○● 読書感想記 ●○
2004年 【7】

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20
『めぞんdeぎゃらくしぃ 禁断の大銀河スゴロクゲーム』 夢幻 著

 折込カラー。
 片面だけしか描かれてないのは、なんとなく損した気分。

 祐介の友人二人の人間性が最低で、読んでいて気分が悪く……。
 ノアと祐介の関係も、どうしてこの二人は惹かれ合ってると言えるのか疑問かなぁ。
 なーんにも始まっていないのに、そうであることを前提にして物語が進んでいくものですから、嫉妬とかの感情も正当なものとは思えないんです。
 結局、祐介の勇気と覚悟もわたしには見えませんし……。

19
『めぞんdeぎゃらくしぃ』 夢幻 著

 アウトドア派の彼女のバイクはレーサーレプリカ。
 ……言わんとするところは分かるのですけど、なんとなく違和感が。
 どうしてオフロードバイクじゃないのかなぁ……というあたりで。

 結局、ノアはどうして祐介を意識しているのか、本当に意識しているのかわからないかもー。
 祐介が情けないのは認めるにしても、彼女もハッキリしてないというか、ズルイ気がするのですよー。


18
『お・り・が・み 天の門』 林トモアキ 著

 林センセ、待望の新刊です。
 あー。今度はバンバン売れて、シリーズ続けていって欲しいなぁ……。
 そういう意味では、オビのコピーはどうかと思いました。
 同日発売の『E×N』でも思ったんですけど、今期のスニーカー文庫のオビのコピーって、なんかこう、的外れなカンジがするんです。
 本編を読む前に見たとき、これといって惹かれる文章ではなかったですし――。
 さりとて読み終わったあとで抱いた感想は、この作品の売りはそこなのかと苦言を言いたくなるような……。

 ここに現れるような売り方のセンス、正直、電撃文庫に大きく水をあけられているように思います(わたしの感覚では)。

 で、本編。
 序盤から中盤までは、ちょっとぎこちなかったかな〜……と思ってしまいました。
 んでも、中盤以降は筆の勢いも滑らかに滑らかに。
 具体的に言うと、「たぁくん」以降(笑)。
 キャラが動き出してきたからでしょうか。
 やっぱり林センセのキャラは、よく動き、よく喋りますねー。
 2C=がろあーサンのイラストも、そんな雰囲気をよく表していると思います。
 主人公・鈴蘭、めちゃカワイイ!(≧▽≦)

 口絵カラーの見開きイラスト。
 『ばいおれんすまじかる 核の花咲く日曜日』のカラー絵と、構図が同じ気が。
 構図? 構成?
 あー、でも似ていることが悪いというのではなく、それすらも、待ち続けた2年ぶりの新刊ということで、過去作品との共通項というか、林センセらしさを見つけたようで嬉しかったのでした。
 今回の作品自体も、普通の「正義」とか「倖せ」とかが通用しないあたり「嗚呼、林センセの作品だぁ……」とか思って嬉しい限り(^_^;)。

 正直言えば、まだ前作シリーズ『ばいおれんすまじかる』のほうが好きです。
 あちらのほうが弾けていると思うのです。
 今作は――手堅くまとめたな、という印象がなきにしもあらずなのです。
 ですが今作は、これから!という雰囲気を感じ取ることができます。
 期待していまーす。

 ところでタイトルの意味って……?
 やっぱり「おり」と「がみ」で分けるのかしらん?

17
『まずは一報ポプラパレスよりU』 河出智紀 著

 あー、いいなぁ。
 王女とその従者の恋物語。
 しかも当人は、自分たちの気持ちに気付いてない上に持て余しちゃってる様子がまた……(笑)。

「目障りと言ったな」
「言いました」
「不敬罪で減棒だ」
「はあ?」
思わず私が振り返ると、王女はぷいとむこうを向いた。
「ただし、生きて帰ってきたら、減棒は帳消しにしてやる」

 ……とかさぁ、もう!(≧▽≦)
 素直じゃないところが、すっごく可愛いよ殿下可愛いよ。

 ヴェルヒャー政務室長とかブランシャール卿とかもイイキャラ出してましたねー。
 ウルムスターという小さな国を守るためには弱さを見せるわけにはいかず、まして自分の手が汚れることなど厭わない。
 そんな覚悟がカッコイイんですよね。
 もっと政治劇っぽいところがあったらなー……と思いました。
 腹のさぐり合いみたいな。
 小国が列強の国々を向こうに回して、知恵と信頼でもって戦っていく。
 そんな物語でも良かったかなぁ……。

 残念ながら、この続きって刊行されることはないでしょうけれども(TдT)。

16
『E×N 巻之一 きみとの縁てやつ』 どば 著

 うわぁ……。
 続刊では、もっと偉人さん大集合とかなっちゃうんでしょうか……。

 キャラの動機や行動に感情移入できなかったかなぁ。
 途中までは悪くなかったと思うんですけど……。
 「世界を滅ぼす」って、具体的にはどうすることだったんでしょうか?

