○● 読書感想記 ●○
2004年 【1】

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20
『吉永さん家のガーゴイル』 田口仙年堂 著

 筆致は間違いなく大賞受賞作に足るものだと思うんですけど、キャラの好き嫌いはあるかも〜です。でも、その動かし方というか色付けは間違ってないと思います。
 むしろ勢いがあって且つひとクセ有るキャラ達は、田口センセの個性だと思えますし。
 ただ、全体のボリュームの中で、そのキャラの魅力を全て語りきっているかというと、もったいないことにそうではないような。
 もう少し、彼らを活かすエピソードが残されてるはず……だよねぇって気がします。

 という次第で、続刊を希望!

 お話の題材選びのセンスなんかは秀逸だと思いますし〜。
 小野寺さん家の話は、ウルッときましたよ〜(T△T)。

 受動と能動のお話。
 行動と保持のお話。
 与えられたものと自分で見付けたもののお話。
 お気楽に進んでいく話の中にも、考えさせられることが混ざってます。
 押しつけがましい雰囲気ではない、そんな空気が好感です。
 ……双葉ちゃん、容赦ないですけどね(笑)。


19
『銀盤カレイドスコープvol.3 ペア・プログラム So shy too-too princess』 海原零 著

 あのタズサがペアで活動するなんて――!
 読む前はそう思ったのですが、なるほどなるほど、です。
 物語が始まるにしては動機がちと薄いかなぁという気がしたのですけれども、辿り着く先の帰結には納得できるというか。
 予定調和――という言葉は、エンターテイメントの場合には聞こえが悪いのかもしれませんが、でも、そこへ辿り着く物語までを否定するものではなく。
 やっぱり、タズサはタズサだったなぁ……と。

 でも、ファーストインプレッションを申しますと、インパクトでは前作を上回っているようには感じませんでした。少なくともわたしは。
 タズサの言葉を借りて例えるなら――

 残念ながら、ショート変更の際の説得力が、自分でも感じられない。

 ――でしょうか。
 ペアを描く理由が、やっぱりどうしても気に掛かるというか。
 出だしの収まりの悪さが、引っかかってしまうカンジ。
 もちろん、喉元過ぎれば(?)、そんな理由は些末なことになって、「ペアにチャレンジするタズサ」を楽しむようになるんですけどね〜。
 いや、ホント、そこだけがぁ……。


 で、この巻は「天才」の物語だったのではないかと。
 いえ、まあ、もともとそういう話だと言われればそうなのですけど、天才の感覚を共有できるのは天才しかないという事実を突きつけられるのは、なんとなく哀しいですね……ということで。
 オスカーが悪いわけじゃなくて。
 もし、それでも、何か1つの悪――というか、罪を挙げろと言われたら、それはタズサが天才だったが故……になるのでしょう。
 もちろん天才という罪を、タズサは受け入れていくことを選んでいるからこそ、この作品は物語として機能しているのだと思います。

 そして幸いなのは、タズサは天才かもしれないけれど、孤独ではないこと。
 ピートがいたし、リアがいる。
 高島コーチだって、ミカだっていました。
 天才の気持ちは天才にしか分からないものなのかもしれませんけれど、天才の周りにはやっぱり天才が自然と集まってくる――引き寄せられてくるのかもしれません。

 えーと、その理論でいくと、ドミニクも天才ですか?(笑)
 まあ、実力についてはタズサも認めている部分はありますしー。
 退屈しのぎ程度ですけど(苦笑)。
 ……余談ですけど、カラー口絵のドミニクがカワイイですね。
 そばかすッ子に、わたし弱いんです(^_^;)。

 そのドミニクもいて、リアもいて、至藤響子もいて、ヨーコもいて。
 出番は少なくても、ちゃんとキャラを消化しきっている気がしました。
 短くても存在感を与えているというか。
 ヨーコなんて、鈴平さんの挿絵と合わせて、存在感ありまくりです(笑)。
 そしてやっぱり本の打ち合わせシーンですよね、あそこは!

 次のシーズンには、NHK杯のために来日したガブリー、女王の座についている至藤響子の3人で競い合ってみたりしませんかねぇ……。
 今回、ガブリーだけ見せ場がないっていうのが、なんとも寂しかったので!


