○● 読書感想記 ●○
2004年 【3】

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20
『Holy☆Hearts! 大好きだから、いっしょです。』 神代明 著

 綺麗なモノは前作と同じ輝きをもっているのですけど、今回はそこに現実の穢れがぶつかって、キュノたちがどう受け止めるのか――。
 ただ護られているだけの存在は、綺麗であるとは思いません。
 綺麗であり続けるという、その努力があってこそなのだと思います。

 夢敗れた人からの怨嗟、死への恐怖、自己への不信。
 いろいろな壁がキュノたちを待っていましたけど――

でも、あたしはやっぱりシスターになりたい。
大事な人や、みんなを守れるようになりたい。
もしかすると、心が折れちゃう事もあるかもしれない。けれど、フェリカさんとエクスがまっててくれてるし、一緒に頑張ってくれるアリシアちゃんとジンジャーちゃんもいる。
だから大丈夫。
あたしは、シスターになるよ。

 ――そう述べるキュノの姿には感動してしまうのです。
 弱さを知って、それを認めた上で強さを目指す姿を応援したくなるのです。


 それにしても、可愛い人たちばかり登場するなぁ……。
 フェリカさんとジンジャーちゃん、最LOVE。
 フェリカさんはエクスとの絡みが面白いですし、ジンジャーちゃんはセルゲイくんのパンフレットを持って泣き崩れているところがかわういです(笑)。

 フェリカさんとエクスのことを、キュノはお母さんとお父さんになぞらえていましたけど、役割が逆なのではないかなぁ……とか思ったりして。
 フェリカさんは、普段は黙って見守りながらも、ここぞというときに手を貸してくれるお父さん。
 エクスは、なにかと気にかけつつも、生きていくため現実というものをしっかりと教えていこうとするお母さん。
 ――なのではないかと思いますが如何に!


19
『Holy☆Hearts! 世界を守る、おしごとです。』 神代明 著

 うーん……。大きな物語ではないのだけれど、全体に流れるほんわかとした温かい雰囲気は好きになれました〜。
 「世界を守る」とタイトルにはありますけど、実際には世界の命運を賭けて行動するようなことはありません。
 でも、主人公であるキュノにとって世界とは、目に見える人たちのことで、繰り返される安穏たる日常のことなんですよね。
 手の届く範囲の幸せを護ろうと努める彼女と彼女の仲間たちの行為が、なんとも心地よいのです。

 汚されることのない清いものが、この作品にはあると思います。

 ……読点が多くて読みにくいところや、婉曲すぎるきらいのある言い回しとか、文章的に?なところは見受けられましたけど、倖せになれる作品だと思います。
 そんな技術的な問題より、やっぱり物語は「何を語られるか」だと思う次第です。

18
『カラミティナイト』 高瀬彼方 著

 読む前、「Calamity Night」かと勘違いしてました。「Knight」でしたね。

 他者との接触を好まない人物が中心だったり、あるいは好ましい接触の仕方のできないサブキャラが配されていたり、どうにも感情移入がしづらかったです。
 ん、まあ、だからこその「Calamity」なんですけど。

 途中の作中劇の文章も、物語として意味は分かったのですけど、あのような表現しかなかったのかなぁ……と疑問というか。
 黒騎士物語のくだりで、勢いがそがれているような気がしました。

17
『撲殺天使ドクロちゃん 3』 おかゆまさき 著

 公共の場所――例えば電車の中などでは『ドクロちゃん』は読まないほうがいいって分かってたのにっ……たのにっ!
 ごめんなさい。ニヤニヤ笑いを浮かべた変な人になってました。
 しょうがないですよー(笑)。
 この文章のテンポに呑まれたら、それはもう読み手としては負けというか。
 物語は二の次三の次で、キャラの作り方とか、やっぱりテンポの良い文章とか、そういうところを感じ入ります。

 で。
 もしかして、これで終わり……なんでしょうか?
 たしかにいつ終わっても変じゃない物語ですし、今回の幕引きはそらもう完璧?にも思えますし――。
 でも、いざその時を考えると、寂しくなります。
 電撃hpでも、このあとは長くないようなことを話してましたしねぇ。
 やっぱりそうなのかな……。

