○● 読書感想記 ●○
2003年 【9】

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30 ロンリネス・ガーディアン AD2015隔離都市』 桜庭一樹 著

 桜庭センセのデビュー作〜。
 やっとゲットできました〜。

 うん。若いな〜って思います。文体が。
 描くことに緊張しているような印象を受けました。カタイというか。
 でもそれも初々しくて、いーやね(^_^;)。

 奪われる側であったはずの子供が、実は大人たちが生きていく上での支えになっていたという構図。
 現代を描いているな〜ってカンジです。
 やっぱり明確な救いの手は差し延べられてなくて、つらいことが(つらいことばかりが?)これから先に見えているんだけれども、それでも「人間は変われる」のだから希望を失うことはできない――。そんなカンジ。
 希望がどんな形を為しているのかは、それは各自で考えるってことで。
 突き放しているのではなくて、共に歩むことを求めてるのかな?
 あるいは歩き出すのを待っている、立ち上がるのを待っている……とか。

 うん。やっぱり桜庭センセの本を読むと、力が湧いてくる気がします。

29 『灼眼のシャナX』 高橋弥七郎 著

 悠二と出会う前の、シャナがフレイムヘイズになる経緯のお話。
 いわゆる過去設定話なので序盤から中盤まで退屈気分だったのですけど、あれよあれよと引き込まれましたですよ。
 わたし的にはシリーズの中で1・2を争う面白さデシタ。
 もっとも、その面白さというのは、この巻単体で感じるモノではなくて、シリーズを通して読んだ上で理解できる面白さなのだと思いますけれど――。

「本当にそうであるかどうかは、自分で見極め、自分で決める。でないと、自分の全てを捧げて生きることなんてできない。立って、歩くのは、自分なんだから」
「ごめんね、アラストール。私、悪い子なんだ……どれだけみんなが私を愛してくれても、どれだけ私がみんなを大好きでも……それが嫌なら、絶対にやらないの。私、すごくすごく、悪い子なの」

 この2つの台詞で、シャナのことが(少し)分かったような気がします。
 シャナの気持ちに(少しだけでも)近づけた気がします。
 それだけに、悠二のそばでメロンパンを食している姿がこれまで以上に愛らしく感じられたりもして……。嗚呼(T▽T)。
 吉田一美ちゃんには悪いけど(今回、登場がなかったのに)、勝ち目は……。
 というのもシャナが凶悪に可愛いすぎ。

 いとうのいぢセンセのイラストコラムもあったんですけど、「今回から」と仰っているので、次巻以降もでしょうか? たのしみー。
 ラフスケッチで描かれている一美ちゃんは可愛いのですけれどもー。
 たぶん、シャナは、ビジュアルでなくて仕草で可愛いと思ってしまっているんですね。わたしの場合。


 ああ、ところで。
 ヴィルヘルミナに『水月』の雪さんをイメージしていたのは、わたしだけデスカ?(苦笑)
 それと、中表紙の人は、『炎髪灼眼の討ち手』……なのかな?


28
『腐敗の王』 在原竹広 著

 やっぱり好きですねー。在原センセのミステリ感覚は。
 推理ミステリの入門書として、程良いカンジ。
 定番のトリックなので割と前の方から注意する箇所が見えたのですけど、さりとて、その見え見えのトリックでも飽きさせない展開といいますか。
 というか、見え見えのトリックが、先を読ませるための布石というか魅力というか。

 筆致も淡泊というか、淡々としているきらいもありますけど、それは裏返せばクセがなくて読みやすいってことですし。
 地の文と会話のバランスも良いかな、わたしにとって。

 桜子と悟郎の関係も、びみょーにびみょーになってきてLOVE!(≧▽≦)
 小川よ志乃嬢が引っかき回してくれることを期待してます(笑)。
 ……兄さんと音夢とさくらの関係のようです(えー?)。

  『ホーリーメイデン 碧の瞳の少女』 橋本純 著

 解釈の問題だとわたしは思っているのですけど(もしかしたら学問的には間違っているとしても)、井上円了先生は全ての妖怪や超常現象を否定していたわけではないのでは?
 円了先生は人間の無知からなる愚かな行動を戒めていましたが、その上で、人知が及ばない世界があることも認めていたと、わたしは考えてます。
 それって、わたしが浅学なのかなぁ……。

 少なくとも妖怪博士の名を出して、円了先生が非科学的な事柄に対して全て否定的だったとは思えませんし、また、そうした一面だけを強調して登場させていることを、あまり好意的には受け止められませんでした。
 このあたり、オカルトを演出するためだけにクトゥルフ神話のネタを持ち出してくることに嫌悪を覚えるのと似ているかなぁ。

