○● 読書感想記 ●○
2003年 【11】

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13
『総理大臣のえる! 花嫁がいっぱい』 あすか正太 著

 国連でエロリスト弾劾決議って、すごいなぁ……。
 基本的人権停止に匹敵するとわたしは思うのですが(笑)。

 シャイニィを分析して「負けるために登場した当て馬2軍補欠サブヒロインタイプ」とは言い得て妙……っていうか、そのまんまデスカ?
 そういう役割を担っているのは間違いないですし――。
 それを本編で述べてしまって、さらにそこからひと騒動起こすという展開がスゴイと思います(^_^;)。
 でも、こう言われちゃうと、やっぱりシャイニィは健太とは結ばれないんだよねぇ……とか思ってしまうわけで(TдT)。
 この巻ののえるは、それなりにカワイイとは思うんですけど。
 司令官になってわなわなと震えているあたりとかー。


 物語の流れとしては、ちょっと大味なカンジも受けました。
 綺麗には落ちてないように思いますし。
 魔法を使わないとメフィに契約させるくだりは、唐突すぎなカンジ。
 たしかにここで限定条件を生みだしておいたからこそ、終盤の展開が可能となるのですが。しかし、だからこそ、ここでの契約のシーンは、その展開にもちこむためだけの十分条件であって、必要条件ではない……ような?

 まぁ、でも、シャイニィが納得できるようなら、それで良かったのかと思いました。
 はっきりしない健太、いいじゃないですか!
 まだ、のえるの勝ちとも、シャイニィの負けとも決まってないのですから!

 あ、今回は忍ちゃんが活躍してましたね(笑)。
 さくら先生も大活躍……っていうか、どんどん前に出てきてます。
 反面、覚悟を決めたはずのほのかちゃんが……(^_^;)。
 若葉ちゃんはレギュラー入りはしてないんでしょうか?
 ……忍ちゃんとキャラがかぶっちゃうからかなぁ(えー)?

12
『総理大臣のえる! サジはなげられた!』 あすか正太 著

 今回は短編10本立て。
 では内容も控えめなのかといえば、どうしてどうして。
 読み応えある短編でありまして……。
 「総理大臣のえる」らしい短編というか――。
 「高速道路で大もうけ」と「」うちの2階は大使館!?」ですね。
 とくに後者は、シャイニィの可愛らしさがいよいよ――ッ!てなもんですよ!
 嗚呼、嗚呼。こういう子は応援してしまうというか、ハマるというかっ。

 その他の短編も、どれも面白かったです。
 木佐先生の人柄も良かったですし。
 さくら先生の人生相談も(笑)。

 で、そんな今作でイチバン印象深かった文章は――

「小説ですらないのかよ!」

 ――です(笑)。


11
『総理大臣のえる! 撃破! 日本消滅計画』 あすか正太 著

 うーん……。
 まだ前作の暗い影を引きずってるようなカンジがしました。
 ちょっと、こう、浮かれた気分の中にも垣間見える哀しみみたいな。
 そんな雰囲気が終盤へむかうにつれて、少しずつ払拭されていくというか、覆われていた靄が吹き消されていくような、そんな感覚を読んでいて受けました。
 1巻の頃のノリを取り戻していくっていうか――。

 初めは1人だけで動き出した事柄が、いつのまにか多くの人を巻き込んでいきながら、多くの人に支えられながら、誰も支持しない正義=欺瞞をうち破る。
 かつてないくらいに盛り上がる展開でありました。
 今回は、あののえるでさえ、自分の行動に悩みましたし!

 そんな今回をイチバン表している文章は――

「黒瀬総理、折原のえるは手強いぞ……」

 ――ではなかったかと。ロバート大統領の。
 彼はのえるとやり合っていますから、彼女の恐さがどこにあるのかを知っているわけですね。そしてその恐さを尊敬もしているようなカンジです。
 良くも悪くも、戦友……なのかな?

