○● 読書感想記 ●○ 2005年 【5】 ※ 表紙画像をクリックすると【bk1】へと飛びます ※
「こんなもん、お前の独りよがり、ただのジコチューじゃねえか」
メインで登場している男の子のこの台詞が、どこへか跳ね返っていくような……。
「──わたしが、この世で何よりも大切にしている言葉があります。 それは『正義』と『友情』です──」
そう口にした秋実の想いが、これからの展開で表されていったらなぁ……と思ってます。
「ねえ、たまにぼくが今でもただのガリオンで、おじいさんはファルドー農園にやってくる年寄りの語り部だったらいいのにと思うことはない? ポルおばさんが昔みたいに台所で夕食を作っててさ──ぼくたちはぼくがくすねてきたお酒の瓶を持って干し草の下に隠れてるんだよ」ガリオンはそう言ううちに、郷愁がこみあげてくるのを覚えた。 「たまにはな、ガリオン。ほんのたまにだ」ウルフは遠くを見るような目で言った。 「もうあそこに戻ることはないでしょう?」 「昔のようにという意味なら、もうだいだろう」
過ぎ去りし日々。 時間は、感情とは無縁で流れていくワケで。 でも、本質では、もうあの頃に戻りたい、あの時間を過ごしたいとは思っていないのではないかなー、と。 世界のありようを知った今では。 戻りたいのではなくて、ほんのすこし、いまのままで居たいって気持ちかなー。 あまりにも周りの流れが速くて、ココロが置いてけぼりになっている状態?
作者は決して直接的になにかを出現させることはできず、読者という他人を回路として、初めて実質的に表現を達成するのです。
この言葉に表されているようなことが、桑島センセの作品にはあるのかなぁ……と。