○● 読書感想記 ●○
2005年 【6】

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20
 
『初恋マジカルブリッツ』 あすか正太 著

 のっけからテンション高めですね!(笑)
 序盤と中盤の雰囲気がちょーっと乖離しちゃっているようにも思ったりしたのですけれど、それでも終盤ではその両方の展開をうまく合流させてるなぁ……と。

 葛藤って、なにかを得ようとするればなにかを失うことに悩むことだと思うんです。
 それも、本当なら失いたくはないなにかを。
 もちろん、ここでいうのは物語における葛藤……ということですけれど。
 暑い日に冷たいモノが食べたいってときに、アイスかかき氷かで悩むのは葛藤とは、本来、そうとは言えないかと。

 あすかセンセは感情の振幅を、ちゃんと葛藤させているところが好感なのです。
 ただ悩む姿を描くのではなく、選択肢の先にある未来予想図をちゃんと描いてみせ、選ばせるところに作品の妙があると分かっていらっしゃる。
 ただ叫べば良いってもんじゃないってことでー。

 また、選択において普通であることがあまり重要視されず、あくまで判断の基準は個としての存在だということ。
 もしかしたら読み手の側には受け容れがたい独善と見る向きもあるかもしれません。
 良識とか、倫理観とか、そうしたところで反発心を覚えるかもしれません。
 だけれどもわたしは、自分がなにをしたいのか、自分ならどう考えるのかを大切にしているセンセの作品が好きです。


 初体験のシーンですけれど、これでよかったんじゃないでしょうか?
 雰囲気、出ていると思いますしー。
 描写を減らすことも……まぁ、考えられなくはないですけれど、でも緊張感とか、恥じらいとか、焦りとか──初体験のときにあるであろう感情は丁寧に描かれていたと思いますので。
 次巻以降、心配ではありますけれど。
 あー、でもこの二人のことだったら、またまたドギマギするかもー(笑)。

 勇気をもって交際するふたりを応援します。
 

19
 
『夏変幻 ピストル夜想曲』 青目京子 著

 2巻目をそれなりに面白く感じるというのは、やはり必要な諸情報を事前にもっているところが大きいかなぁ。
 設定の部分での説明が不要だったり、キャラが置かれた立場もすでに物語の中で動き出しているところにあるわけですし。

 ん、まぁ、そんなカンジで1巻よりはとても読みやすかったです。
 ストーリーのからくりも随分とシンプルでしたし。

 そう……シンプルなだけに、映の感情の移ろいがですね、ちょーっと針振れすぎじゃないかなぁって。
 出自を考えれば、そうした感情に戸惑ったりするのも分からないではないのですけれど、それでも。
 映自身が言っているように、三日しかなかったんですよ?
 うーん……。
 時間の長さが全てだとは言えませんけれど、だからといってそれほど濃密な繋がりを持てたとも言えないと思うんですがー。

 吊り橋効果って考えると、それはそれで納得できてしまうんですけれど、それでOKなのかなぁ……。

 もっとも、映のお相手は鬼龍院がベターだと考えていますので、今回のようなステップを踏むのも悪くはない……かな?
 現状ではあまりそっち方面で意識されていないですしー(笑)。


 映って9:1くらいの割合のツンデレかなーと。
 
18
 
『座敷童にできるコト』 七飯宏隆 著

 なんの解説も無しにテクニカルタームを連呼しながら状況説明するのは、ちょっと不親切なのではないかと思いました。

 もっとも──解説したらしたで、設定にこだわりすぎとか言い出すんですから、わたしも相当ワガママだとは思いますけれど。

 


17
 
『トリックスターズ』 久住四季 著

 密室事件。読者への挑戦状。
 仕掛けのあれこれが古典的なんですよね。
 だけれども、今の時代にそうしたクラシカルな題材に向き合って作品を生み出した姿勢に敬服します。
 歌に例えれば「桜」を使って一首詠むってくらいなものじゃないですか、密室事件なんて。語り尽くされた感があるというか。
 それでも、あえてそこを突いてきたっていうのは、久住センセが推理ミステリをよくご存じで、さらに好きなのではないかなぁ……と。