 全体の流れを考えると、前半部分をもう少し短めにしても良かったんじゃないかなぁ……とも思いますけど(^_^;)。
 もちっと早めに本題に入るというかー。

 さくら先生大サービスの口絵カラーには驚きました。
 なんてシーンをカラー指定しているんでしょうか……(笑)。

 とまれ、前作の落ち込み具合があったからこそ、今作の流れが活きてくるようなカンジでもあります。
 復活ののろし……みたいな。


10
『総理大臣のえる! 乙女の怒りは最終兵器』 あすか正太 著

 やはり――避けては通れない話でしたか。……9.11。
 プロローグの代わりに、たった3行の文章が、今作の覚悟を表しているのではないかと思いました。

 八方美人結構とうたったのえる。
 つまりは平和を望むのであれば、そうおうの覚悟が――平和を戦い抜く覚悟が必要なのだと。
 覚悟足りないから、おかしなことになるのだと突きつけてます。
 この巻では「中途半端」を何度も述べています。
 本当に願いを叶えたいなら、最後までやり通す意志を示すこと。
 そうでなければ何も残さないばかりか周囲に迷惑だけをかけることになる。
 そして、「中途半端」の対局にあったはずのサラが、何故「中途半端」の犠牲になってしまったのか。
 どんなに頑張ってもダメなときはダメ。だけれども戦うことを最後まで諦めなかったら、それは負けではないということ。
 あすかセンセは、ちゃんと御自身なりの答えを示してくれています。
 もちろん、それをどう解釈するのかはわたしたち次第です。

「言いたいことがあるなら自分の言葉で戦いな!」

 『彼女が持ってる核ボタン』のときにも似た主旨の言葉がありましたけれど、つまりそういうことなのかなぁ……と。
 誰かが言ったとか、歴史が示しているとか、見たこともない何かを(社会とか)代弁しているとか、そういうことじゃなくて、自分は何をしたかったのか。
 運命とかそういう言葉で片付けないで、ちゃんと自分の気持ちを持つこと。
 そこからまず「中途半端」でない生き方が始まって、生きることに「負けない」ことへとつながっていくのではないかと思いました。

のえるとサラのエピソードはかっこうの美談として語られた。
そんなわかりやすいキーワードを与えられた2人の物語は、ありとあらゆるメディアで安っぽく消費されていった。

 今作の方向とは違うのかもしれませんけれど、メディア論というか記号論というか、ちょっと印象に残った文章でした。
 わたしの中で、マスメディアの性質に関して、つねづね思うところであるので。


 とにかくもう、今作は前2作とは趣が異なりますけど、本気で惚れました。
 それに趣は異なっていても、のえるはのえるでしたし、そして根底に流れる意識は同じモノだと思えましたから。
 ……ラスト、本当に泣けました(TдT)。


『総理大臣のえる! 恋する国家権力』 あすか正太 著

 新しい江戸時代からの年表……。
 何度見ても笑いが……(^_^)。
 江戸時代ってゲームバランス悪いって……そんな事言われても(笑)。
 家康がグランドラインを目指して旅立つあたりから笑いが込み上げてくるんですけど、最後の「あなたの後ろにいる家康は〜」で、もうダメ。
 笑うってば!
 このあたり、後半の歴史を変えることにも通じるんですけど。
 ……ねつ造って言いますよね、普通。
 まぁ、この件もまた、のえるの言い分には一理あるわけで。
 それに答えられない教育のほうが何か間違っているんじゃないかと思ったりもします(えー?)。

 それにしてもシャイニィ登場で、すっかり立場の無くなってしまったほのかちゃん。
 可哀想ですけど……ねぇ?(苦笑)
 彼女ではのえる相手に、軽妙洒脱な受け答えが出来ないので、物語のテンポが悪くなるんですよね〜。
 そこへいくとシャイニィは、もうバッチリと息のあった会話をしてきますし〜。
 2人が動くことで(そして健ちゃんが犠牲になることで)、物語に勢いが生まれるというか。
 そうしたテンポの良さが、この作品を面白くしているのではないかと思います。


