ズブさんの
アイデア天体
写真館

もくじ

1等星をたくさん見るには(まがたま55号より)

この文章は、「まがたま55号」(2002年10月発行)に書いた記事を一部なおしたものです。「またがま」とは、私が所属する天文同好会、さいたま☆天文同好会(旧SPGAS)の会報です。なお、さいたま☆天文同好会のサイト内にある「webまがたま」では、まがたま49号(2000年12月発行)以後の記事の一部が紹介されています。

はじめに

秋の夜空には明るい星が少なく、一般に秋の1等星と言えばフォーマルハウトだけです。一方、冬の夜空には1等星が多く、とても華やかです。

以前、「冬の夜空には明るい星が多いな」と考えているうちに、ふと思ったことがあります。それは、"一度に一番多く1等星を見るにはどうしたらよいのか"、ということです。(「一度に」というのは、同時に視野に入るという意味ではなく、夜空において同時に地平線上にあるという意味で使っています。)

いわゆる1等星、正確に言うと小数以下を四捨五入して1以下の等級になる星(以下は全て「1等星」といいます。)は、以下のとおり、全部で21個あります。この21個のうち、最大で何個まで、同時に地平線上にありうるのでしょうか? その時はあまり考えずにそのままになってしまいましたが、今回はまがたまの特集テーマが「1等星」ということなので改めて考えてみました。

考え方と計算の手順

“より多くの1等星が同時に地平線上にある状態”を探すことは、“天球を半分に分けた時により多くの1等星が片方に含まれるような分け方”を探すことと同じです。大気差による浮き上がりや標高を考えると問題はもっと複雑になりますが、今回はそれらを無視して単純に天球を半分に分けることを考えました。

私は以下のような手順で、この「分け方」を探しました。

  1. 21個の1等星のうち、適当な2個を選ぶ。
  2. この2個の1等星を通る大円で、天球を2つに分ける。
  3. 2つの半球のそれぞれに含まれる1等星の数を数える。
  4. 全ての組合せについて、1〜3の手順を行い、片方の半球に最も多く1等星が含まれる場合を探す。
天球を2つに分けて考える 天球を2つに分けて考える

手順1で選んだ2個の1等星は、2つに分けた半球の境界上にあります。この2個の1等星が、もし天球上で互いに正反対の位置でなく、かつこの2個以外に境界上に1等星がなければ、半球の境界をちょっとずらすことによって、この2個も片方の半球に含めることが可能です。実際、21個の中から2個の1等星を選ぶ全ての組合せにおいて、このことが可能でした。したがって、

「片方の半球に含まれる1等星の数」+「(1)で選んだ数(すなわち2)」

が、同時に見られる1等星の最大の数となります。

実際には、これらのことを球面三角法の計算を使って行いました。計算自体はEXCELで行いました。21個の中から2個を選ぶ選び方は、210通りです。210通りなら、EXCELで計算するのはそれほど大変ではありません。

結果その1

計算を行った結果、最も多い場合、片方の半球に15個の1等星が含まれました。したがって、最もたくさんの1等星を見られる場合というのは、15個+2個=17個の1等星が同時に地平線上にある場合だということになります。これは具体的には、

〔赤経 9h49.64m 赤緯 -19°29.47′〕

の点が天頂にある場合に当たります。〔赤緯 -19°29.47′〕が天頂にあるためには、地球上で南緯19°29.47′の場所に行かなくてはなりません。この緯度は、オーストラリア、ブラジル、ボリビア、アフリカ南部などを通っています。一方、〔赤経 9h49.64m〕は適切な日時であれば天頂に来ます。

その星空の様子を実際に表示してみました。なお、星図は全てステラナビゲータVer5(株式会社アストロアーツ、発行はアスキー出版)を用いて作成し印刷したものを再度スキャナで読込んだものです。