 推理ミステリを知っている……というのは、なにも「多くの作品を読んだことがある」という経験をいうのではなく、「推理を促すに必要な要素はなにかを知っている」という感性の部分。
 謎かけをすれば読者は推理を始めるってもんじゃあ……ないですよね。

 推理の手助けとなる伏線についての散りばめかたも巧みだなと。
 あからさま過ぎないさりげなさがステキ。
 推理披露の場になっても、ひとつひとつのトリックには、ちゃんと解答への道筋が示されていたんだと納得できたというか。
 大切なのは「示されていた」ではなく「納得できた」というところ。
 納得できないやりかたを「示されていた」としても、それは筆者の側の独善でしかないと思うわけで。

 魔術と推理ミステリって食い合わせが悪いと思っていましたけれど、なかなかどうしてどうして。
 できること、できないこと。
 そこを読み手にきちんと伝えていれば、「バールのようなモノ」とほとんど同じじゃないですか(笑)。
 この段階では魔術という技術の全体像までは窺えませんけれども、この作品を進行させて収束させることにおいては、そこまでする必要はなかったので、これはこれで良いのだと思います。
 この作品単体で描かれるのは、事件であって、世界ではない……というトコロでしょうか。
 その線を破って滔々と魔術の詳細を語らない選択をしたことにも非常に好感を抱きます。
 こうした点も、久住センセが「必要ななにかを知っている」感性の持ち主ではないかと思うトコロであります。


 惜しむらくは、あと3年早く上梓されていれば……というところかも。
 私見ですけれど、今のライトノベル業界は「奇抜なギミック」の部分を重要視しているように思います。
 先述のとおり、この作品に用いられているギミックはとても平凡なもので、この作品を特別に新鮮味溢れるモノだと印象づける点が薄いワケで。
 魔術が存在する世界──なんて、いまでは普通過ぎるというか。
 しかもその魔術という唯一の「ウソ」ですら、様々な制限をかけて小さな存在へと落とし込んでいます。
 もちろんこうした制限は「推理を促す」ために必要な処置なわけで、ひとつひとつ制限条項を提示していく語り方は、推理ミステリとしてとてもフェアな精神だと思いました。
 あと3年早ければ、そうした「ギミック重視」の風潮に惑わされることなく、もっと大きなトコロを進んでいけたんじゃないかなぁ……と。

 最終選考に残らなかった理由も、そのようなカンジでなんとなく理解します。
 んでも。
 ひとつの時代で強烈に輝く作品もあれば、いつの時代でも柔らかく灯る作品もあると思います。
 この作品は、もうちろん後者ではないかと。
 久住センセの実力と感性がどうなのかは、次の作品で判断されるトコロでしょう。
 楽しみにしていますので、がんばってほしいです。


 余談。
 選考落ちした作品を拾い上げるというのは、どうなんでしょ?
 こうして、良い作品に巡り会える機会ができるのはもちろんステキなことだとは思うのですが、逆に「どうして選外なんだろう」と選考自体に疑問をもってしまうというか。
 また、感想を抱いたときに「受賞作<選外作」となってしまった場合、受賞作への認識もあまり好ましい感情とはならないのではないかと。
 評者と読者が好む方向が異なると言えばそれまでですけれど。

 ぶっちゃけ「選考落ち」とか、述べる必要はないよねぇ……ってことで。

 それを言うのは「つまらなくても『選考落ち』作品なので、ご理解ください」っていう、出版側のエクスキューズだと思いますし。
 んで、もし面白いと評価されれば、普通に考えた場合に作品の完成度や充実度などは「選考外作品<受賞作品」であろうと消費者は勝手に想像をつけてしまうので、ブランドへの期待を惹起させるという。
 出版サイドには部数を読み間違えなければ、あまりリスクは無い手法なのが納得いかないワケで。

 もっとも、出版化のチャンスをもらったセンセの側からすると、「これだけの作品なのに選外だったんだ! 君たちはどう思うよ!」ってカンジで、反骨の気概の現れなのかもしれませんけど。

 もしそうだとしたら──。
 うん。
 受賞作を含めて、今年の電撃文庫の新人作家さんの作品のなかでは、イチバン好きですよ!
 だから、がんばってください!
 
