では絡む絡む。

 オカンみたいな一弥にワラタ。
 

13
 
『サンダーガール!』 鈴木鈴 著

 イヤダイヤダを繰り返したあげくに、暴走した強大な能力でドーンと一発事件解決……って、イヤーボーンと変わらない気がする……。

 与えられた責務に押し潰されそうになりながらも、自我との折り合いをつけながら能力を発揮していく術を探る……って展開は、いまではレトロすぎるのかなぁ。
 己に非なる存在を認めないのはイマドキのオンナノコだと言われればそうかもなぁ……って思いもするのですけれど、社会風刺の作品でなくエンターテインメントの物語であれば、どこかに前向きになるポジションが必要なのでは──と思うのです。

 抑圧され鬱屈した感情を描くのは、鈴木センセらしいっちゃらしいのですけれど。
 わたしには……合わなかったデス。
 

12
 
『シフト −世界はクリアを待っている−』 うえお久光 著

 能力を持つ人は、正しくその能力を活かす義務を負う……って話?
 主人公の視点から解けば、能力それ自体には善悪の別は無くて、例え嫌悪感を及ぼすコトがあろうと、能力を活かす覚悟を持つに至る……話、かな?

 ただ、どれだけの覚悟を得ようとも、どれほどの後悔に苛まれようとも、舞台が非現実であることで、わたしには素直には共感できなかったかなぁ……。
 ウソではないにしても、仮想現実の中でどれほど叫ぼうとも、引き替えに失うモノへ現実的な価値が示されていない以上、そこで生じる葛藤は真剣味を失っていると思うわけで……。

 もちろんこの1冊では設定の面へは深く触れてはいないので、「−世界はクリアを待っている−」という言葉共々、現実世界との関わりがあるのかもしれません。
 でも、そうした面が見えないままの現状では──茶番にしかならないような。

 で、かといってもこの物語の設定に興味を覚えたかといえば──そうでもないかも。
 わたしにとっても必要な情報はそろっていましたし、たとえば、この物語が伝えたかったことは先述のようにまとめることはできているわけでー(正しいのかどうかはわかりませんけど。わたしなりのマトメという意味で、です)。
 そういった次第なので、この作品はこれはこれで終わっていても良いのではないかなー……と。

 ハードカバーという装丁についても、悪くないカンジ。
 喫茶店でコーヒー飲みながらテーブルに広げて読むには、ソフトカバーや文庫よりも安定感がありますしー。
 また、電車の中で座って読む際についても、膝の上で広げて悪くありませんでしたし。
 文庫で出すべきダ!って声高に言うつもりは無いというか、現状ではことさらハードカバーで不利な点はわたしには無かったので。


 うーんと、ハードカバーという装丁の是非について論じられるときって、本当は装丁についての問題を言いたいのではないのではないかと思います。
 ハードカバーになったとき事実として明確ななにかが生じているとすれば、それは「文庫本よりも高額な価格設定となる」ってことに尽きるのでは?
 ただ、価格の高い安いは個々人で受け取り方が異なると思いますしー。
 10円という価格でもその価値がないと思う人からすれば高いでしょうし、10000円という価格でも価値があると思う人は満足感を得られるでしょうし……。

 そういう観点から言えば、「1600円という価格でも高くはなかった本……かな?」と思っているわたしです。

 まあ、全てにおいて賛辞を送るつもりもなく、こうした値段になったことは購入をためらわれる可能性が高くなったことは否めませんしー。
 あるいは書店においても売れ行き動向を計りにくいかな……と。
 そういうのって、うえおセンセの読者を増やすことに直結しているとは思えませんし、だとするとファンとしては寂しいなぁ……と思うワケで。

 ライトノベルって何よ?との問いには「アニメ・コミック風のイラストが添えられている若者向け文学作品」といったあたりになるのではないかと考えています。
 その定義からすると今作はイラストがまったく用いられていないことから「ライトノベルではない」と言ってしまうこともできるかと。
 大人向け作品というわけではなく、想定読者層はこれまでの「ライトノベル」の層と同じだと思いますけれど、同じ年齢層を意識しつつもその中で新しい需要を喚起する方向にあるのか……な?