18
『亡霊は夜歩く』 はやみねかおる 著

 いや、まいりました〜。
 伏線――。推理小説なので、ヒントと述べたほうが雰囲気出るのかもしれませんけれど、その出しかたにとても気を遣われているというカンジを受けます。
 謎を自力で解けない推理小説なんて楽しくもなんともないので、こうしたヒントの出し方1つで、受け手である読者への気配り具合が分かるというか。

 気配り……というか、読者を意識しているかどうか、かも。
 それは謎解きという部分以外に関してでもですが。
 はやみねセンセは、小学校の教諭をやられている(やられていた)だけあって、常に小さな子供たちのことを考えているのではないかと思われるふしが文章にあります。
 そういう意識の仕方が、すでに子供ではなくなってしまったわたしには嬉しく、どことなくくすぐったく感じるのです。


 で。
 虹北学園ですよ、虹北!
 商店街が舞台じゃないですけど、こういうリンクのしかたは好きったら好き!
 おまけに亜衣ちゃん、レーチと一緒に青春してるしー(笑)。
 オトコノコが絡んできて、ますます面白くなってきましたヨー!


17
『そして5人がいなくなる』 はやみねかおる 著

 この歳になって青い鳥文庫を読むことがあろうとは……(笑)。
 そんなターゲット層とは関係無く、面白いと思いますよ〜。
 でも、この作品を電撃文庫やSD文庫、スニーカー文庫などと同じく「萌え小説」として見ているのは、子供のココロを失っているというか(苦笑)。

 そうは言っても、三つ子の三姉妹って、アナタ!
 しかも3人の性格付けが巧みですし、そこから導き出される行動も魅力的ですし〜。
 キャラの賑やかさと掴み易さでは、『虹北恭助シリーズ』より好きかも。

 そしてトリックの説明の段では、さすがはやみねセンセ。
 わたしは素直に納得できました。お見事です♪
 それも奇をてらったトリックではなく、一般の人でも理解できるようなことを、ちょっとだけ目線を変えることでトリックに用いていることが好感なのデスヨ〜。
 さらには5人を消すトリックを詰め込まなければならないのに、それでも作品を窮屈にカンジさせない、急ぎすぎだと思わせない筆致は、本当に嬉しくなっちゃいます。
 事件の舞台のこととか、その背景のこととか、いろいろと勉強になります(^_^;)。


 それにしても……3人のヒロインの上を行く、羽衣かあさんのパーフェクトな存在感って(笑)。
 ここにもいましたよ、秋子さんが(笑)。
 94年が初刷りなので、秋子さんのほうが新しいわけですけども〜。
 ていうか、完璧おかあさんは、すでに1ジャンルですか?

16
『少年名探偵 虹北恭助の新新冒険』 はやみねかおる 著

 う〜ん……。題材の選び方が秀逸だなぁ――と。
 日常の中に、これだけのミステリなシチュエーションって、あるもんなんですね。
 そしてその描き方もまた、当然の如くお見事。
 読んでいて「ん?」と思う……というか目に付く描写が、のちに伏線となって生きてくるようにちゃんと計算されているというか。
 少なくとも、推理披露の場面までに、完全に読者の前に推理の材料は提示されているわけで。
 他の文章の中に埋もれてはいけない。さりとて、あからさますぎてもいけない。
 目に留める程度の印象を与えておいて、のちにその記憶を引き寄せる――。
 そうした文章を作成しておられることに感嘆しきりです。

 ……最後にきて「あれは実はこうだったんだ」というより、誠実ということなんですよね。

 はぁ〜。それにしても、響子ちゃんも高校受験ですか〜。早いですねぇ(^_^;)。

16
『少年名探偵 虹北恭助の新冒険』 はやみねかおる 著

 若旦那の映画の謎解きは面白かったんですけど(興味のあった分野なので、知識としてネタを知っていたせいもあります)、やっぱり『虹北恭助の冒険』なわけで、ちょっと違うかな〜……って気がしました(^_^;)。

 恭助が登場している「夜間飛行」のほうは、わたしの期待に応えてくれるものでしたけど。
 響子ちゃん、恭助なんかを選んじゃって大変だなぁ……という話?(笑)

 カラーページがなくなっていて、残念ッ。

15
『少年名探偵 虹北恭助の冒険』 はやみねかおる 著

 最近、読み物が推理モノづいているわたしですけれども。
 凝りに凝ったトリックを用意して、そして披露して、「さあ、どうだ!」と言わんばかりに解説されるより。
 身近にある「なぜ?」を見付けて、それを共感させて、「そんなトリックよりも大事なことってあるんだよ」と語ってくれるほうが好きかも。
 で、はやみねセンセは、わたしにとって後者。