15
『ブルー・ハイドレード 〜融合〜』 海原零 著

 うむむ……。着実に力を付けてきているなぁ……という感じが。
 エピローグに続く本編冒頭は、ちょっと説明が長い気がしますけど、これは仕方がない……のかな?
 かなり特殊な設定ですもんね。
 にしても閉鎖空間での物語展開って、中のキャラに逃げ場がないだけでなく、書いてる筆者にとっても逃げ場が無いですよね。
 とにかくそこに居合わせた人物だけで物語を進めていかなければなりませんし。
 状況に変化は起こるかもしれないけれど、場所移動が無いために抑揚のつけかたには工夫を要しますし。

 ……とまぁ、物語は買うのですけど、キャラ的にはまだわたしのココロにHITした子がいないというのが本音だったりします。
 あのような性格設定になってしまっている理由も、世界背景から理解できるのですけれども、この子たちを愛するのはちょっと苦労しそうです(^_^;)。

 まぁ、キャラ物とは少し違うということなのかもしれませんねー。

14
『Holy☆Hearts! 明日を信じる、こころです。』 神代明 著

 キャラ一覧が欲しいと思うのは、決して前作から間が空いたせいではないと思うんですけど……。
 フィオーレとスペランツァとシスターと……。
 立場の違いも微妙に分かりづらさになってる……のかも。
 そうなったときに、緋賀センセの挿絵が助かるわけで。
 作中の人柄がよく表れていると思います。
 絵を見れば、誰が誰だかすぐに分かるという。

 本編のほうは、今回もほんわかして小話をつなげる形で進んでますねー。
 他の作品だとまとまりがない印象になるんでしょうけど、この作品に限っては、それが日常の小さな変化を物語にしているようで心地よいです。
 まぁ、生きていればいろいろあるわけで、今回のキュノは波乱の予感……。
 次、昇格試験でしょうし、ねぇ……。

 お話の中では、衣装院での荷物運びが好きかなー。
 とても良い形で教訓が盛り込まれていると思うので。
 うむうむ。

13
『南青山少女ブックセンター』 桑島由一 著

 イラスト描かれている湖湘七巳さん、好きなんですよー。
 仕事場の壁紙、いまは湖湘さんの四葉にしてます。
 『神様家族』のヤスダスズヒトさんといい、桑島センセの作風を考えた挿絵の人選をしてるなぁ……と思う次第です。

 そして本編。
 なんというか、桑島センセのはっちゃけぶりが留まるところを知らず、デスカ?
 勢いにまかせて、飛ばすなぁ……という印象。
 他の人がこういう世界を描くとあざとさが鼻につくかもしれませんけど、桑島センセが描くと、もう仕方ないじゃん!って気がしてきます(苦笑)。
 人間が息をしなければ生きていけないように、桑島センセはこういう世界を描かないとダメな人間なんです。きっと。
 ダメ人間かもしれませんけど(えー?)。

 いきなり女の子が多数登場して賑やかになっている反面、プロットで用意された設定以上の個性はまだ物語で描かれていないので、読んでいて差別化にはちと困ってしまいましたがー。
 晴子の変節ぶり(……そこまで強いものではないですか?)が、ちょっと意外というか驚きというか。
 まぁ、個性はこの後の続いていけば覚えていくでしょうし、楽しみにしていくことにします。
 わたし的には奈津美お姉ちゃんが好きです。

12
『まずは一報ポプラパレスより』 河出智紀 著

 小川一水センセの19歳デビュー作……。
 うーん。この文章を19歳で書けるんですかー。
 現在と比べればそれはたしかに稚拙かもしれませんけど、物語に何が必要かはもうここに揃えられてるような気がします。

