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皆既日食、ギリギリセーフ!−旅行記前編−(まがたま73号より)

この文章は、「まがたま73号」(2008年9月発行)に書いた記事を一部なおしたものです。「またがま」とは、私が所属する天文同好会、さいたま☆天文同好会(旧SPGAS)の会報です。なお、さいたま☆天文同好会のサイト内にある「webまがたま」では、まがたま49号(2000年12月発行)以後の記事の一部が紹介されています。

2008年8月1日に皆既日食がありました。この皆既日食は、ロシア、中国、モンゴルなどの国で見ることができました。私は、この皆既日食を見に中国へ行き、そして念願のコロナを見ることができました。これは、準備段階を含むその報告です。大変長くなってしまったので、全部で5編に分けてあります。

  1. 準備編
  2. 旅行記前編
  3. 日食編
  4. 旅行記後編
  5. 反省&おまけ編

第1日目−7月29日(火)−

ここから「旅行記後編」までは実際のツアー参加中の記録です。時系列で順に書いていきます。

荷物の詰め替え

いよいよツアー本番です。所定の時刻に成田空港に集合しました。そこで改めて荷物の重さの話がでました。これから搭乗する中国東方航空では、機内持込みの手荷物は5kgまでとのこと。それは事前に聞いていたのですが、ウエストポーチなどは大丈夫だろうと思い、予備バッテリーなど小さくて比較的重いものをウエストポーチに入れておいたのです。そして持込み手荷物はぎりぎり5kgになるように準備してきました。しかし受付での話によるとウエストポーチなども含めて重さを量るとのこと。そこでスーツケースを空けて荷物を少し移動させました。その分スーツケースの方が重くなってしまったのですが、スーツケースは最悪でも超過料金を払えば運んでくれます。でも、持ち込み荷物は5kgを越えると持ち込めないという話なのです。そんなわけで、ツアー参加者みんなで荷物の詰め替えが始まりました。

さて実際のチェックインですが、私は持込み手荷物の重さを量られました。ただしウエストバッグは計量の対象外。リュックだけ量られ、4.8kgでした。ツアーのほかの方に聞いてみると量られなかったという方がほとんど。係の人によるのか、バッグの見た目で重そうな人だけ量っていたのか・・・。

出国〜上海到着

出国手続きなども済ませて搭乗ゲートまで行ったのですが、時間になっても動きがありません。そのうち放送が入り、雷雲のために出発が遅れるとの事。結局、1時間ほど遅れて離陸しました。

東方明珠電視塔 バスから見た「東方明珠電視塔」

途中気流が悪く飛行機はかなり揺れましたが、およそ3時間で上海の浦東(プートン)国際空港に到着しました。上海は日本と同じく蒸し暑い気候。空港からバスで夕食を取るストランまで向かいます。途中、リニアモーターカーの高架橋と平行した道路を走りました。リニアモーターカーの写真はとれずじまい。このリニアモーターカーは、浦東国際空港と上海市街地の端(?) 程度を結んでいるもので、終点からまた地下鉄などに乗り換える必要があり、不便なためあまり利用状況はよくないとのこと。でも、万博に向けて工事を進めているので、もっと便利になるでしょう。

ニュースでは中国の経済発展をよく耳にしますが、ビルの様子などからもそれを感じました。経済発展の象徴のようにテレビなどで見る「東方明珠電視塔」もバスから見ることができました。

この日は、上海に宿泊するだけ。夜に若干時間があったといえばあったのですが、台風が来ていたこともあって、雨でした。ホテルから外に出た人も少なかったようです。

第2日目−7月30日(水)−

飛行機で移動

この日は上海からウルムチ(漢字では「烏魯木斉」)まで飛行機で移動です。上海には空港が2つあって、国際線は浦東国際空港、国内線は虹橋空港が主に使われているようです。日本の羽田空港と成田空港のような感じでしょうか。

オリンピックが近いこともあってか、検査や警備は厳重でした。「液体は原則として持込み手荷物には入れずにスーツケースに入れるように」とは言われていました。しかしここでは、スーツケースを開けるように言われ、「ペットボトルの水を一口飲んでください。」といわれました。まあ、実際単なる水ですから飲めば済むことです。そのほか、ソーラーフィルターを入れた箱も開けられ、フィルターをちょっと触られました。フィルターを破かれないか、怪しいものだと思われないか、ちょっと心配したのですが大丈夫だったようです。

また、フィルムはX線の検査機に通してほしくないので、手で検査してもらおうと思い、X線プロテクターからも出した状態で持っていました。しかし係員は「film safe」と言い、X線の機械にもそう書いてありました。「そうは言ってもちょっとやだな」と思ったのですが、あまりここで嫌がって変に怪しく思われてもいけないと思い、そのまま通しました。