16
『夜の静寂に』 ジル・チャーチル 著

 これ、クリスティの作品のオマージュ……なのかなぁ?
 麻疹が原因で流産してしまった女性が、麻疹を地域に流行らせた人に復讐をする話……って、ありましたよね。
 過去の事件の真相が、現代の、それもひょんなことから判明して――。
 事件名は忘れてしまいましたけど、あの作品に似てるな〜、と。

 今回登場のフィービー! 目が離せませんよ!
 すごくカワイイと思います。
 (フィービーっていうとベルフィービーを思い出して、アーチェリーを連想します)

 あと、メイドのミミさん!
 森薫センセが描くメイドさんのイメージがあります。
 それもきっちりとした職業婦人のほうの(笑)。

 今回でレギュラー陣がそろって、いよいよシリーズとして動き出すのかなぁ……と感じます。
 でも今回のパーティが失敗して、どうやってお金を稼ぐのかなぁ。
 その辺り、次巻が楽しみです。
 世界恐慌時のアメリカの大統領選にも。
 フーヴァー大統領の嫌われっぷりがリアルですね(笑)。
 共和党派と民主党派で個性を出せるのも、アメリカならではだなぁ……と。


15
『アリソンV ルトニを車窓から』 時雨沢恵一 著

「久しぶり、ヴィル。元気だった?」

 うわーっ!て叫びたくなるような序章。
 何があったんでしょうかって、ドキドキ。
 下巻のラストで、再びここに戻ってくるんでしょうけれど、表向き書かれていることだけで真実になったりすると、すごくショックなので、お願いします(TдT)。
 でも、実はこうなんじゃないかなぁ……と、思うところがあるので、メモ。
 いちおう伏せておきますけど。

 まず、死んだとされているヴィルは生きているということが大前提。
 これが真でないのならば、いま考察することは私にとって無意味なので。
 で、アリソンの彼氏とは、はたしてヴィルしかいないことも絶対。
 となるとヴィル=“英雄さん”なわけですよね。
 これまでの物語では“英雄さん”と言えばベネディクト少佐だったですけれど、どこかで役割がシフトしていることになります。
 そして“英雄”という身分は、いろいろと面倒なので、身を隠す必要がある(あるいはそれが望ましい)……と、どこかに書いてあったような。
 ヴィルは何らかの所行により新しい英雄となって身分を隠さなければならない状況にあるのではないかと。
 アリソンの父親も諜報部員だったみたいですし。
 そしてリリスのフルネーム。
 ウィッティングトンとシュルツはアリソンとヴィルの名字だからいいとして、アイカシアとコラソンというのは……「ベゼル・イルトア連合王国の古い風習に則って、親とその親の名字を間に入れている」そうなので、アリソンとヴィルの両親の名字なのかなーと。
 更に言えば、古い風習に則る必要がアリソンとヴィルには生じたのではないかと。
 しかもよりよって西側の。
 まぁ、ありがち説としては、亡国の王子とお姫様……ですけど。
 ヴィルって両親に捨てられたんじゃなくて、逃がされたのかも……。

 まぁ、ともかく下巻が待ち遠しいです。
 リリスが生まれていることから、アリソンとヴィルの関係には心配しませんけど。
 だって、ねぇ? ヴィルって頭いいのに「据え膳喰わぬはなんとやら」という言葉を知らないんじゃないかって思っちゃいましたよ。今回ばかりは。
 列車の中でのアリソンが哀れ……(TдT)。
 が、がんばれ――っ!

 ベネディクト少佐とフィオナは、もういい仲になってるっていうのにねーっ。

14
銀朱の花U 空の青 森の緑』 金蓮花 著

 うーん……。前作からの続きなわけですけど、なんだか物語として蛇足なカンジが……。
 初めから2巻で構成していたのなら、今作の変化の無さって……。

 というか、ですよ?
 この帰結を持ってくるなら、それ既に榛名しおりセンセの『マリア ブランデンブルグの真珠』で描かれていることと同じっていうか。
 もしかしたら同じモチーフを、違う角度からアプローチしているだけなのかもしれませんけども――。
 でも……。

