○● 読書感想記 ●○
2004年 【12】

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20
『アシャワンの乙女たち』 牧野修 著

 いろいろと説明が足りないなー、と。
 限られた枚数の中で物語としての呈を取るために微分していった結果、残った部分がこの作品……というカンジが。
 登場人物の魅力の多くが、行動ではなく言葉で示されてしまっているのはもったいないと思う次第。
 メインの4人の女の子の魅力って、もっと行動を掘り下げて描くことが出来たと思うんですけど、どうなんでしょうか。
 それとも、描きたかったのは戦う女の子であって、女の子の所作とかではないということなのでしょうか。

 うーん……。
 少なくとも、彼女たちの言動に某かの共感を得られることはなかった……かなぁ。
 記号としての彼女たちには興味を持てたので、読み始めは楽しみだったんですけどもー。

19
『マリア様がみてる イン ライブラリー』 今野緒雪 著

 短編集と割り切ってしまって、無理に全ての話をつなげる必要はなかったのでは?……と思ってしまうのですけれども。
 それぞれの話で描かれる時間も大きく異なっているわけですし。
 読んでいて混乱してしまいました。

 ……今野センセが描きたいことと、読者が求めることにズレが出ていているような。
 少なくとも、わたしはそうなのですが。
 『マリア様がみてる』から『いとしき歳月』までの描き方と、『チェリーブロッサム』以降の描き方には違いがあるというか。
 正直に言えば、前者は終着地点を思い描けるのに対して、後者は暗中模索の状態に思えるのです。
 もっとも、そうした気持ちにさせることは、商品として悪いことではないのかもしれませんけれど。
 でも、そろそろホントに、何かひとつ、はっきりとした形で実を結んで欲しいと思うわけで。


18
『春季限定いちごタルト事件』 米澤穂信 著

 綺麗にまとまっているなぁ……というのが大まかな感想だったりして。
 物語が、ではなくて……あ、いや、そういうことなのかもしれませんけれど、描く物語のキャパシティに適した設定やプロットの量などが、です。
 ちゃんと全体を見通して書かれているように思いました。

 本編の内容についても、かなり好みでしたー。
 女の子の存在が男の子を探偵にするというのは、推理ミステリの中でも好みの部類なのでー。
 トリック?も「ああ!」と頷けるものばかりで満足。
 それでいて簡単なことなんですもんねー。

 小佐内さんの言動も、ちょいとエキセントリックで目を惹かれましたー。
 しかし小鳩君とのやり取りを見ると、「この2人、付き合っているんじゃん!」と言いたくなってしまうのですけれども?
 そういう恋愛物語方面に発展しそうでしないというもどかしさも良かったです。
 この1冊で綺麗にまとまっているように思うのですけど、小鳩君と小佐内さんのその後を知りたくもあり……。
 うーん……やっぱり続きを読みたいですねー。

17
『星界の戦旗W 軋む時空』 森岡浩之 著

 ジントは主役から降板ですか?……ってくらいに存在感が薄くなって。
 物語自体も戦記物めいて、なんだか読みにくくなった感じ。
 場面が転換するのはまぁ手法としてあるとして、キャラの説明を省いているのはどうかと。
 前作から時間が空いているというのに、何の説明もなく登場させているのは、ちょっとどうなのかなぁ……。

 ファンなら付いてこいってことでしょうか。
 んでも、わたしが望んでいたのは、こういう話でなかったことは確かですので、残念だなぁ……と。


16
『三月、七日。〜その後のハナし〜』 森橋ビンゴ 著

 前作と同じく、こうした帰結には納得はいかないんですけど、この作品は好きというジレンマを感じます。
 ずっとずっとひとりの人を好きでいて、おばあちゃんになった頃に孫に自慢話をする――って、どうなんでしょ?
 それって、添い遂げた人への裏切りなんじゃないかなぁ……とか思ったりして。
 でも、「ほかの人を好きになっても、ずっと好きでいる」というのは分かるのですよ。
 好きな人はひとりだけというのはナンセンスだと思うので。
 ただ、その想いを公にするという行為が、その……。

 三月と真希のカップルについても、そう。
 どれだけこの二人が近しい存在になっても、なにかのきっかけで七日の存在が溝を作ってしまうのではないかと。
 ささいなことでケンカして、「わたしは七日じゃないから」と言ってしまうとか。
 この二人にとって、七日の存在は大きな影になっていくのかもと思うと、ちょっと結ばれるのは難しいかなぁ……とか思ったりして。
 でも、そういうおバカなことを意識させてしまうのは、恐らく三月のほうだと思うので、真希が賢くなればいいのかな(笑)。
 実際、この時点で「七日とはこういう人間なのだ」と分かっているわけですし。
 いいように操ったれ(笑)。