 売り方を変えたことは既存のファンを向いてのことではないから寂しい気はしますけれども、そうした試みは新しいファン層をつかむかもしれません。
 だとすれば、ファンである──との自負を持つわたしは、その試みを前向きに見守っていきたいなと、そう思うのです。
 
11
 
『星界の断章T』 森岡浩之 著

 それぞれの小話をどこまで評価するかによって、「星界」というシリーズ作品になにを求めているかが判別されそう。
 〜97年初頭までに上梓されたプラキアとスポールの2作品を評価する人は、キャラクターを重視してこのシリーズを見ていた人。
 99年まで大丈夫な人は、物語設定に関心がある人。
 00年以降も大絶賛な人は、森岡センセをMy Favoriteにしている人。

 はたして──99年のアニメ化による影響が在りや無しや?


 わたしは……キャラ重視だったタイプ。
 「原作には存在しません」「原作にはありません」──って、それじゃあ、ここに載せられている作品はどういう存在なのかなーって思ってしまう次第。
 

10
 
『ハイブリッド・ソウル そして、光の中を』 松田朱夏 著

 本格……というか、横溝っぽい雰囲気を巧く出されているなぁと思いました。
 和モノでの推理ミステリの王道というか。
 もっとも、そこで為されているトリックは洗練されているとは言い難いと思いますけれど、これはこれでアリな気がします。
 富士ミスとかレーベルは関係なく、ライトノベルの推理ミステリ風味のファンタジーってポジションにおいて。

 それでも、あの 心理トリック は、もうちょっと仕掛けをほどこすなり、なんらかの料理があったほうが良かったのではないかと。
 推理を誘うトリックとしては、ちと、淡泊すぎるかなぁ……って。
 掛け軸の謎も、ストレートすぎ……かな(^_^;)。

 雰囲気作りは良かったと思いますけれども、最終的には推理ミステリの部分が重しになってしまって、魅力あるキャラクターを活かし切れなかったのではないかと。
 推理とかトリックより、もっとキャラクター同士のやりとりを見てみたいなぁ……。

 主人公の職業の特異性とか、女の子たちのポイントの高さとか、シリーズとして続けていくには条件は整っていると思うんですけれど──。
 肝心要の探偵役の設定の扱いが難しいデスネ。
 『レンテンローズ』のようなパターンでのシリーズ化が適していると思うんですけれども、そうすると今作での設定がもったいないなぁ……と思うワケで。

 さてさて……?
 


9
 
『銀狼の花嫁』 デイヴィッド&リー・エディングス 著

 うははは。
 『ベルガリアード』のルーツがここにっ!(^_^)
 物語としてのという意味ではなくて、人としての起源。
 リヴァを見てるとガリオンと血がつながっているなーって思わされますもん。
 ドラスとかアルガーも、ドラスニア人やアルガリア人、ひいてはシルクやヘターのご先祖さまだなーって。
 なんだか初めて会った気がしないよー(笑)。

 読む前はベルガラスを主人公とした冒険譚めいたビルドゥングスロマンとかだったら、どーしよー……と危惧していたのですけれど、それは杞憂で。
 時間軸は『マロリオン』直後。
 ベルガラスの言葉によって語られることは、すでに「アローンの書」などで知っている「歴史」でもあるんですよねー。
 んでも、誰かに向けて語られる口調が楽しくて、飽きさせないというか。
 さすがミスター・ウルフです(^_^)。
 妻と娘と、孫の嫁から話をせがまれるっていうのは、ベルガラスにとっては大変なことだったと思いますがー(笑)。

 時折、この話を聞かせる対象である目の前の存在へ、言い訳のような言葉が入るのも楽しいです。
 距離が縮まるとでも言いましょうか。
 

 わかるな、物事のはじまりに興味をもつのはダーニクが最初じゃなかったのさ。

 ──とか。


 ポレドラとのなれそめには笑わせてもらいました。
 初めっから、全然ダメじゃん、ベルガラス! 負けてるよ!(笑)
 カーテンへのこだわりの件とか、デイヴィッドとリーのやりとりそのままなんじゃないかって思います。