  『半分の月がのぼる空』 橋本紡 著

 橋本センセの新作、WEB上ではあまり評判が良くないようですけども――。
 『LAST KISS』と比較している評が多かったんですけど、ちょっとそれって違うような。
 絶対的な「死」の存在が向こう側に待っている『LAST KISS』に比べると、当作品はもっと「生」と「死」の狭間で選択が揺れ動いていると思うんですけど。
 というか、少年少女が橋本センセの作品イメージですけど、例えば『リバーズ・エンド』などでも「生」と「死」が主人公たちの前では揺らいで見えていたのだと思いますし。

 少年少女が受け入れたくない「死」の存在に対して行動していく中に葛藤があるわけで――。

 んでも、祐一のほうが「死」を迎えることになって、その「生」を里香が受け継ぐ……というような展開にはならないでほしいです。
 それはちと、哀しすぎます。

  『毛布おばけと金曜日の階段』 橋本紡 著

 うーむ。
 この年頃の少年少女を書かせたら、橋本センセはすごいですね。
 等身大……って言うと安っぽく聞こえちゃうのでアレですけど、そこ(物語の中)にいるであろう雰囲気をちゃんとまとっているというか。
 息づいているってこと、ですか?

 都築くんがイイ人すぎて、泣き笑い。
 そんな次第で、一番好きな話は「缶コーヒーの行方」なのです。
 結び方も、すっごく雰囲気あっていいですよね〜。

『リバーズ・エンド5』 橋本紡 著

 もう、弥生と七海の会話が切ないっていうか――。
 とくに七海は……(TдT)。

 正確に語り明かしてくれなかったところや、抽象的な戦いのイメージ、物語の骨子となるべくギミックなど、読んでいて「?」と思わざる部分が最終巻を読み終えてもあるわけですけど、それでも良い作品だったなと思えました。

 拓己と唯に関しても、決して倖せではないわけですけど、それでも希望があると信じたいです。
 というか、拓己と唯という存在自体が希望。
 そういうことじゃなくても、4巻で唯が「拓……くん……?」と言葉にしたことが希望かもしれません。
 べつに存在が希望なのですから、それ以上を望むことは不遜なのかもしれませんけれど、それでも、もし、そうであったなら、それに勝る喜びは無いと思いますし、そしてわたしはそう思いたいです。

 ラストの堤防突端でのシーン。
 ここはもう、涙の防波堤決壊なワケで。
 拓己と同じように、泣きたくなかったんですけど、泣けてしまいました。
 うわぁん(TдT)。


 『リバーズ・エンド』という作品、好きです。
 とても誠実な作品だったと思います。
 物語の全体像を把握していると思える作家さんは好感ですね、やぱし。

  『リバーズ・エンド4』 橋本紡 著

 う……。この巻、帯が無いのを買って来ちゃった……。
 某所で言われてましたけど、わたしも帯は必要だと思う派だったりします。
 帯に本のセンスが表れるといいますか、書かれているコピーとかが重要だったりするわけで。
 あー。4巻の帯のコピーはなんだったんでしょう??

 で、本編。
 ……えーっ!? 弥生って!?
 てなカンジに驚きはしましたけど、まあ消去法で言えば当然かなぁって気も。
 七海も自分の気持ちに気付いてしまいましたし。
 こちらも、よくここまで引っぱったなぁって気がしました。
 んでも、わたし的には必要以上に延ばされたカンジはなくて、この時この場面で気付くという展開は納得できました。
 そして、残念だけど、がんばれー!ってカンジ。

 構成上仕方がないのかもしれませんけれど、最終巻、クライマックスへの引きの巻なので、なんとなく静かだったという印象がありました。
 ラストでは、やはりというべきか、ついに……ですし。

『リバーズ・エンド3』 橋本紡 著

「何かが始まろうとしていた。何かが終わろうとしていた」
 帯のこのコピー、すごいなぁと思いました。
 本当にそういう転換点なんですもん。
 本文の一文なんですけど、すごく意味を持っていると思います。

 拓己が加わったことで、スクールの雰囲気が変わって、そしてみんなが仲良くなっていくっていうのに、舞台の外の大人たちからすれば、その親密になっていく仲ですら別の意味しか持たないという、気持ちのすれ違い?
 みんなが楽しそうにしている様ですら、あとに待ち受ける運命を悲劇に演出するものに思えてしまうというのは、なんともやるせない話なわけで――。

 七海とか遥とか、茂とか直人とか、もちろん孝弘も拓己弥生も、みんな生きてます。
 生きてるし、生きていたいと願っているのに、大人たちはその願いに意味を見出せなくて。
 閉塞感みたいなものが、心に迫ってきます。