 殺人事件が推理モノの真骨頂ではないことを教えてくれます。
 いや、ホント。


14
『平井骸惚此中ニ有リ』 田代裕彦 著

 これまた特徴的な文体で……。
 講談調の語りは、ちょーっと取っつきにくいかなぁって思いながら読み始めたのですけど、次第にその語りが気持ちよくなってきちゃって!
 やっぱり、リズムある文章は読みやすい上に、ハマります。えぇ、ハマりますとも。

 この文章とキャラ描写、そしてミステリとしての内容を考えると、大賞を受賞するのも頷ける気がしました。
 端的に言えば、世界の全てが魅力的であるというか。

 推理モノとしては平易なほうの謎解きだと思うのですけど、そうした要素を1つ1つ取り上げて論じても仕方なく、全ての要素を含んで作品としてみたときに魅力が際立つというカンジでした。
 ……もっとも、わたしがこの時代を好きだということも関係しているのかもしれませんけど(苦笑)。


 あ、表紙に萌えがないからって腰が引けてるかた。
 本編には沸点高い女学生さんとか、完璧超人な奥様が登場しますので(笑)。
 涼ちゃん、カワイイ! 發ちゃん、もっとカワイイ!(≧▽≦)
 澄夫人、強い……(笑)。
 というか、骸惚先生の活躍のほうがほとんどありませんけど……?
 でも、先生の言葉を通して語られるミステリ論は、おおむね納得できるかも。
 こうした考えをお持ちの方なら、これからが楽しみです♪


13

『僕と先輩のマジカル・ライフ』 はやみねかおる 著

 気になっていた1冊、ついに購入しました。
 ……うわっ。おっもしろ〜い!(≧▽≦)

 ジャンル的には心霊探偵――サイキック・ディテクティヴ、になるんでしょうか。
 超常現象を科学的に解き明かしていくという。
 その解き明かし方というか、ヒントのちりばめ方がとてもとても見事で〜。
 さりげなく、しかし何となく記憶に留めていくような筆致。絶妙〜(^_^)。
 無理をからめて説明しようともしていませんし、また、理解することを強いているというわけでもなく……。
 あくまで自然体というか。

 快人と春奈の関係もいいなぁ。
 距離感というか、お互いを想うこととか。
 お似合いッス!(≧▽≦)
 大学生なんですから、もうちょっとこう、それなりの関係になっても良さげですけど、あの2人ですからねぇ……。
 特に快人(笑)。
 夜9時に寝るオトコノコが、今の世の中にどれだけいるというのか。
 あ、でも10時半まで起きていた快人を「がんばったもんね」と評する春奈はカワイイと思います(笑)。

 ちょっと変わった男の子と女の子の話です。
 オススメ〜♪

12
『仮面は夜に踊る』 名島ちはや 著

 富士見ミステリーにしては珍しく正統派な活劇だったかなぁ……と。
 やっぱり少年探偵団モノは、ドキワクしないとね!
 ……っても、この作品で本当に感情移入できるのは“夜の支配者”の側ですよねぇ。
 ということは、ピカレスク小説なのかしらん?

 探偵団のリーダーがあまりにもステロな正義漢なせいか、作り物めいて好きになれないというか――。
 表のヒロインの如月未来ちゃんも、裏のヒロインのエリシアに、存在感の点から完全に負けているというか――。
 そんな次第なので、“夜の支配者”サイドに感情移入しちゃいました(笑)。

 探偵団の正副リーダーが辿っていく運命も面白いと感じましたけれど、ちょっと素直すぎる展開なので、逆の展開など描いてみたらどうかなぁ……とも。
 話のキモなのに、それはあまりにあからさますぎるのでは?と思ったもので。
 ……って、そこまでヒネらなくても良いですか。そうですね。

 探偵団の活躍はわりと関心薄ですけど、“夜の支配者”とエリシアの関係には興味津々でございます(^_^)。

11
『黒と白のデュエット』 岡村流生 著

 うーん……。
 特殊な知識を要するトリックを用いられると、浅学な自分としては「へぇ〜」と納得するほかなく……。
 衝撃を受けるとか、そういうこと以前に。

 そして極めて富士見ミステリー文庫らしい帰結は別段いいのですけど――。
 ところどころ、首を傾げてしまう文章があるんですよ〜。
 整合性というか。
 たとえば女の子っぽい容姿と性格に劣等感を抱いている主人公が、なぜ髪を長く伸ばしているのか、とか。
 被害者の最期の言葉(ダイイングメッセージ)を警察に証言しなくて構わないのか、とか。