16
 
『飾られた記号 The Last Object』 佐竹彬 著

 なーんか、文章にイヤラシさをカンジたんですけど……。

 全体の1/3にさしかかるところで初めて主人公のフルネームが登場するってのは、なにかのオシャレでしょうか?
 最近の文章っての、ホント、分からない年齢になってきたなぁ……。

「匂いに対する人間の感受性は、視覚的なイメージに引きずられることが少なくない。(中略)誤認してしまうことは大いにあり得る(後略)」

 「少なくない」とか「大いにあり得る」とか、推理披露の場での探偵役の言葉として相応しくないような──?
 それでは犯人側の台詞ッポイ。

 全般的なものとして、主観であると弁証に対しての防御壁を張りつつ、結論を絶対的な客観として論じているところを受け容れがたいのかも。
 

bk 登録無し
(05/06/18)

15
 
『処女はお姉さまに恋してる 囚われの姫君』 村上早紀 著

 『おとボク』のノベライズ、紫苑さま編。
 わりと素直にまとまっているかな〜ってカンジです。
 ノベライズにあたっての独自設定も凶悪なほどには見当たりませんし。
 どちらかというと設定を加える方向ではなく、簡略化しているなーと。
 で、その簡略が意図するところも、文章量の削減のためでしょうから充分に納得できるワケで。
 それは仕方ないよなーって。

 まだ紫苑様ルートに入っていない時期のイベントなどは、今後のキャラでもまた描かれたりするでしょうから楽しみです。
 奏ちゃんのリボンの件とか。

 紫苑さまが奏ちゃんに優しくするシーンは、涙無しには……。
 紫苑さまの優しさを感じることができるからでしょうか。
 普段、ちょーっと変なトコロがあるだけに、なおさら(笑)。

 そしてゲームと同じく、紫苑さまを見舞うために奔走する瑞穂ちゃんたちがっ。
 この行動力にはホント、憧れます。

「突然思い立ったように後先考えずに行動し、何か事件を引き起こすとうじうじ悩むわりに、妙な正義感や義侠心に溢れている」

 瑞穂ちゃんを評しての言葉ですけれど、これってわたしが思い描く主人公の形のひとつかなぁ。


 次作は貴子さん編だそうで。
 楽しみー!
 


14
 
『ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・わん』 新井輝 著

 あー、わかった。
 自分、本編の流れの速さに、感情が追いついていってないんだ。
 個々人のエピソードなり心情なりを、もっとゆっくりと掘り下げてほしいって感じているんですね、きっと。
 だからこそ今回のようなショートは、本編を少し立ち止まって振り返ってみましょうってカンジなので、すごく好感でした。

 わたしの理想は、ひとつの事変に決着の光明が見えてから次の事変へと移っていってほしいという……。
 もっともそうした現在進行形の事変がいくつも存在しているというのが現実であるわけで、そういうリアル感がこの作品の妙でもあるとは分かっているつもりですが。


 登場人物紹介。
 千夜子ちゃんの紹介文が4行ってところに涙を誘われます。
 主人公の彼女なのにね……アハハハ(T▽T)。

 こうしてみると、鍵原ツバメちゃんと窪塚佳奈ちゃんのキャラがかぶっているような……。
 まぁ、健一を中心とした世界なので仕方ないのかなー。
 ツバメちゃんは千夜子ちゃんを介して、佳奈ちゃんは日奈ちゃんを介して、健一と触れてくるわけですし。
 

13
 
『振り返れば先生がいる 2ndシーズン』 響野夏菜 著

 コミックと小説の組み合わせで進む形式は効果的だったと思います。
 でもこれ、いろいろと編集サイドが手間なんでしょうねぇ。
 ご苦労様です。

 本文のほうは、あー、そうなっちゃったかぁ……ってカンジ。
 ふたりの関係がそうなるであろうことは自然といえば自然なんですけれど、んー……。
 父娘の関係をほほえましく感じていたからでしょうか。
 ちと寂しい。

