○● 読書感想記 ●○
2004年 【2】

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20
『塩の街』 有川浩 著

 うーん……。
 良い作品かそうでないかを問われると、良い作品だと答えます。
 でも、好きか嫌いかで問われたら、嫌いって答えてしまいます。
 こまごまとしたところで、気になってしまう、引っかかってしまう箇所が多すぎるので。

 例えば「カロリーメイト」。
 大塚製薬の商標ですけども、使用に関してはだいじょうぶなんでしょうか? そういう法関係の問題とは別にしても、わたしは固有名詞を用いてイメージを共有させる文章を好きではないので。
 例えば「片手落ち」
 差別表現かそうでないかとの論議はありますが、ともあれ、一般的にマスメディアでは使用に際して留意してますよね。それを用いている意図はどのようなものなのでしょうか。
 例えば「りんごの芯」
 食糧配給も確かではない世界で旅を続けて空腹であった人間が、リンゴを食べたときに芯を「食べるところがなくなった」として捨てるのは、当然なのでしょうか。

 他にも煙害がひどくなる世界で、水の問題はどうしているのかとか、「塩の街」という響きが持つ鮮やかな印象とは反対に、その世界に対して与えられる情報量が少なすぎるカンジなのです。
 もちろん、完全に説明するにはいろいろなものが問題になるのでしょうけれども、それでもっ。

 秋庭の言動も後半では急すぎるかなぁ……という印象をうけました。
 このあたりは終盤の怒濤の展開で物語をまとめるという、昨今の風潮に則しているものなのかもしれないなぁ……と思いつつ。


 幸せな人が幸せな希望を描いた作品なのかなぁ……という印象でした。

 ただ、まぁ、こうした点は重箱の隅つつきということもありますし、納得できる人には全く気にするところではないと思います。
 筆致に関しては金銀の受賞作より、間違いなく完成度高い作品に仕上がっていると思いましたし。

 仮に映像で例えると、前半はタルコフスキーで、後半はハリウッド映画?


 大賞を受賞するだけのことはあるなぁ……と思いつつも、なんだか釈然としない読後感でした。

19
『我が家のお稲荷さま。』 柴村仁 著

 少年が母の死と向き合うようになる話……が、骨子になると思うのですけれど、そこへ焦点を当てていくようなエピソードが少ないような。
 周りのドタバタはあっても、骨子に沿う形で物語を進めることはなかったなぁ……と。

 クーのお稲荷さまとしての民俗学的スタンス、無表情キャラとしてコウ、そして佐倉美咲の一般的視点。
 1作目で盛り込むには、欲張り過ぎなのではないかと思いました。
 個々の要素は興味をそそるに充分なのに、この巻のみでは活かし切れないどころか埋没してしまっている感が……。
 もったいないです。

 そうしたキャラ立ちは良かった反面、物語の展開には乏しいような。
 言ってみれば、誰のための物語なのか、と。
 キャラが生まれて、戦って、そして結果を得るという、その時系列を事実として描いたのみでは、エンターテイメントとしての作品にはなっていない気がするのです。
 読者は、なにをすればよいのかという意味で。
 わたしだけなのかもしれませんけれど、キャラの行動に葛藤は感じませんでしたし、共感もしなかったという。

 昇と透が兄弟であることの意味はあまりないというか、むしろ昇のせいで物語が散漫になっている印象がありました。
 主人公ではないのに、主人公然しているんだもの。
 佐倉美咲ちゃんのエピソードなんて、この巻には不要ではなかったかなぁ。
 続刊があるとして、その冒頭にでも配すればよいシチュエーションかと。

 金賞と銀賞をくらべると、こちらのほうが印象度が弱かったかもー……。
 文章の読みやすさなどは、なるほどとうなずけましたけども。


18
『いぬかみっ! 4』 有沢まみず 著

 動物そのものを描かなくとも、動物の所作が持つ愛らしさというものは表現できるんだなぁ……と思わされます。
 猫が好きだから猫を書きました。猫ってカワイイですよね。――とか押し売りするのではなくて、きちんと愛らしさを描いているという。