 真希といい、七日といい、女の子が強いお話でした。
 そんなとこを好きなのかも。

15
『Holy☆Hearts! 忘れられない、ぬくもりです。』 神代明 著

 今回でようやく、キャラの見分けが出来てきました、わたし……。
 スペランツァがちょっと……だったもので。
 キャラが多いと楽しいんですけど、ちと覚えるのが大変です。
 それと、一人あたりの描写の量が減ってしまうのが残念っ。

 でも、ザックローとリジーって、似合いすぎるのが恐いですね(笑)。
 フェリカさんとも、それなりに良い雰囲気なんですけどねー。
 というか、フェリカさん、ザックローの気持ちを知りつつも気付かないフリをしてますか?
 なんといってもキュノのお父さん役ですし(エクスはお母さんだと思う)、キュノの将来のことのほうが気がかりなのかも。

 本編のほうは、スノーフレイク編が一段落。
 大変な事態に遭遇しても、キュノたちが夢を諦めないでいてくれたことは嬉しかったですよー。
 この3人組、やっぱり良い仲間ですね。
 仲間がいるから、くじけたりしない、諦めたりしない、もっと頑張れる!……みたいな気持ちが伝わってくるのですよ。

 そろそろスペランツァのことも意識してくると思うんですけど、その前に、新フィオーレとの交流話をもっと!希望です。

14
『新はっぴぃセブン vol.9ハッピー・クリスマスをあなたに』 川崎ヒロユキ 著

 SHK編終了ですかー。
 テーマパークの雰囲気が好きでしたー。
 あんまり舞台になることは多くはなかったですけど。
 今回もSHK編終了というより、次への布石の回でしたし。
 クリスマスが舞台なんですから、もっと、みんなに何かイベントがあっても良かったんじゃないかなぁ……とか思ったりして。
 「はっぴぃセブン」の活躍というイベントではなくて。

 人気投票、たもんちゃんが1位ですか。
 ……意外?(苦笑)
 でもないか。菊之介の寝込みを襲った前科もあることですし(^-^)。
 まひるさんの3位、おめでとですね!(≧▽≦)

13
『さよならトロイメライ Novellette』 壱乗寺かるた 著

 『ドラゴンマガジン』への掲載分を含めての短編集でしたけれども、6本中2本が書き下ろしなのはスゴイな〜と。
 その書き下ろしのうちの1本、八千代ちゃんがメインのお話は良かったですしー。
 いちおう都お嬢様のパートナーという役ですけれど、八千代ちゃんの魅力が出るのは、トーマスと1対1で向き合うときだと思います。
 都お嬢様などは、誰かがトーマスとの間に介在したときに可愛く思えますけど。

 ……ヤキモチとツンデレの違いですか?(苦笑)

 都お嬢様は「恋の願いと鐘の音と」が良かったですね。
 勘違い、サイコー!(≧▽≦)

 このシリーズの主旨や魅力とは外れてしまうのかもしれませんけれど、壱乗寺センセはたくさんのキャラを一度に描くより、少数……それも1対1のお話を書かれた方が良いのではないかと思ったりして。
 ミステリではなく、普通に恋愛青春小説を……とか。

12
『乃木坂春香の秘密』 五十嵐雄策 著

 ある事柄に対する因果をきちんと説明する以前に、書き手がこうだと決めつけているトコロが気になったりもするのですけれど。
 でも、勢いを殺さないためには大事なことなのかも。
 筆致などは割と好みだったりしたので、勢いで押しまくるパターンではなく、精緻な構造をもった作品を読んでみたい気がします。

11
『青空のように君は笑う』 小池雪 著

 あとがきを要約。
『なんだか町工場の話が書きたいなーってことを思っていたのですが、ストーリー的には華がなかったもんで、担当さんに「自分の好きなものを出してみては」というようなことを言われ、そこでまんまとホストの案などでてきたのでした。』

 本編読んでいてなんだか居心地の悪さを感じてしまったのですけど、なんとなく状況が分かったので納得できました。
 読者へ向けられる意識が希薄なんですね。


10
『風の王国 女王の谷』 毛利志生子 著

 うっ……。
 翠蘭とリジムは、今年のベストカップル候補かも……。

「おはよう、王妃さま」
 翠蘭の髪に唇を当ててから、リジムが身を起こした。
 リジムは失礼にもしげしげと翠蘭の顔をながめ、満面の笑顔で評した。
「昨夜はきれいだったが、今朝はかわいいな」
「おまえの目には、変な膜がかかっているんじゃないか?」
 翠蘭は、本気で尋ねた。

 とかさぁっ、もうっ!(≧▽≦)
 真珠の件とか、新年の宴の件とかさぁっ!
 いちいち、この二人ってば睦まじいったらありゃしない!
 変な話ですけど、「どちらが相手のことを、より深く愛しているか」というテーマで話し合ったら、この二人って一歩も引かないんじゃないでしょうか。
 そんな姿が目に浮かびます(笑)。