 そしてイチバンの頑張り屋サンは──藤岡だーっ!!
 あんたオトコだよ、輝いてるよ……(TДT)。
 ピエロになってしまう性分の人って、気概がイイ人なんですよねぇ……。

 オトコとオンナの間に友情は成立するのか──は、永遠の命題です。
 それについては成立しようがしまいがどうでもいいのですがー。
 藤岡くんの場合は友情に隠された愛情があったというワケで。
 彼には倖せになってホスィ……(T▽T)。
 
12
 
『わたしたちの田村くん』 竹宮ゆゆこ 著

 次の巻が出るまで結論は保留にしなきゃいけないのは分かるのですけれども──。

 目に映るモノしか信じることをできず、自分で考えるという行為を知らず、自分が精一杯やれば結果が伴ってきて当然だと考えているようなフシを主人公に感じます。
 なんというか──自分で勝手に思いこんで、相手を慮ることを忘れ、それがどんなに相手に失礼で、深く傷つけることなのか気付かない主人公を気持ち悪く感じたり……。

 成長途中にある少年の物語ではなく、狭量な大人の物語のように思えました。
 アダルトチルドレンってひと昔前に言われたじゃないですか。
 間違っているかもしれませんけれど、あのようなカンジ。

 松澤小巻篇で物事とは目に見えるモノが全てではないと理解して成長したのだとしたら、相馬広香篇での勝手ぶりが理解できません。


 ヒロインが受けた傷にくらべて、主人公はずっと安穏としているように思うのです。
 傷ついたように見えても、それは自分の想像と違う現実に「驚いている」だけのように見えるのデス。


 う〜……。
 とにかく、どう収拾つけるのか見届けないと。
 あんまり「コメディー」の方向へはしらないでくれると嬉しいかなぁ。
 

11
 
『振り返れば先生がいる』 響野夏菜 著

 あー、入りが素直で読みやすぅ〜。
 それも、ゆっくりと物語を動かすのではなく、いきなりバーンとぉ落とすというか。
 ちゃんと動き始めているんですよね。
 初めからちゃんと。

 どうすれば物語が動き始めるか分かっているから、無理な設定に頼ることも少なくてすむんですよね。
 物語を作ために設定を用意するのではなく、状況を用意すれば物語は自然と動き始める……ってことでー。


 セルフでボケとツッコミをカバーできるヒロイン・真奈子も好み〜。
 とくになにがって特徴あるわけでもないのですけれど、言動が。
 間違いを犯すかもしれないけれども、それでも自分から動くところとかー。
 誰かを頼る弱さを見せたとしても、最後には自分の考えを信じているところとかー。

 このお話、真奈子とスズキのお話なのはもちろんだと思いますけれど、じつは「良いオトコはかくあるべし」みたいな金言集なんじゃないかなぁ(笑)。
 とにかく、この作品に登場する敵方のオトコの言動は真似してはイカンってことで。
 

10
 
『ロクメンダイス、』 中村九郎 著

 び……微妙〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
 でも『白黒キューピッド』の人と同じだとすると納得〜〜〜〜〜。


 ライトノベルって「わかりやすさ」がある程度必要だと思うんですけれど、この作品には(というか、この人の作品には)無いかなぁ……。
 文字に記すだけで書き手と読み手の意識と知識が同一化されると考えているような。
 ただでさえ物語を読み進めるウソ(設定)が少なくないのに、説明が足りてないと思います。
 伝えようとする努力を感じないというか。
 それって、読み手を楽しませるというエンターテインメントに欠けていることにつながるのではないかと。

 もし、行間を読んで本気で解析して欲しいと望まれるなら、ここではなく文壇の世界へ行かれるべきなのではないかと感じたり。
 ……わたしが言うまでもなく、あちらの世界へ飛び立ちそうな気配を感じますが。

