○● 読書感想記 ●○
2004年 【4】

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20
『霧舎巧 傑作短編集』 霧舎巧 著

 うわーっ。やってもーた!!!
 <あかずの扉>研究会シリーズを読む前に、読んじゃったよーっ!
 でも、これで俄然あのシリーズに興味わきました。
 <霧舎学園>は好きですし、ちょっと期待しちゃいますよ〜。

 それにしても、いくら企画モノだとはいえ、自分のシリーズの登場キャラクターの幼い頃に出会った名探偵に、あの御手洗潔を登場させるっていうのはすごいというか、荒技というか(笑)。

 推理ミステリーの中で異彩を放つ「月の光の輝く夜に」。
 霧舎センセはこういうのも書けるんだなー……と、たしかに思いました。
 こういう雰囲気で長編を書いてくれませんかねぇ。
 ラストは衝撃的というか、切ないなぁ……と思わせといて、さらにこの短編集としての仕掛けが残されるという。
 ただ短編が集まっただけの作品集ではありませんぜ、ダンナ!

 霧舎巧という作家が好きな人はもちろんですけど、普通に1冊の物語としても楽しめるのではないかと思います。
 もちろん、推理ミステリが好きだったりすると、もっと楽しめるわけですけど。


 ……新書ではなくて、それなりのイラストレーターさんに描かせて文庫で出せば、ライトノベルのファン層に売れると思ってしまうんですけどねー。


19
『平井骸惚此中に有リ 其貳』 田代裕彦 著

 推理ミステリーをちゃんと意識している、理解している人かもー。
 2作目で「 交換殺人 (ネタバレにつき伏せ)」に挑むなんて、スゴイと思いました。
 本当に推理ミステリーが好きなんでしょうね。

 あの講談調の筆致は今作でも健在です。
 これが、もー、クセになりそうなカンジで!(笑)

 LOVEを打ち出してきた富士見ミステリーの方向性に添うように、そっち方面の展開が前作比5割増なカンジが。
 涼ちゃんがさー、もー(^_^;)。
 こんなにラブラブでしたっけ?と首を傾げてしまいましたことよ。
 可愛いから、いっけど!

 可愛いといえば、もちろん撥子ちゃん。
 河上くんを慕ってくるとこなんて、めちゃラブリー!

 恋愛モノと推理ミステリーの両立が成功している作品でありますし、次回作も期待しています。

18
『黒と白のデュエット Op.2』 岡村流生 著

 やっぱりオカルトと推理モノとしてのミステリーの混在って、読者への公正さに欠けるのではないかと思ってしまったり……。
 舞台背景となる閉鎖空間の構築に、魔術のような概念を持ち出されると、どうもこう、現実感に乏しくなるといいますかー。
 吹雪で閉じこめられた山荘とか、絶海の孤島とか、舞台に閉鎖空間を用いるなら色々あるじゃないですか。それを異質な霧といったかたちで表現されるのは、ちょっとズルイかなぁ……と。

 前作では現代科学を事件の仕掛けに用いてましたが、今回はそれもなく、これといった意外性もなかったような……。
 奇をてらわない、古典的な、とか、そういうのとは違って、物語としての事件考証に奥深さが欠けているのではないかと。

 今回も科学考証を持ち出しかけた箇所がありましたけれど、それは物語の中でフレーバーにもなってない、ほんのさわり程度の用い方でしたし。
 科学をネタに事件性を求めて、それを披露していくという展開が踏襲されていけば個性的な作品になっていったのではないかと思いましたけど、それは止めてしまわれたのでしょうか?
 あくまでオカルトを主体に物語を作っていくというのなら、それはそれで構わないのですけれど、でもやっぱりそれなら推理ミステリーとしての顔は外した方がスッキリするのではないかと思います。
 ……少なくとも、わたしがスッキリすると思います(苦笑)。


17
『あした天使の翼をかりて……』 大倉らいた 著

 イラスト買いでした。
 『ばとる・おぶ・CHUCHU』で好きになった四谷嘉一さんなのでー。
 ぶっちゃけ、大倉さんの印象はこれまでのところあまり……だったのですけど、あらやだ、けっこうイイカンジでした。
 料理を理屈ではなくセンスで扱っている作品は気に入ってしまう傾向にあるのですけど、この作品はそんなカンジでした。
 雰囲気、良いんですわ。

 中編が2本収められてますけど、「村」の消失モノである後編のほうが面白かったかなー。
 トリックは奇をてらわずに古典的でまとめてますし。
 ただ、解決シーンは前編のほうが盛り上がってましたねー。