 主人公のモノローグの1つに――
(でも、先輩の推論には充分な説得力がある……)
 ――というものがあるのですけど、コレに代表するように、読者が自発的に展開を受け入れることを待たず、これはそういうものだと言い切ってしまうというか。
 小説と言うよりは、ゲーム文章なカンジです。


 イラストを担当されている和泉なぎさサン。
 WEBで御本人が開かれているサイトにある絵と、なんだか雰囲気違うような……。
 あの雰囲気が出ていればと思うと……うーん、うーん。
 残念っ。

10
『さよならトロイメライ』 壱乗寺かるた 著

 読み始めてすぐに、クセのある文章だなぁ……と、ちょっと引き気味に。
 でも、それが結局最後まで読ませてしまうほどに興味を引いてしまえるのですから、さすがかと。

 密室トリックはー、文章で表すのは難しいですよねー。
 事件の考察の箇所は、図入りで説明した方が良いのではないかと思う次第。
 まぁ、トリック自体はなんて事はないので、そこまで力を入れなくても間違いではなかったのかもしれませんけど。
 でも、ミステリの誠実さから言えば、富士見ミステリー文庫の中では及第点以上だと思いました。

 うーん、あとはキャラが多すぎかなぁ……と。
 これからのレーベルが向かう方向(電撃文庫を追随するという)からすればさもありなんってカンジですけど、何というかキャラの役割が曖昧かもー。
 もちろん推理ミステリであるならば容疑者を絞り込ませないためにも、ある程度の和の登場人物は必要なんですけどねー。
 だけどLOVEを主題に持ってくるのであれば、その必要は無く、むしろキャラ数を絞ってキャラ同士の関わり合いや個々の描写に行数を割くべきでー。
 この辺り、まだレーベルの方向を覚悟できていないのか、どこかで齟齬が生じているのか、そのようにカンジました。

 似たようなことなのかもしれませんけど、カラー口絵と挿絵にも不満が……。
 カラー口絵ではトップ3とそのパートナーをセットで明らかにしておくべきでは〜?
 せっかく仰々しい設定を用いているんですし〜。
 視覚方面からのアピールが不足してるなぁ……とカンジました。


 登場してくるキャラは魅力的なので(特に女の子たちは)、このあとどうなっていくのか読んでみたい気がします。
 ちうか、エピローグでお嬢を出さないのは何か間違っていると思うんですけど〜?(^_^)
 ……やっぱり、泉ちゃんがヒロインなのかなぁ〜??


『僕の生きる道』 橋部敦子 著

 書店で何気に手にとって立ち読みしたら、こらもうどうにもならん!てなカンジで買ってしまいました。
 読み始めてすぐに涙腺が決壊しちゃいましたよ〜(T△T)。

 筆致はシナリオ文章なので、読み物として求める向きには、ちと厳しいかもしれません。
 でも、できればドラマと併せて読んでほしいなぁ〜……と思いました。
 文章で足りないところを補ってくれますし、もちろん、その逆も。
 ドラマを視聴している人には特にオススメです。
 蘇ってくるわけですよ、あのシーンの数々が。

 「――死ぬと分かっている男は彼だけじゃない。世の中の男、全員よ」

 はわわ……。みどり先生……(TдT)。


 それにしても小日向文世さんの役どころ、こうして文章であらためて見せられると、とても奇妙で面白い役ですね。
 トリックスター的でもあり……。


『涼宮ハルヒの退屈』 谷川流 著

 感想をアップしたと思っていたら、アップしてなかったようで……。
 あれれー??

