○● 読書感想記 ●○
2004年 【9】

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20
『オーバー・ザ・ホライズン』 橘早月 著

 少年が夢を叶えるために空を目指すお話。
 ……だとするならば。
 この物語を何故に架空世界で描かなければならなかったのか、描く必要があったのか、わたしには見つけられなかったデス。

 揚力で浮かび上がる機械を飛行機として定義するならば、空を飛ぶための障害はわたしたちの世界と同じ物理法則ですし。
 それ以外の障害があるならば、そこに重きを見出すべきですし。
 軍政下という状況が障害となるなら、それはまたわたしたちの世界と同じ理屈を当てはめている、用いているだけですし。


 物語が機能するために架空世界である積極的理由は見つけられませんデシタ……。
 つまるところ、「この世界ならでは!」というスパイスを見つけられなかったのかなぁ、わたしは……。

19
『撲殺天使ドクロちゃん 4』 おかゆまさき 著

 うーん。とりしもセンセ、塗りが変わったような……。
 気のせい……?

 前巻で終わってしまう不安もあったわけですけど、でもその後に電撃hpスペシャルで書き下ろしとかしてましたから、なんかそういうのも今更ですよねぇ〜。
 今巻で収録されている半分のお話はそちらで読んでいたので新鮮味は少なかったのですけど、相変わらずおバカで面白かったです。
 いちばん強烈だったのは、「バラモスゾンビ」です(笑)。

 桜の樹のお話は、『ドクロちゃん』らしさと、物語的妙味が合わさっていて、面白い作品に仕上がっている良作なのではないかなー……と思います。

 クラスメイトたちも物語の表に出てくるようになってきて、いろいろと動いているカンジは受けるのですけど、反面、静希ちゃんが影薄……。
 今回から南ちゃんがパワープッシュされてきてますしねぇ……。

18
『ROOM NO.1301 #3 同居人はロマンティック?』 新井輝 著

 冴子ちゃんの話ではなく、ホタルの話だったような……?
 もっとも、それでわたしは良かったわけですけど。
 次巻以降、目が離せなくなりましたよ!

 冴子ちゃんとは、このままゆっくりとした変化なんでしょうか?
 まぁ、それも……いいかな?

 千夜子ちゃんとの絡みは、ちょっと分裂気味というか助長過ぎるかなぁ……と思ってしまったりして。
 そういうふたりだから仕方が無いと思いつつも、です。
 ここにツバメが入ってくると、かなり苦手かな〜。

 「ややこしくなる日常を淡々と描く」――とは名文句ですね(笑)。


 それにしても綾さんも冴子ちゃんもオープンになってきているというか、強くなってきているというか。
 ガンバレ、健一!(笑)


 そうそう。今回も、あとがきはキてますね!(^_^;)

17
『勿忘草の咲く頃に』 沖原朋美 著

 んー……。なんだかもったいない気が。
 じんわりと心に染み入るお話の系統だと思うんですけど、なんか、こう……。
 泣かすなら、泣かす!
 希望を見せるなら、見せる!
 曖昧な帰結では、どうにも残るものが無かった……かな?
 雰囲気作りには序盤から成功していると思うんですよねー……。
 昨今は珍しくなった素直なお話だと思いますし。
 ちょっとクラシカル? 丘ミキのあたりの雰囲気に似ているのかも。
 そう考えると、このような帰結も「アリ」なのかもー。

16
『レンタルマギカ 〜魔法使い、貸します!』 三田誠 著

 最後の解決策が「イヤーボーン」なのは、どうなんでしょう……?
 存在の提示は端々であったわけですから、厳密に「イヤーボーン」ではないのだとは思いますけど、なんの犠牲も払わずに解決できてしまうのなら、同じことなんじゃないかなぁ……と思ってしまいます。

 物語もあまり新鮮味が感じられなかったのですけれども、筆致はかなり良かった印象を受けました。
 文章のリズムが合ってるのかな?
 好きな声の人とのおしゃべりなら、会話の内容はどうでもよくて楽しむことができる……みたいな?
 いや、物語に新鮮味を感じられなくても、キャラの設定は好みですし、実際の評価はこれから次第……なのかもしれません。
 これだけ未消化の設定を蒔いているからには、続刊、期待してますヨ〜。

15
『額の中の美女たち クイーンズガード』 駒崎優 著

 あはは。表紙の澄子さんがカワイイです。
 この巻になると、澄子さんのドジッ子ぶりというか、粗忽者ぶりが定着してきているような?
 でも、与えられた役職の重圧に押し潰されるような人ではないので、見ていて安心できます。
 気持ちの切り替えが巧みなところが素敵です。

 お話自体もあちこち起伏に富んでいて面白かったです。
 んでも、それだけに終盤の山が、ちょっとインパクト弱くなってしまっているかもです。
 残念!