 富士見ミステリーの新しい方針であるLOVEと、推理モノとしてのミステリーが程良く調和している作品だと思いました。
 りりかは可愛いし、オーナーの瑛人さんは変ですし。
「アンティーク」の藤木直人さんみたいだぞ(笑)。


 ただ、りりかのキャラ造形として気になった点が1つ。
 母子家庭で、お母さんに負担をかけたくないし、自分で作るのは面倒くさいという理由で、昼食はランチボックスを買って食べる……というのはどうなのかなと。
 「母子家庭で、お母さんに負担をかけたくないし」という理由なら自分でなんとかするべきだと思います。買い求めるのであれば、それは経済的な負担になります。
 また「自分で作るのは面倒くさい」という理由であるなら、母子家庭であるといったことは意味を持たないと思います。
 なんとなく、ここだけアンバランスさを感じてしまったのでした。

16 『魔法遣いに大切なこと3 夢色に染まる秋天の下で』 枯野瑛 著

 もう1歩! もう少しだけ踏み込んでほしかったなぁ……と思った次第。
 今回のお話って、コミック版の番外編「夏いろ片想い」のその後ですよね?
 なんというか、だからこそ、もう1歩というカンジがぁ〜。
 コミック版と似た雰囲気で終わらせてくれちゃったりして、もどかしいったら!
 文華ちゃんと衛くんのお話にも、それなりの形をつけてほしかったと思いますし。
 せめて文華ちゃんのこれからに……。
 ユメの決意も「え? それで終わり?」なカンジで、淡泊に感じてしまいましたことよ。
 ……ユメって、そういうキャラだと思うと、まぁそれもアリなのかと納得してしまいそうですけど(苦笑)。

 とにかく、いろいろなことが描かれずに終わっているので、もやもや感が。
 なんとなくアニメ作品の終わり方をイメージしてしまいました。
 うん。アニメならこういう終わり方もあると思うですよ。
 でもこれ、小説ですから……。

 あ、よしづきくみちセンセ、瞳を小さく描くようになられてませんか?
 というか、今作の表紙、ユメにしては丸顔のような……。
 それとカラー口絵、DVDBOX絵からの流用なのは哀しいですヨ(TдT)。

 「ユメの物語は一段落」――ってことは、現在コミックで連載中のほうへシフトしたりするんでしょうか?
 この作品、じつは結構好きだったりするので、そういう形でも続いてくれると嬉しいです。

15
『シュプルのおはなし』 雨宮諒 著

 良いお話……だとは思うのですけれどもっ!
 正直、ズルイッ!とか思いました!(笑)
 一般的な物語とは違うなぁ……という。
 何かが始まって、何かに辿り着くという物語ではないと思います。
 誰かの物語というわけでもないし。

 作品として全体の構成に拠るところが大きいので、読んでみて何の感慨も得られないわけではないのですけど――うぅ〜、ズルイと思うのデスよ〜(苦笑)。
 物語と言うより、説話集みたいな?


 余談ですけど、一番印象に残った人って、シュプルのお母さんなんですけど……。
 シュプルにお話をせがむところなんて、もぅ(笑)。

14
『とある魔術の禁書目録』 鎌池和馬 著

 ちょっと私には苦手感のある、クセのある筆致かなぁ……。
 とかく強調点を振って訴えかけてくるのは、私は読みにくいというか。
 ここぞ!というところで用いるなら気にならないと思うのですけど、あちこち多用されているので。
 文字で描かれている内容から力強さを感じ取るのではなく、点が振られているから強い言葉を表しているんだなぁ……と、逆から入るようになってしまったのですけど。読み取るではなく、見る。
 「……、」のような読点の用い方も気になりましたし、ルビの振られた読み方にも気恥ずかしさを覚えてしまったりして。
 なんか、こう、芝居臭くて。
 ひょっとして新しいスタイルなんでしょうか?

 女の子のために動く男の子……という図式は良かったのですけど、その主人公も、そして主人公の障害となりうるべき存在も、ちょっと言動が空回りしているカンジがしたんですけど――?
 先述の言葉遣いとも併せて、読者であるわたしは客席から舞台の劇を見ているような感覚。
 そこで起こっていることは「舞台劇」なんだと、理解してしまっている醒めた自分がいるんです。

 ただ、物語の結び方には、驚きとともに感銘を受けたりして。
 嗚呼、こういう結び方を選び取れる人なんだ〜……と。
 この結び方を選べる人なら、もしかしてもしかするかもしれませんよ?