 今回は短編集なわけですけど、読みやすさから言えば、既刊の中でもイチバンかなー……と思いました。
 うん。いっときの娯楽として楽しめた……と思います。
 それというのも、読んでいるときは楽しいと感じるんですけど、読後には奇妙に何も残らないというか――。
 読み終えた後は、一気に醒める気が。
 楽しかった時間は終わって、現実が待っていると教えられるような。

 ハルヒの横暴すぎる言動に振り回されて、最後には現実との折り合いを周囲が見付けるという展開には、ぶっちゃけ食傷気味かもです。
 それぞれのキャラの行動は楽しめるのですけど、それの核となりうるハルヒの成長が見られない点では、この先、ちょっと大変かなぁ……。
 もちろん、彼女が成長してしまっては、この作品は成り立たないワケですけども。

 ただ、「笹の葉ラプソディ」は、そうしたハルヒの横暴にも何らかの意味があるのだと匂わせた点で面白いと思いました。
 あー、意味っていうか、彼女にもこだわるコトがあって、現在があるのだという、彼女自身のキャラクター性といいましょうか――。
 突発的、その場限りの物語だと思わされていたところに、時間と時間の点をつなぐ線が浮かび上がってきたようなカンジ。
 その線を解明していけば、ハルヒのことも分かるような気がするんですけど……。
 そういう話、たぶん描かれないんでしょうね〜(苦笑)。

 ミステリもどきの「孤島症候群」ですけど、これはこれでアリかなぁ……と。
 少なくとも、トリックのために物語を用意しているのではなく、その逆ですし。
 つまり物語の本質はミステリではなく、あくまでハルヒなのだということでー。
 実際、この世界の中でミステリを描こうとしたら、富士見ミステリー文庫以上の展開になることが予想され(笑)。
 さしずめ『涼宮ハルヒは探偵ですか?』(^_^;)。

 致し方ないとはいえ、ハルヒの願望を後始末する話ではなく、ハルヒ自身が意識して動き出すような話が読んでみたいです。



『七姫物語 第二章 世界のかたち』 高野和 著

 待望の第2巻ですよ〜。
 あまりに間が空いてしまったせいか、読み始めた当初はキャラを思い出すのに手間取りました(笑)。
 んでも、読み進めていく内に、キャラ共々、この世界に引き込まれていくカンジが〜。
 やっぱり面白いデスヨ〜!(≧▽≦)
 あー。この雰囲気って、佐々木丸美センセの作品を思い浮かべるのかも。
 ……わたしだけかなぁ(^_^;)。


 冬という季節を、これほどまで意味ある存在にしている作品も珍しいですよね。
 もちろん、それはそのあとにくる季節である春の意味合いもですけど。
 本当なら生きとし生けるものたちにとって喜ばしい春の訪れが、この作品では穏やかな時期の終焉であり、争いの幕開けにつながるんですから。
 そうした、終わりの足音が聞こえている切なさみたいなものが、この作品を形作っているのではないかと思う次第。

 今作では季節柄そうなっていましたけれど、そもそもカラたち3人が仕掛けている「祭り」が終わりあるもののハズなのですから。

 主要人物の存在感だけでなく、衣装役さんとか、名前も出ない人の存在感もすごいですよね。
 名前なんて記号の1つか、それ以下でしかないと思わされるというか。
 人は何を為しているかで意味が初めて生まれるというか。
 例えば、ある組織の構成員の名前を列挙することだけで世界の奥行きを示そうとする作品がある中で、作中で動かなければ何の意味も持たないと言っているかのよう。
 で、高野センセはそういう描き方をしながらも、名前――言葉1つ1つにきちんと思いを託していることが立派だなぁ……と思うのです。
 ん? そういう描き方をしているから、意味を持たない言葉を用いないのかな?

 七姫たちの立ち位置とか個々人の雰囲気とか、今作で見えてきましたし、この先が楽しみです。
 ヴィジュアル的にも、今回のカラー口絵で目を引かれましたしね〜。
 やっぱり三の姫、常磐姫が人気出そうなカンジ(^_^;)。

 ……次巻は1年後でも待ちますけど、もっと早いといいなぁ(苦笑)。



『しにがみのバラッド。 3』 ハセガワケイスケ 著

 まいったーっ!(≧▽≦)
 何もかも、まいりました。
 もう、すごく好みすぎて悶え死にしそう(笑)。

 まず、カラー口絵で衝撃。
 1冊の本の中の要素を巧みに描いているというか、見事に凝縮して表しているというか。
 雰囲気をつかんでいるな〜と。
 描き手の七草さん、すごく進歩しちゃってます。ホレました(笑)。

 で、本編。
 1作目「ビー玉と太陽光線のかなた」
 大人というには幼すぎて、子供というほど無邪気ではない。そんな微妙な年齢の少年少女を描いているなぁ……と。
 そういう意味では亡くなった祖父から孫へのゲームの挑戦は、当然、社会の先達から後輩へ送るイニシエーションな意味なんでしょうね。
 1人で通過儀礼を経験しなければならないという作品も少なくないですけど(というか、最近の風潮はそちらに傾いていると思う)、誰かと一緒だからこそ経験できるものもあるわけで、カンタロウとトマトは互いの存在でそれを成し遂げたわけで。
 カンタロウはトマトを見付け、トマトはカンタロウを見付けて。
 ……あ、同じ通過儀礼でも、交叉して2種類あったのかな?