 あれです。フグの白子に匹敵するものを持ってこいと言われて、タラの白子を持っていっては、勘違いも甚だしいという……(by美味しんぼ)。
 そんなカンジです。

 それにしても啓太とようこの関係って、ずいぶんと変わってきたというか、少しずつ親愛の情が見えてくる様が嬉しいというか。
 シリーズ当初は、主人公とヒロインとして無理をしている感があって、そのギスギスしたような雰囲気に今一つ馴染めないところもあったのですが。
 今の2人って、ケンカ1つをとってもすごく微笑ましいというか。

 瞳に軽めの、楽しげな光を浮かべ、
「今はもうこいつがいるしな」
 ようこの髪をくしゃくしゃ掻き回した。

 ここが、もう、めっちゃラブリーで!(≧▽≦)
 啓太って、素の感情を出すときは無防備すぎるというか、普通の態度が意外と空々しいというか。
 薫と同格ぐらいに大物っぷりですよね〜。


 薫の犬神たちも、十人十色でイイカンジ!
 その中でも、なんだか、ともはねが前に出てきている気が(笑)。

 それにしても薫って、本当にオトコだったのかぁ……。
 ……いや、まてまて。
 まだ登場していない限りは、そうだと決定されたワケじゃありませんことよ(笑)。
 せんだんの台詞は、何かの比喩かもしれませんし!(なんでわたしはこんなにもこだわっているんでしょう……)

17
『半分の月がのぼる空2』 橋本紡 著

 面白くなくはない……んですけれども、ところどころにある文章が気になります。
 物語を描くために、いろいろと調べて、そして考えて、必要だったからそうしてあるのでしょうけれども、しかしなんとなく内容が軽んじられているような気がするんです。

 例えば、友達を殴ること。
 例えば、廊下にうずくまっている入院患者を放っておく看護婦。
 例えば、A型肝炎を風邪になぞらえたこと。


 今回登場した夏目医師なんて、難しいキャラかなぁ……。
 背負ったものに押し潰されそうで、その辛さから目を背けるためにバカをして共感を得られるのは、やっぱり10代までじゃないかなぁ……と。
 いい年になってそれをするのは、卑怯というかなんというか。
 少なくとも、弱さを正当化はできないようなぁ……と。

 気まずい読後感デシタ。


16
『灼眼のシャナY』 高橋弥七郎 著

 や、やっばい……。前巻から、ますます面白くなっちゃって、もーっ!
 物語が終息に向かっているカンジを受けるのが、また更に煽ってくるというか。

 1巻当初では、存在する理由がわたしには見えなかったキャラたちが、各々自分の立場に則して動き出している状況がいいのかなぁ。
 巻を追うごとにジワジワ存在感をにじませてきていたというか。
 田中くんとか佐藤くんとか、マージョリーと出会ったあたりでは、ただの子供だったもんなぁ……。
 それが、あーた。
 今じゃ、立派な過去を設定に持つ重要キャラですよ!(笑)

 そもそも「存在」についてを扱っていた作品というのは、偶然? それとも何かの符丁デスカ?

 そんな各人も、いまは自分の「存在」より、その先にある「生きかた」を探し始めているようで、よかよか。
 なんというか、若人のあがきのようなものが描かれているのがスバラシヒ!
 壁にぶつかっても、諦めるのではなくて、どうやって越えようかと悩んでいる様。
 同じ壁なんて1つもあるはずはないけれど、その姿へは賛辞を送りたいんです。
 みんなへ。


 それにしても表紙のシャナは、どことなく大人っぽいような……。


15
『先輩とぼく』 沖田雅 著

 面白かったーっ!
 難点はタイトルからどんな物語か、感触が掴みずらいという点かなぁ。
 もちろん「先輩とぼく」の物語であることは間違いないのですけど。
 それはあまりに省略しすぎではないかと思う次第――。

 まぁ、でも、本編ではその2人の雰囲気良い物語が進むわけで。
 やーもーっ! ライトノベルっていうか、ちょっと不思議テイストの恋愛小説ってこうだよねっ!てカンジです。
 2人のなれそめが物語として機能するものであって、その後の展開はそのきっかけを膨らますものであって、そして帰結は物語を示すものであって……。
 仮に主人公のココロの変遷を物語とするならば、間違いなくそれを描いていると思います。