 台詞がやけに芝居がかっているのが気になるのですが、もしかするとこの人は戯曲や舞台脚本などのほうが向いているのかもしれません。
 地の文は設定披露以上の意味は無いように見えますし。

 ともかく、設定披露→芝居がかった台詞→披露→台詞→披露……という流れには、辟易しちゃいました。
 ……んでもですよ。
 作品を包み込むセンスは──嫌いじゃないかもです。
 「純愛に隠された謎──珠玉のラブストーリー(←オビのコピー)」ではなくて、男の子のビルディング・ストーリーとしては……有り?
 もっとも「何を超えることで成長するのか」の「何」の部分からして設定の域(作者の想像)に因ってしまっているので、読み手のわたしは共感を得るのが難しかったというか、自慰的な思考を受けてしまったんですけれど……。

 そもそもラブストーリーを成立させるために構築された「恋をしたい」という感情の対立軸も、実際は違うし。
 主人公は「恋をしたい」ではなく「死にたくない」が本質にあるから、恋に落ちたとしても本気かどうかを疑っちゃうんですよねー。
 これ、「死んでもイイと思える恋をしよう」のほうが分かりやすくないですか?
 「生き続けるために恋をする」ではなくて。


 凝った設定を構築するのではなく、もっとこう、ストレートな話を見てみたいなぁ。
 でも最近のラノベ業界の方向性って、良くも悪くも独創的であることが求められていますし、それは無理ですか……。
 中村センセの設定が独創的であることは間違いないですし。


 あ、dowさんのイラストは良かったですね。
 ことにカラーが。
 「ここではないどこか」のような、不思議な雰囲気を醸し出しているというか。


 で、結局、タイトルの読点はなんの意味があったんでしょう……?
 ……こういうところが独創的なんですよねぇ。
 独走的かもしれませんけれど(苦笑)。
 

9
 
『灼眼のシャナ 0』 高橋弥七郎 著

 シャナ以下の主要キャラクターたちがあまりにも存在感を持ちすぎているために、紅世の徒が人の世に顕在することで生じる哀惜といった部分が活かされていないのではないかと。
 本当はそれだけでゴハン何杯もおかわりできちゃうくらいにステキ設定だと思うんですけれどー。
 なんといっても「すぐそこに別れがあることが確実」なんですよ?
 訪れるであろう別離をカンジながらも、人間にはそれを座して待つしかない無力感って、そりゃもう物語になるんじゃないかなぁ……と。

 本編ではその役割を悠二に固定しちゃっているので、一番大切な「別れ」が演出できないんですよねー。
 ほんともったいない。

 そういう意味で、今作のショート「オーバーチュアー」などは雰囲気良かったなと。
 なるほど、たしかに「別離を繰り返す」という叙情的な部分は、こうした短編のほうが活かされるのかもしれません。
 電撃で例えるなら、『キノの旅』とか『しにがみのバラッド。』とか。


 コメディ・ショートのほうは、まぁ、遊んでるなぁ……と。
 こうした遊びも、本編のほうが認められているからこそなんでしょうねー。
 ここまで本編をしっかりと書いてきているので、こうした遊びの作品も許されるというか。
 本編がしっかりしていなければ、キャラをいじって遊ぶことなんてできるはずもないので。
 吉田一美ちゃん、がんばってた!

 でも──やぱし、キャラ多すぎじゃないデスカ?(苦笑)


 予定調和な展開かもしれませんけれど、大切なのは「予定調和」だと思わせても、その流れに説得力をもたせることだと思います。
 説得力を省いて「これがお約束だから」で流してしまっては、それこそ駄文でしかありません。
 言うなれば、ハッピーエンドに至ることが予定調和だとしても、そこへ辿り着くことが相応しいと思わせれば勝ち、みたいな。
 舞踏会の第二の試練での得点勝負で、ふとそんなことを思いました。
 シャナらしい言動で驚愕させておいて、そのオチをちゃんと用意するところが大切なのだと。


 そして──千草さんがこの作品のヒロインに思えました(←カラー口絵、最初の見開き)。

 