21
『リバーズ・エンド2』 橋本紡 著

 嗚呼嗚呼嗚呼……。そうやって展開させていくんですか……。
 もう、ハートが締め付けられっぱなしですよ(TдT)。
 電撃文庫の2巻らしく物語は転がっていくんですけど、その転がし方が子供たちを傷つける方向で進んでいくっていうのがツライです。
 そこにしか居場所のない子供たちがあつまって、互いの心の内に抱いている傷と見つめ合う、見つめ合って傷の痛みを受け入れていくしかない様が、それはもう読んでいてツライといいますか……。

 とくに拓己に関して言えば、文章展開上で唯との話を挿入していく形式がまたもの悲しくさせてくれるというか。
 かなりこの演出、あざとい!と思います(改蔵的)。
 こんなことされたら、もう、拓己の痛みを読者も共有するしかないじゃないですか〜。

 七海がしてきたことを知ったときの拓己の行動、無意識なんでしょうけど正しい選択だなぁって思わされます。
 孝弘も弥生も直人も、みんな一生懸命に生きるというか、それしか願いはないのに、どうしてうまくいかないんでしょうね……ってお話?

 そんなわけで、「ラブ・ファンタジー」と銘打たれている当作品ですけど、どちらかというと「愛(LOVE)」より「生(LIFE)」の部分に強く惹かれました。

  『リバーズ・エンド』 橋本紡 著

 もうなんていうか、読み易くって困っちゃいます。
 一文ごとに改行なんですから、当然といえば当然ですけど。
 でも、あれです。
 こうした文体がこの作品が求めているであろう虚無感とか寂寥感には見事にマッチしていると思うわけで。

 正直、どこかで見たようなお話で、どこかで見たような設定の類なんですけど、それすらも描ききってしまえば無二の作品になってしまうというわけで。

 「メールから始まる物語」とか「辿り着く場所という意味での河の終わり」とか、当作品で提示されるコンセプトは好みですし、それを用いての雰囲気作りにも成功してるなーって思います。
 でも、この作品、シリーズなんですよね?
 どうやってこのあと展開させていくのか全く読めないんですけど……ってくらいに、綺麗にまとめられている気がします(もちろん読者に提示されなかった謎は残っているにせよ、ここで物語を閉じても充分だと思う次第)。
 とにかく先が気になりましたー。

  『桜色BUMP2 ビスクドールの夢』 在原竹広 著

 うーん、やっぱり好みかもー。
 今回、桜子と悟郎で視点が分解しちゃったけど、それでもミステリらしさは失ってなかったと思いますしー。

 まあ仕掛けの意味するところからも、視点が分かれるのは仕方がないのかもしれません。
 それに個人的にも桜子の心境、理解できる部分、ありますし。

 あーうー。でもやっぱり、悟郎視点で物語られるパートでも、桜子の主観?のようなものをもっと差し挟んでほしかったかもです。
 あと前作とのつながりを……。
 重男は登場してましたけど、菜々美は……?
 「普通の人」としての由紀子の存在が大切なことはわかるのですけど、菜々美や重男も同じくらい大切な気がしますヨー。

  『桜色BUMP シンメトリーの獣』 在原竹広 著

 ミステリーの描き方として、すごく好みかもしれません。
 わたしが考えるところのルールを逸脱してないので。
 普通に物語の描き方としても、しごく真っ当なのではないかと思います。
 なんというか、信用に足る書き方をする人かなぁ……って。

 ただ、登場人物にはクセがありますよねー。
 主人公の桜子しかり、不思議やさんの店主とか。
 でも、桜子の言動は好きかなー。

「きみ、かわいいね」 → 「いいえ」
「ねえ、よかったら」 → 「よくない」

 このあたりのやりとりで、嗚呼、とか思いましたもん。
 やばい。吾郎が桜子のこと気にする理由もメチャわかる(笑)。
 自分の中で存在感ありすぎで目が離せないカンジです。

 あ、折り込みカラー口絵のなかに、さりげないヒントがかくされてるわけですね。
 というか、ヒントを折り込むコンセプトで描かれてるのかな?