 最近の時流っぽい、スピード感のあるノリの良い筆致は読みやすくて好感です。
 コメディとしても充分に狙えていると思いますし。
 いちばん笑ったのは――。

 あの(不良少年Cにとっての)悲劇から三日後、先輩が不良Cの身元を突き止めた。そして昨日、恒例の昼休憩上映会で流れた、編集されたやつを送ったらしい。上映会では、もちろんあの捨て台詞のシーンも流された。そしたら不良C大人気。今、うちの学校で交わされる別れの挨拶は「おぼえてやがれ」。

 ――ここかなぁ(笑)。
 ほかにも色々と面白いポイントがあって迷っちゃいますけど。
 やーもー、文章のテンポがコメディに活かされているというか。
 楽しい世界を描いてくれています。
 キャラもよく動いてますしね〜。みんな、魅力的&個性的。
 とくに川村君の存在は、序盤と比べて終盤では大きくなりすぎなくらい(笑)。
 道本さんとか、美香さんとかも、すごく変!(ホメ言葉)

 とにかく、このハチャメチャな雰囲気。好き〜!(≧▽≦)
 2巻をすでに用意に入られているみたいで、楽しみです。


14
『麒麟は一途に恋をする』 志村一矢 著

 あの『月と貴女に花束を』の志村センセの新作なので、何をおいても買い!だったわけですけれど。
 よもや『月花』と世界を同じくしている物語だったとわーっ!!
 単行本化を楽しみにしていたので、電撃hpでは読んでなかったんですよ〜っ。

 下ではシリーズの終息のさせかたについていろいろと言ってますけど、もちろんファンとしてはこういう繋がり方も嬉しく思うわけで(笑)。
 っていうか、カラー口絵では驚きましたヨ!
 どうして由花が!?とか、『桜の妖魔』!?とか。

 えーっと、そんな次第なので、新シリーズの展開よりも、書き下ろしの「清廉なる乙女の勇気」の印象のほうが大きかったりするワケで。
 できればこの調子で、どんどんクロスオーバーさせていってほしいくらいです。
 んー。
 『ベルガリアード』と『マロリオン』みたいな?(わからない例え……?)


 椎名優センセは確信的に描かれていると思うんですけど、ヒロインの麻由は可愛らしさからいうと普通の造形ではないかと。
 言ってみれば及第点ではあっても、ヒロインという点では物足りなさを感じるというか。
 そういう「普通」な部分を描けるのはスゴイなぁ……と。
 作中では、その「普通」な部分が体験していく「世界の知らなかった一面」との対比が効果的になっているような気がするので。

 白嶺美夜のエピソードは、なんとなくですけど、余計だったような。
 このあと活かされるエピソードであると良いのですけど、このまま何の関わりもなければ、ただのキャラの浪費ではないかなぁ……。


 ……まあ、そんな本編より、直純クンがこれからどういう目に遭うのかのほうが楽しみでもあったりするのですけど(笑)。


13
『ちょー企画本2』 野梨原花南・宮城とおこ 著

 これでいよいよ、「ちょー」シリーズも終幕ですか……。
 寂しいですけど、野梨原センセがおっしゃることも、もっともだと思います。
 「物語はその完結を以て、初めて生まれる」
 ファンとしては複雑な気持ちにならざるをえませんけど、それはもう決められた約束事のようなもので。

 ……物語を終息させずに、あれこれと上梓している作家センセは、才能を浪費しているような気さえします――とは言い過ぎでしょうか?
 でも、ファンのココロには「終わってほしくない」という心理と、「終わりを見たい」という心理が二律背反して存在していると思うんです。
 この事から言えば、終わらせない作家センセは少なくとも、ファンの心情の半分は満足させられていないということになるのではないでしょうか。

 ……っと、シリーズが終わったコトに対して、自分なりの説明をつけてみたり。
 哀しいものは哀しいんですよ! こうでもしなきゃ!(TдT)

 宮城センセのイラストはどれも華麗で、できれば大きい版型で見たいですねぇ。
 そろそろ2冊目の画集とか、予定に無いんでしょうか?
 でも実は、カラーよりモノクロイラストのほうが好きかもしれません。
 第6位のオニ+サフ+バロックヒートのイラスト、めちゃ好き!(≧▽≦)
 もちろん、第1位も捨てがたいですけどー。