 タシバール王とかラトナの行動には、腑に落ちないところもあるのですけれど、今巻では翠蘭とリジムのラブっぷりに目が囚われていたので、そこは割とどうでもよかったりして。
 普通の物語なら、幸せな二人の仲を裂くような出来事が起こって盛り上がっていくのでしょうけれど、この作品に限ってはお互いに揺るぎない信頼を感じるんですよねー。
 見ていて安心できるというか。
 信じているからこそ抱く不安に、こちらもドキドキさせられてしまうわけで。

 思ったのですけど、この二人って、向き合う形ではなくて、翠蘭が背中を預ける形で抱き合うケースが多くないですか?
 こういう仕草にも、信頼しあっているんだなぁ……と思わされます。
 あと、やたらとキスするのも良いですね(笑)。


『ROOM NO.1301 #4 お姉さまはヒステリック!』 新井輝 著

 1冊の本の内容としては、なんとなく収まりが悪い書き方をしているのはワザとなんでしょうか。
 別にそれが悪いということではないですけども。
 なんとなく、古風な書き方だなぁ……という感じを受けたり。

 1冊で終わらせようとしつつも、伏線にもならない設定の残滓をちりばめておくような昨今の作品群より、ずっと好感なのです。

 まぁ、そんなワケなので、ホタルとの仲は、これといって何の解決も見えぬままなワケですけれどもー。
 この「継続感」が、麻薬ですねぇ。
 実際、前巻でホタルにポジションを奪われてしまった感のある冴子ちゃんなんかは、今巻で大いに存在感を増してきましたし。


 それにしても12月刊だからって、オビをクリスマスっぽく統一することはなかったんじゃないかなー、富士ミスはー。
 これまであった「あそび」の部分が無くなってしまうと、例えそういう意図が無かったとしても、何らかの差し障りがあったのではないかと勘ぐってしまうわけで。
 もったいなーい。


『風の王国 天の玉座』 毛利志生子 著

 ラセルがかわいーっ!
 大人のような物分かりの良さもなく、子ども子どもしていて。
 年齢相応の子を描いているなぁ……というカンジが。

 翠蘭とリジムの新婚生活は、ちょっと淡々としてる……かな?
 もっとイチャイチャしてても良いと思うんですけどー。
 ……って、けっこうしてますか?(苦笑)


 でも最近のコバルトは恋愛関係で留めないで、その先の生活も描くようになったと思うのですが、どうでしょう?
 『コラリー&フェリックス』のシリーズもそうですし。
 もしかして、読者が成長するのに合わせていたりするんでしょうか。
 「りぼん」の次が「別マ」で、さらに「ヤングユー」とかになっていくという。
 『パズルゲーム・はいすくーる』みたいな?



『風の王国』 毛利志生子 著

 キャラの名前とか相互関係とか覚えるのに、ちと手間取ったかも。
 でも、登場してきたキャラにはちゃんと役割がありましたし、意味のない登場があるがゆえの困難さではなかったですよね。
 行動してくれれば、人柄も見えてきましたし。

 で、やっぱり翠蘭のこと。
 こういうキャラ、好きなんですね、わたし。
 彼女の言動にはグイグイ引き込まれますよー。
 もう、彼女とリジムのやりとりにはドキドキさー!(≧▽≦)

 クライマックスは経過が重要視されていて、物語としては盛り上がりに欠けているような気もしますけれど。
 恋が成就するにしては、困難さが足りてないような……。
 そのあとの展開は嬉しい限りなんですけど、もうちょっと盛り上げてくれればなぁ……って、高望みデスカ?


『女子大生会計士の事件簿 DX.2 騒がしい探偵や怪盗たち』 山田真哉 著

 おおー。ビジネスミステリ第2弾ですかー!
 もともとある本の文庫化なのですから、このあとの刊行も既定路線かと思いますけど、やっぱり文芸書としては微妙なだけに、さてさて……?
 でも前巻よりは今回のほうが、わたしは物語として好きかなー。
 『「綺麗だね」と僕が言った!?』事件とか好きー。

 もとがもとだけに仕方がないのかもしれませんけれど、人物の心情をもっと深く描けば、物語としてはさらに面白くなるような気がします。
 そのあたり『十二月の祝祭』事件では、山田センセの体験もあったからなのか、訴えてくるものがあったように思えました。

 久織さんが描く今回の表紙。
 わたしが思い描く萌さんらしくって、すごく好きー!