17個の1等星が同時に見えるときの星空 17個の1等星が同時に見えるときの星空

上の図は、ステラナビゲータの“星座早見モード”で描いたものです。(文字は少し付け足してあります。)南十字の付近が少々こみいって分かりにくいかもしれませんが、確かに17個の1等星があります。最も高度が低いのは、アケルナル、アンタレス、カペラの3つの星で、これらの星の高度は0.2度以下です。いわば、この3つの星がぎりぎりで地平線上に現れるポイントを探した、という結果になりました。

一方、この時、地球のちょうど反対側では、17個以外の残りである、ベガ、デネブ、アルタイル、フォーマルハウトの4個の1等星しか見られないことになります。

半球儀モードで描いた図 半球儀モードで描いた図

ステラナビゲータには“半球儀モード”があるので、そのモードで描くと上のようになります。アケルナル、アンタレスが地平線ぎりぎりにあるのが分かります。(カペラは向こう側にあります。)なお、半球儀は、天球を外側から見る形になっているので注意してください。

結果その2

大気差による浮き上がりや、標高は考慮していないとはいえ、星の高度が0.2度ではあまりにぎりぎりすぎます。実際に見るのは困難でしょう。そこで、1個減らして、16個の1等星が同時に見える場合で条件の良いものを探しました。

色々と集約した結果、同時に見える16個の1等星の組合せは、5つのパターンがあることが分かりました。次の表はそれを表したものです。

表の中の「赤経」「赤緯」は、その点が天頂にあるときに16個の1等星が見られることを示しています。「最も低い星」は、その時最も高度の低い星で、3つの星があります。「高度」はその3つの星の高度です。なお、この「高度」の値は、正確に計算したものではありません。多少の誤差があるかもしれません。

赤経 赤緯 最も低い星 高度
10h13.04m -12°19.21′ アンタレス、アルデバラン、カペラ 1.9度
9h 9.78m -20°17.68′ アケルナル、アルクトゥールス、カペラ 5.4度
9h30.18m -34°25.75′ アンタレス、アルデバラン、アルクトゥールス 3.6度
6h50.00m -40°47.78′ フォーマルハウト、スピカ、カペラ 0.7度
7h59.74m -57°17.47′ フォーマルハウト、アンタレス、ポルックス 4.6度

16個の1等星の組合せとしては、予想どおり、17個の場合に最も低空だった3つの星のうち、

  1. アケルナルがなくなったもの(表の1番目)
  2. アンタレスがなくなったもの(表の2番目)
  3. カペラがなくなったもの(表の3番目)

がありましたが、他に、

  1. アルクトゥールスとアンタレスがなくなってフォーマルハウトが加わったもの(表の4番目)
  2. アルクトールスとカペラがなくなってフォーマルハウトが加わったもの(表の5番目)

がありました。これらの中で一番条件が良かったのは、2番目のものです。この場合、最も低空であるアケルナル、アルクトゥールス、カペラの3つの星は高度がおよそ5.4度です。これならば、実際に見ることも可能だと思います。この様子を表示したのが、次の図です。 本当は全てのパターンを図示して見比べると興味深いのですが、量が多くなるので2番目のパターンだけにしておきます。

16個の1等星が同時に見える例 16個の1等星が同時に見える例

まとめ

結局のところ、1等星が多いのはカペラ〜リギル・ケンタウルスの天の川周辺です。基本的にはまずこのラインを入れて、あとはいかに地平線ぎりぎりに星を多く入れるか、ということになりそうです。夏の大三角であるベガ、デネブ、アルタイルはちょうどその反対側にあるため、一度も名前が出てきませんでした。

また、ケンタウルス座、南十字座に4つの1等星がかたまってあるため、条件が良いのは全て南半球という結果になりました。

ちょっと注意事項

もし、「自分もステラナビゲータで試してみよう」という方がいたら、すこし注意が必要です。星座早見モードで表示した場合、地平線に近い星は減光が考慮されて、表示されない場合があります。少なくとも3等星までは表示するように設定しましょう。また、星座早見モードでは、星の名前が地平線下に隠れてしまいます。星座早見の方角を色々な方向に回すと表示が出てきますので注意しましょう。

アップロード:2008.6.11