 とにかく楽しみな作家さんになりました。

  『マリア様がみてる レディ、GO!』 今野緒雪 著

 ウェイトが祐巳さんのほうに大きく傾いてきているので、ちょっと寂しかったり。
 もちょっと祥子さまの関係でイベントがあってほしいなーってことで。

 それにしても祐巳さんのお姉さまLOVEっぷりは、気の病とかそんなレベルを越えて、なかば信仰じみているような気がします。すごい。
 まあ、そんな心の内はさておき、見た目は長年連れ添った夫婦のよう(笑)。

 つぼみの妹関係では、そろそろ動きがあるんでしょうか。
 由乃さんはタイムリミットがありますし(笑)。
 江利子さんは、あいかわらず楽しませてくれます。

 祐巳さんの妹は、可南子ちゃん……なのかなぁ。
 前作では後半に山寺の学園祭があったために、正直、可南子ちゃんの印象が薄いわたしです。良くも悪くも。
 それが今作で、アレ、でしょー? 期待しちゃいますよねー。
 瞳子ちゃんは、やっぱり黄薔薇ファミリーでよろしいのではないかと。
「そんな勝負事で妹をお決めになってよろしいのですか?」
「あら、つぼみの妹をやりとおす自信がなければ辞退してもかまわないわよ」
 ……とか、売り言葉に買い言葉みたいなやりとりで(笑)。


 そして真美さんが、なんとなく三奈子さまに似てきているような……(苦笑)。
 なんだかんだで、似た者姉妹?

  『あそびにいくヨ!』 神野オキナ 著

 わーい! 楽しみにしていた神野センセのしんかーん!
 今年はあと2冊、出るんでしたっけ? 楽しみ楽しみ。

 で、本編。
 いや、もう、深いことは考えないで、明るくドタバタしながら互いの関係について考えていこう!って話。すごく好き!(笑)
 もちろん深く考える必要はないけれど、そういう意味ではもっとシンプルに考えることはあるわけで、けっして味わい深くないわけじゃないところのバランスが絶妙だったかと。

 センセ御本人があとがきで語っている「悪意ある人物は出さない」「人は絶対に殺さない」というコンセプトが、これまた心地よいといいますかー。
 とくにわたし的には後者が。
 物語に厚みを出すには誰かの命を奪うことが手法の一つとして考えられますけど(というか、それがコストパフォーマンスにすぐれていると思う。手法として)、そうすることなく物語ることは、それはまた大変ですけど、やっぱりどこかホッとするというか。
 善人にせよ悪人にせよ、誰かが死ぬことは苦い気持ちになりますし。


 ……でも、このコンセプト。『シックスボルト』の裏返しなんじゃぁ?(苦笑)

  『天国に涙はいらない2 畜生道五十三次』 佐藤ケイ 著

 験激ゲーム小説大賞で某かの賞を取った作品がシリーズ化すると、おおよそ二巻目では新キャラが登場したり新機軸が差し込まれていたりするのですけど、それってこの頃でももう方向性として備わっていたんですね。

 で、そんなネコ娘の真央ちゃんは馴染めるんですけど、前作からの律子ちゃんは、ますますわたしの守備範囲からは遠い存在に……。

 うーん……。やっぱり小説は登場人物に感情移入できるというか、少なくとも認められる存在でないとツライかも……。

  『天国に涙はいらない』 佐藤ケイ 著

 コメディとして丁寧に描かれている(成立させている)と思うんですけど、その方向性はわたしの感性には合わなくて……ということ?
 とくにアブデルの性格はちょっと……(^_^;)。

 物語としても、とても綺麗にまとめているなってカンジがしました。
 なんと言いましょうか、不満の残らない結び方、ですね。
 この1冊でちゃんと落ちていると言いますかー。
 そういうトコロからも「あ、金賞受賞だけのことはあるな〜」と思うのでした。

『月と貴女に花束を remainsU』 志村一矢 著

 うーわー。最終巻ですかー。
 面白かったー。
 できればリアルタイムで読みたかった感じです。

 表紙、燐と鷹秋。うんうん。remainsはこの二人のためのシリーズですよね〜。
 由花と直純って意見もあるかもしれないけど、何より燐のためのお話群ですし、それなら鷹秋にも関係あるって次第で。

 ただ気になるのは、戦いのシーンでの各人の強さが推し量れないところでしょうか。
 明確な強さというものが感じられず、ギリギリの戦いの中を「運」で勝ち残ってきているようなカンジを受けてしまうんですけど。
 ありていに言ってしまえば、この世界では誰が強さの基準になっているのか、ですか?
 ラグナウルフですら絶対的な強さを誇ったシーンは皆無ですし。
 remainsでの燐が弱く感じられるのは、ドラゴンボール現象ですか?
 強いって評価を受けている人が、それはあっさり倒されたりしてて、ちょっと困惑してしまいました。
 ――もっとも、当シリーズにおいて戦闘が占める部分はさして重要ではないので、そのようなことは蛇足なのかもしれませんけど。
 肝心なのは、それぞれの戦いに赴く各人の姿勢にあると思うので。