13
『BAD! Daddy3 パパのキッスは苺味』 野村美月 著

 え? 次巻で完結……なんですか?
 何も始まってないし、何も見えてないような……。

 小鳥と淳平の出会いも、面白くなりそうなのにー。
 4巻構成にしては、いろいろと詰め込みすぎ、そして投げっぱなし感があるような……。
 とりあえず、次、期待してます!

12
『輪廻のムコウ』 あかつきゆきや 著

 台詞と言えるほどには感情が見えてこない言葉で(言葉のみで?)物語が進められていく、進んでいく様は、どうなのかなぁ……と思いました。
 おしゃべりばかりで、キャラが動いてないような……。

 あと、本筋である現在の状況の間、幕間劇のように差し挟められるアナザーストーリー(設定披露の場?)という手法も、今のわたしにはツライというか……。

 読まされている感が強かった……かも。
 あ、帯のコピーは良かったと思いました。


11
『しにがみのバラッド。4』 ハセガワケイスケ 著

 うーん。帯のコピーが、なんか淡泊ではないですか?
 普通……というか。うむむ……。

 「夜の学校のプール」って、すごく思い入れがあるんでしょうか?
 このシリーズで何度も用いられるモチーフですけど。
 ほかには、水泳部と、絵画……?
 コンクールって……やっぱり、大輝くんの、あの?
 繰り返されているおかげで、「また?」と思う反面、このシリーズに戻ってきた感覚を味わえるのですけども。

 そういったことも含めてですけど、たぶん、このシリーズは「変化に乏しい」とか、「同じ展開」とか言われてしまうのではないかと。

 でもですね。
 同じ物語なんて1つもあるわけがないですし、見えにくくても確かに異なっている1つ1つの物語を感じ取ることが、この作品の楽しみかたなんじゃないかなぁ……と思う次第です。

 もっとも「変化に乏しい」ということが、展開としての起伏を指しているのであれば、それはまた至極もっともだと思います。
 でも、そういう興奮を求めるのであれば、そもそもこのシリーズを選ぶことは間違いだと思いますし、他にそれ向きの良作が電撃文庫には沢山ありますからー。


 今回、収められているどの作品も、ラストでの踏み込み感が足りなかったように思うのは気のせいかなぁ……。
 前作の3巻に例えて言うなら、「ビー玉と太陽光線のかなた。」での――

「――忘れないでね。私は忘れないから。ぜったい」

 ――に相当するような台詞?が。
 足りないのは形としての未来ではなくて、現時点でのスタンスを決める何か……かな?
 もちろん、こういう結び方も好きですけど。
 そういう意味では、本編との差が縮まったカンジがした、モモとダニエルの話が今回は良かったような気がします。
 あとプロローグとエピローグ。意味深ですよ、ねー。

10
『BAD! Daddy 2 五月祭にパパは踊る』 野村五月 著

 パパが秘密結社の幹部なのは分かるとして、美夢たちが正義の味方である必要性が分からないかなぁ……。
 そのほかにも美夢ちゃん絡みの話より、ミュゼット vs 雛乃先生の話のほうが面白かったりして。

 ……物語の主流なところとは違った面ばかり着目してるってことでしょうか?
 あれれー?


『BAD! Daddy 1 パパに内緒で正義の味方』 野村美月 著

 父性って、実は静かなブームなんでしょうか? わたしが手に取る本が、たまたまそういう観点で描かれているだけ、偶然……なのかもしれませんけど。

 で、そんなパパの行動原理は分かるのですけど(分かりやすいのですけど?)、主人公たちがどうして正義の味方にならなければいけないのか、ちょっと分からないというか伝わってこないというか。
 戦う理由が、こう、緊張感のあるものではないので、同調できなかったかも……。
 なんらかの理由があるはずなんでしょうけど、そこに触れようとはしていないので成り行きで集まった感が……。

 正義の味方サイドより、悪の秘密結社サイドのほうが面白く描けてたかも。
 ……でも。
 正義の味方は「正義」だから「悪」に立ち向かう。
 秘密結社は主人公が住む街を襲う。
 そういった「約束事」が既知のものとして前提にあって描かれているように感じました。説明不足……なのかも。


『居眠りキングダム』 野梨原花南 著

 『ちょー』シリーズが終わってから、初、ですね〜。
 野梨原センセは『ちょー』シリーズ以外は、ちょっと苦手にしていたので不安だったのですけど、この作品は楽しめました。
 うんうん。若者っぽい不安定さが描かれて良かったかなー……と。
 反面、その不安定さが「好ましくない」性格となって表れているようにも思うので、受け入れがたい人もいるんだろうなぁ……と思ったのも事実です。

 主人公の岡野のほか、亘理とか夕とかも、ちょーっと「作られている」感を強く受けたかも。言動が現実感に乏しいような……。
 動いてるなぁ……と思うんですけど、その気持ちまでは伝わらないというか、何かこう、見えてこない部分があるというか。
 ――まぁ、そういう部分を不安定とも受け取ってしまうわけですけど。


 物語としてはまだまだこれから――と思いつつ、ここで終わるのも有りなのかなぁ……とか思ってしまったり。
 波乱は少なかったですけど、うん、まぁ、イイカンジですし。
 続刊、あるのでしょうか?