 <珠>を奪還するために谷を旅立つ際、チェレクとその息子たちの言い訳を落ち着いて受け答えするポレドラの様子は……バラクとかシルクとかがポルガラに見破られている姿に重なりますねぇ(笑)。


 そして、おバカなおじいちゃんだなーって思ったところ。

 つむじを曲げたときのポレドラは、そりゃもう愛らしいんだ。ガリオンならたぶん理解できるだろうが、ほかの連中には無理だろうな。

 ──理解できる! できるけどもっ!
 あんたたち、ホンマもんの家族だよ(笑)。
 


8
 
『ぼくがペットになった理由』 小林めぐみ 著

 ミステリー……ちうか、すくなくとも推理ミステリではないですよねぇ。
 これを推理ミステリとかいうと、十戒とか二十則に思い切り反するような。
 で、恋愛モノかというのも、わたしには抵抗があって……。
 皇女の高知に向ける感情は、愛情というより同族相哀れむってカンジ。
 このあとの二人の関係が変化するかどうかは分からないですけれど。
 まぁ、可能性はあるよなぁ……ってカンジられますけどもー。

 小林センセらしい、普通のSFってカンジれば良いのかな?
 設定に深入りせずに、比較的あっさり目で描いているトコロなんて好感ですけど。

 読後感は悪くないのに、なーんだかモヤッとしているのは、ヒロインと主人公の間に感情の交流が無かった……ように思えるからでしょうか。
 事件や事象を描いた作品としては成り立っていても、キャラ立ちした物語ではなかった……ような。

 そういう点でも、次作以降の展開でどうなるか……ですね。
 楽しみにしています。
 



 
『クドリャフカの順番 「十文字事件」』 米澤穂信 著

 学園ミステリ!
 私見ですけれど、学園に起因する事象を組み込んでこそ「学園モノ」だと思うわけです。
 学生がなにかを行っているというだけでは、なにか物足りなく。
 で、今作では「古典部」の面々が文化祭の中で起こる事件に関わっていくわけでー。
 ……わたし、学園モノ、好きなんですね(^-^)。
 すっげ好みー。

 小さなコトから大きなコトまで、伏線の張り方と回収の仕方が、ヒッジョーに好みです。
 習慣としての意味しかないと示していた、えるのお参りにしても、ちゃーんと別の意味を用意しておいてくれているとこなんか、サイコー!
 それにしてもえるちゃんの可愛らしさは、かなりパワーが上がってるなぁ。
 彼女に何故振り回されてしまうのか、自覚の無い奉太郎に同情。
 んでも、そんな彼に向かって「ばーか」って思ってしまう摩耶花に同意(笑)。

 「彼」がなにを考えてるのだろうって知りたがる「彼女」と、「彼女」の気高い精神から求められる問題を解決してあげることは逃れられない運命だと感じている「彼」。
 ……なに、このカップル(笑)。
 YOU! 付き合っちゃいよ!(≧▽≦)

 ふくちゃんは、助演の役割を見事に演じきっているなぁ……と。
 奉太郎みたいな人がすぐそばにいるのは、ツライことだと同感。
 自分の非力さをカンジさせられてしまうというか。
 今回は「期待」するということの重みが、ホント、伝わってきたなぁ……。
 どうにもならないことですけれど、やっぱり、諦める瞬間ってあるものだと。
 でも、ふくちゃんはそこから踏ん切りをつけようとしてますよね。
 ステキ。
 オビにあった──

青春はやさしいだけじゃない。
そして痛いだけでもない。
米澤穂信が描く、さわやかで
ちょっぴりホロ苦い青春ミステリ!