 それにしても五堂恭一という人物には、そこはかとなく納得がいかないのですけども!
 この人が行動を起こしていれば、冬馬くんとか深雪さんとか、犠牲にならずにすんだ人っているんじゃないんですか?
 桜の命令を効かなかったことは数知れず――とか、アウトロー気取りですか?
 目の前で起こっていることが罪だと分かっているのに何も行動を起こさなかった人は、罪を犯している人と同罪だと思います。
 自分は実力があるから桜も簡単には手出しができず、自分に不都合がないなら黙っていよう……と考えていたようにも思えるんですけど。
 桜は自分の意志をもってその目的のために大勢に害を為していましたけれど、この人はただ自己保身しかなかったんじゃないかと。
 そんな人が鷹秋をなじる資格を持っているとは思えない……。

 謝るべき、責められるべきは、桜に操られていた燐ではなくこの人なのではないでしょうか。


 あーっ、もうっ!
 やっぱりいろんな人のおかげで燐は生きているなら、本当に倖せにならないと!
 そして燐にあの言葉を言われたからには、鷹秋は命に代えても倖せにしてあげないと!
 ……でも、深雪さんなら、倖せにする/されるは、表裏一体・一心同体ってことになるんでしょうね。
 相手の人の倖せが自分の倖せ……みたいな。
 ええい、ちくしょうめ!(≧▽≦)

 由花ちゃんと直純くんの仲は、まだまだかと……。
 え? あれで答えなんですか?みたいな。
 こう、もうちょっと確約みたいなものを見せて欲しかった、ナー(^_^;)。

 イラスト描きの椎名優さんのコメントもあって、いよいよ本当に最終巻っぽいですけど、もっともっと読みたいっていうかー。
 子世代の話とか、読みたいんです(笑)。
 椎名優センセが、あんなイラスト描くからです(^_^;)。

  『月と貴女に花束を remainsT』 志村一矢 著

 えーっ、えーっ!? 鷹秋と燐がーっ!?
 残されたモノ(者? 物?)の中では、驚くカップリング。
 というか本編では鷹秋って、いまいちキャラ立ちしてなかった気がするのでー(^_^;)。
 でも鷹秋とも睦美ともイイカンジ、燐。
 妹の親切心、わかってないね、鷹秋!
 こんな調子じゃ、燐と付き合うことになっても睦美の味方されて苦労するよ!(余計なお世話ダー)
 睦美ちゃんといえば、中表紙、最初は誰かわからなかったデス(苦笑)。

 まー、分からなさ加減では、表紙の直純にはかないませんけども(新キャラなのだから当たり前)。
 直純くん。remainsってことで、ここにきての新キャラってどうなのかなーと、ちょっと馴染めませんでした。
 嫌いじゃないんですけど、どうも……。
 背負っているものが他の人にくらべて軽いような気がするんですよね。
 実際、それが遠因となってるかのような動機でしたし。
 もっとも、背負うものが軽いということなら、これから背負うだけの余裕があるということですので、由花ちゃんに負けないように頑張って下さい。
 なんといっても静華さんの娘ですからねー。てごわいぞー(笑)。

 縁の話は、1本の話として良かったと思います。
 このあと、縁とレインがどうなってしまったのか気になるところですけど。
 終わり方が良かったんですよー。
 物語として。

  『バイトでウィザード 流れよ光、と魔女は言った』 椎野美由貴 著

 あ、あれ……?
 話が通じる涼宮ハルヒが……いる?

 もちっと「バイト」の部分が強調されているお話かと思ってましたー。

『君の嘘、伝説の君』 清水マリコ 著

 あーもうっ!
 わたし的にアタリな本ばっか続くので嬉しいったら!(≧▽≦)
 前作『嘘つきは妹にしておく』にハマッていたので今作も期待していたのですけども、いやー、もー、顔が緩んできちゃいます。
 やっぱねー、男の子・女の子の通過儀礼、イニシエーションの話はわたしにとってはツボもツボなわけで。

 都市伝説めいたガジェットも好きですしねー。

 ラストはどうなんでしょ? 解釈としては。
 子供の時代を終えたのかな? それともまだ途中?
 わたしの解釈としては後者なんですけど。
 でもやっぱり智奈と操は近い将来に、また出会うんじゃないかなぁ……。
 お互いに、ちゃんと答えを持って。

 大切になった相手のことを守るには、自分という存在は社会の中でとても小さな存在だけど、それに負けない強さを持ったとき、また二人は出会えるのではないかな……と思うのです。