 それにしてもスピカを見てると、あの「俺さま」な魔術師を思い出すんですけど――?(笑)


『マリア様がみてる チャオ ソレッラ!』 今野緒雪 著

 祐巳さんイタリアへ修学旅行!……なワケですけど。
 その事前に姉妹のやりとりがあって、そこでの乃梨子ちゃんの言動がっ。
 うーん。頭がいい子を見るのは楽しいなぁ〜。

 ホテルで同室になった祐巳と由乃さんのやりとりも良かったですね。
 でも、由乃さんの中では祐巳さんは別格にあげられてて、それじゃあ志摩子さんは?って気がしないでもないです。
 祐巳さんを特別視するのはもちろん構わないのですけど、志摩子さんが部外者扱いされているようで、ちと哀しいなぁ……と。
 というか白薔薇ファミリーは、聖さまを除くと山百合会に馴染んでないような。
 由乃さん×志摩子さんの話を見てみたいです……。

 今回はクラス単位の話でもあるので、祐巳さん由乃さん蔦子さん真美さんの4人組ばかり目立って、志摩子さんが外にいたということも部外者扱いと感じることに拍車をかけたのかもしれません。

 あ、その聖さまの件。
 ちょーっと蛇足に感じてしまいました。
 後で加東景さんとイタリア旅行に行った聖さまの話が上梓されるのでしょうけど、少なくともこの巻では消化不良かなぁ……。

 ロサ・カニーナの登場はもう予想どおりとはいえ、待ってました!な感ですね。
 性格もお変わりなく……(笑)。


 あー、そろそろ、祐巳さんと由乃さんの妹の話が本格化しそうですよねー。
 祐巳さん → 可南子ちゃん
 由乃さん → 瞳子ちゃん
 ……かなぁ??
 今回のショートストーリーで、可南子ちゃんが紅薔薇に流れていくのは明示されたようなされてないような(どっち?)。
 正式なお付き合いの前に偶然出会ってしまった、女の子の彼氏(可南子)と女の子の母親(祥子さま)みたいな雰囲気が……。


『ウォーターソング』 竹岡葉月 著

 古きよき時代のSFの香りがしたんですけど……。
 答えを明示するのではなくて生き方を明示するのが、わたしの古典SF解釈。
 生き方という曖昧な形で物語が結ばれるので、評価するのは難しくなってしまうのではないかと考えますが。

 んー、でも雰囲気は好き……かな。
 それもどちらかというと、表題作より「僕らに降る雨」のほうを。
 子供が子供の理屈で大人に立ち向かう、社会に抗う物語って結構好きなので。
 もっとシッカリしてくれよ! 大人!……みたいに叫ぶ子供たち?
 ただ叫んで嘆いているだけではなくて、行動の責任は自分でとる覚悟がある子供たち。
 そういうところに、ちょっと感動するわけです。


 アサヒの弱さに気付いてあげられるといいね、ナット。


『世界征服物語 キミと一緒に』 神代明 著

 緋賀ゆかりサンの絵が、こなれてきたカンジがします(笑)。
 リンダとかすみちゃんの対決?シーン、好きー。

 前巻からの引きで今回は現代が舞台になっているわけですけど……。
 会えなかった人がいる反面、こちらの世界の住人の活躍はあるわけでー。
 タリア姫やシエラに会えなかったのは残念かなぁ〜。
 こちらの世界の人物である、あずみちゃんやかすみちゃん、それに新倉さんなどは、お話先行で登場しているカンジがします。
 キャラの魅力が物語に足りてないというか……。
 利江さんも、悪いワケじゃないんですけど、どの程度、スタンスを確立したのかと問われると微妙としか……。

 自分の身に起こったことをアッサリと由真が受け入れちゃったことには、ちょっとばかり都合良すぎないかなとも思いましたけど、でも由真の性格を考えるとそれもまたしかりかなぁ……と。
 少なくとも、鉄馬と一緒であることは間違いないなら、それで由真は全てを受け入れられるような気がします。