 短編ではパイロープさんの話(エイダの話?)が良かったですね〜。
 本編が終わったあとでこそに描ける内容というか。


 ともかくです!
 野梨原花南センセ、宮城とおこセンセ。
 すてきな物語を、ありがとうございました。
 忘れません。「獣の王子と破魔の姫君、そしてその子供たちの物語」を。


12
『悪魔のミカタ IT/ストラグル』 うえお久光 著

 なんとなく間が空いてしまった感があるのですけども――気のせい?
 むしろこれまでの刊行ペースが神業だったわけで(^_^;)。

 前巻で「IT編の最終巻」とうたっていた今作ですけれども……終わってません(笑)。
 んでも、内容の密度を振り返ると、終わらなくても当然という気がしました。
 仮に文章を薄くして、今作で終わらせたとしたら――。
 考えることはできても、伝えることはできなかったように思います。

 これまで、うえおセンセは「先生として生徒に語っていた」ようなカンジがします。
 立場・立ち位置が異なるので、当然、本音を言うことはしません。
 ですが今作では、いよいよその準備ができたのか、読み手と送り手の距離を近くして、拒否されるかもしれないけれど本音を語ってきたような。
 昇とか水彩、遼子やサキたちの生き方にそれを感じます。
 <ザ・ワン>なんて、しょせんはフレーバーでしかないですよね。
 もちろん重要なポジションを占めるのは間違いないのですけれど、あくまでトリガーでしかないという。

「戦うって、何ができるっていうのよ! 人間程度に!」
「サクラちゃんと山本さんなら、隠れること。あたしは、エレナと一緒にいること――
一万年、この地上に存在し、万物の頂点に立ってきたんですから。しかもその歴史は、戦争によって紡がれている」
「……あ、あんたは……」
「人間を、甘くみないほうがいいですよ。生物的な力はともかく、戦い方という点で、人間に優る生物はいないんですから」

 昇の覚悟にもクるものがありましたけれど、いちばんシビレたのは、ここ。
 唯ちゃんは、やっぱりキーパーソンだなぁ。
 もちろん、あくまでキーパーソンの「1人」なんですけど。


 珍しく(?)マジメに語っている解説。
 わたしは好きですね〜、この内容。
 センセの意外な一面に触れられた気分(^-^)。

 わたしは、主人公はコウだと思いました。

11
『アース・ガード −ローカル惑星防衛記−』 小川一水 著

 なんだか中盤までの展開が複雑すぎるような……。
 その割には物語は動いていない印象。

 タイトルと帯のコピーから受ける印象と、本編の内容とが、かなり違っていました。
 あれー?
 なんとなく、小川センセらしからぬ作品な雰囲気を感じました。
 ……まぁ、かなり昔の作品ですしねぇ。


10
『あやかし修学旅行』 はやみねかおる 著

 推理ミステリとしては浅いような気がしましたけれども、この巻は青春ミステリとしては充分すぎるくらい真っ当な作品かと。
 シリーズを通して読んでいる人は、まず間違いなく楽しめる作りになっているとおもいます。
 一ノ瀬くんとか、文芸部の2年女子ペアが面白すぎ。
 そして真衣と美衣の2人も、ここにきて――ッ!!!(≧▽≦)
 美衣って教授とお似合いかな〜と思っていたのですけれど、思わぬトコロに伏兵が。

 亜衣ちゃんとレーチの仲も、進展してるなぁ。
 修学旅行で男子の部屋にレーチを誘いに来るなんて、亜衣ちゃん、やるな!
 このシーン、男子の言動が面白くって(笑)。


 わたしの読書歴のなかでハチャメチャ学園モノとして代表作を挙げろと言われたら、いまは間違いなく虹北学園を挙げますね。
 ここまでシリーズを読んで、そんなことを思いました(笑)。


ミステリ・アンソロジーW 殺意の時間割』

 快斗と春奈の初出演物語を読みたくて探してきました〜。
 2人とも小学生なんですけど、変わってないというか、すでに今と同じというか(笑)。
 『マジカルライフ』では春奈のご両親から信頼されている快斗の描写がありましたけれど(マンションのエントランスに入れるというモノ)、こちらでは快斗のお母さんに好かれている春奈の描写が。
 なーんだ。2人とも両親公認なんだ(笑)。
 それにしても――。