 ラスト、逆転劇への布石にはニヤリとさせられてしまいます。
 巧妙とは決して言えないとは思いますけれど、やはり読んでいてスッキリするのは大切かと。
 ヤラレたっ!という気持ちになりました(^_^)。

 グリーナ殿下、いいキャラですね〜。
 国を背負う王女としての気高い姿勢に惚れます。
 それも理想論でどうこう言うのではなく、極めて実務的なところがまた。

 あとがきを読むと、今の小川センセの原型が見えて面白いです(笑)。


11
『導きの星W 出会いの銀河』 小川一水 著

 いやぁ〜、素晴らしかったデス!(≧▽≦)
 ハートフル文明育成SFとは、良く言ったものですね。
 文明論も、SF的な見地も、そして心の交流も、みんなみんな丁寧に書かれてました。
 いろいろと苦悩されたようなあとは見受けられるのですけど、それがまた深い考察を促して物語をより高みに引き上げている印象が。

 タイトルである『導きの星』という言葉が、この巻で幾度も登場するわけですけども。
 どの使われ方も、最終巻らしい印象的な用いられ方をしています。
 シラーの言葉では地球人類の緊迫感が伝わってきますし、クングンハの言葉では安堵と贖罪の気持ちを感じ取ることが出来ます。
 こういうタイトルの付け方と作中での用い方は好きですねー。

 最終巻らしく――というのは、その他でも思うところで、これまで見えてこなかった、あるいは迷いの中にあった感情や考え方に、それぞれ決着がつけられていくことに読んでいて興奮です。
 特にコレクタ!
 これまでアルミティやバーニーの影に入っていた印象があるのですけれど、この巻で考えを示す段になっての印象度はバツグンでした。
 シュベルタインとの目的人格同士の戦いは燃えた〜。

「たとえ迷いの果てにこの人格(からだ)砕けようとも!」

 他にもクック統括官との会話とかを見ても、彼女たちは司と付き合っていくうちに、ここまで辿り着いたんだなぁ……と感慨深かったり。
 バーニーもOTIと対峙したときの行動は、それまでの印象とは違ったものだったので、新たな一面を見せられましたし。

 アルミティは、もう少し司とイチャイチャしても良かったんじゃないかなぁ……(笑)。


 結局、この物語は――成長の物語?
 文明を育てる、そして継承していくお話であることは間違いないと思いますけど、人が新たな形質を得るには文明が継承されているのと同じくらいの価値があるような気にさせられるのです。
 あるいは知性体は自らを証明するために「友人」を必要としている……というお話かもしれません。
 OTIもETIも、そして人類も、ともに語り合える友人が欲しかったのではないかと。


 それにしても、<歩き人>チキから<世界連盟盟王>チキへ、スワリスの進化は驚くべきものが。
 絵で見せられると、本当にスゴイです(^_^;)。

 長い長い、そして大きな幹である物語です。
 それでも憶することなく読む価値がある作品だと思います。


10
『導きの星V 災いの空』 小川一水 著

 構成が巧みだなぁ……と思うことしきり。
 冒頭、ようやく美娟が登場して司との関係を示したところで、本編に入るとトッコの――
 「あんたたち結婚しているんじゃないの?」
 ――の問い掛けに対する姿勢が意味深で。

 今回、スワリスたちはいよいよ大空に羽ばたくわけですけれども。
 くあーっ! 燃えるぅっ!(≧▽≦)
 ただ飛べることを披露するだけでなく、女の子を迎えに行くってシチュエーションが素敵すぎます!
 しかも大地と海洋に縛られていたスワリスが!  空から!
 トッコの愛の深さを感じますねぇ〜。

 それだけに、わずか数年で飛行器が軍事転用されてしまったということが、とても哀しく思われてしまうのですけど。
 文明に押し潰されてしまう子供たち。
 表に見えるところと、司の心にあること。
 2つの悲しさが迫ってきて、シリーズ随一の深みを生みだしていると思います。

 美娟やセントールやOTI、その他様々なことが浮かび上がってきて、物語が加速していくのを感じます。
 この哀しみにどのような結びを見せるのか……。
 とにかく色々と考えさせられていまいます。


 ところで今巻では、いままで他の2人に比べて影が薄かった感のあるコレクタがイイカンジでした。
 「個人的には……もっと我を忘れたらいい、と思うときもあります」
 ――そう言わせてしまうのが、哀しいですね(TдT)。
 それでもわたしはアルミティをPUSHする次第なんですけど……。
 アルミティも……(TдT)。



