○● 読書感想記 ●○
2005年 【1】
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20 |
『ミナミノミナミノ』 秋山瑞人
著 『イリヤ』4巻の頃の伊里野と浅羽のすれ違いを彷彿とさせるのですが――。 前シリーズのクライマックス要素をシリーズ初巻で用いるのは、前シリーズを上回るぞとの意気込みなのでしょうか。 でも、あとがきでちょっと脱力。 「売り」を優先で書かれたのかぁ……とか思っちゃって。 うん。それでも気持ちの良い筆致なのは確かですし、惹き付けるモノがあるのも承知なんですけど。 なんでしょう。この、あやふやな気まずさは。 |
19 |
『魔法戦士スイートナイツ2
下巻』 あもんひろし 著 帯に書かれた「ここに終結!」の文字……って、ええーっ!? これで幕引きですかっ!! 本編のゲームをプレイしていないので難しいところですけれど、もしかしてこの終わり方が本編の方へフィードしたりしているんでしょうか。 こ、これからだと思うんですけど……。 とりあえずシリーズ作品として見た場合の感想は、面白かったかなぁ……と。 メッツァーの心情だけでなく、彼に惹かれていくスイートナイツたちの心の動きも丁寧に描かれていましたし。 特にこの巻での凛々子の立ち振る舞いは見事かと。 トライアングルの次回作はこのシリーズでは無いっぽいですし、ちょっと残念。 メッツアーのその後とか、彼が選ぶのは結局のところ誰になるのかとか知りたいですー。 |
18 |
『笛吹き男とサクセス塾の秘密』 はやみねかおる
著 レーチの紹介欄で「亜衣の彼氏」とか書かれてて、ちょービックリ。 ……あ、でも本編読んで納得。そっかそっか。そーだよね(笑)。 トリックは比較的平易なものだと思います。 ですけれど、今回はそういった推理ミステリとしての存在ではなくで、岐路に立つ少年少女たちの姿を描くことに意義があったのではないかと思います。 この夢水清志郎も、はや10周年。作品刊行数としても第12弾です。 小学生だった三姉妹たちも、中学三年生。 そらもういろいろあるワケでー。 短くも濃密な時間を過ごすことで、何を感じて何を選ぶのか。 そういった姿勢を、たぶん、同世代の子へ贈りたかったのではないかと。 レーチの悩みは特別なものではなく、誰もが思っていること。 むしろ誰もが「思って良いこと」のハズです。 現実はそうしたことを考える余裕を与えてはくれないかもしれませんけれど。 「これから、もっともっと人生は楽しくなりますよ。楽しみですね」 たとえ大人になっても――あるいは、大人になったと思えるからこそ、神谷先生のように、言えたらいいなと思います。 |
17 |
『渚のロブスター少女』 あきさかあさひ
著 わっかりやすっ(≧▽≦)。 でも、ものすごく真っ当な、直球勝負の物語に仕上がっていると思います。 読んでいて、安心感があるというか。 主人公はコンプレックスがあって、そのコンプレックスを打ち消すアイテムがあって、コンプレックスを克服したかに見えたところで転換点があって、本当の意味でコンプレックスと向き合わなければならない状況に陥って、そして葛藤――選択をして、自らの努力で未来をつかむ! 一見するとおバカな様相ですけど、骨子はしっかりしているんですよね。 これはスゴイ〜。 「描きたいこと」ではなくて、「伝えたいこと」があるって大事ですね。 これからが楽しみな人です。 |
16 |
『カエルと殿下と森の魔女 緑竜亭繁盛記』 橘柑子
著 主人公が事件に対して何一つ当事者になってないのはスゴイなぁ……。 半分を過ぎるまでの導入部が、「勘違い」という構成も。 |
15 |
『吉永さん家のガーゴイル 6』 田口仙年堂