 私見ですけど、やっぱり前作を読んでからのほうが話に浸かれると思います。
 前作を読んでいたほうが「引っかかる」と言ったほうが近いかも。
 ヤラレター……とか思いましたもん。

 前作と関係あるキャラが登場している……って、ヨシオのことでしょうか?
 主人公のお父さんだった人。

 そして今回もtoi8さんの絵は良かったのデシタ。
 表紙と中表紙の関係なんて演出としてサイコー!(見返したら前作も同じ手法を使ってましたネ)


 不思議系の物語なので読む人を選ぶでしょうけど、わたしはPUSH!です。

『月と貴女に花束を6 聖夜終焉』 志村一矢 著

 サブタイを見て思ったんですけど、一両日中の出来事で文庫3冊ですか?
 そんなわけで最終巻です。

 前巻のラストから続くわけですから哀しい展開しか待っていないと知りつつも、やっぱり哀しかったですね……。
 冬馬くんと深雪さんが――。
 最後に別れしかないと分かっていても、二人一緒だからその瞬間までを大切にしていきたいっていう気持ちがね……もう……。

 「だらだらと生き続けることが、そんなに楽しいか?」
 たった一つの目的のために必死に生きてきた香沙薙桂だからこそ言えた言葉だと思いました。そしてこの一言で、わたしの中の彼への評価は完全に正方向へ。
 桂くんが言うからこそ、この物語の中でイチバンの重みを付加できたんですよね。
 もうね、もうね。彼には倖せになってほしかったヨー(;д;)。


 完結編ということでのラストの第4章とエピローグの章。
 わたしが思い描いた、望んでいた形では結ばれませんでしたけれど、とても純粋な気持ちで嬉しくなる終わり方でした。
 もう、まさに「月と貴女に花束を」のタイトルに相応しい終わり方でっ。
 2巻から始まった第2部。
 その時からこの終わり方は考えていたんでしょうね。すごいです。

 というわけで、大好きな作品になりました。
 まだ「remains」が残ってますけど、読むのが楽しみです。

『月と貴女に花束を5 聖夜狂瀾』 志村一矢 著

 「最後の月」と「種」
 これまで物語の中心に据えてきた2つのガジェットを、見事に融合させたなぁ……という感嘆の気持ちです。
 単体での意味はもちろん示されてきたわけですけど、それを併せて終盤への展開に用いる手腕はすごいと思いました。
 良い意味で裏切られたカンジ。意表をつかれたというか――。
 2巻の時点で以降の展開を設計した、志村センセの構成力には感服です。

 ここまで、たくさんの人が敵味方問わずに命を失っているんですけど、あたら命を奪う/失うことで葛藤を生みだしているようには思えないんです。
 それぞれの命にはちゃんとした意味を持たせてあって、そんな意味ある命だからこそ失われたときの哀しみや怒り、いろんな感情を読み手から引き出すことに成功していると思いました。
 意味ある……って言葉は、この作品においては「愛されている」って言葉と同義かも。


 で、ラストバトル1なわけですけど、鷹秋、男ップリを上げましたか?
 でも哀しいかな、それ以上に静華さんが女ップリを上げてしまいましたので目立ちません(笑)。
 それとちょっとだけ香沙薙桂に同情。そして共感。
 作品の良心である深雪さんが恐くないと言ってしまえば、それはもう読者も納得するほかなく(^_^;)。
 響忍くんは、もう、そういう役どころですから――(TдT)。
 仕方ないですよねぇ、彼はもう。

 全5巻の予定が1巻伸びてしまったそうですけど、良かったんじゃないかと思います。
 敵味方、全員の想いを描写できていますし。

  『月と貴女に花束を4 聖夜騒乱』 志村一矢 著

 なーんか鷹秋の恋心って、突然って気がするんですけど――。
 仮にそうでなかったとしても、冬馬を殴るほどであるとは思えないんデスヨ〜。
 そりゃ冬馬に非があって、真矢の激情を止める代わりだったとしても、えーちょっと……って気が。
 何もモーションかけてなかった鷹秋には資格が無いというか。
 というか、初めから冬馬がいるから諦めていた……という風に受け取っているのですけど、如何に?