 春奈が、手と足を伸ばして、畳の上に寝っ転がる。そして、そのままゴロゴロゴロゴロ……。
 ぼくは、鉛筆を放り出した。
「春奈、ちょっとそこに座りなさい!」
 ぼくの口調が真剣だったためか、春奈が起き上がって正座する。

 ――が、微笑ましいというか(^_^)。
 ビシッと言うのは快斗らしいですし、それに従う春奈もラブリー。
 ただ本編のほうは、舞台背景とトリックのスケールがあってないような気がしました。


 アンソロなので他の作家センセも読んでみましたけど、近藤史恵センセと西澤保彦センセが面白かったです。
 とくに西澤センセは、キャラが立っていたな〜というカンジ。
 読み切りで終わらすには惜しいと感じたのですけど、もしかして他の作品でも登場しているのでしょうか?
 ちょっと探してみよっかな。



『「ミステリーの館」へ、ようこそ』 はやみねかおる 著

 袋とじ! しかも二重!
 形から入る作品、けっこう好きです(笑)。
 というか、様式美、形式美をちゃんと活かしてくれる作家さんが。
 文章書くだけが物語屋ではないよなぁ……と思い知らされるので。
 人を楽しませるのは、なにも文章だけじゃないよ?みたいな。
 そんな余裕のある遊び心が良いのです。

 で。
 シリーズとしては総生島に匹敵するくらいな大仕掛けでしたね。
 これがまた、やってくれるぅ〜ってなカンジで!
 いやはや本格推理小説ですわ。

 あ、本格と言えば第1部の章タイトル。 「六月は雨の〆〆密室」
 笑わせてもらいました(^-^)。
 メヌエット賞といい、こういうお遊び、好きですね〜。
 今回はついに(!)、快斗と春奈の2人も登場してきましたし。
 快斗がちゃんと大学を進級していてホッとしました(笑)。
 あー、でも春奈ちゃんのほうは、ちょっとだけ残念かも……。
 勝手な言いぐさだとは、重々分かっているのですけれども(TдT)。

 亜衣ちゃんとレーチの2人の仲も、少しずつ前へ進んでいるようで、ホッ。
 海へ行く話とか、カワイイですよね(笑)。


『機巧館のかぞえ唄』 はやみねかおる 著

 うーん……。
 わたしの苦手なタイプのトリックでしたねぇ。
 トリックというか、お話の進めかたが。

 第V部の「さよなら天使」も、なんだかスッキリしない話に感じました。
 結びでは教訓めいていますし。

 まあ、しかし、羽衣かあさんの――

「でも、こうして赤んぼうを見ていると、やっぱりかわいいわね。」

 ――発言にはビックリしてしまったというか。
 ちょっとちょっと、羽衣かあさん? ……まさか!(笑)


『ねこだらけ物語』 一条理希 著

 「ボーイ・ミーツ・ガール? でも主役は猫!」
 ……と、オビに書いてあったことに間違いは無いのですけれどもー。
 正直、何を物語りたいのか、わかりませんでした。
 何を書きたいのか、はー、感じることが出来ましたけども。猫。

 無理に人間社会の理に触れてみたり、ラストに結びを用意する必要はなかったのではないかなぁ……とも思う次第。
 主役が猫であるならば。
 どんなもんでしょ?


 あ、あと表紙にはちょっと騙された気分がー。
 サクラ、表紙に出るほどの活躍してないッスー(TдT)。
 ちぇー。



『踊る夜光怪人』 はやみねかおる 著

 野良犬シロって、『虹北恭助の冒険』に登場するシロ……かなぁ?
 こちらではシロっていうより、ジュン爺って呼ばれているみたいですけど(ランチとゴロンタみたいな関係?)
 今回はその他にも、虹北商店街の皆様も登場したりして、ちょっと嬉しかったりして。
 まったくもー、ノリの良い人たちですこと(笑)。

 推理に関しても、1つ1つ解明していく展開が良かったです。
 謎を解いたら、次の謎が浮かんでくる……という構造。
 トリックそのものは凝ったものではないですけど、これくらいがちょうどイイかなぁ。
 難しすぎると、作品の流れについていけなくなりますし。