『そらのこども』 萩原麻里 著

 綺麗な物語ですねー。
 苦悩を乗り越えていく少年たちの姿は美しいといいますか。
 ひとりでは乗り越えられなかった壁も、仲間がいるから越えられる……と。
 もちろん、決断は誰にも肩代わりできることではなく、自分ひとりで見極めるしかないわけですけれども。
 それでも、同じように思い悩む仲間の姿が、自分がひとりで悩んでいるわけではないと気付かせてくれるわけで。

 主人公のジルが、ちょーっとおおらかすぎるかなぁ……という気もしたのですけれど、こういうものデスカ?
 あとは、も少しクライマックスにカタルシスがあったらなぁ……と思ったりして。
 こういう穏やかに物語の幕が下ろされるのも、もちろん悪くないと思いますけど。


 岩崎美奈子センセが絵を描くと、なんとなく手に取っちゃいますねー。
 わたし的にはマウリの気難しそうなところが好きでしょうか(笑)。

 本文中では、上級生のナグ・ロワールかな。
 教授たちも、みなさん個性的で好きですけど。


 萩原センセは「蛇々哩姫」で悪くないなぁ……という印象だったのですけれども、これはちょっと好きになってきかも……です。


『TAKE FIVE』 在原竹広 著

 限定条件の構築が強引……というか漠然と言うか。
 人数も、これだけ揃える必要があったのかと、ちと疑問だったりします。
 兄妹だけで良かったんじゃないのかと。

 主人公は……国彦、ですか?(微妙……)

 ラストも急に迎えた感があって、驚いてしまいました。
 「物語」……ではなくて、「事件」だったという印象かなー。


『南青山少女ブックセンター2 乙女のリハーサル』 桑島由一 著

 あ……れ? 今回も響ちゃん活躍の回ですか?
 この作品がギャルゲーっぽいテイストで描かれているのなら、女の子の魅力……活躍は、概ね均等であるべきだと思うんですけど。
 それとも、小説というメディアではゲームと異なり、均等に少女の魅力を描くということが無理なのでしょうか。
 ……マルチエンディングにできないのですから、それも当然かもしれませんけど。

 正ヒロインは晴子かと思っていたのですけども、その地位も危ういなぁ……。
 今回、全く活躍してませんし。


『あそびにいくヨ!5 仔猫たちのがくえんさい』 神野オキナ 著

 騎央がどうとか、エリスがどうのとか、「あそびにいくヨ!」単体の楽しみを期待しているわけではないと気付いてしまいました。
 わたしがこの本に期待しているのは、「シュレイオー」の続編としての位置付けなのだなぁ……と。

 いちばんワクワクしたのって、アロウと旅士の登場……というか会話でしたし。
 厳密に続編とは違う気がしますけども。
 旅士とかいちかとかの名前の件に加えて、今回はアロウの名前もアズロヴではなくて、アズロワになってましたしー。

 いや、しかしあのアロウが声優になっていたとは……。
 元傭兵で声優……って、それだけで何かの物語が始まりそうなんですけど?(笑)
 こうなると旅士の今の職業が気になるーっ!


『憐 Ren 刻のナイフと空色のミライ』 水口敬文 著

 様式としてはSF作品……なんじゃないかと。
 でも数字を使った理系SF作品ではなく、文字で語る文系SF作品。
 ……わたしの分類なので、分かりにくいかとは思いますけど(苦笑)。
 筒井康隆センセっぽい雰囲気をおぼえました。

 で、内容はボーイ・ミーツ・ガール?
 それだけでないような気もしますけど、やっぱりコレなのかなー。
 自分と会って惹かれ合っていくことは、簡単には認められることじゃないのだけれども、それでも意識せざるを得ない二人……。
 気持ちにウソをつく切なさと、正直に生きることの清々しさ。
 嗚呼、青春ねー……って思ってしまうワケですよ!

 二人が惹かれ合って、互いを求めるときの疾走感にはドキドキしてしまいました。
 失うものを食い止めようとするときの、必死のあがきのような動的描写はすごく巧みだなぁ……と。
 反面、ラスト付近、淡々と済ませてしまうようなところは、ちょっと読後感に影響してしまうかもしれませんねー。

 でも、未来よりも今を大切にするようなラストは、すごく好きです。
 自分の意志を通して生きることが無駄ではないかと疑問に思わされるシーンもあるわけですけれども、全編を通してみたとき、「運命」という言葉は結果であり、そして諦めの言葉なのではないかと思うのです。
 運命のために生きるのではなく、生きた証が運命なのではないかと。


 シギサワカヤさんのイラストも、作品に合ってるんですよねー。
 鋭角的な女の子と、緩い男の子が、もうっ!(笑)
 口絵カラーのコミックなんて、手慣れたカンジ。
 そりゃ同人であれだけ描ける人ですもんねぇ……。

 そんな次第で、かなりお気に入りの物語でした。
 次回作も楽しみにしています。

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