ウルムチ上空では緑も見られる ウルムチ上空では緑も見られるようになりました
砂漠の上空と思われる 途中、飛行機から見える地上は砂漠らしきところばかり

上海からウルムチまでは飛行機で約4時間。東京から上海まで行くよりも時間がかかります。「飛行機が古くてスピードがでないんじゃないか?」なんて言う人もいましたが、地図を見れば納得。東京-上海よりも上海-ウルムチの方が遠いのです。

しばらくは雲の上を飛んでいましたが、そのうち雲の間から地上が見えるようになってきました。飛行機から見える景色は、砂漠か荒地かよく分かりませんが、何にもないような地面だけ。しかし、ウルムチに近づくと緑が見えるようになりました。やはり砂漠のオアシスなのでしょう。

ウルムチ到着

ウルムチに着くと、そこはとてもいい天気でした。日差しは強いですが乾燥している気候です。「さすが乾燥地帯、雲が全然ないな」と思いました。この時は・・・。

ところで、ウルムチは"世界で一番海から遠い都市"と言われているそうです。実際、地図を見てみるとどこの海からも遠く離れていて、一番近くても2400kmくらい離れています。

時差の話

看板にウイグル語も ウルムチでは看板にウイグル語も書かれている。(ウイグル語の文字はアラビア文字を借用している)

中国では国内に時差を設定していません。全て北京時間ということになっています。しかしウルムチと北京の経度差は約30度。2時間の時差があってもよい違いです。そのため体感時間が2時間ほどずれます。空港に着いたのは15時頃でしたが、感覚的にはまだお昼が終わった直後くらいです。

現地添乗員さんの話では、仕事などでは北京時間を使うが生活では新疆時間を(勝手に?)使っていて、食事の時間などは新疆時間で考えるらしいです。

荷物の詰め替え

荷物整理 なぜか絨毯工場らしき建物の前で荷物整理

さて、空港からバスに乗って観光となるわけですが、その前にやることがありました。荷物の整理です。何故かというと、この日の宿泊は寝台列車です。バスをそのまま夜行バスとして移動するのでは体が辛いだろうということもあって寝台列車になったようなのですが、寝台列車にスーツケースなどの大きな荷物を全部持って乗るのは無理とのこと。大きな荷物は我々人間とは別にバスで運ぶのです。というわけで、一泊するのに必要な着替えなどを、今のうちにスーツケースから出して手荷物に入れて持っていってください、ということなのです。 なぜか、絨毯工場のような建物の前で荷物を整理しました。

トルファン観光

火焔山 火焔山:それほど高い山ではありませんが、岩肌が特徴的です
風力発電機がたくさん 風力発電がたくさんありました

この後は観光です。ウルムチ観光グループとトルファン(吐魯番)観光グループに分かれました。私はトルファン(吐魯番)観光グループ。バスで3時間ほどかけてウルムチからトルファンへ移動。道はよく整備されています。途中、風力発電がたくさん並んでいました。

トルファンは標高が低いことも特徴だそうです。特にトルファンにあるアイディン湖という湖は、イスラエルの死海についで、世界で2番目に低い場所だという話でした。残念ながらアイディン湖には行きませんでしたが。

トルファンで最初に訪れたのは火焔山。西遊記の中で孫悟空が活躍した場所ということです。取り立てて高い山ではありませんが、その岩肌が特徴的でした。ここではスイカとハミウリのおまけつき。その場で切ってくれたものをいただきました。スイカはちょっと細長めの形をしていることを除けば日本で見るものとほぼ同じでした。ハミウリはこの辺りの特産品で、とても甘かったです。

カレーズ 地下水路「カレーズ」

続いて、カレーズという地下水路の見学。ここでも入口では一応手荷物検査をしていました。でも団体で行ったせいか、営業終了時間が近かったせいか、係員もほとんど見ずにOKを出していました。この辺りは乾燥していて雨はほとんど降りませんが、天山山脈の雪解け水が地下水となり、その水で生活を維持してきたようです。

カレーズの見学の後は、夕食。ぶどう棚の下で夕食を食べました。ここでは子羊の丸焼きが出てきました。現地添乗員の方は、「ウイグルの羊は臭みがなくておいしい」といっていましたが、ちょっと臭みがありました。きっと慣れの違いだろうと思います。食事のあと、ウイグル族の女の子(小学校低学年くらいの感じ)が、ウイグル族の踊りを披露してくれました。

なぜかサウナ?