 少しだけ大人になった子供たちが見付けた答え。
 未来の姿は分かりませんけれど、その答えは大切なモノだとカンジさせてくれました。

 あと、これだけは言っておかねば。トミー、かわい〜……と(笑)。


 2作目「きのうとあしたの其処らへん」
 ココロの中に大切に残しておいた物。理想と現実のギャップはどうしても生まれてしまうものですけれど、好きって気持ちの本質は変わらないものですよね〜。
 何これ、すごく少女マンガしてませんか?(笑)
 やえっぺの空回りぶりが可愛くて可愛くて(≧▽≦)。

 大人になるってことは夢や希望を1つ1つ削っていって、ココロを現実に合わせていくことなんでしょうけど、それでも変わらない気持ちだけはきっとある。
 騒がしいお姫様と、おっとりした王子様のお話。
 もう、すごく好みで(笑)。

 2作がリンクしているという形も、作品構造として好みのスタイルといいますかー。
 ただの短編より、連作形式のほうが引き込まれますよね〜。

 3作目の「ほしの空、ひとしずく。」は、作品として必要なお話なんですけど、まあ、別に……という気が(苦笑)。
 少なくともわたしにとって、今回は前2作に存在感が負けてる気がするんですよ〜。


 読んでいて思ったのは、片山恭一センセの『世界の中心でアイを叫ぶ』の中の1エピソードに似てるかなぁ……と。
 んでも、こちらのほうが「好き」という感情の描き方として誠意あるもののような気がします。それは夢とか希望とか理想とかいう言葉に置き換えてしまえるものなのかもしれませんけど。
 まぁ、向こうはどうしても大人を意識しなければならないので、それはつまり現実の要素が多分に入ってしまうということで――。
 でも、そんな現実を出されても、倖せになるのは難しいのです。わたしは(^_^;)。


『テールエンド 海賊放送アプリコット通信』 津久田重吾 著

 ヒロインの心情の変化が、ちょっと急かなぁ――と感じました。
 それが作品として必然だとしても、もう少しきっかけを表に出してほしいなぁ……というトコロ。
 ヒロインを想うマリエルの行動も、わたしの目には強引と映ってしまいました。

 とは言っても、上記のような作品に必要な点をのぞけば、キャラ立ちはしていると思いました。
 個性的というわけではないですけど、きっちり性格に基づいた言動を描いているというカンジ。

 その反面、物語のほうへ目を向けると、伏線の出し方が気になりました。
 「このとき○○は、あとで××になろうとは知る由もなかった」
 みたいな書き方が目に付いたというか。
 ちょっと直接的っていいますかー。
 マグーが銀行へ寄ったときには、オイオイとか思いましたもん。
 ふつう、あの状況下では行かない……というか、もう少し注意するとか、考えなさすぎー。

 そういうことがあるせいか、先の展開に意外性は感じられませんでした。
 キャラは動いていただけに、残念!

 あとは空戦シーンですか……。
 これは、わたくし的なことになってしまうんですけれど、赤城毅センセとか神野淳一センセとか読んでいると、ちょっと迫力不足かな〜という気が。
 そこが重要な要素ではないということは承知しているのですけど(苦笑)。
 余談ですけど、「空飛ぶ船」だということに初め気が付かず、挿絵を目にしてそりゃもう驚きましたとさ(笑)。



『銀朱の花』 金蓮花 著

 久しく読んでなかった金蓮花センセの本ですけどもー。
 うわ〜。やられました〜。
 涙腺、ゆるみっぱなしです(TдT)。
 冒頭のリリアの境遇。叔父夫婦よりも、叔父夫婦に同情している村人に吐き気がしました。
 因習って……。
 タスクも結局は何もしなかったという点では同罪かと。
 祖父の財産を相続できたら……とか、成人したら……とか、いろいろと考えているのですけど、その考え方がいやらしいというか。
 結局、保身なんだよなぁ……と。
 エンジュが愛しいなら、2人でその地を去ることもできなかったわけではないでしょうに。

 カウルとの初夜……というか、その後の夫婦生活って、こういってはなんですけど、榛名しおりセンセが描く作品に似ているなぁ……とか思ったりして。
 なので展開は予想できてしまったのですけど……。
 うーん……。
 カウルさぁ……、もうちょっと言葉を使うというか、空気を読むとかさぁ……。
 それが王者の格というものかしらん?