 キャラの中では、まだ克ちゃんが浮いているかなぁ。
 克ちゃんでなければどうにもならないという場面が無いので、ここにいる理由が見えてこないわけで。
 「普通である事が求められる場所というものがある」……でしたっけ?
 それは分かるのですけど、普通の人が普通であるままではエンターテイメントには昇華しないと思う次第。
 次巻以降の活躍に期待です。
 咲也くん込みでしょうね、やぱし(^_^)。

 それにしても新キャラの圭介さん、いいキャラですねぇ(笑)。


14
アウトニア王国人類戦記録2 でたまか 霜降暗夜 篇』 鷹見一幸 著

 マイドの活躍が無いということは、必定、それは危機に陥っているというわけで。
 そういうときの主人公は、奮戦記の頃からケルプと決まっているわけで。
 ……どんな逆境にも、笑いと心意気を忘れない、そんなケルプが好きだーっ!

 でもケルプも成長しましたよね。
 再興録の頃は本当に本当にピンチになったら、マイドの名前を呼んでましたもん。
 それが……コットンのことを思い浮かべるなんて!!(≧▽≦)
 あたしゃ嬉しいよ!
 コットンもコットンで、憑き物が落ちたようにアクティヴになってるしー!

 ……マイドとメイでは遊べなかったから、このふたりで何か仕掛けようという鷹見センセの悪巧み?

 人が変わったようになっているのはコットンだけじゃなく――。
 あのチャマーの変節ぶりには何か理由が?
 いやさ、理由がなかったら噴飯モノですけども。
 いろいろと考えることはあるのですけど、まだ確証には材料が足りません。
 とりあえず、アウトニア王家の出自に関しては、ちょっと唐突だった感が否めませんでした。
 エリスさまが可哀想……(T△T)。


 それにしても帝国軍の参謀会議は笑えますねぇ。
 マルス家が排除されても、変わりがないところがなんとも……。
 根拠も無しに「打ち破るのは容易い」とか言っちゃうとことか。
 デジャブりましたよ。

 でも奮戦記〜再興録と積み上げてきた物語の中、マイドが残してきたものがここにきてあちこちで見られるようになってきていることが、シリーズのファンとしては嬉しい限りです。
 今回で言えば「人は自分が信じようと思うものしか信じない」とか。

 さて、次巻ではコットンとケルプの再会は……ありますよね?
 奮戦記1巻以来の人死にが無いことを願います。


13
『クイーンズ・ガード』 駒崎優 著

 女王様を守る人たちではなくて、「グランド・クイーンズ・ホテル」というホテルを守る処理課の人たちの物語なわけですけど――。
 いや、面白かったです。
 ホテルという仕事場に関わってくるような専門的な事例がもっと活かされると、さらにワタシ好みになってくると思うんですけど、それより大切なのはキャラクター像かなぁ。
 わりと特異な設定を持つ方々ばかりなのですけど、その設定――つまりは作中での生き方に嫌味を感じなかったのです。
 設定よりも、筆致によってキャラが活かされているというカンジ。

 わたし的には、課長の貴志澄子さんがラブ。
 年下の若い男性社員をこきつかう、上昇志向のキャリアウーマン……ってカッコイイです。
 完璧超人ではなくて、ちょっとヌケたところがあるのが、またカワイイ!(≧▽≦)
 岩崎美奈子さんのイラストが、また素敵なんですよ〜。

 続刊が楽しみです。

12
『名犬ミケは左きき』 阪本良太 著

 雰囲気は悪くないと思うんですけど、構成のほうは、その……。
 主人公である洋輔の感情の転換点とクライマックスがあまりにも近すぎて、物語のまとめかたがすごく急に思えてしまうんですけども。
 中盤までの洋輔とミケの交流を、あそこまで繰り返す必要はあったのかなぁ……。
 「ミケを犬だと信じない」という洋輔の心情も、ちょっと共感を得られなかったかなぁ。
 頑固……といのともちと違って、なんだか書き手側の理由があるからこの時点では信じない……というようなものを覚えたんですけども。