8
 
『伯爵と妖精 恋人は幽霊』 谷瑞恵 著

 くぅぅぅぅぅ……っっっ!!!!!
 あまりにスバラシヒ展開に泣けてきそう!!!(T▽T)
 ここまでのアンケートで、こういう希望があったのかな?
 なんだかそういう気がします。
 読者の期待に応えてみたっていうかー。
 すくなくとも、わたしの希望は叶いました! YEAH!(≧▽≦)
 もちろん アーミン のことですよ(ネタバレ反転注意)。

 言われたから書いたという受け身な姿勢ではなく──いえ、きっかけはアンケートという受け身なものだったのかもしれませんけれど、その内容を考察して、読者が読みたいと願っているのはどういうことなのかを、センセ御自身の中できちんと整理できているのではないでしょうか。
 自分が書きたいから書いた、ではなくて、読み手のことを考えていらっしゃるような。
 そんなエンターテインメント性を感じます。


 んで、今回ものっけから痴話喧嘩でワクワクしちゃったり(笑)。
 冒頭でこういう展開を示して作品の方向性を示すことで、これからの展開を読み手に約束しているような感じを受けます。
 期待していいよ──って仰っているようで。

 そいでもって、今回の妖精はアザラシ妖精!
 スィール! スィール!(違ッ)
 毛皮の逸話も上手に物語の中に取り入れられていますしー。
 そんなアザラシ妖精の事件も解決して、リディアも一歩一歩、フェアリードクターの道を進んでいますね。
 1巻ごとに妖精の友人が増えていくところも楽しいなぁ。


 恋話のほうも、前進?
 伯爵のPUSHに対して、リディアの拒絶の仕方が緩くなってきていますよ?(笑)
 じわりじわりと外堀が埋まっていくトコロ、絶妙!(≧▽≦)

 あー、次巻が楽しみ〜。
 

7
 
『先輩とぼく 5』 沖田雅 著

 これといって命題が無いために、迷走しているカンジ……。

 1冊読み切りって形式で毎回ハチャメチャしているという点では、よくネタを拾ってオチへと運んでいるなぁ……って感心できるのですけれど。

 サブキャラにスポットを当てるのはシリーズ物の手法としてアリだと思いますけれど、その中でも主役のふたりの状況を忘れてはいけないと思うんですよ。
 っていうか、この作品が「先輩とぼく」であるかぎり、ふたりが立つ位置にきちんとライトが当てられていないと。

 んーと。
 今回のオーラの恋物語は、この作品が持つであろう特異性を利用しなくても描けたのではないかと思っています。
 ことに川村くんが主張する台詞に今回が要約されるのであれば。


 ま、見知ったキャラクターたちがやるからこそウケるってのも、もちろんアルとは思いますけれども。


 ラスト。次への展開への伏線っぽいのがありましたけれど、ここらで収束にかかったのかなーって気が。
 シリーズ終幕も近いのかなぁ。
 つばさ先輩が卒業するあたりで。

 ……オチが「もう一度ふたりが入れ替わって元通り」だったらどうしよう。

 


6
 
『伯爵と妖精 プロポーズはお手やわらかに』 谷瑞恵 著

 入りの部分がですね、巧いッて思わされるんです。
 物語のさわり、主人公たちとは離れた場所で起こる、きっかけとなる状況を導入部で描く手法って、きわめて古典的な手法なんですけれど。
 んでも、この時点ではまだ主人公たちが関わってきていないだけに、あまり多くを説明されると冗長なカンジを受けてしまうところですが、そのさじ加減が絶妙。

 もちろん「きっかけとなる状況」についても、これから起こるであろう物語にとても興味をそそられるようなネタが振られているワケで。
 単なる状況説明ではなくて。

 ふと思ったんですけれど、このセンスで推理ミステリを書いてはくれませんかねぇ。

 そいでもって──。

「腕力は負けるかもね。でも彼には、知性も財産も地位もない。たいていの女性なら、賢明に僕を選ぶだろう。でもきみは、そういう種類の女の子じゃない」
「……バカバカしいわ」
「そう、バカバカしいことだ。だけどしようもないことを引き合いに比較して、勝ち負けを考えてしまうのは、恋じゃないのかな」