 エンジュとカウルを見守る、シェリダン、アリシア姫、トリエル教主の3人。
 いいなぁ……。
 わたしとしてはトリエル教主の優しさが一番印象深いかも。
 アリシア姫のことを考えると、やぱし切なくなるというか……。
 倖せになって欲しいんですけど、倖せは自分で築くものだって言う人ですし――。
 うわぁぁ〜ん(TдT)。
 シェリダンはさー、真面目な人なんですよね?(苦笑)
 麦粥の件なんて、彼、悪くないですよ〜(笑)。

 いちばん泣けてきたのは、あれでしょうか。
 孤児院の子供たちから頼まれた銅貨のくだり。
 あれは、もう……(TдT)。
 子供の目を通しても、逢いたい気持ちが見えてしまうのか〜って。
 ……ん? 子供だから、そういう気持ちを察してしまうのかも。


 あとがきを読むと、続刊を書かれてる……んですよね?
 楽しみ楽しみ。
 ふりかかる不幸は続くでしょうけれど、きっとその先には2人の、2人に関わる人全てに倖せが訪れると信じてます。
 シェリダンのお相手がアリシア姫……って、ならないかなぁ(^_^;)。


『黄金の血脈』 伊吹秀明 著

 うーん……。
 背景設定が、活かされてないような……。
 終盤、説明されてハイお終い……ってパターンが、また……。
 それを言ったら、キャラの設定もあまり意味あるように活かしているとは……。
 家族との確執(……まで強い感情ではないところが、また……)の描写は、不要だったように思うんですけどー。

 別段、凝ったトリックがあるわけではないので、読みやすいといえば読みやすいのですけれどもね。
 ……犯人が分かりやすいという意味でもありますが。


『カレンダーがーるず AGAIN!』 朝倉衛 著

 続編……なわけですけども、前作の引きずり方が微妙かも。
 前作の勇太と日女、あるいは勇太と玖河の話はとりあえず「そんな話もありましたっけね〜」程度に収めておいて、今作ではテルとリュネットの話に腰を据えて取りかかったほうが良かったのではないかと……。
 主人公が誰なのか、ちょっと不明瞭すぎかなぁ。
 リュネットの立場とかキャラ像とか、面白いと思うんですけど、結局は勇太と日女と玖河に食われてしまっているカンジ。
 テルにいたっては……。

 脇役が主役を越えて目立ってしまうと、あまり良くないのではないかと……。


アウトニア王国拾遺録 でたまか 青雲立志篇』 鷹見一幸 著

 折り込みカラーの士官学校マイドやケルプたちがカッコイイ……。
 そして本編のほうでもカッコイイ……(´д`)。
 現在マイドたちが置かれている状況や、彼らの人となりを知っている以上、作中でどんな危機に遭おうとも、そこに絶対の不利はないと分かっているのですけれども、それでも彼らがとる行動だけは読み進めないと分からないわけで――。
 やっぱりマイドはこの頃から、すてきな仲間を見つけていたんだなぁ。

 「ひょっとしたらお前は、提督……いや、総司令長官になるかもしれないぜ」
 「ひょっとしたら君も、皇帝陛下の乗艦する帝国軍旗艦の艦長になるかもしれないぞ」

 ――とか、いま考えるとタチの悪い冗談にしか聞こえない台詞に苦笑しきり。

 あとやっぱり嬉しかったのは、メイ王女とのピクニックの話。
 マイドとメイが真摯なだけに、周囲のあわてふためく様が対比になっていて面白い作品になっているというか、シリーズを読んで各キャラクターの性格を知っている人には本当に嬉しい展開だったのではなかったかと。
 マイドの前科の件なんて、全てがここから始まったようなものですし〜。

 最後の占いの話を読んだら、また全編を読み返したくなりました。
 ここから、始まっていくんだなぁ……と思って。

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