 ──というのは、本当によくセンセの作品のことを表しているなと。

 んで、摩耶花ちゃんもそーゆー彼のことをちゃんと見ていて……。
 奉太郎とえるちゃんとは違った意味で、この二人もお似合いですよねー。
 摩耶花ちゃんの苦しみも、分かる……というか、感情移入しちゃったデスヨ。


 ミステリは最初の仕掛け──制限条項の提示、が割と需要だと思ってます。
 そのなかには時間制限もあると思うんですけれど。
 時間内に解決しなければいけない……って展開。
 ドキドキしますもんね。
 その他に今回は部誌の売り上げカウントダウンも関わってきて、ドキドキ感倍増。
 表記の仕方もそれを煽ってくるというか。
 しっかし200部って尋常じゃないですよねぇ……(苦笑)。

 今回、安楽椅子探偵を奉太郎は気取るのかなー……って思っていたんですけれど、なかなかどうして。
 料理対決のあたりとか、かなりアクティブに感じちゃいましたデスヨ。
 うん。
 ミステリの本旨の部分とは別に、あのシーンは盛り上がった!(≧▽≦)


 『氷菓』とか『愚者のエンドロール』もそうなんですけれど、事件というモノはそれが目に見えるまでに表面化する前の段階で、すでに発生している……と。
 時間をさかのぼって事件が描かれるっていうのが、米澤センセのミステリの特徴……と言えなくもないかしらん。
 あー。
 『さよなら妖精』の描き方も時間をさかのぼってますかー。
 


6
 
『スノウ王女の秘密の鳥籠 〜よかったり悪かったりする魔女〜』 野梨原花南 著

 主役級の二人の名前が似通っていたり、会話では誰が誰の発言なのか言い回しが分かりにくかったりするところもあるのですけれどー。
 ぶっちゃけ、優しい筆致ではないと思う次第。
 んでも、野梨原センセが伝えることには、相変わらずココロが動かされるわけで。

「愛は人を傷つけるものだ。人は人を傷つけるものだ。それが生きていくということだ」
 マダーはアザーを見つめる。
 視線を逸らさない。
「だから、もしお前が人を愛すると人が傷つくというのなら。もし、お前が毒で、お前の愛を受ければ誰かが毒に侵されるというのなら。それはとてもお前が人間らしいということで、それ以上でもそれ以下でもないのだろう。……だいたい、お前はそんな、一人だけで自己完結して馬鹿みたい」
(中略)
「面白いじゃないか、私たちはごっちゃごちゃだ。お前が毒だというのなら私も毒になろう。それがなんだというんだ? みんなそうだ、大したことじゃない、自分の望みを叶えることが、全ての人にいいことだなんて、そんなはなしはどこにもないし、自分の恋を叶えることは、いつだって相手の恋の芽を全て枯らしていくことだ。(後略)」

 しょうがないよね。
 生きるとか人とか恋愛とかって、そういうものだし。
 きれい事だけでは済まされないというかー。
 そういう点ではアストレアの発言も近似なのかもしれないですけれど、本質が異なるとどうにもこうにも。
 だから、どうする?──の先に見据えるモノの違いというか。
 しようがない……ってことを悲観するのか楽観するのか。


 正しいかどうかは別──っていうか、その問題には答えなんか無いのかも。
 んでも、自分の考えを見つけている人は、強いなって。
 アストレアやスノウ王女なんかは、そうした答えをまだ見つけていないクチ。
 はっはっは。悩め、若人よ。
 次巻ではそうした悩みへの解決編かなー。

 野梨原センセの本に、問題や悩みの答えはありません。
 でも、一緒に考えてくれるような気がします。
 


5
 
『マリア様がみてる 薔薇のミルフィーユ』 今野緒雪 著

 黄薔薇ファミリーは少しずつ前へ進んでいるように見えるんですけれど、紅薔薇ファミリーは相変わらず停滞中……。
 なんというか紅薔薇の停滞現象は、祥子さまの依存気質にあるんじゃないかって思ったりもします。
 気質とかなんとか、そこまで強く言わなくても、どうもあの人は「大人になりきれない子供」なワケでー。
 弱き存在を守る立場にある人が大人だと言えるなら、むしろ祐巳ちゃんのほうが大人っしょ?
 祥子さまが祐巳ちゃんを守っているようには……いまの状況からは思えないデス。

 んーと、『子羊たちの休暇』あたりから、そんな立場関係が定着したような……。
 祐巳ちゃんが「マリアさまのこころ」を歌い上げたあたりから。

 で。
 前も言ったかもしれませんけれど、ギンナン王子の好感度を上げようとしても、作品の本質から外れるような気がするのですが、いかにっ!