 ──GOGO! 伯爵さま!(≧▽≦)
 リディアが恋への不安から異性との距離感について語ってますけれど、そんな彼女とは反対に伯爵は距離というモノを意識していない……というか、そもそも他人との距離を0か1かでしか考えていないような。
 幼少期にダメージ深いイベントがあったリディアですから、そう厳密に距離を意識するのもどうかと思いますけれど、伯爵のようにキッチリ・クッキリ区別してるのもねぇ……。
 そりゃリディアも不安になるって言いましょうか……(苦笑)。

 彼女とのことを「互いに補え合える」相手と考えているあたり、伯爵もまだまだだなぁ……って思いますけれどっ。
 そういう利得関係では、リディアは説得できまい(笑)。


 そしてカールトン教授は、頼りなさげな生活不能者に見えても、一人娘のパパさんなのでした。
 人生の先輩として伯爵に教鞭たれる姿はステキさー。
 ふふふ。悩め悩め、若人よ(笑)。
 ちうか、教授の前では、伯爵も心の服を一枚脱いでいる気が。
 教授に父親像を見てたり……する?

 



5
 
『桜咲くまで勝負ですッ!』 榎木洋子 著

 サキト・シリーズ以来、ひさぶりに読んでみる榎木センセですけれどー。
 いや、面白かった!
 ていうか、照れます!
 なによ、この甘酸っぱさは!(≧▽≦)
 読んでるとき、心の中でコブシを振り続けてましたよ。
 ええ、それはもう、間柴のフリッカーのごとく!

 恋愛の扉を初めて開けようとしている男の子と女の子の物語なんですから、そりゃもう甘酸っぱいよねぇっ!
 ショートが三篇(最後のは外伝っていうか……)収録されているわけですけれど、描こうとする事柄に対しての文章量としてはこれが適当なのかもー。
 ツボをおさえて描ききっているというカンジ。

 キャラクターも造型にてらいがなくて良かったです。
 なかでも幸乃さんがカワイーッ!
 見つけた恋に対してポジティブでいるところはもちろんですけれど、自分の考えを持っているところがステキです。
 それを他人に押しつけないところとか、他人の考えも認めるふところの深さも。
 こーゆー人と一緒にいると、人は良い方向へ変わっていけるような気がします。

「ありがとう、妙子ちゃん。でも多賀くんのことをおしえてくれるだけで充分。それ以上のことは、たとえば自分を売り込むこととかは、私自身がいなくちゃいけないことですから。大丈夫。応援してもらえるのとっても心強いです」

 うーん。スゴイです。
 独特のテンポが気になる人もいるかもしれませんけれど、わたしはそのテンポも含めて良いと思う!

 ……嗚呼。
 この子たちのその後を読みたいなぁ。
 



4
 
『伯爵と妖精 あまい罠には気をつけて』 谷瑞恵 著

 小気味よく推移していく状況と、その流れの中でゆっくりと進んでいく感情。
 心地よいですね〜。
 伯爵の過去話とか、意外と情報量多めなんですけれど、不思議と気になりませんでした。
 わたしが納得できる設定の立て方であったことももちろんでしょうけれど、それを披露する際の筆致に嫌みがないと感じたのは大きかったかと。
 んーと……。
 言葉だけでどれだけ語ろうともそれはデータでしかなく、キャラクターに備わってこそ初めて設定は活かされるものなのだと。

 リディアが伯爵をかように嫌うのは、本質的には身分違いだって感じているからですよねー。
 そして自分の価値を知らなすぎ。
 出自からすれば、それも仕方がないワケですけれどもー。
 でも彼女の気持ちが微妙に微妙に変わっていく様が丁寧に描かれていて、好感です。
 伯爵のほうも、彼女のような存在に戸惑っているトコロが、ねー(笑)。