夕食の後は宿泊といきたいところですが、この日の宿泊は寝台列車です。乗る予定の列車はトルファンを午前2時過ぎに出発という列車で、新疆時間で考えれば0時過ぎに当たるとは言え、まだまだ時間があります。そこで"サウナらしきところ"に行くことになりました。もともと行くことになっていたのか、時間があったから行くことにしたのか、実はよく分かりません。ただ、このサウナに対して別途料金を支払っていませんので、ツアー料金の中で賄えていることは確かでしょう。 サウナと言っても、空いている部屋に適当に数人ずつ割り振られ、シャワーを浴びることができるという程度の施設でした。

寝台列車で移動

サウナで1時間ほど休憩したあと、寝台列車に乗るために駅までバスで移動です。駅でもX線検査がありました。スーツケースはバスで別に運ばれていますから、手荷物と自分自身のゲートだけです。さすがに空港ほどは厳しくない感じでしたが、液体物の持ち込みはだめ。これも予め聞いていたので持っていませんでした。駅の中に入って、休憩室みたいなところで列車を待ちます。駅の中にも売店があり、私はコーヒーなどを買っただけですが、絨毯のようなお土産品も売っていました。

2階建ての寝台列 ホームに到着した寝台列車。部屋自体が2階建て。

列車の時刻が近くなったので、みんなでホームへ移動。線路の幅がとても広いです。やってきた列車も大きく、2階建ての寝台列車でした。列車自体が2階建てで、さらにベッドが2段なので、全体ではベッドが4段あることになります。 列車に乗り込んだら、現地添乗員の指示にしたがって自分のベッドへ行きます。切符もこのときに添乗員から受け取りました。私は下の階の上の段だったのですが、上段はとても狭く、座った状態でも頭を天井にぶつけてしまいます。下の段には余裕があったので、もう少しベッドを下に付ければいいのにと思いました。でもここは眠って移動するだけ。狭いながらもさっさと眠ってしまいました。

第3日目−7月31日(木)−

寝台列車から降りる

列車から見た風景 朝、列車の窓から外を見ると雲だらけ
ハミ駅のホーム ハミの駅に着いた列車。ホームの人と比べると、列車の大きさが分かる。

朝になって、目が覚めました。列車の窓から外を見ると雲だらけ。時間的にも場所的にも日食に近づいています。その時点でこの雲はかなりの不安です。そしてハミ(哈密)という都市に着き、列車を降りました。

朝食でスペイン人と遭遇

ハミに到着してまずは朝食。レストランに行ってバイキング形式の食事を取りました。同じテーブルに西洋系のツアー客と思われるグループが座りました。私と一緒に座っていた同じツアーの人が英語で話しかけました。「あなた方も日食を見にきたのか?」と。すると「そうだ。」との答え。私より英語が得意な方が話を聞いてくれたので私は聞いているだけでしたが、スペインから来たとのこと。世界中に日食ファンはいるんだなあと感じました。

ハミ観光

ハミ王墓。少し仏教風な感じもある建物。
ハミ王墓。こちらはいかにもイスラム風。

午前中はハミ観光をして、午後に日食観測地に向かう予定。最初ハミの博物館に行ったのですが、なんと「オリンピックの関係で、急に今日からしばらく閉館」とのことです。現地添乗員の方も初めて聞いたとか。しかたがないので博物館は写真だけ撮って、ハミ王墓というところへ移動しました。外観はイスラム風の石の建物と、東アジア風の木の建物があったのですが、中はどちらもイスラム風の石のお墓でした。

入浴

さて、ハミの博物館が休館で時間が余ったためか、元々予定されていたのか、これまた不明ですが、ここでまた銭湯のようなところで休憩。日本のスーパー銭湯のようなところで、タオルも貸してもらえ、ロッカーもリストバンドを当てると解錠されるという、なかなか進んだもの。この先テント生活が始まることを考えると、ありがたい休憩でした。

それにしてもこのツアー、「なぜ?」と思うことがちょくちょくでてきます。日食ツアーとはそういうものなのか、それともお国柄のせいなのか、あまり気にしないほうがよさそうです。

昼食後、日食観測地「伊吾」へ出発

休憩した後は昼食です。実は朝食を食べたところとほとんど同じ場所(隣の建物!)でした。そして昼食後、日本の添乗員と星ナビスタッフから、天候の説明がありました。「天気は回復傾向にあり、インターネットの予報画像でも日食直後には雲が無い予報になっている。しかし、山が近いこともあり実際の天気がどうなるかは分からない。五分五分といったところでしょう。」とのことでした。確かに、朝に列車から見た空は雲ばかりでしたが、このときには日差しが出ていました。  この後は、日食観測地である「伊吾(イゴ)」に向かって、ひたすらバスで移動です。

検問

伊吾へ向かって移動する途中、バスを止められました。何回か検問があったのですが、一番長いところでは全員のパスポートが一度回収され、その後係官のような人が一人ひとりに直接パスポートを返すという念の入れよう。ここでは40分くらい待たされました。