 菜々ちゃんは良い子ですね。
 由乃さんが「サーキットでのレースなら、躊躇いなくアクセル全開にできる」タイプであるのに対して、彼女は「パリダカのレースを楽しめる」タイプではないかと。
 作中でも由乃さんが口にしていますけれど、彼女自身はトップを目指すタイプなんだと思います。
 翻って菜々ちゃんはトップになることは数ある目標のひとつでしかなく、どういったルートを見つけられるのか、そのルートでどんな出会いがあるのか──そうした諸々のことを楽しめるのだと思うのです。
 人生を謳歌するタイプ?

 まぁでも彼女が自分以上に「ヤバい」人だと分かった由乃さんには、エンジンブレーキがかかったカンジ(笑)。
 よろしいんじゃないですか?(^-^)
 令ちゃんさまも気に入ると思いますよー。
 「お手合わせ」って剣道だけのことじゃなくて、由乃さんのことをもちろん暗喩してますよねぇ。


 白薔薇ファミリーは、安定した面白さが。
 直接的な繋がりが無いだけに、聖さまと乃梨子ちゃんの関係は微妙なモノですけれど、そこはそれ。あのふたりですから〜(笑)。
 この二人の駆け引きって好きー!
 でもさー、聖さまは良いトコ取りしすぎな気がするデスヨ。


 とまれ、ここ最近の『マリみて』ではいちばん好きな展開でした。
 

4
 
『彼女はミサイル』 須堂項 著

 あ……悪くなかったかも。

 わたしの嗜好を別にすれば、女の子との絡みは邪魔だったように思います。
 このお話、「勇気を持てなかった男の子が、目的を一途に達成しようとするロボットに感銘を受けて、大きな目標に向かって歩き出す」……ってトコロが骨子だと思うんです。
 けっして「年頃になって意識しだした異性に対して、守ってあげられる強い存在になる男の子」……ってモノではなくて。

 んー、とはいっても、どちらの要素も入っているので、天秤がどちらに傾くかはひとそれぞれかなぁ……。
 わたしの場合、終盤になって女の子を助けようと動き出す主人公の行動は、さして「女の子」を意識しての行為だとは思えなかったので。
 それよりも、「戦力差が在りすぎる相手でも、諦めることなく立ち向かうロボット」の姿に感銘を受けている主人公のほうが印象に残っているのです。

 女の子とのやりとりについては行間読んで!みたいなトコロが少なくないのに対して、ロボットの交流は比較的ストレートに文章に表されていたような……。
 現状での女の子の気持ちなどがあまり描かれていないので感情移入というか彼女たちの心情を判別しにくいってことかも。


 邪推なんですけれど、女の子とのからみは編集サイドの意向……だったりしませんかねぇ……?
 筆者の職業からすると、きっかけはロボットのほうでしょうし。


 ネタは直球、筆致は素直。
 これから期待してもいいかな〜……と思える人でした。
 ……でも、ラストでちゃぶ台ひっくり返すような超展開はヤメたほうが良いと思います(^_^;)。
 
3
 
『王国から来た少年』 神野オキナ 著

 ──このタイトルは、作品を魅力的に見せるための第一歩となってはいないように思うのですが、いかに?