 あ、伯爵っていえば、レイヴンへ対する気遣いが良かったですね。
 なんというか、伯爵→レイヴンが父子のような関係に見えてきたり。
 んで、リディアの位置は継母ってカンジ?
 実母とは違った母性を発揮する役どころではないかと。
 他人だけれども、あるいは他人だからこそ持てる愛情の形みたいなー。
 


3
 
『伯爵と妖精 あいつは優雅な大悪党』 谷瑞恵 著

 知恵と勇気で立ち向かう主人公を見るのは、やっぱり気持ちが良いのです。
 知恵だけでは理屈臭くカンジてしまいます。
 勇気だけでは無謀だとカンジてしまいます。
 ふたつあわさればこそ、主人公の行動に納得もできますし、読み手のわたしも応援したくなるのです。

 そんな次第で、主人公のリディア、好きですね〜。
 どれだけ傷ついても、人を信じることをやめたくないって姿勢も好感。
 単に朴直ってこととは違うと思うんです。
 この世界の汚いところ、非情なところを見知った上で、なおかつ、自分の生き方として選んでいるところを好ましく思うのです。

 世界の暗部を経てきたエドガーだから、リディアに惹かれるのかもなぁ……。
 世界の有り様を全て知っているとしても、そうあってほしいという、信じたいモノを彼女は性根に持っているワケですし。

 アクティブな女の子と、一歩引いた斜め後ろの位置で見守る男の子という構図は大好きです!(≧▽≦)


 えーっと、それで……。
 わたし的にはアーミンが、その……リディアより好みだったワケですけれども──。
 倖せになってほしかった……(TДT)。


 TtTを遊んだせいか、「家付き妖精」とかあると嬉しくなりました(笑)。
 

2
『クロス 〜月影の譜〜』 毛利志生子 著

 TRPGのリプレイ上がりのお話……ってカンジが。
 事件は物語としてそつなく展開していくんですけれど、どうも人間関係が希薄で。
 主要登場人物がどうして同じベクトルで動いているのか理解しづらいような。

 そのあたりTRPGであればキャラクター同士の関係が希薄でも、セッションを同じくしているプレイヤーの存在が影響を及ぼしてきますし。
 キャラ同士は面識無くても、プレイヤー同士は既知の仲である……といった。
 故にセッションを成功させるために、物語をまとめる方向へと動く……ワケで。

 つまるところ……キャラクターの意志で動いているのではなく、もっとメタ的ななにかに「動かされている」ようにカンジてしまったわけですか。
 物語を進め、明かし、まとめるために。


 単発モノとして上梓されたみたいですけれど、それも「怪しい」って仰っているってことは、シリーズ化の方向なんでしょうか。
 もし次があるのでしたら、飛鳥とレイをもっともっといちゃいちゃさせてほしいなぁ。
 血のつながりが恋しい気持ちにさせるのか、それとも血のつながりがなくても本気で恋しく思うのか。
 そのあたりで悶々とお願いします(笑)。
 

『 銀の一角獣』 片山奈保子 著

 無垢な魂の持ち主は、見ているのがツライというか……。
 自分にはありえない価値観というか、望んでもそうはなれないであろうというような、否定の目で見てしまうことも一因かと思いますがー。
 その無垢な魂が、邪な存在によって傷つけられていく様を見るのがツライということでもあります。

 心地よい物語であれば、最後まで傷ついたままで終わりということは無いのでしょうけれど、その過程を見るのは……やっぱり、ね。
 もっとも、そうしたフラストレーションをいかにしてクライマックスで昇華させるのかが物語のキモなんでしょうけれどもっ!

 あー。
 そういう意味では、この作品の昇華のさせ方は……えーっと、スゴかった?
 あんな行動に出るヒロインは見たことないです(笑)。
 言うなればあのシーンって、ラスボスに必殺技を繰り出すトコロですよね?
 ……あぁ、必殺技っちゃぁ、必殺技ですか。
 たしかに勝てる気がしないです……(^-^;)。

 無垢であるからといって、無力ではない……ってコトでしょうか。
 むしろ現時点では無敵ダヨ!(笑)
 
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