 あー、でもやっぱり一番可愛いのはティレクですよねぇ〜(笑)。


『世界征服物語 帰ってきた代理人』 神代明 著

 あ、この巻から挿絵が緋賀ゆかりサンになるんですね。
 『Holy☆Hearts』より、まだ戸惑っているカンジがします(苦笑)。

 で、この巻で何が驚いたかって、由真と鉄馬の関係でしょうか。
 あとがきでも触れられていましたけど、いや、わたしはてっきり由真はムニかティレクか、その2人のどちらかかと……。
 でも、考えてみれば鉄馬とそうなるほうが正統派なのかなぁ〜とも。
 ティレクとは保護者−被保護者の関係っぽいですし、一方のムニはと言うと、いいとこ悪友どまり……?

 この巻でも新キャラが登場してきますけど、本当に神代センセが考えるキャラはわたし好みといいましょうか……。
 物語のほうで何か大きな仕掛けがなくても、このキャラ達が動いているだけで嬉しくなっちゃいます。
 あ、決して仕掛けが無いわけではありませんので。はい。
 物語としてちゃんと起伏はありますヨ〜……ということは言っておかないと。
 でもでも、そういう事より、キャラの活きの良さ(?)を気に入っているのです。


『世界征服物語 ユマの大冒険』 神代明 著

 『Holy☆Hearts』を気に入ったので、神代センセの処女作を読んでみました。
 あー。タイトルでのふっかけ具合と内容の規模があってないように思えるのは、この頃からですか?
 なんか、こう、もったいない気が……。
 誤解を招いていそうで。

 そして、やっぱりこの作品でも、キャラ造形は好みだわ。
 読者寄りに立つキャラクターたちは、みんな愛せそう……っていうか、嫌いにはなれないかなぁ。
 お話も雰囲気良かったですしー。
 ホント、こういう生活感を漂わせる話は好きですねー。

 筆致はつたないところはありますけど、そういうところは容認できてしまうくらいに、この世界を楽しく思います。

『吉永さん家のガーゴイル 2』 田口仙年堂 著

 柔らかい雰囲気は前作と同じなのですけど、比率として「吉永さん家」と「ガーゴイル」を比べると大きく後者に偏っているように感じました。
 吉永さんファミリーは、今回は脇役というか。
 怪盗百色とか梨々ちゃんとか、初出演のキャラはイイカンジなのですけど、わたしは吉永さんファミリーが好きなので、活躍の場を奪われたのがちと悔しいというか。

 うーん、でも前作は短編の集まりという感じだったものが、今作ではちゃんと物語を感じられるなー……とか。
 ちょっと都合良すぎる……というか強引?なきらいもありましたけれど。
 百色とハミルトンのやりとりの件とか。
 ここぞ!というところでの百色や梨々の心情描写(変化)に疑問が残ったりして。
 んでも、全編の雰囲気は崩されていないので良し!と思います。
 この作品の長所は、このふんわり柔らかな雰囲気ではないかと。

 だけど、ところどころに入るオタクネタはどうなのかなぁ……とかも思います。
 うーん、うーん。
 分かる範囲では面白いと思う(思える)んですけど、分からないネタだったりすると戸惑うかと。
 どんなもんでしょ?

『わたしのファルコン 5』 夏見正隆 著

 WEBで探しまくって、ようやくゲットできました。
 ふぅ……。

 視点がチャカチャカ変わっていく、最近ではザッピングシステムとか言われている手法ですけど、この手法、『劇』を表現するには適しているけど、『物語』を表現するには向いていないような。
 人物の心理変化についてはとくに。
 登場人物の心理については、送り手側が提示するのではなく、受け手側が類推することを当然のものとしているような気がします。強いているというか。

 そのことと面白い/面白くないは別の話なので、作品の価値を決定するものではないのですけど、はてさて……?という気がしてきました。

 スピード感あふれる展開には適してますよねー。
 それが危機に直結している場合はなおのこと。


 で、この5巻ですけども――。
 第2シーズンへつづく……って、先生? もしもし?
 果たして……と言うべきか、ファルコンの出番は無いですしー。
 キャラが多すぎて収拾がつかなくなっている感があります。
 そうでなくても前シリーズを引きずって、キャラ説明が足りてないと思いますし。
 もうちょっとこの「第1シリーズ」でも、丁寧に描いてほしかったかなぁ……と思うのですけど、先述のように、この作品で用いられている手法ではそこまで掘り下げることも難しいのかなと思う次第だったりします。

 刊行されてから8年経つんですけど、第2シーズン、始まってません……よね?
 とほー(T△T)。

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