著 誰かのために、犠牲となる。 そう言ってしまうと、ちょっと固い感じがしますけど、つまりは大切なモノのためにはこの身を厭わず……ということで。 そういう展開って、このシリーズの根幹にあるなぁ……と思う次第。 で、わたしの場合(もちろん一般的に言っても)、その展開は胸に迫るものがあるわけで。 「それに――僕は、桃ちゃんを泣かせた奴に一泡吹かせてやりたい。それだけでも、公演を続ける理由にはなると思うんだけど」 やっぱり和己くんのこの言葉かなぁ(笑)。 |
14 |
『GOSICK
W』 桜庭一樹 著 ヴィクトリカとアブリルの遭遇は、まぁ、予想の範囲内? ちょっとアブリルが大人しかったかなぁ……とは思いましたけれど。 でもやっぱり桜庭センセは女の子同士の物語を描くことに長けていると思うので、これからが楽しみです。 あー、久城くんとの仲も気にはなりますけどー。 ぶっちゃけ、桜庭センセの作品で恋愛まで進んだ関係はこれまで見たことないので、あまりそちらには進まないのかなー……とか思うので。 今回のトリック、図に描いて説明した方が面白かったのではないでしょうか。 というかその方が真っ当な推理小説になったような。 言葉だけで描くと、どうしても机上の空論めいた感じを受けるんですよねー。 |
13 |
『ルート225』 藤野千夜
著 この結び方を「物語」と呼ぶことが許せるなら、多くの「文章」をそう呼ぶことでしょう。 でも、映画化できる作品であるというのは、なんとなく理解できました。 |
12 |
『ゴスペラー 湖底の群霊』 岡田剛
著 うわーっ。この雰囲気は好きですーっ!(≧▽≦) 哲学的であり、淡々と進みながら、強いメッセージ性を放っている、と――。 少女、育ての親である神父、死なない女。 奇妙な組み合わせでのロードムービーっぽいところも良かったですし。 普通の生活から、この逃避行?への舞台の移行のしかたもすごくスムーズで、読んでいて戸惑うこともなかったですし。 なんだか筆致がすごくわたしの読むリズムに合っていた感じがします。 いや、もう、そこかしこに胸打つ言葉が置かれてて――。 あなたがいない哀しみは、乗り越えられません。忘れることはできず、傷は癒されず、痛みが取り除かれることはありません。そしてそんなことを私は望みもしません。引き受けて、慣れていきます。ときどき、あなたに呼びかけながら。 失うものを予感させ、そのものに対する切ない憧憬を抱かせつつも、確固たる意志をもって前に進む。 |
11 |
『バクト!』 海冬レイジ
著 もしかして、『ブロークン・フィスト』の担当者様と、この作品の担当者様って同じ人……だったりしませんか? ふと、そんな気が。 |
10 |
『フォルマント・ブルー カラっぽの僕に、君はうたう。』 木ノ歌詠
著 ミヤスリサさんのイラスト勝ち。 それでも普段描かれている造形より、より一般受けしそうなスタイルを選んでいるなぁ……と感じましたけれど。 良い意味で、ミヤスリサさんらしさが抜けているカンジ。 前半から後半へと繋いでいくところの物語の転換点が普通すぎて機能していないような。 そして後半の展開は、わたしがこの作品に求めるものとは異なる方向へと向かっていたので、ちょっと……。 主人公が何もしないままに事態が好転していくというのは、どうにも気持ちが悪いです。 走って、叫んで、腕を伸ばして欲しい物を手に入れてこそ、主人公はナンボだと思うので。 「その身体じゃ、自宅で安静にしていたほうがよさそうね」 ――で、引き下がってどうするのぉっ!?(゚Д゚) ガジェットは好みだったのですけどー。 |
9 |
『DADDY
FACE メドゥーサW』 伊達将範 著 いよいよ「メドゥーサ編」が完結したわけですけれどもー。 ……思いっきり、引いてるしー。 たしかに「メドゥーサ」に関しては、一段落ついているわけですけど。 でも、広げた話の大きさにしては、なんというか、こう、カタルシスを感じさせない決着だったように思うんです。 事実だけを記しても、それは物語ではないというか。 登場人物の多さが、結局どうにもならないとこへ向かってしまったワケで。 瑠璃人なんて、ただでさえ樫緒の陰に隠れちゃって印象薄いのに。 どうして今回のシリーズで登場させたのかなぁ。 彼自身、なにもしてないじゃないですか。 鷲士くんと美貴ちゃんが離ればなれになって物語が進むのはこれまでにもありましたけれど、どうもこのシリーズは「離れていても感じさせる互いの絆」のようなものが希薄だったように思います。 わたしがこの作品に求めているのって、そういうところだっただけに、残念ッ。 気長に待ちますので、次のシリーズでは是非とも親子関係・恋人関係の描写を多めにお願いしますー。 |
