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星空の変化(まがたま73号より)

この文章は、「まがたま73号」(2008年9月発行)に書いた記事を一部なおしたものです。「またがま」とは、私が所属する天文同好会、さいたま☆天文同好会(旧SPGAS)の会報です。なお、さいたま☆天文同好会のサイト内にある「webまがたま」では、まがたま49号(2000年12月発行)以後の記事の一部が紹介されています。

天体(より正確には天体の見え方というべきでしょうか)の時間的な変化について考えてみると、その時間の長さには様々なものがあります。 いわゆる天文現象では、天体の見せる姿が時々刻々と変わっていきます。流星が流れるのは一瞬ですし、皆既日食もわずか数分の間に大きく変化します。これらは、変化の時間的スケールが短いものの代表でしょう。

月の満ち欠けや惑星の運行などは、普段の生活レベルの時間スケールで考えたときに分かりやすい変化です。じーっと見ていてもその変化はほとんど分かりません。しかし月の満ち欠けならば、数日経てば形の変化は一目瞭然です。惑星の運行も、数ヶ月から数年程度で、位置の変化がよく分かるようになります。

一方、星座や星雲・星団などは変化の時間スケールが長いものの代表でしょう。もちろん地上の気象状態などには大きく左右されますから、そういう点での"見え方"には変化があります。しかし、星座や星雲・星団の本来の見え方は長い間変化しません。星座の形の変化は個々の恒星の固有運動によるわけですが、この固有運動は小さいため普通に星空を見ていてもその移動はとても分かりません。星座の形の変化が顕著になるには、数万年、数十万年といった時間スケールが必要になります。星雲・星団も同様に、我々の普通の感覚からすれば"いつも同じ場所にあって同じ形にみえるもの"ということになります。

このように「今も昔も変わらないもの」と「そのときしか見られないもの」の両方を併せ持っていることも、天文の魅力の一つだと私は思います。

さて、一人の人間の一生では変化を感じられないが、人類の有史程度の長さでは顕著な変化が見られるものがあります。それは歳差運動です。歳差運動とは、地球の自転における"コマの首振り運動"のことです。これにより、地球の自転軸の向きが少しずつ変わっていき、その結果天の北極の方向が変わっていきます。

歳差運動の周期は約26,000年であり、天の北極の位置は数千年の時間スケールで大きく変わっていきます。今からおよそ4,800年前には、天の北極はりゅう座α星(トゥバン)の方向にありました。エジプトのピラミッドが作られたころの人々は、この星を北極星として使っていたと言われています。 昔の人々と現代の我々とが見上げる星空には(ほぼ)同じ形をした星座があるのに、その日周運動には大きな違いがある、というはなんだか面白いと思います。

実は以前にも、このような"天体の変化における時間の違い"について考えたことがあります。それは、かつて『過去・今・未来の日周運動』という写真を撮ったときのことです。この写真は、上に書いてきたようなことをあれこれ考えているうちに思いついたものなのです。

アップロード:2008.9.17