 まぁでも、閉じこめられた深雪さんと短い言葉で気持ちを通わせる冬馬には、どーあっても勝てないことが示されてしまうのですけども(笑)。

 香沙薙桂の事情や「長」の事情も報されて、いよいよクライマックスへ!――という位置付けなのですけど、前哨戦ばかりな点では盛り上がるにしてもまだまだなカンジ。
 「長」の個性?を引き出すことに重点があったような巻ですねー。
 最終目標が明示されたというか。


 裏表紙では桂が可哀想で……(苦笑)。

『月と貴女に花束を3 鬼神猛襲』 志村一矢 著

 またもや冒頭でモテモテな冬馬さん(笑)。
 こういう構成なところが好きなのかも〜。
 いきなり重い本題に入る前の、こう、何て言うか運び方を心得ているというか。
 テンション上がる前に本題に入られると、結構ツライものがありますから……(わたし的に『ハイスクールオーラバスター』が、けっこうそんなカンジでした)。

 本編のほうも、陣容が少しずつ表に出てきはじめて、立ち位置がハッキリしてきたカンジですね。
 正しいと思えてきた人・コトが、いざ正面に示されたときにそうではないとわかる様は、これからの展開に期待を持たせてくれるというかー。
 入り組んでいることは入り組んでいるんですけど、対立構図としてはしっかりしている……のかな?

 出会いと別れと再認識を繰り返す構図はドキドキ感があるというかー。
 病室での別れのシーンしかり、中表紙のシーンしかり(エピローグですよね、あの絵)。
 エピローグでの冬馬くんは、精一杯がんばった!(笑)


 それにしても本編の内容を考えると、なんて哀しい裏表紙……。

『月と貴方に花束を2 妖龍の少女』 志村一矢 著

 愛情ある生活感と悲壮な戦いが、バランスよく包まれているから好きなのかも――とか思いました『月と貴女に花束を』のシリーズ。
 「前巻は1巻で完結してますので、2巻からが第2部始まり〜」と志村センセがおっしゃってましたけど、その掴みとしては冒頭の冬馬と深雪さんのやり取りはすごくキャッチーだったな〜と、思う次第です。
(そしてシリーズを読み終えた今では、きわめて意味あるシーンであったとも思います)

 主人公・冬馬の存在感の薄さをよそに、姉兄の二人の存在感ったら!(笑)
 とくに静華さん!
 なんですか、あの人は、も〜っ!(≧▽≦)
 冬馬に関することで家族間で静華さんなりに色々あったわけですけど、それを経験として活かして、そして深雪さんにアドバイスする姿勢が素晴らしいです!
 お兄さんの静馬さんも色々あったようですけど、まぁプライベートな方面ですしー。


 あ、存在感薄いと言っちゃいましたけど、深雪さんと由花ちゃんにモテモテですからべつにオッケーですか?
 椎名優さんの挿絵入りのあのシーンは雰囲気ありました(笑)。

 
『月と貴女に花束を』 志村一矢 著

 今頃になって手を出してみました〜。
 おっもしろかったです〜!(≧▽≦)
 1巻にしては敵方の陣容が入り組んでいるような気もしましたけど、そこはそれ。
 戦う理由と守るべきものを見つけた男の子と女の子の前には〜(笑)。

 シスコンの真矢は、可哀想ですけど同情は出来なかったかなー。
 自分の感情を優先させる人は苦手なんですね、きっと。
 深雪さんは決して冬馬に奪われたわけじゃないのに、それを理解しようとしないっていうのは――。
 真矢が襲ってくるには更に理由があったにせよ、少なくともこの巻の中では、そもそも深雪の気持ちを「そうなる以前にも」考えたことがあったようには思えないので。

 反対に、鷹秋のほうは、愛せるおバカさんかなと(笑)。
 深雪さん相手に毒気を抜かれていたのには苦笑です(^_^;)。
 その気持ち、分からないでもないですけどね〜。

 うん。そして結び方が心地よかったです。
 約束で始まり、約束で終わるわけですよね。
 物語として、ちゃんと終わらせてるなぁ〜と思いました。
 というわけで、しばらくはシリーズ続刊を読み進めていきま−す。

『有翼騎士団3 光呼べ青嵐の騎士』 赤城毅 著

 いよいよ最終巻です。
 敵だった人がエウフェミアの言葉で覚悟を決めたり、満身創痍の光太郎はそれでもエウフェミアを助けるために前へ進んだり……。
 そしてサン=ペリエ少将やタデク……。
 177ページの挿絵は、少将じゃなくて斉藤一に思えましたよ(『るろ剣』風味)。

 侯爵との最後の戦いは、クライマックスに足る盛り上がり方ですねぇ〜。

「俺に命じろ、エウフェミア
 有翼騎士を、いいや、
 希望を抱くすべてのひとびとの心を統べる光の姫君として
 闇に打ち勝て、と!」
「勝って……いいえ。
 勝ちなさい、光太郎!」