バスに貼られていた「通行証」 いつの間にかバスにはこんな「通行証」が貼られていました。
スペイン人 隣に止まったバスには、朝食で一緒になったスペイン人が

ここで待っているとき、後から来た別のバスが横に止まりました。そのバスに乗っていたのは、朝食で同じテーブルに座ったスペイン人でした。お互いに手を振り、写真を撮りあったりしました。

日食城に到着

イベント会場? きれいな芝生も回りはロープで囲われています

その後もバスはひた走り、ようやく観測地に到着。ところで、今回の観測地は「伊吾県」と聞いていましたが、着いた場所は正確には「?子峡」という場所のようです。(読み方は不明)中国の行政区域はなかなか複雑で理解しきれていませんが、大きい区域から順に省級−地級−県級−郷級という区分になっているようです。これを今回の観測地に当てはめると、「新疆ウイグル自治区」(省級)−「ハミ地区」(地級)−「伊吾県」(県級)−「?子峡郷」(郷級)となるのだと思います。もっとも、これらは日本に帰ってきてから知ったことなのですが。

さて、到着した場所には、なにやら立派な施設が出来上がっていました。今回の観測地は『日食城』だと聞いていたのですが、この日食城というのが何なのかよく分からずにいました。この施設を見て「日食城というのはこれか!」という点に関しては妙に納得してしまいました。あとで気づいたのですが、中国語では「城市」と書いて都市を意味します。この施設に限らず、今回の皆既日食のために整備した辺り一体を差して日食城と呼んでいるのだろうと思います。(ポスターなどには英語でもEclipse Cityと書いてありました。)しかし私にはこの施設=日食城と言ったほうがしっくりきました。

こんなモニュメントもありました

施設は立派ですが、「ここが皆さんの観測場所です。」ということで割り当てられたのは芝生の上の狭いエリア。しかも、黄道12宮をあしらったモニュメントや、会場の端に掲げられた看板が邪魔になりそうな場所でした。加えて、この芝生のエリアに入るときにも検査のゲートをくぐらなくてはならず、やはり液体物の持ち込みは不可とのこと。下が人工芝なので片ひざをついて作業しても痛くないという点ではありがたいですが、やはり日食の観測には不向きです。日食のベテランの方々が中心になって「こんなのありえない!」「いい場所を割り当てようと考えてくれたのは分かるけど、全然いい場所じゃない!」などといいながら、観測場所の変更を日食城の係員と交渉しました。現地添乗員の方が間に入って通訳してもらいながら交渉です。

どうやらこの施設では会議やセレモニーなどのイベントが行われるようです。イベント会場は立派ですが、周りは何も無いような荒地です。観測する本人がどこでも良いと言えば、どこで見たって良いようなものですが、一応、第1観測区、第2観測区、などと分けてあるようでした。結局、我々はこのイベント会場から少し離れたところで、舗装された道路からちょっと歩いて起伏を上った辺りで観測することになりました。

テント生活

テント

日食の観測場所はなんとかなりそうな雰囲気になりました。一方、宿泊場所はテントになります。一口に"テント"と言ってもいろいろあります。かつて私がモンゴルに行ったときには遊牧民の「パオ」に泊まりました。パオもテントの一種ですが、中は結構広く4人分のベッドが入るような広さでした。

しかし今回のテントは、登山に持っていくような本当に小さなテントで、このテントを二人で使います。実は、ツアー料金に27,000円を追加すればホテルもテントも一人で一部屋を使えたのですが、私は相部屋で申し込んでいました。ホテルはともかく、このテントで二人というのはさすがにきつく、一人一つ欲しいと思いました。

天山山脈の雪解け水だという川

この観測地の近くには川が流れていました。名前は分かりませんが、天山山脈の雪解け水だという話。テントなどの状況が落ち着いたあと、この川へ行ってみました。遠くには天山山脈らしき山が見えます。靴を脱いで川に入ると冷たくてとてもいい気持ちでした。

夕食

この観測地での食事はいつも同じパターン。グループごと(ツアーごと?)に指示された時間に食堂に行き、給食のような感じでトレーに自分でおかずをよそっていって食べるというものでした。まあ、バイキング形式な訳ですが、ホテルなどと違ってメニューは少ないものでした。

川原で星見

夜は、ツアーのほかの方から誘いを受けて、先ほどの川原へ行きました。みなさんはビールですが、私は元々アルコールに強くなく、まして旅行中に体調をくずしたくないと思っていたので、旅行中はお酒を飲まずにすごしました。なので、ここでも私は水を持っていっただけ。このときには、既に雲もほとんどなくきれいな星空が見えました。"見たこともないほどの暗い空"というほどではありませんでしたが、天の川もよく見えました。北極星やさそり座を見て、緯度が高いことを感じました。(ここは北海道くらいの緯度です。)

アップロード:2008.10.5

  1. 準備編
  2. 旅行記前編
  3. 日食編
  4. 旅行記後編
  5. 反省&おまけ編