『総理大臣のえる! 彼女がもってる核ボタン』 あすか正太 著

 わたしが最近読んだ角川スニーカーのヒロイン像って、方向性が同じのような。
 好きだからいいんですけど。
 のえるとか、緋奈とか、ハルヒとか(ん? 彼女はちと違うかも)

 社会の理不尽に対して抗う構図というのは、それが成し得たときに爽快感があるわけです。
 でも、やっぱりそれは物語の中でのことで、現実にはあるわけないと冷めた目で受け取る自分もいるわけで――。
 それでも……だからこそ、物語の中では、中だけでも、理不尽な言いよう、有り様に綺麗な鉄槌を下す存在を求める気持ちは、まさしくエンターテイメントとして正鵠を射るというか。

「言い訳しないと信じられないような正しさは、ちっとも正しくないのよ」

 わたし的には、のえるイチバンの名ゼリフを挙げろって求められたら、コレかなぁ……。

 この物語でウソをついているのは、たった1つ。
 でも、その1つで物語を始めてからは、何一つ間違ったことをしていないと思います。
 この物語構築の手法には是非を言われるとは思いますけど、フィクションなんだから絶対的に認められないという話は無いと思います。


 ――なんちゃって。
 そんなカタイことを言っていたら、この物語は楽しめないと思います。
 うん。楽しむ。
 総理大臣のえるの生き様を。行動力を。その真っ直ぐな考えかたを。
 しかも世界を正しくするなんてことは二の次で、底辺はラブコメですから〜(笑)。


『マリア様がみてる バラエティギフト』 今野緒雪 著

 主に雑誌に掲載されたもので、書き下ろしが一編。
 掲載分の幕間であろう意味の、架け橋的なショートがあるんですけど、わたしはこれ、不要だったようにも思うんですけど……。
 表紙も、中の本編のインターミッション的な性格を表してしまっているのか、何となく不可解な構図というか。
 コンセプトが希薄で、とりあえず描いてみました〜ってカンジなんですけど……?

 でも本編自体は、雑誌掲載時に目を通しているにもかかわらず好きかも。
 だけど『レイニーブルー』拒否症になってしまっているのかもしれません。
 今作の中でもその辺りにちょろっと関わってきてしまうのですけど、その部分を目にしたときは、ちょーっと気分がダウンしましたもん。
 あう〜(T△T)。

 ……そろそろ黄か紅で「つぼみの妹」が決まってくれないでしょうか(苦笑)。


『さようなら瞳の女神 海魔の紋章4』

 うわぁ……。夏見センセらしい、オチだわ……。
 文学者としては是なのかもしれないけれど、エンターテイナーとしてはどうなのかなぁ……。少なくとも、わたしは首を傾げちゃうなぁ……。
 読者を楽しませるという心配りが足りないというか。

 そういう展開に持っていくなら、もっと忍先生と甘々な日常が欲しかったところ。
 作中でも語っているように、ほんの十数日の出来事でここまで相互理解が進むとは、ちょっと上手く運びすぎな気がするんですよ〜。
 もちろん、それを2人の運命だと言ってしまうのは簡単ですけど。
 う〜ん……、でもなぁ……。

『哀しみのアクアブレード 海魔の紋章3』 夏見正隆 著

 人間の進化の中、ミッシングリンクの解釈と説明はSFとして面白いな〜と思いました。
 あと、TV局内や地下水道内での戦いの場面とか。
 こういうとこの精密な用意が、夏見センセらしいんですよね〜。

 んでも、キャラのリタイアのさせかたは、なんだか納得いかないというか――。
 意味あるリタイアのさせかたなんですけど。それはわかるんですけど。
 でも結局は主要キャラの肉付けでしかないように思うんです。
 もうちょっと、こう、愛情をそそいであげても良いんじゃないかなぁ……。

 自宅に戻った瞬と、そこに同居することになった忍先生。
 このシーンの2人みたいな展開をもっと読みたいと思ってしまうわたしには、夏見センセが描きたい方向とは異なる嗜好であると納得するしかないような。
 夏見センセって、こういう人なんですよ〜と。