 レーチ、学園祭のときに亜衣ちゃんに「好きだ」と言ったとありましたけど……。
 えー? そうだったっけかなぁ……?
 「お前にいいかっこうを見せたかった」じゃなかったっけ〜?(笑)
 まあ、亜衣ちゃんとレーチ。青春しているみたいで、良きかな良きかな。


『プリンセスブライド』 130cm 原作 伊藤イツキ 著

 どのヒロインEDで締めるのかとドキドキしながら読み進めていったのですけど――なるほど、なるほど。そうきましたか!
 もちろんゲームの中でも描かれているEDの1つですから問題ないと思いますけど、ちょっとズルイなぁ……(笑)。

 このEDに向かって進めるために(?)、序盤からゲームとは異なる展開が始まって驚きました。
 それだけに、どんなED!?と、余計にドキワクしたというか。
 構造の大筋は変えなくても細部を変更したことにより、ゲーム本編を楽しんだ人にも興味を抱かせるようになっている作りは秀逸だと思いました。


 でも、やっぱり、佳央と遥奈の関係を深く描くわけには余裕が無かったようで残念。当然といえば当然なんですけどねー。
 枝絵留の立場に少しでも触れている程度が精一杯ですか――。
 その辺りと、もっと佳央と愛生の掛け合いが多かったらなぁ……と思いました。


『魔女の隠れ里』 はやみねかおる 著

 相変わらず分かりやすい筆致で、物語に入り込みやすいことこの上なしですね〜。
 意外な人が……という展開も良かったと思います。
 トリックが心理面に左右されるようなところがある(ように思えた)ので、仕掛けとしてはちょっとインパクトが弱くなってしまったかなぁ……とは思いますけども。

 んでも、この巻の見どころは「羽衣母さん華麗な一日」なのではないかと。
 いや〜。三姉妹の原型がこの人にはたしかにありますね(笑)。
 しかもオリジナルなだけに、三姉妹よりもパワーが違います。



『幽霊には微笑を、生者には花束を』 飛田甲 著

 古典的なモチーフだとは思うんですけれど、丁寧に描ききっていることでとても読後感が良いというか。
 序盤、ゆっくりと始まった物語が、途中から坂を駆け下りるかのごとく勢いづいて、読み手を離さないカンジ。
 ハマッたですよー(^_^)。

 真也は信念をもって生きてきたから、そこが突破されたあとの変わり様が楽しいです。
 ひとことで言えば、女の子によって人生を狂わされた(笑)。
 ユウも真弓ちゃんも、人間として好感するキャラ像ですしー。
 あ、赤城くんもイイ人ね!

 で、本編はミステリ仕立てになっているわけですけど、このミステリの解明方法がまた納得できるものであり――。
 きちんと現実世界で論理立てているというか。
 大掛かりな仕掛けはありませんけれど、1つ1つを解き明かしていく過程に共感をおぼえるんですよね。作中に引き込まれるカンジで。
 で、タイムリミットが区切られてからの真也とは、彼が感じる焦燥感までもが切なく伝わってくるわけで(TдT)。

 ミステリ部分は主ではなく従であると思いますけど、主がしっかりしていると、その従の部分までもが活きてくるという。


 1つだけ気になったのは、河原崎部長の容姿。
 折り込みカラー口絵を見てビックリ。
 え? こんな容姿だったっけ……?みたいな。
 改めて読み返してみたのですけれども、どこにも……書いてないですよね?
 うむむ……。

『消える総生島』 はやみねかおる 著

 やるなぁ、今回の消失トリック。
 これだけのことをやってみせても、嫌味には感じないなぁ。
 むしろ清々しささえ(笑)。
 それも謎解きの材料が、きちんと読者の前に提示されているからなんでしょうね。
 文字として登場しているというだけではなく、別の側面を見せて堂々と存在を明かしておきながら、それが事件とは関わりないと思わせる筆致が見事。

 読後感が「くやしい!」ではなく「やられたぁ」なんですよね。
 「納得いかない」ではなくて「ニヤリ」(笑)。


 それにしても岩崎家の三姉妹も、いよいよ芸能界デビューですか!(違)

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