8 |
『彩雲国物語 想いは遥かなる茶都へ』 雪乃紗衣
著 これからの展開への引きとなる巻なので、あまり……。 それ以前に、龍輝への気持ちをちゃんと作中で描いていない段階で彼に対するライバルを出すのは、なんとなく時期尚早な気がするんですけれどもー。 女性官吏として奮闘する秀麗の必死さはこれまでに充分伝わってきているんですけれど、はたして恋心のほうはどうなのかなぁ……と。 劉輝はたくさんアプローチをして秀麗への想いを伝えているというのに、秀麗のほうはあまり行動で示してはくれないんだもん。 どうも秀麗は劉輝の前で身構えているような気がするんですけれど。 弱さを見せるのは劉輝以外の、例えば絳攸とか燕青とかだったり。 うーん。 大丈夫なのかなぁ、この2人……。 ともあれ、引きの巻なので次が楽しみなのは確かです。 香鈴と影月の関係も、びっみょーに気になります(^_^)。 そして英姫さまがっ! |
7 |
『彩雲国物語 花は紫宮に咲く』 雪乃紗衣
著 おじさん、大活躍(笑)。 秀麗と龍輝のラブっぷり度は落ち着いてしまった感がありますけれども、参殿してからの秀麗たち及第をした者たちの頑張りには素直に感動。 邪魔をするバカどもには、ムカツキと哀れみが半分半分かなー。 この辺の気持ち、かなり秀麗とシンクロしていたように思います。 いろいろと妨害されながらも、少しずつ理解者を増やしていくあたりの件は、展開の進みなどうまいなぁと思ったりして。 そして胡蝶ねえさんの件には涙が……(T▽T)。 ああ、ちゃんと女の子の秀麗を理解してくれる人がいたんだなぁ……と。 珠翠さんがそうなったりするのかなー……とかも思ったりしたのですけれど。 そしてふた振りの剣、「干將」「莫邪」、キターッ!てなもんです。 ちょっと難しい恋心?を抱いているところなんて、アーチャーっぽいですか? |
6 |
『彩雲国物語 黄金の約束』 雪乃紗衣
著 後宮を去った秀麗と、主上の劉輝をどうやって会わせるかと思いきや……そうきましたか!というカンジ。 実際には2人は遭遇していないんですけれど、そのすれ違いがまた楽しいです。 ……劉輝、報われないなぁ(笑)。 んでも、秀麗のほうも意識しているようですし、これは……と思ったんですけど、国試の女人受験の検討ですかー。 こりゃ恋話は進展しそうもないですねー。 残念ッ。 キャラ数はけっこうな数になるはずなのに、各人に見せ場があるのがスゴイですね。 そのどれもがニヤニヤしてしまいます(^-^)。 邵可さんが煎れたお茶を飲む珠翠が、かーわいー!(≧▽≦) たのしみなシリーズになりました。 |
5 |
『彩雲国物語 はじまりの風は紅く』 雪乃紗衣
著 あー。ビーンズ文庫のスタイルが分かってきたような。 男女のどちらも秘密を抱えているんですけど、オトコの人のほうの秘密は身分に由来するものであって、あまり公にはできないたぐいのものだなぁ……と。 で。 ヒロインの秀麗のきっぷの良さには、ホレボレです。 アクティブなヒロイン像というのも、ビーンズ文庫らしさですか? そことなく衆道っぽいのも……(苦笑)。 あー、でも、秀麗と劉輝の夫婦生活は面白かったです。 劉輝があまりにも天然なものだから、いちいち振り回される秀麗が(笑)。 |
4 |
『緑翠のロクサーヌ 王を愛した風の乙女』 藍田真央