 とまれ洋輔の態度・感情に変化は起こったわけで、物語としては理解を示せる要素のあるお話でした。

 真琴の恋心とか、今回で消化できなかった内容もありますし、これは次巻へ続く……なのでしょうか?
 わたし的には『はなひな』より作品として好みなので、こちらを続けていってほしく思います。

11
『世界最大のこびと』 羽田奈緒子 著

 んー、んー、んー……。
 悪くないお話だと思うんですけど、なにか、こう……。

 このお話の中で、葛藤があって、選択して、そして感情の変化が起こっているのはザイスなんですよね。
 そういった意味から、このお話は彼の物語だと言えると思うのですけど、描写の多くは彼ではなく人間側の一弥の側から描かれているわけで。
 なんというか、ザイスとパウエルを中心に据えたお話だったら良かったのですけど、そこに人間側の視点がかようにも必要だったのか、ちょっと、そこが……。

 ザイスとパウエル、サトリとメイネ。
 この二者の軸は物語に必要だったと思うんですけど、はたして一弥と小百合の軸は必要だったのかなぁ……。
 描きたかったことが「少年の誤解が解けて、ひとつ大人になる」ということではなく「こびとのお話、人間との協調」だとすれば納得……なのかな?
 でも、そうだとすると、もっと両者の交流に描写を割いてほしかったと思う次第。

 あと一弥とアテナの交流を(笑)。

 ……MF文庫って、キャラを多めに配置する傾向にあると思うんですけど、如何に?

 とまれ、筆致それ自体はとても素直で読みやすくて、キャラの作りも好感触なので、これからの作品が期待できるなぁ……と思います。
 楽しみです。


10
『てくてくとぼく』 枯野瑛 著

 オビのコピーがね、いいんです!
 ちょっと分かりにくいんですけど、薄い文字で書かれているんです。
 店頭で見かけたときは、手にとってよく見てください。

 で、本編。
 すごくオーソドックスな話なので、妙味は薄いかもしれません。
 そこが気になってしまう人もいるかもしれませんけども、わたしは好き!
 枯野センセは、おだやかな空気を描くことがすごく巧みだと思うのです。
 そしてそれは緊迫感のあるシーンに差し掛かると、一転して哀しみへと変化するのです。
 なので、緊迫感といっても外的要因から迫られるものではなく、胸を衝いてくるような内的要因でのものではないかと思う次第。

 前半と後半で雰囲気が変わってしまいますけど、それもアリかなぁ……と、賛美派の意見。
 前半はこの世界を、そして枯野瑛ワールドを示すために必要なものだったと思いますし、後半は物語を動かすために必要だったと思うわけで。

 とまれ、楽しみな作品がまたひとつ増えました。


10
『さよなら妖精』 米澤穂信 著

 以前読んだときに、ここに記していなかったので、今更ながら。
 感想は……うーん……。
 時間みつくろって、そのうちに。

『神様家族5 恋愛体操』 桑島由一 著

 あー……。佐間太郎が、神様っぽくなってきている、ような?
 甘えたところがなくなってきているから、かな?

 久美子ちゃんが、もうほとんど勝負から降りているので、佐間太郎とテンコの恋模様を安心して楽しめる作品になってきたのは、わたしにとっては良い傾向です。
 安心といっても、今回のように、あのふたりはまだまだですしー!(笑)
 瞬間・世田谷・恋色。

 恋愛体操、いいですよね。
 とくに13番と14番。
 これだけで、すごく倖せな気持ちになれると思う。
 うん。

 笑いとシリアスが7:3くらいの割合だったようなカンジ。
 でも、中身の濃かった3割でした。

 そして今回もヤスダスズヒトさんは、素敵なお仕事をしていらっしゃるのデシタ。
 MF文庫は、見開きイラストを効果的に用いますよねー。


 ププローグとピピローグの仕掛けはサスガです(^_^;)。



『復活の地U』 小川一水 著

 嗚呼……。セイオのやる気が空回りしてきて……。
 張りつめた糸のような人というのは、いまのセイオみたいな人を言うんでしょうね。
 抗うことのできない期待に応えようと懸命になって、自分の優先順位がたとえようもなく低いモノになってしまっている人。
 そんなセイオを「気を許すのが恐いのですね」と見抜いたスミルには、ホント、彼を支えてあげて欲しいんですけどねー。
 今巻では、かなり本音をストレートに述べるようになりましたし。
 「私はあなたに敵視されるのが嫌です! 不愉快です!」
 ……は、痛烈でしたね〜。