『導きの星U 争いの地平』 小川一水 著

 間違いつつも文明が前に進んでいく様が嬉しいですね。
 ……ん? 何をもって「間違い」とするか、ですか? これって。
 人間社会の過去に照らし合わせたとき、人間は歴史を恥ずべきものだと思っていて、その恥ずべき人間の歴史をなぞってしまっているから「間違い」だと思ってしまうわけですから。

 でも、読んでいると、偶然が為した歴史ではなく、そのように間違ったものになるのも必然であったと思ってしまうんですけど……どんなもんでしょ?
 むしろ、間違いを起こさない限り、歴史とは前に進んでいかないというものですけど。

 今回は、そんな歴史の間違い――戦いで血を流すこと――が中心になっていたので、バーニーが大活躍というか存在感ありましたね。
 表紙にもドカーンと登場してますし。
 アルミティの様子が、ちょっと沈みがちなのが気になります。
 特にコレクタと比べると、すごく人間っぽい感情を示すんですよねー、彼女。
 けんかの後の仲直りじみた料理……って(笑)。
 すごく人間くさいよー。

 自ら神を作って、神を殺したスワリスたち。
 人間が長い歴史を要して越えた壁を、彼らは数百年で越えてしまうんですよね。
 そこが恐ろしいんだろうなー……。



『導きの星T 目覚めの大地』 小川一水 著

 うはぁ〜。物語の見せつけ方というか、惹き付け方というか、入りの部分がすごく巧みだなと思いますねー。
 これから先の展開に関心を抱かせる入り。
 説明より先に、とにかく読み手の関心を惹くことを考えてます。
 それも強引な押しではなくて。
 スゴイなぁ……。

 3人の人工体の登場のさせ方なんて、ホレボレしちゃいますね。
 地の文で説明することも可能なんでしょうけれど、役割と立場、そして性格も含めて台詞をはじめとする行動で提示してるなんてねぇ……。
 もちろんその手法は革新的でもないのでしょうけど、大切なのはこの3者の分け方、描き方ですよねー。
 見事に個性を描き出しているという。
 わずかな文章で。

 そして物語を牽引していく役割の主人公たちの説明が終わって、はじめて世界が示されるわけで。
 ここでも小川センセの軽妙な筆致が活きてます。
 いろいろと賢しい説明を長々と続けて見せた挙げ句の要約が――

 UN大学を出たばかりの新米、十九歳の辻本司がキツネザル星人に捕まった理由はつまり、ソビエト人がボストークを飛ばしたせいである。

 ――では、要約しすぎでしょ!ってなもんです(笑)。
 ここでわたしはこの作品に本格的に転びました(^_^;)。


 ようやく歩み始めた文明の行く先を見守る司たち。
 三人の人工体はそれぞれ個性を発揮しながら、文明の成長に介入していくわけですけど、この介入の理由がまた面白くって……。
 人間の歴史と同じく「スワリス」たちも間違いや哀しい偶然を辿りつつ時を刻んでいっています。
 これからも人間の歴史をなぞっていくのか、それとも新しい何かを見つけてくれるのか。
 司ならずとも、この先が気になっているのでした(^-^)。



『ROOM NO.1301 #2 同居人は×××ホリック?』 新井輝 著

 イラスト描いてるさっちサン。頑張ってるなー……というのが第1印象(^_^;)。
 で、本編のほうの人間ダメップリも前作から引き続いてイイカンジ。
 あー、この「どこか壊れている」ような人間像って、相米慎二監督の作品を思い浮かべるかもー。
 一見、傷を舐め合う者同士のようにも見えるんですけど、ちと違って、他人とは違う壊れたところがあるが故に惹かれ合うという。

 壊れたところを肯定しつつ、それでも他人にとっては正しい社会の中で活きていかなければならないことを理解するまでの――通過儀礼のお話?
 まぁ、これ、わたしの解釈ですから間違ってるかもしれませんけど。
 そもそも少年少女の物語は、すべからく通過儀礼のお話だと捉えてしまうわたしなのでー。

 前作でプロローグとエピローグの仕掛けは分かっているので、今回はむしろ分かっているからこそ内容に注意を払うことができました。
 この巻のあとの展開が、すっごく気になるんですけど(笑)。
 あとがきではいらだちを隠せない様子で著者と対談している鈴璃ちゃんですけど、今回、それでも挿絵に描かれているんですから上等上等だと思うんですけど、どんなもんでしょ?(^_^;)