 ……んでも、ここまでの流れへ、もちっと早く進めるべきなんじゃないかと思ったりして。
 正直、今作で明かされた内容を考えると、1巻の内容は展開遅すぎというか遠回りしすぎなカンジがするのですよ(苦笑)。


『レヴァイアサンの少女 海魔の紋章2』 夏見正隆 著

 遠回りしどおしの物語……という、夏見節が炸裂している感が(苦笑)。
 忍先生が大切とうたいながら、その間に渋谷のチーマーとヤクザとバケモノの乱闘騒ぎを持ってきちゃってます。
 この辺り、ちょっと、えー?ってカンジがしました。
 ……チーマーって呼び名、懐かしい気が(笑)。
 まぁ、5年前の本ですしね〜。
 留美と里佳湖の言い合いも、女子高生というよりスケバンな雰囲気……。

 こういうレトロ感?って、夏見センセのセンス……というか、世代感なんでしょうか。

 瞬のお姉さん、仁美さん。
 最初に受けたイメージと違うー。
 それを言うと伊地知さんもですけど。
 この2人は、なに世界を作ってるんでしょうか(作ってません)。

『海魔の紋章』 夏見正隆 著

 わたしが知るところの夏見センセとは、かなり畑の違った作品でした。
 自衛隊じゃないんですよ? 伝奇アクションなんですよ?(笑)

 憑かれた?海魔の存在が自身の免疫機能に反応して長時間は能力を行使できない……という設定も、ヒーロー物っぽくて面白いな〜と。
 岬の病院というのも、舞台としては伝奇モノっぽいですよね〜。

 龍造寺瞬と緑川忍の関係も、生徒と先生という間柄もあって興味深いですし。
 2人の関係って、夏見センセの作品の中では、わりと直球な男女関係ですよね。
 シリーズ幕開けとしては、すごく良い展開をしているのではないかと思いました。

『天使時間』 紺野たくみ 著

 『どきどき☆リトルウィッチーズ』の続編ということで、ようやく物語が動き始めました。
 ……うーん。なんだか刊行する順番を間違えている気がしないでも。
 今作のような物語を示してから、この家族の成り立ちにあたる『どきどき〜』を上梓するなら意味あることで、興味も増すと思うんですけど――。

 あとはまあ、誰の、何の物語を描きたいのかがわたしには分からなかったり。
 アンジェの物語なのか、ソルの物語なのか。
 どちらも……というのは、ちと欲張りではないかと思うんです。
 主人公が望なのは間違いないとして、その相手にはアンジェが示されています。
 だけれども、活躍の度合い、割いた文章量では圧倒的にソルだと思ってしまうので、なんというかヒロインのアンバランスさが気になるというか……。

 そもそも各人の心情はあまり描写されていないので、アンジェが望を意識するようになる展開には、急ぎすぎなきらいも感じたりして。
 ソルが競争から下りると言い出す心情も、またしかりで……。
 この辺りのアッサリ加減が、何となく惜しい!って気がしました。

『どきどき☆リトル・ウィッチーズ ディアーナの娘たち』 紺野たくみ 著

 面白くないわけじゃないんですけど……っていうか、むしろ好き?
 でも物語が物語として展開するまでが長すぎるかも――。
 父子家庭と母子家庭が合わさって、新しい家族となっていく物語……という主旨なら分かる気がするんですけど、そこが本旨では無い気がしますし。
 うん、まあ、それでもいいんですけど、そうだとすると、平凡な男の子の平凡な日常を描かれてもなぁ……という気になってしまいます。
 もちろんドタバタな展開、スラップスティックはあるんですけれども、喜劇としては弱いのではないかと思います。

 オチも何が始まっているわけでも、何が終わったわけでもなく、ただ幕が下ろされただけのような――。
 面白い要素を見せられているだけに、どうにも残念な気がしました。

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