 誰に感情移入すれば良かったのかなぁ……。
 わたしにはいろいろと敷居が高い作品でした。
 


2
 
『魔法遣いに大切なこと 太陽と風の坂道T』 山田典枝 著

 坂の街、長崎を舞台に新たに始まったシリーズですけれども。
 おおむね連載コミックス版と流れは同じながら、個々人の心情について深く掘り下げて……るのかな?
 んー……。
 掘り下げているキャラとそうでないキャラがいるような。
 という区分は、コミック版でもメインを張る主役級のキャラとそうでない区分であったような。
 全員が全員、心情を掘り下げて描かれるのではなく、コミックスでは描かれなかった心情をノベルズでは描いてみました〜……ってカンジかも。
 だもので、ナミとか龍太郎とかの心情については、コミックスのほうが分かりやすいかも……とか思ったりして。

 んでも、各人の立ち位置とかは痛いほどにわかるくらいんに描かれているので、ノベルズとしては満足かもですよ。
 これ単体で読んでも齟齬は生じないと思いますし、ビジュアル重視でコミックスと併読すればなおよしってカンジ?


 小説の挿絵も担当されてますよしづきくみちサンもそうですけれど、この作品──「魔法遣いに大切なこと」というのは雰囲気や空気を大切にされているなぁ……と。
 読み手をそこに誘うすべに長けているというかー。

 小説……とくにラノベなどは、主人公への共感性が太切なところではあると思うのです。
 ですれど、この作品においては主人公の心情を理解し共感することに重きがかれているのではなく、一緒にその場に読み手の視点を導いたうえで「どう思いますか?」と語りかけられているような気持ちになるのです。
 ……道徳の教科書みたいな?(苦笑)

 冒頭、丁寧すぎるキャラ紹介など、ちょーっと古くさいところを筆致には持ちますけれど、優しい気持ちにさせてくれる文章だと思います。


 勢い込んでコミックスの最新刊、3巻を買ったですよ。
 うは〜っ!!!
 スゴイ展開になっていて、悶えそうDEATH!(≧▽≦)
 どうやって文章化するのか、いまから楽しみで楽しみでっ!!
 


勝負の終り』  デビッド・エディングス 著

 ふたつの予言が同じ時を迎えるように、この物語も行き着くべきトコロへ辿り着いたなぁ……という感慨が。
 この辺りまで来ると、冒頭の説話の内容も充分に分かるものになっているわけで。
 これまで──とくに初巻などではなにを言っているのか、なにについて書いているのか分からなかった文章も、あら不思議、全てが意味ある文章に見えてきます。
 今回は「トラクの書」という敵方からの視点で書かれたモノですし、いやがおうにも最終決戦を意識させられます。

 表紙のガリオンもさー、すっごく大人になっちゃってもぅっ!(笑)
 セ・ネドラとよりそう二人っていうのもイイですよね!
 うっしゃっしゃ!(オヤジか……)

 ようやく訪れた結婚式でのふたりが可愛らしいですなぁ……。
 ガリオンに「愛してる」って囁かれたときのセ・ネドラなんて、ツンデレ属性の本領発揮じゃないですか!?
 その前の「馬鹿げた」ふたりの議論も愛らしいのですけれど。
 ……こーゆー、会話の妙が、ベルガリアード物語の面白さなんですよねぇ。
 この巻では王様同士の会話とかも面白いですし。


 ああ、でも<リヴァの番人>鉄拳ブランドと、その息子オルバンの最期の会話では涙したですよ。
 なんだか、こう、複雑な心情がデスネ……。
 それすらも予言の中にあったかのようなんですけれど、彼らの行為を運命の一言では片付けられないなぁ……と。


 それにしても、これで終わっちゃうのでしょうか……。
 今回、思いっきり端役で登場していた ヴェラ と、ヴァラナ将軍は、このあとのマロリオン物語では、かっぽーになるっていうか、あれなのにーっ!(笑)
 あと、「逃げ足には自信がある」っていっていた彼もつかまってしまうわけでー!
 ああ、もちろんザカーズね、ザカーズ(笑)。
 マロリオンでの彼はカワイイぞ!(≧▽≦)
 興味をもたれたかたは、マロリオン物語も読まれてはいかがでしょうか。
 
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