 行き違いはありましたけれど、クロノック公の理解も取れたみたいですし、暴走し始めた政府を相手に、どう巻き返しを計るのか楽しみです。
 だけど共に闘う同士としては理解を得られても、スミルとセイオの仲は、また別の意味で行き違いが起こっているんですよねぇ。
 いやはや、ヤキモキさせてくれます(笑)。

 でも、セイオのことだから、いざそれを問われたら、苦もなく認めるような気もしますね。
 いまは「恋愛」という行為を知らない状態に見えるので。


『あそびにいくヨ! 4 やめてとめてのうちゅうせん』 神野オキナ 著

 あとがきで神野センセ御自身が仰られているとおり、前後編ほどのボリュームある物語をリサイズしていったら、いろいろと必要な事柄まで削ぎ落としてしまった感があります。
 物語が駆け足というだけでなく、人物の心情に伝えるものが少ないと思うのです。
 そこに意志があって行動しているハズなのに、その意志が見えてこないという。
 書き手は理解しているから良いのかもしれませんけれども。

 物語の減量をはかったにもかかわらず、いやむしろ減量したせいで、いちかの存在が不可解なものになっていると思います。
 彼女は事件に介入できないとの提示をしなければ物語が成立しないという理屈はわかりますが、そうした限定条件を作るキーパーソンの説明が為されていない現状は、そろそろ限界に来ているのではないかなぁ……と思いました。
 同じように新しいキャラの投入も不可解というか……。
 カンフル剤を入れる時期でもないでしょうに……。


 あと、これは個人的な感想なんですけどー。
 最近、小川一水センセの『第六大陸』を読み返していたところなので、あんまり簡単に宇宙へ行かないで〜……とか思いました(苦笑)。
 トレース・オンでなんとかしちゃうなんて……(^_^;)。
 この辺りも、減量の影響のような気がするんですよね〜。



『復活の地T』 小川一水 著

 始まりから飛ばすなぁ……という印象が。
 もっとも災害モノは、タラタラと悠長なことはやってはいられませんけどもー。
 出だしからクライマックスみたいなドキドキ感ですよ。

 弱き者を救うために正しいことを為そうとしているセイオに立ちはだかる、あまたの権力。
 横槍がバンバン入りまくりなこの状況、小川センセ御自身の『回転翼の天使』を思い浮かべてしまいました。
 でも、小川センセにしては、セイオがそれほど窮地に陥っていないことが、なんとなく不安に。
 センセの作品では、もっとこう、這い上がれないと思わされるくらいに窮地に落とされるのが常なので。
 つまり、ここがまだ悲劇の底ではないというワケですね。
 うわぁ……(^_^;)。

 セイオとスミルの話、それとネリにまつわる話の二項が、どうやってつながっていくのか楽しみであります。
 それにしてもスミルがさぁ、ねぇ……。
 セイオにその気がないだけに、ちょっと大変かも(笑)。
 でも、「思い通りにいかない玩具に出会ったために興味をおぼえている」と見えなくもないというところが、このカップル、というかスミルの言動の弱点かなぁ。
 これから彼女の真心が、どれだけ表れてくるのかにもよりますけど。


『空ノ鐘の響く惑星で 4』 渡瀬草一郎 著

 ウルクとリセリナが互いに顔を合わせないというか、その機会に恵まれないというか。
 フェリオとは常にどちらか一人しか接しない状況は、舞台劇のようだなぁ……と。
 入れ替わりで交互に登場するキャストというか。
 もうちょっとこの二人で何かあってもいいんじゃないでしょうか?
 ていうか、あってほしいな〜っと(笑)。
 そうでなくてもこの巻のリセリナって、戦闘要員としての役割が大きくなってしまっているので、フェリオの側にいてもあまりトキメキ係数が上がってこないんですよ。
 むしろウルクがカシナートの毒牙にかからないか、心配で心配で(苦笑)。

 物語は大きく動き出しているんですけど、なんとなく淡々と進んだなぁと思ってしまうのはわたしだけ?
 結局、退場すべき人が退場しただけで、解決のためには誰も犠牲になってはいないのでそう思ってしまうのかも。
 緊張感を演出しても失うものが提示されなければ、それは表面上のできごとでしかないんじゃないかなぁ。
 フェリオの内面よりも、周囲の者から見たフェリオが描かれることが多いのも、淡々とした印象を受ける要因なのかもしれません。


