北風と太陽
 あるとき、北風と太陽が再び賭けをしました。「あそこを行く旅人の上着を脱がせられるのは、どちらか」と。

 「今度は負けないぞ」と、まずは北風から。
 北風は大きく息を吸い込み、旅人に冷たい風を浴びせました。しかし、旅人は風によろめいただけで、「ううっ、寒い....」と、逆にきつく上着を抱え込んでしまいました。
 それを見て、太陽がいつもの微笑み顔で「じゃあ、ボクの番だね」と言いました。が、それがいけませんでした。北風は、その微笑みが自分をバカにしているものと感じてしまったのです。
 カッとなった北風は、「うるさいっ!」と言葉を口にし、太陽を後ろへ追いやると、怒りによってさらに冷たさを増した風を旅人に浴びせるのでした。しかし、旅人は上着を脱ぐどころか、「ああっ」と声をあげて、しゃがみこみ、縮こまってしまいました。
 後ろでその様子を見ていた太陽は、旅人がかわいそうになり、北風の背後から、そっと暖かさを与えてあげました。ですが、怒りから自らの冷たさを増し、暖かさに敏感になっている北風は、すぐさま太陽の行為に気づき、より激しく怒り狂いだしました。
 北風は、大声で友達の雪雲を呼ぶと、太陽の姿を覆いつくすよう、彼に頼みました。普段から太陽のことを快く思っていない雪雲は、すぐさま、太陽を覆い隠してしまいました。
 そうして、雪雲と力をあわせ、北風は雪混じりの激しい風を旅人に吹きかけました。

 結局、旅人は凍りつき、死んでしまいました。
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