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行きたいところ(まがたま72号より)

この文章は、「まがたま72号」(2008年5月発行)に書いた記事を一部なおしたものです。「またがま」とは、私が所属する天文同好会、さいたま☆天文同好会(旧SPGAS)の会報です。なお、さいたま☆天文同好会のサイト内にある「webまがたま」では、まがたま49号(2000年12月発行)以後の記事の一部が紹介されています。

「まがたま」には、会報担当が決めた “特集テーマ” に沿って作品を作るという制度があります。もちろん特集テーマ以外のことを書いた作品もOKですが、特集テーマがあればこそ思いつくような内容もたくさんあるのです。そしてこの特集テーマ、「もちろん、幅広い解釈大歓迎です!」という会報担当からの言葉どおり、解釈が自由ということになっています。こういう制度になっていると、最初は「書けそうなネタがあるだろうか?」と思っていても、考えているうちにいろいろな内容が浮かんできます。今回はそれほど意外性のある「行きたいところ」が浮かんだわけではありませんが、とにかく思いついた「行きたいところ」を挙げていきます。

まずは、“行きたい”というより“見たい”といった方が正しい内容でしょう。学生時代に天文サークルの仲間と時々話題に挙がっていたのが、“一生に一度は見たいもの”です。そしてそれは5つ有りました。(1)大彗星 (2)流星雨 (3)南天の星 (4)皆既日食 (5)オーロラ です。

5つのうち最初にクリアしたのは(3)の南天の星です。学生のころ、1995年2月〜3月にニュージーランドに行き、南十字大小マゼランなどを見てきました。続いてクリアしたのは(1)の大彗星です。これは1996年に百武彗星を、1997年にヘールボップ彗星を見ることができました。一番の難関は(2)の流星雨でしょうが、ご存知のとおり2001年のしし座流星群が流星雨となり、これを見ることができました。

ということで残っているのは(4)の皆既日食と(5)のオーロラです。実はオーロラはニュージーランドで一応見ています。地平線近くに、オレンジ色の広がりが見えましたが、きれいではありませんでした。むしろ星を見るのに邪魔なくらいです。(4)の皆既日食は1996年3月にモンゴルに日食を見に行ったのですが、曇ってしまいました。欠けていく太陽は雲ごしに見えたのですが、細くなった太陽が見えなくなった瞬間、何も見えなくなってしまいました。すなわち、コロナを見られなかったのです。

このような状況ですから、この(4)と(5)は自信をもって見たとは言えません。ですから、これらを見たいと思うのです。オーロラは日本ではまず見られません。皆既日食も、日本で、しかも自宅の近くで見られるチャンスはかなり少ないものです。したがって、明確に「見に行く」という行動が必要です。

お次は、“現実には行けないでしょうが行けるなら行ってみたい”ところ。それは宇宙です。宇宙の中でもまずは近いところで地球の周り。これは民間の会社による宇宙旅行の企画なども一応あって非現実的ではないものの、一般庶民にはまだまだ苦しい状況です。少し遠くなると月です。ここまでは既に実際に行った人類がいる範囲です。その次は火星でしょうか。とにかく、宇宙から地球を見ることができたら面白いだろうと思いますし、他の天体も地上から望遠鏡で見るような大きさを肉眼で見られたら面白そうです。その天体にも降り立ってみたいですが、砂漠と大差ないのかもしれません。

木星や土星などは、降り立つことはできないと思いますが、もっと近くで見てみたいものです。星雲・星団や彗星はあまり近くへ行ってしまうと、かえってなんだか分からなくなってしまいそうです。そういう意味では、適度な距離まで近づきたい、という対象になりそうです。

続いては、天文が主役でなくなってしまいますが、ヒマラヤとか南極とか、大自然の中で星を見てみたい、という気持ちがあります。“星と風景を一緒に見る”のが難しいなら風景だけでもいいのですが、それだと天文とは関係のない単に行ってみたい場所になってしまいます。(まがたまでは、そういう解釈も『あり』かもしれませんが。)

今まで私が行った場所で一番の大自然は、ニュージーランドでしょう。しかしニュージーランドは新月に合わせて行きました。南天の星を見ることが最大の目的だったので、それは適切なことであり、星は随分見られました。しかし、日本では見られないような大自然でしたから、今から思えば、月明かりで風景がある程度見えるときに、星と風景を一緒に見てみたいとも思います。

どこで見たのかもよく分からずに見た百武彗星 どこで見たのかもよく分からずに見た百武彗星

それから、“昔行った『星見ポイント』にまた行ってみたい”ということも思いました。富士山の須走口5合目とか、神奈川県の城ヶ島などは学生のころによく行った星見ポイントです。しかしもう随分長い間行っていません。今はどうなっているのか、すっかり変わってしまったのか、あまり変わっていないのか、そんなことを考えるとちょっとドキドキします。

久しぶりに星見ポイントに行ったら、いつのまにか駐車場に照明が付いていたり、星を見るのには邪魔な建物ができていたり、そんな経験もあります。他にもかつて星を見た場所で、今は様子が変わってしまった場所もあるでしょう。もちろん、あまり変わってないところもあると思います。最近の街中では、いつの間にかお店がなくなっていたり、新しいお店ができたりと様子がどんどん変わっていく気がします。それに比べると、星見スポットになるような場所の変化は少ないのかもしれません。

そういえば百武彗星が来たときに、秩父方面へ行ったことがありました。天文サークルの仲間と「芦ヶ久保の辺りへ行こう」という程度の目的地選定で出かけ、あとは適当に山道を走り、駐車場がある程度広そうな場所を見つけて、そこで百武彗星を見たのでした。実は、後に仕事でその場所にちょっと関わることがあり、「あの時百武彗星を見たのはここだったのか!」と思ったことがありました。百武彗星を見たときは、もちろん何も知りませんでした。

最後にもう一箇所、行ってみたい場所を挙げます。それは南緯19°29.47′の場所です。これは「一等星を一度に最もたくさん見られる場所」(のはず)です。まがたま55号に書いた話ですが、天球上の〔赤経 9h49.64m 赤緯 -19°29.47′〕の点が天頂に来たとき、いわゆる一等星21個のうち17個が空に出ているはずなのです。日周運動によって天球が回転しますから、赤緯の方は適当な時刻になれば天頂に来ます。一方天頂の赤緯は、その場所の緯度で決まってしまいます。したがって目的の緯度の場所に行く必要があります。南緯19°29.47′は、オーストラリア、アフリカ、南アメリカなどを通っているのですが、一番行きやすいのはオーストラリアでしょう。グレートバリアリーフなども近いようです。

ちなみに、17個の一等星が空に出ているとは言え、そのうち3個は極めて低空であって厳しい条件になります。南緯20°17.68′の場所に行けば、もう少し良い条件で16個の一等星が見られるはずです。南緯19°29.47′と南緯20°17.68′、地球全体から見れば、かなり近い場所です。もし「本当に一等星をたくさん見られるか」を確認しに行くならば、両方の地点に行くべきでしょうね。

アップロード:2008.6.11