 少なくともオビに書かれていた「再開したエンジュとカウルを襲う試練!」っていうほど、試練じゃなかったような。
 運命に翻弄される恋人たちを描きたかったのなら、もっと別の展開があったのではないかと思いました。


13
『ハイウイング・ストロール』 小川一水 著

 小川センセのキャラの魅力って、不完全さだと思うんデスヨ。
 だから互いに衝突するし、傷をなめあうし、惹かれていくわけで。
 相手が分かっていると思っているから言わないでいると、それが相手からの不審と相手の不信になっていって、ぶつかり合ったときに始めて相手のことをやっと1つ理解する。その繰り返しで前に進んでいく……みたいな。
 不器用な人たちが集まっているといえばそれまでですけど。

 あと、そうした不器用な人たちが、自分の限界を知り、それを認めたときの行動にも考えさせられるというか。
 人間、本性が現れるのはなによりも追いつめられたときですし、そこでの姿がその人の本当の価値――なわけで。
 で、小川センセの作品――もちろん当作品でも――では、その人間の価値の表現の仕方が、読み手のわたしの心を気持ちよくくすぐってくるものが多いんですよねー。
 しかたないなぁ……と、温かな気持ちになれるっていうか。


 エメリオルの成長物語としても面白かったです。
 特に女性関係(笑)。
 ジェシカ、大人のようで、みょーなトコロで子供っていうかオンナノコなんですよねー。カワイイったらないです。
 そのジェシカに追いつきたいと動くリオがまた(笑)。
 2人がじゃれあっているシーンは微笑ましいですよねっ。

「大事件ね。そりゃそうか、私もそうだったわ、忘れてた。採点が気になるお年頃よねー」

 ――のシーン、たまらなく好き(笑)。


 世界観は、あとがきを読むとコンセプトが分かりますけど、まあ、それだけかも。
 あまりそこには意識しなかったなぁ……。
 舞台背景より、キャラの行動に惹かれたということでしょうか。

 空戦やシップに関しては、『シルフィナイト』を思い出してしまったことよ。
 あちらよりは戦いそのものは淡泊でしたけど、空を飛ぶ者たちの個性は出ていたと思います。ゲーム的でありますけどねー。

12
『ばとる・おぶ。CHUCHU 妖刀恋慕』 一条理希 著

 前巻で総勢10人のキャラの顔見せを済ませている分、今回の話は進めやすくなっているなぁ……というカンジですね。
 ようやく個々人の話になって、個性が目立つようになってきているという。
 まぁ、でもしかし、そうなってくればなるほど、はたして正太郎の存在感が薄くなってしまうのですけども。
 本当に彼がいなくても物語の有り様は変わらないと思います。

 もちろんそれは作品中では意味ある存在として規定されるわけですけども、それすらやりようによっては不要とする仕組みは作れると思いますし。
 むしろ10人のヒロインが彼を中心にして動くことには、いささか強引共とれる理由が存在しているように思います。
 理由がそういうものだと言われれば納得するほかないですけど、どうにもとってつけたような胡散臭さを感じてしまうというか……。

 吸血っ娘の側の力関係もどうにも理解しづらい気がします。
 一枚岩ではないのですよ〜……とするところまで分かるのですけど、だとすると吸血っ娘たちとしてのルールはどこにあるのか、というか。
 そこまでガッチリと規定してしまうと、個性が出てこないであろうことは分かるのですけれども。


 今回も四谷さんのカラー口絵はイイカンジなのでした。
 折り込みの構成のしかたもステキです。

11
『ばとる・おぶ・CHUCHU 吸血っ娘襲来!』 一条理希 著

 5人の吸血っ娘 vs 5人の聖なる乙女の戦い……という構図は面白いと思いました。んでも、正直、初巻としては人数多すぎなカンジ。
 特に吸血っ娘たちの視点での話の箇所などは、そこまでの文章量を割く必要があったのか疑問に思いました。
 そんないきなりいろいろ言われても、わからないと思う……。

 5人+5人、総勢10名の女の子の個性を出したいという意図なのではなかったかと思いますが、そうだとすると物足りない印象を受けましたし――。
 物語としては人数を絞るべきだったのではないかと。