 ……の件は、もう(T▽T)。
 光太郎は見事な騎士ですし、エウフェミアは正真正銘の姫君ですし。

 エピローグでのまとめかたも見事でした〜。
 あの寒村に赴いたことは、わたしの弱い、想いをつなぐことに他ならないので。
 語り継がれる伝説となった、伝説となって生きていく二人の様を見てみたい気もしますけど、この物語はここで幕を引くことが良いんですよね?
 すごく心地よい終わり方でした。

  『有翼騎士団2 夜を紡ぐ銀の侯爵』 赤城毅 著

 冒頭(第八章)には驚きました。
 なに、このシスタープリンセスは!?……みたいな(笑)。
 んでも、この喜びに満ちた時代があるからこそ、また、これからの闇が深いわけで……。
 ミハイルとサロメアの兄妹は、物語のもう一人の主人公なのですよね。

 本編の方は全体の流れの中盤ということで、1冊通してアクティブな話でしたね〜。
 死人組の襲撃があったりと。
 うん。勢いがあって、戦場に引き込まれましたデスヨ。

 そうした中にあって、光太郎とエウフェミアの仲も、びっみょ〜っに!発展したりして。
 適度に妨害し、適度にあおる。そんなタデクが楽しそうで。
 さすがご老体。心得てらっしゃる(笑)。
 サン=ペリエ少将はエウフェミアに助け船を出していましたけれど、これって何か意図があって……ッポイですよね。
 やっぱり、おとさん?

 死人組の道化師の立場は、あまり可哀想だとは思わなかったです。
 これはべつに同情できる理由でなかったというわけではなくて、そうした掟のもとにあるとは前巻のクァディールで知ってしまっているから衝撃という点で薄かったからだと思います。
 それに可哀想だとは思うんですけど、愛しい人のそばに居られたのなら、それはクァディールよりは幸いだったような……。

 それよりも今回は、やっぱりエウフェミアと光太郎がッ!
 光太郎が何故、自分のために闘ってくれるのか疑ってしまったエウフェミアの心に、エウフェミアがエウフェミアだからこそ守ると誓う、光太郎の言葉が届くのデスヨ!
 あぁっ、もうっ!
 このシーンの見開き挿絵の光太郎が、これがまた涼やかでカッコイイのですよ〜。

 そういえば、挿絵を描かれているりつべサンの絵。
 版画だ、版画だと言われてるようですけど(りつべサンの絵がというより、この作品での挿絵が……ですね)、これはこれで味があると思うんですけど……。
 とくに上記の光太郎の絵などは、白黒だけのコントラストで描かれているからこそ、光太郎の心意気を表したインパクトあるものに仕上がっていると思うのですが――。
 マルトフが闘うシーンとかも。
 ……まぁ、表紙とのギャップにだまされたと思ってしまうのは仕方がないとして(苦笑)。

 次の第3巻で、どうラストを結んでくれるのか楽しみです。
 直球勝負の赤城センセですから、期待を裏切ってはくれないと思いますけどね〜。

『有翼騎士団1 風に立つ緑の姫君』 赤城毅 著

 部屋を整理していたら未読のまま見つかった本なのですけども――。
 どうしてほったらかしにしていたんでしょう! わたしの莫迦!
 オビのコピーどおり「痛快無比の大活劇」デシタ。
 いや、もう、興奮した、熱くなった、武者震いした、そして泣いた泣いた。

 列強の陰謀うごめく大戦前の欧州。
 王国再興の願いを託された姫を守るために、朴念仁のサムライが駆け抜ける!
 ……わたし、あの時代が好きなのかもしれません。
 歴史的背景からして、強者と弱者がそこに存在しているために、時代全てが物語のよう――。

 もちろん初めから王国再興を目指しているわけではなくて、サムライの光太郎はなし崩し的に巻き込まれていってしまっているワケですけども、そこに至るまでの過程が個性を表しているというか、ただただ絶妙というほか。
 そんな光太郎はカッコイイわ、エウフェミアは可愛いわ……。
 そしてわたしの好きな、あの歴史上の人物までも登場してくるとなれば!
 カッコイイですよね、サン=ペリエ少将!(≧▽≦)
 これはもう楽しむしかないです。


 そして泣きどころ。
 『獅子だ。』以降の展開には胸が苦しくなりました。
 ダメなんじゃヨー。こう、想いが引き継がれる場面っていうものにはー(TдT)。

 捕らえられたあとでのヴァツワフに対するエウフェミアの宣言にもゾクリとキマしたが。
 あれは光太郎でなくても心が決まりますってバ!


 そんな真面目な本編とは別に、後書き代わりの「赤城おろし語事典」も面白かったです。
 後書きを活かせる作家さんは、けっこうお気に入り率は高いかな〜。

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