 ヒロイン的には、今回と次巻で描かれる冴子ちゃんより、やっぱり綾さんのほうが好きかなぁ……。
 今回も、たくさん可愛いところを披露してくれましたし。
 ホタルは、ちょっと守りに入っちゃったかなぁ……という印象。
 それも仕方ないとは思うんですけどねー。
 あ、でもエピローグは良かったと思います。
 ホタルの心情も理解……できたような気がしますし、周囲との関わり具合、距離感も提示されたと思いますし。

 とりあえず次巻は8月刊行予定ですかー。
 楽しみ、楽しみ。



『ROOM NO.1301 おとなりさんはアーティスティック !?』 新井輝 著

 うーん……なんでしょ、これは。
 不思議……な感覚なんですよね。
 でも、その感覚は決して不快なものではなく、むしろ照れとくすぐったさと共に好感できるものであるというか。
 こういう不思議な気持ちに包まれるのって、それこそが「ミステリー」なのではないかと思ったりします。
 トリックとか即物的な事件とかが存在しなくても。

 恋愛ゲーム(というか18禁エロゲー)の文脈で、主人公・健一はさまざまな女の子から好意を受け取るわけですけれども。
 彼自身、社会からの逸脱者として、ここに新しい物語を生み出す要因になっているのは、読み手の共感を煽りつつ、どこか違う存在だとカンジさせているのかなー。
 歯車であり、かつ、流れ続ける水である……みたいな。
 彼がいるところに物語が生まれるのは必然である……と、感じさせるのです。
 もっとも、物語の主人公なのですから、それは至極当たり前のことなんですけど。

 プロローグで読み手の意識を混乱させるのも、あざといですけど効果的ですねー。
 本編への引き込み方が巧みというか。
 混乱させて、疑問に思わせて、次に提示するのはとても簡単なこと。
 ヤクザの話法と同じなわけですけど(笑)、これって先入観を壊して素直な気持ちにさせるには、やっぱり効果的であると思う次第なのでした。

 ヒロインでは……やっぱり綾さんがお気に入りでしょうか。

「気持ち良いことを否定するのだとしたら、社会とか世間が間違っているんだと私は思う。間違っている中で活きるために、それに合わせる必要はあるかもしれない。でもだからって、良いことと悪いことが代わるとも思えない。だって、それに合わせることは気持ちの良くないことだから」

 この迷いの無さには惹かれます。
 ホタルも魅力的ではあるんですけどー……ね。
 この2人のせいで、千夜子が割を食ってしまっているのは可哀想ですけど仕方がないですよねぇ(苦笑)。



『新はっぴぃセブン vol.6 スィート気分で春らんまん!』 川崎ヒロユキ 著

 前巻までの重苦しい雰囲気はどこへやら。
 いきなり賑やかな体重測定シーンですか(笑)。
 でも、みんなの個性がとてもよく表れているなーって思います。
 そして重苦しい雰囲気は黒闇天が登場することで引き継がれるわけですけどもー。
 ……状況は以前のお菊ちゃんと同じなので、あまり驚きはないかも。
 あの頃にくらべて、いろいろと面倒な状況は増えましたけど。
 でも、それも乗り切っちゃいましたし。
 こういう展開の早さをどうとるかで、このシリーズの見方が変わるのかもしれませんね。

 くりやとたもんがギクシャクしているところ、仲をとりもとうと必死になっているまひるさんが可愛いです(笑)。
 あと、この巻での見どころは温泉シーンですよねー。
 嗚呼……。いいなぁ、温泉……。

 そしてラスト!
 シリーズ最大の衝撃かも!?
 たもんちゃんのことがあって、7人が微妙なバランスの上にあるということを示した上で、この展開!
 うわーい!(≧▽≦)
 さて、どうなる?どうなる?、でドキワクですよ!



リバーズ・エンド after days』 橋本紡 著

 後日談、なわけですがー。
 ……ヤヴァイ。ヤヴァイですよ、この展開は!
 本編を読んでいた頃の切なさが蘇ってくるというか!