『しにがみのバラッド。5』 ハセガワケイスケ 著

 今回の作品は、いつにもましてイレギュラーすぎる気がします。
 「枯れない桜と魔法」とか「人語を解するネコ」とか。
 日常を生きていく中で、抜け出せない閉塞感のようなものを、モモの存在をきっかけにして抜け出すというものがこのシリーズの妙味だと思うのですけど――。
 違うのかな?
 もともと、モモの存在は物語にはほとんど見出せないかもしれませんし。
 でも『しにがみのバラッド。』なら、モモの存在を完全に無くしてしまう、あるいは消す方向で物語を進めるのは何かが間違っているような気がします。
 たとえどれだけ良い物語だとしても。

 シリーズとして見た場合、今作の本編よりもプロローグ/エピローグ的に収められているショートストーリーが面白かったです。
 1巻や2巻で登場したカップルのその後の様子なので。
 こうした作品間のつながりが、このシリーズを面白くしていると思います。
 「空の森を泳ぐ、魚たちについて。」の樋浦トイロちゃんが、半袖のシャツと膝丈のスカートを着ているということで、あの頃の心のキズが癒えてきているんだなぁ……と思うわけで。
 「雲の海を泳ぐ、くじらについて。」では、浅野水月くんの性格が変わっているようにも思えなくも……。
 まぁ、豊花(ゆたか? とうか?)と付き合っていれば、変わりもしますか(笑)。


 でも「枯れない桜と魔法」の組み合わせって、『D.C.』を思い起こしてしまうんですけど……? うむむ……。


『食卓にビールを』 小林めぐみ 著

 うはぁ……。なんと言ってよいのやら、困ってしまいます。
 物語らしい展開があるわけでなし――。
 でも、良い意味で淡々と進んでいく様は心地よいですね。
 もう少し夫婦生活の描写があったりすると嬉しかったですけどー。

 あ、そっか。
 この雰囲気って、おーはしるいセンセの『夫婦な生活』とか、高河ゆんセンセの『LA VIE EN ROSE 』とかに似てるのかも。
 共通点は、奥様がちょっと個性的で、旦那さまが人格者であられるところ(笑)。

 剣康之センセが描かれるイラストも可愛くて素敵ですね。
 奥様の雰囲気をよく表していると思います。

 あまりにも独特すぎるきらいがあるのでオススメするのは難しいですけれど、わたしは好きですねー。
 生活感が漂う作品が好きな人向けかもです。
 ビール、飲みたくなりました(笑)。


『RUMBLE FISH あんぷらぐど』 三雲岳斗 著

 感想をアップしたと勘違いしてましたー。

 今回は短編集とのことですけど、ほとんどはスニーカー本誌で読んでましたから新鮮味はどうしても薄くなってしまっていて……。
 でもまぁ、物語の核心に触れる方向でシリアス化が進んでしまっている現状の本編より雰囲気は気楽ですし、肩肘張らずに読めました。

 もとより学校の雰囲気を打ち出さない当作品ですけど、カリキュラムとか部活動とか、そんなことが「学校」の記号ではないことを教えてくれるような気がします。
 生きていくなか、ある特別な時間。
 それを仲間とともに共有する場所。
 それが「学校」という場所なんじゃないかなぁ……と。


『描きかけのラブレター』 ヤマグチノボル 著

 うっきゃーっ!(≧▽≦)
 電車の中で読んでいたら、あまりの展開に悶え死ぬかと思って、今日は仕事を休もうかと思っちゃいましたよ。
 もう、絶好球! ハート・ストライクです!

 恋愛は、すれ違いですよね! 勘違いですよね!
 男の子はバカで鈍感なんですよね!
 女の子はワガママで素直になれないんですよね!
 うはー、参りました。降参ですー。

 なんと言いましょうか、恋愛をしている空気、みたいなものが溢れていて、読んでいるこちら側にもその戸惑いと緊張が伝わってくるような雰囲気。
 好きって気持ちがここにあるのに、それを伝えられない、持て余してしまうようなもどかしさ。
 相手を傷つけてしまうくらいに、好き。
 本当は傷つけたくないのに、泣いてほしくなんかないのに、不安になんかさせたくないのに。ただ、好きって気付いてほしい、分かってほしいのに、僕たちはどうすればいいのだろうか……。
 そんな優しくて幼くて、とても綺麗な世界がここにはあります。

 それにしてもヒロインの円のツンデレっぷりは、すごいですね。
 わたしのなかで、ヤマグチノボルせんせは「ツンデレ作家」としての地位を上り詰めつつありますよ?(笑)


 読み始めた当初は、村山由佳センセの作品に空気が似ていたので、そのあとを読むのが恐くなったのは秘密(苦笑)。
 最後まで読んでよかったよーっ!

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