著 前作の『アイオーニア』を読んでなくても楽しめる……とは、藍田センセ御自身のお言葉ですけれど、やっぱり前作を読んでないとキャラの背後にあるモノというか、背負っているモノの重みを分からなくてもったいないと思う次第。 それを知っているか否かで、作品に対する評価も異なってくると思いますし。 もちろん、筆致として面白い物語かどうかという部分は、また別の判断でしょうけれども。 そんな次第で、ライアスが背負ってしまったものを知っているだけに、彼のココロの中に入ってきたのがロクサーヌであって本当に良かったというか嬉しくなるというか。 ロクサーヌが良い子すぎて、ほんっとーに……(T▽T)。 「悪いと思っているなら、このまま、ベッドイン!」 このあたりの行動力に惹かれるんですよねー(苦笑)。 どんなに「これから」誠実に生きようと誓っても、今日は、それまでどうやって生きてきたか、過去の行いで評価されるのだ。もちろん、未来は改めることは出来る。でも今日の自分を裁くのは、昨日まで自分がどう生きてきたか。残酷なほど、全て自分お蒔いた種なのだ。 重い言葉だと。 |
3 |
『天空の剣』 喜多みどり
著 うーん……。 大ネタは揃えたものの、それらをつなぐ小ネタまでは用意できなかった。 そんなカンジが。 全体的に説明不足な感じがあって状況についてイメージしずらかったり、心情についても語るべき部分が見えなかったり。 多分、喜多センセ御自身には分かっているトコロなんでしょうけれども。 宮城とおこセンセの絵で「俺様」な魔法使い……って、あの人を思い浮かべてしまったんですけれどー(苦笑)。 |
2 |
『黄金のアイオーニア 青き瞳の姫将軍』 藍田真央
著 古代ギリシアがモチーフとなっているんですよね? どうして現実そのままの舞台にしなかったのか不思議ですけれども。 ……それとも、わたしが知らないだけで、この呼び方もあるのかな?? とまれ、あの時代ならではの身分制を活かして物語を作られているなぁ……と。 主人公たち3姉妹の生き方の違いなんて、そこから発しているわけですし。 でも、歴史物として読むのではなく、異なる立場、敵味方に引き裂かれた愛しあう男女のお話を楽しむのが適当なのでしょう。 アイオーニアにもエフェロスも辛いよねぇ……。 それだけに、あのラストが嬉しくなるというか(T▽T)。 ドーリアの行動など、ちょっと都合良すぎる展開もないわけではないですけれども、そこはアイオとエフェロスの物語なので、2人のためにそうなっていると納得。 ……っていうか、ああ、この作品、本当に『ロミオとジュリエット』なんですね。 そりゃ好きになるハズです(^_^;)。 ところで、ドーリアとイオニアとあって、どうして3姉妹の残りの一人がコリントじゃないのでしょうか。 たしかにあまりヒロインの名前ではないかもしれませんけれど(苦笑)。 |
1 |
『ネペンテス』 清水マリコ
著 これはもう一般的なライトノベルではないなぁ……という印象が。 グリム童話などのほうが性質は近いような気がします。 あるいは、舞台劇のための脚本のノリ? 語り部の言葉を介しての心情の吐露が目立たないようなところを、そう思うのだとは思います。 お話の形式などは、これまでのMF文庫での清水センセの作品の中ではイチバン好きかもです。 ただ先述の通り、語り部の言葉で世界を見つめていないような気がするので、そういったところがちょっと苦手かもしれません。 んでも、それって短編連作という形式が生み出す雰囲気かもしれません。 それと、これまでになく都市伝説を活かした……というか、都市伝説の有り様について語られた物語だと感じる点で、わたしが好きにならないハズがなく!(笑) 現世との関わりをどこかで断ち切って幽世へと導かれていく手段、あるいはルールが都市伝説だと思っているので、どうしても陰鬱な雰囲気を秘めてしまうのは当然のこととして、ホラーとは異なるのは現実のすぐ側にあるとカンジさせる点なのではないでしょうか。 単に不気味さとか恐怖を表現しているのではなくて、根底に流れるのは不安なのだと思う次第。 清水センセは、そんな感情の機微を描くことに長けているなぁ……と。 |