 しかしその総勢10名が最も有効に活かされているのは、四谷嘉一さんの折り込みカラー口絵ですよね〜。
 10人勢揃いして相対峙している様は、集団美っていうか(笑)。


 まぁ、そんな次第なので、唯一のオトコノコであり主人公?の荻原正太郎くんは、存在感が薄いことこのうえないのでした。
 ……正太郎くんがいなくても、物語、回せちゃうよう(涙)。

10
『スピリチュアル 働かざるモノ喰うべからず』 平谷美樹 著

 うーん。なんていうんでしょうか。
 物語が主人公の理屈だけで動いているようで、その流れに共感できなかったんですけど――。
 共感できないから、そらもちろん感動もできないわけで。
 トオルの正体については予想はできても、やはりいきなりなカンジはいなめず……かな。

 なにを描きたいのか、少なくともわたしには伝わってこなかったかなぁ……。



『神様家族4 シャボン玉ホリデー』 桑島由一 著

 『神様家族』でのヤスダスズヒトせんせのイラストは、すごく……というか、せんせの作品の中で1番スタイリッシュに描かれていると思うのですが。
 ただの挿絵、イラストという域に収まらず、ヤスダせんせの絵と桑島センセの文章の相互作用で、『神様家族』という作品の価値を高めていっているような。
 どちらが主であり従であるかは、ここでは関係無くて。

 で、本編のほうは、幾つかのショートストーリーが集まってラストの展開に持っていくという形式なワケですけど、これが良い雰囲気でー。
 これまで登場してきたキャラたちが、気持ちよく動いているんですよねー。
 そうかと思いきや、1本、シリアスな物語が入ってきていて、全体をキッチリと絞めている構成が、また(´д`)。
 どれだけ、遊びの文章があっても、『神様家族』って作品とはなんなのかを意識しているなぁ……と思わされるのです。

 いや、もう、大好き。『神様家族』。



『あそびにいくヨ!・2 作戦メイ『うにゃーくん』』 神野オキナ 著

 もしかして、出版界ではネコがブームですか?(笑)
 神野センセの作品は、現実との距離感が楽しいですよねー。
 今作でも中野での描写なんかは、もう狙っていると分かっていても楽しくて楽しくて!
 騎央を巡っての、アオイちゃんと真奈美ちゃんの立ち位置も面白くなってきましたしっ!
 エリスが発情期を迎えてどうなることかと思いましたが……まぁ、そうなりますか。
 それにしても折り込み口絵カラーのアオイちゃんが、せ……セクシーッ!(≧▽≦)

 アシストロイドたちにもバリエーションがたくさん登場してきて、同じように見える中にも個性がちゃんと描かれているところが嬉しいというか面白いというか。


 でも、今回1番嬉しかったのは、旅士と井草(ですよね?)の登場かなぁ〜(笑)。

「まぁ、やっぱりアレね。宇宙でも地球でもかーいらしーモノの基準は一つ、ってこと?」

 ――には、思いきり笑わせていただきました(^-^)。
 これからエリスたちとどう絡んでくるのか、そちらの方面も楽しみになってまいりました。
 ……でも、あれですね。旅士は他作品でも登場するのに、アロウの登場はないんでしょうか?
 2人がどうなっているか、知りたいんですけどねー。


『永久駆動パペットショウ』 豊倉真幸 著

 う、うーん……。
 苦手な世界観と文章……。
 かなり雰囲気が出ていると思うので、作品として完成度はある……と思います。
 とにかく、こういった暗さは、わたし、ダメなので――。

 人形の生き方をモチーフにしているのは、好みなのですけど(^_^;)。


『エンリル・エッジ 刃をまとう女神たち』 鈴羽らふみ 著

 導入部からしばらく、人物を把握するのに時間が……。
 そんなに多くの人物が登場しているわけではないんですけどね。
 まぁ、マキとマイのせいではないかと思うのですけど。

 柑奈のこれからよりもメールへの返信のほうが、正直、泣きポイントかと思うのですが、いかがでしょう?
 これを演出の1つとして用いるのではなく、もっとふくらませていたらなぁ……とか。