 形式上は後日談なんでしょうけれども、終わったあとの話ではなく、どちらかというと新しい物語が始まっているんだという認識をさせられます。
 物語というより、拓己たちの新しい生活が。

 いつだって「今」よりツライことは無いから、振り返れば「あの時」は良かったと思えるんです。でも、決して「あの時」に戻ることはないんです。
 「あの時」に戻ることも無い代わりに、「今」だっていつかは過去のものになります。
 少しずつ、少しずつ。
 変わらないでいようと思っていても、それは無理なんです。

 だけど、同じ「あの時」を過ごした絆があれば、互いに移ろう様も受け入れていくことができるんだなぁ……と、うらやましく思います。


 ホントのことを言うと本編のラストは、多少無理して納得していたトコロがありました。こういう結び方もあるんだって。
 そうまでして納得していたところへ後日談を上梓されても、正直、複雑な気持ちであったことは否めませんでした。
 ですが読み終えたあとは、本編ラストも、そしてこの『after days』も、素直な気持ちで受け入れることができるようになっていました。
 それだけ、嬉しい物語だったのです。

 3編収録されていますけれど、あえてどの話が良かったとは言えません。
 みんなの生き様が、とても愛しいです。
 うん。愛してる。

 頑張ろうと思える、そんな勇気をくれる物語でした。


『新はっぴぃセブン vol.5 聖なる夜はダークネス』 川崎ヒロユキ 著

 新シリーズになってからのサブタイは、響きがよくって好きー。

 で、初めてじゃないでしょうか。
 完全にシーンが連続しての刊行というのは。
 以前の光と闇の巻より繋がりが深い気が。

 しかし緊迫したシーンで続いていたはずなのに、中身はいつも通りなのでなんと言ったらよいのやら。安心感でもあるんですけど、この展開のまったりさはシリアス感を削いでいるのは間違いないかと。
 学校でバスケしたり、バレエを習ったり、1日署長をしたり……。
 おいおい、そんなことしてる場合デスカ?ってカンジです(笑)。
 こういうネタの仕込みかたが、極めてアニメ作品的なところでもあるんですよね。

 それにしても結界の中での黒闇天は可愛すぎる気が……。

 ところでしょーちゃんが山羅寺さんの奥さんのことを指して――
「なぜなら……翔子殿の名字が『小野』だからだワン」
 ――と言っているのは、小野篁と関係しているってこと……カナ?
 山羅寺さんが閻魔様の力を持っていて、その奥方が参議篁殿なら、組み合わせとしては申し分ないですもんねぇ。


『新はっぴぃセブン vol.4 秋の夜はハードボイルド』 川崎ヒロユキ 著

 未知数な新キャラ登場で、依人衆のお務め寄りなお話で。
 それでも非日常的な日常(?)が展開されていって、新しくみんなの魅力が引き出されていく感じが。
 高校に通うお菊ちゃん……って、なんかヤヴァイ雰囲気が(笑)。
 お水なみくさんとまひるちゃんは、なかなか似合ってましたけど。

 まぁでも、この巻で一番の魅力は、鳥居麻衣たんにカチンときているところかと。
 依人衆のみんなは菊之介を巡ってのライバルとはいえ、一線を越えないという安心感があったと思うんです。
 菊之介と2人きりにならないようにとの暗黙の了解なんかがそれを表していると。
 そこへ外から現れた存在に均衡を崩されてヤキモキする様が楽しいというか(笑)。


『新はっぴぃセブン vol.3 夏だものバケーション』 川崎ヒロユキ 著

 禍ツ神との戦いからもSHKのお仕事からも離れて、みんなで夏を楽しむお話。
 いいですねっ! グッジョブですね!(≧▽≦b
 新シリーズになっての弾けップリが、ここにきて一気に開花ですよ。
 世俗のしがらみから解き放たれたことにより楽しさを追求できたという好例かと。

 前シリーズの江ノ島の話もそうなんですけど、このシリーズって禍ツ神と戦う話よりも、こうした遊びなお話の方が面白いと思います。
 各キャラがよく動いて生き生きしてくるというか。

 今回のお話の中では、菊之介を巡っての話ではなくても、みく・みな・なみの3人が一緒のお話が一風変わった雰囲気で面白かったです。
 菊之介絡みでいうと、しょーちゃんが可愛くなってきたなぁ……と。
 干し草の上で菊之介と一緒に眠っているところなんて、もうっ!
 まひるさんも大活躍で嬉しかったですけど。
 表紙ではセンターですし。

 うーん。COMさん、描き慣れてきたなぁ……。
 各キャラとも、魅力的なツボを心得ているというか。


 ところで。
 カキゴヲリちゃんは、今までで一番可愛いマスコットキャラだと思います(笑)。

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