 でも、どちらかといえば、前作の『アルシア・ハード』のほうが好きかも。
 あちらのほうが、こう、読んでいてワクワクするので。


『人形はひとりぼっち』 中島望 著

 主人公を動かす「押し」の部分が、なんとなく引っかかりをおぼえるというか――。
 キャラクター間での交流不足、お互いをどう感じ取っているのかが不明瞭に感じるので、ただ事件が時間とともに進んでいるだけのような印象を受けました。

 クローンをネタにしているのに、この舞台がこれでいいのかという気も。
 もっと大掛かりな事件でも起こせたと思うんですけど――。


『私の中に何かがいる』 あさのあつこ 著

 「テレパシー少女『蘭』事件ノート」も3作目です。
 この巻の表紙が気になって読み始めたんですよねー。
 ちょっと、らしからぬ、雰囲気があったので。
 でも翠には髪を結んでいるイメージは、いまも無いっていうか(笑)。

 SFとしても真っ当なカンジのする作品ですねー。
 どの巻も示唆する方向が異なっていても何かを教えてくれている、そんな物語。
 翠の生い立ちに対しての心情と、蘭の前向きな態度がときおり対立すること自体、公平感を感じさせるというか。
 主義主張の一方的押しつけでなく。
 もちろん正負の感情の対立であるからして、正の方向へ針は振れていくのですけれど、それでも翠を否定するまでには至らず――。

 翠を中心に語るのは、彼女を好きだからです!(≧▽≦)


『闇からのささやき』 あさのあつこ 著

 「テレパシー少女『蘭』事件ノート」第2弾です。
 でも、第二弾としては舞台を前作と変えたのはどうかなぁ……と思いました。
 なんか、こう、シリーズ物として生きてこないような……。
 登場人物に関しては、シリーズ物を強く意識させられるんですけどね。
 蘭と翠、イイ関係になってますよー(あやしい意味ではなくて)。

 お話も複雑なことを言わなくて良いなぁ。
 SFテイストなわけですけど、あくまで雰囲気を大切にしているカンジがして。
 説明することもできるんでしょうけど、文章量やもろもろの理由で説明してない簡素なトコロが好感なのデスヨ。
 一から十まで説明されても、理解できるものではないですし――。


 ところで。大原先生って、なんか憎めない人ですね(笑)。


『そして王国が誕まれる』 めぐみ和希 著

 オビの「そなた――わらわの恋人1号だ」に惹かれて、購入〜。
 お姫様がバンバン恋人をはべらしていくのかと思いきや、むしろ逆で。
 不器用に始まった恋が、いつか本物の愛に変わっていく話? 純愛。

 キャラ立ちのしかたがかなり上手な作品だと思いました。
 そのキャラが、なにをどうしてどう行動するのかが伝わってくるという。
 設定の中に、ちゃんと動機が作られている気がしました。

 まぁ、3人のお兄様という設定は、昨今のアレなわけですけども(苦笑)。
 この点だけは、3人って中途半端かなぁ……と思いました。
 やるならやるで、12人までを(笑)。

 お兄様と言ってしまえば、主人公との距離が分かりやすいので、設定を複雑化しないためには良策なのかもしれませんけど。
 なんたって、兄上ですし、兄さんですし、兄様ですし〜。


 で、まぁ、良かったと思うのは、やっぱり結び。

 「…………また、幸せになってくるから」

 ――は、もう、ね。
 かなしくって、うれしくって、泣けてくるっていうか。
 そんな次第で、読後感がとても良い作品なのでした。

『ねらわれた街』 あさのあつこ 著

 青い鳥文庫で、ちょいと面白そうなので手を出してみました。
 ヤングミステリーというか、ちょっとジュヴナイル的なSF感覚が良いなぁと。
 ヒロインの蘭と翠の対比も面白いですし。
 わたしは翠のほうが好きかなー。
 蘭は留衣クンとの関係が強すぎて(笑)。
 翠の行動は賛否別れそうですけど、曲がったことはしていないと思いますし、その行動の規範たるところは理解できますし。

 というか。
 ヒーローっぽいヒーローがいないので(留衣くんではヒーローには役不足(笑))、蘭と翠がダブルヒーロー・ダブルヒロインになってますよねー。
 ……蘭のほうが6:4でヒーローな気はしますけど(笑)。


 2人が得た力が何を意味するのか、この街には何があるのか……etc。
 面白いシリーズになりそうです。

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